2024年04月19日

気持ち良く空振り

2週間ほど前に「いま買い取りに来ている先に古い本があるんだけど」と、長い付き合いの道具屋さんから電話を貰いました。かなり高齢のご婦人の、その親世代の残された本だと言います。ともかく写真を撮って送ってもらうことにしました。

やがて送られてきた画像を見ると、なるほど昭和初めころの本などが写っております。しかし決して珍しいものではなく、見る限り量も少なそうです。

それより書棚の一部にフランス語のペーパーバックや、哲学系の日本書が少しばかり見えたのが、店主の気をそそりました。最近亡くなられたご主人の本らしい。場所も神宮前というので、道具屋さんがもう一度お訪ねするという日に合わせて、ともあれ拝見にうかがうことにしました。

住所を聞いてGoogleマップで調べると、驚いたことに、5か月前にお引き取りをした建築事務所のすぐお隣。不思議なめぐりあわせを感じたものです。

伺ったのは今日の午後。これが3度目となる勝手知ったる裏道を目的地に向かい、低層マンション前で待ち合わせて一緒にお部屋へ。ごあいさつの後、早速本を拝見させていただきました。

床に10ほどの箱がふたを開けて置かれていましたが、上にメモ紙が載せられていて、ご説明によるとそのうちの半分ほどは「子供がまだ見たいという」ので今回は見合わせ。さらに書棚の本も同様だとおっしゃいます。

RIMG5037残る5箱ほどを処分されるというのですが、あらためて引き取りに上がるのはご遠慮申し上げたい本ばかり。道具屋さんも状況を察して、店主が先に帰るのを承知してくれました。

中途半端に悩む要素がなく、すっきりした気分で帰路についたのです。

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2024年04月18日

全古書連大市会

大市会に行ってまいりました。

東京で「全古書連」の名を冠した大市会が開かれるのが8年ぶりであることは、先日も書きました。しかしこの時は「全古書連総会歓迎大市会」と称する、一種のマイナーバージョンでした。

今回のように大市そのものを前面に打ち出して行うフルバージョンでの開催は、さらにその2年前まで遡ります。どこがどう違うのかというのは説明が難しいうえ、ほとんどの方に興味がないことでしょうから省略いたしますが、その点では10年ぶりといった方が正確かもしれません。

DSC_2416つまりこの10年以内に組合に入られた方にとっては、初めて経験する東京古書会館での全古書連大市会というわけです。

そのためでもあったでしょう、会館を一巡して店主が最も印象に残ったのは、初めてお目にかかるような他組合の方々が、大勢来場されていたことでした。

商品の量というだけなら、中央市会が毎年2月に開催している大市会と、さほど甲乙なかったでしょう。ただ違っていたのは、地階を中心に並べられた和漢古典籍類の出品点数。とりわけ「中国もの」の多さは、過去の大市と比べても今回の大きな特色と言えます。

それらの出来高いかんでは、従来の記録に迫る市会になる可能性もあります。ただ久々の開催で記憶に残るものとなったことだけは、すでに確かなようです。

ところで会場で、熊本の舒文堂河島書店さんにお会いしました。まさに8年前の歓迎大市から帰られる際、熊本地震に遭遇された方です。昨夜また一泊された東京で、高知地震の報を受け、そのめぐりあわせに驚いておられました。

聞くところでは高知県組合の組合長さんも、珍しく今回、東京に来ておられたそうです。

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2024年04月17日

『ウソをつく力』

衆議院議員補欠選挙が昨日告示されて、新聞などでも大きく取り上げられていますが、小店地元の目黒区議長選挙は一足早く14日に告示。

以来、店の前を選挙カーや、あるいは徒歩で、候補者たちが連日のように氏名を連呼しながら通り抜けていきます。

多選阻止とかで、いつもより多くの立候補者があり、なかに有力な候補もいて、現職候補もうかうかしていられない状況だとも耳にしておりますが、いかんせん店主は世田谷区民。どれほど選挙戦が盛り上がろうとも、一票を投じる資格がありません。

さらに話題豊富な東京15区の補欠選挙にしても、できるのは、ただその行方を見守ることだけ。その意味では、長崎や島根と同じなわけです。あくまでも他所の選挙。

こうした選挙の日程に興味を持って検索したところ「東京都選挙管理委員会事務局」のホームページに、令和6年選挙執行一覧なるものを見つけました。じつに次々と選挙があるものです。

そしてその中に唯一、店主が投票権を持つ選挙がありました。6月20日に告示される東京都知事選挙。先の選挙からもう4年経つわけです。たまたま手元にあった本を開くとこんな言葉がありました。

フランスのある哲学者は、人生の時の流れは、「年齢分の一」だと言った。

uso年をとるほど一年が早いというのは、まさにこれゆえなのでした。この本は赤塚行雄『ウソをつく力 人はなぜウソをつくのか』(ポプラ新書、2014年)。懐かしいお名前ですが、本書刊行の1年後に他界されています。

いまの「ウソ」まみれの政界をご覧になったら、どんな本を書かれたでしょう。

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2024年04月16日

虫の知らせ

虫が知らせたということでしょうか。二三日前、注文品の発送作業をしながらふと、最近は送り間違いをしなくなったなあと、感慨にふける一瞬がありました。

いちいち確かめながらやっているわけですから、それが当たり前のはずですが、長らく無事故が続いていることを手柄のように感じたのは確かです。

ところがそんな思いも束の間、昨夜家に帰って食事を済ませたあと、パソコンでメールをチェックすると、「注文番号:XXXXについて」というタイトルの一通。胸騒ぎとともに開封してみれば、案の定、違う本が送られてきたというご連絡でした。過去に何度もやらかしている、宛先ラベルの貼り違いです。

DSC_2418さらに気になることも書かれていました。宛名はご注文者でしたが、送り先はスキャン代行業者だったようで、「書籍を送り返すのに手数料が発生する可能性」があるとのこと。ともあれお詫びと、返送をお願いしたい旨、返信いたしました。

続いて、送り間違いをしたもう一方のお客様にもメールを書き、同じく着払いでのご返送を依頼しています。この時点で解決にどれほどの時間を要するのか予測がつきませんでしたので、ひとまずクレジット決済のキャンセル手続きを取ることにして、今日午前中に、組合の担当者にメールでお願いしました。

さいわい誤配先のどちらも、すぐに返送手続きをしてくださったようで、一両日中には本が戻ってきそうです。あらためて心ばかりのお値引きをしたうえで、お買い上げいただこうかと考えております。

ちなみにお一方はLyotardの本、もうお一方にはRanciereの英訳書をお送りしました。数日前、のんびり感慨にふけったのは、この時だったような気がします。

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2024年04月15日

8年ぶりのイベント

zenren「全古書連大市会の集荷についてですが」といって、理事会事業部理事さんから電話があったのが10日ばかり前。

「出品があるなら集荷に回ります」という有り難いお申し出ですが、店主には「まさか何も出品しないわけではないでしょうね」という圧力に、どうしても聞こえてしまいました。ちょうどお祭りの寄付を求められてでもいるように。

もちろん店主の思い過ごしで、あくまでも親切で連絡していただいているのです。売りたいものがあったら、出せばよいだけのこと。

とはいえ「8年ぶり」という全連大市に、まるきり知らぬ顔もできません。店の売り物をかき集め、半額セールでもするつもりで、ようやく7点の出品物をこしらえました。今日がその集荷日。

「8年ぶり」というのは前回東京で開いた「全古書連総会歓迎大市会」が2016年で、それ以降、東京では開催されていなかったからです。

近年はコロナ禍もあって開けなかったのですが、そもそも過去の「大市」で運営側に負担がかかり過ぎた記憶が根強く、あまり前向きでなかったことも確かでした。今でも店主などは、どちらかと言えば消極派です。

というのは昔と違い、全国規模の大市が、東京だけでなく各地で数多く開かれるようになっているからです。あえてやる意義があるのか、と考えてきました。

しかしながら今回、送られてきた出品目録を見ると、なかなか充実した内容です。結果は終わってみなければ分かりませんが、盛会となることはまず間違いない。

問題は、これがかつてのように2年ごとの催しとして、この先も持続可能かどうかでしょう。

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2024年04月14日

猫に小判?

フランス現代思想と呼ばれるジャンルの本は、小店の売れ筋商品です。もっとも小店ばかりでなく、どこの店でも同様らしく、市場に出ても安くは買えません。

翻訳書に限らず、最近は原書でさえ競争相手が増えてきました。それでもまだ原書については、時々落札することができ、なんとかある程度の棚は維持できております。

少し値の張るものや、傷みやすい装丁の本は店頭には出さず、もっぱらネットでご覧いただくのですが、こまめにチェックされる方もおられて、アップと同時に売れてしまうこともしばしば。
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そんななかで先日、デリダのKhoraが9千円で売れました。ご存知の方もおいででしょうが、1993年の刊行の、わずか103頁の薄い本。しかしネットで検索しても、ほとんどヒットしません。たまに見つけても2万円以上の値がついています。おそらく限定部数出版であったからでしょう。

再版でもされれば安く出回るおそれもあると考え、控えめな値を付けたのでした。

売れて喜んだのも束の間、留守中にお客様から、返品希望の電話があったと聞いたのは昨日のことです。こちらからかけ直し、事情を伺いました。どのような理由であれ返品自体はお受けするつもりで。

そして伺っているうちにわかったのは、non coupee(ページが切られていない状態)について、ご理解がないことでした。さらに仮綴じのくるみ表紙で、糊は軽くつけてあっただけなので、おそらく手にした拍子に本体が外れてしまったようです。

それで「本が剥がれていて袋とじになっている」のを、欠陥と思われたわけです。

縷々説明し、それが瑕疵でないことはご理解いただけましたが、ご本人は図書館から借りている本と同じものが来ることを想定されていたのでした。あとで調べると2006年に同じ出版社から普通のペーパーバック版が€22で刊行されています。しかしそれも現在ネット上では見つかりません。

「線を引いたりするつもりだったので、少し検討させてください」とおっしゃいますので、「どうぞご自由に」とお答えしたのでした。

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2024年04月13日

落札ナシに安堵

第二土曜日は南部地区入札会。開店準備を終えると、五反田に向けて出発いたしました。

空気はまだ冷たいのですが、日なたに出ると一気に温かさを感じます。考えてみれば4月も中旬。それにしては気温が低めかもしれません。

DSC_2410南部会館は、思ったより多い出品量でした。一階の荷捌き場にも本が積まれています。全古書連大市会を翌週に控え、あるいは荷が集まっていないのではないかと案じたのですが、仕分けを必要とする一口物も複数件あった模様です。

しかし店主のお目当ては、いつものように店売り用の文庫本。それ自体が出ていなかったわけではありませんが、小店が必要とするものは見当たらず、むなしく会場を去ろうとして、ふとドイツ書の山に気づきました。

小型の全集物などがまとめられた口です。気まぐれで一点に入札したあと、明日はいろいろすることがあるため、引き取りに来る暇がなさそうだと気づき、「取り止め」の札を入れようかと迷いました。

ところがさらに見ていくと、同じ口が他にも何山か積まれています。引き取りは週明けにさせてもらおうと、ついでにもう一点入札して会館を出たのです。帰りの山手線は特に遅延があったわけでもなさそうなのに、通勤ラッシュ並みの混雑でした。

それで夕方、エクストラネットで結果を調ると、落札はゼロ。負け惜しみでなく、ホッとしております。

昨日のブログに訂正少々:ボタンマナーでバズったのは、晩餐会ではないと家人から指摘を受けました。別の話を混同して聞いたようです。ちなみにタキシードは、座るときもボタンを外さないものとか。

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2024年04月12日

スーツは遠く

hnmzk恥ずかしながらこの年齢になるまで、「スーツのボタンは座るときには外すのがマナーだ」ということを存じませんでした。

家人が日ごろチェックしているSNS上で、わが国の総理大臣が国賓待遇で招かれた米国での晩餐会の席において、そのマナーを守っていなかったことに関してバズっていたと聞かされ、初めて知った次第です。

この総理については、国民としてもっと恥ずかしく思うことが多々ありますので、今さらボタンマナーなど何ほどのことでもないとは思うのですが。

それにしても石津謙介さんは、そんなこと教えてくれていたでしょうか。懐も乏しいのに着るものにこだわった若き日々が、店主にもありました。バイブルさながらに読んだ石津さんの本からは、下のボタンを留めるなと学んだくらいしか記憶にありません。

いずれにせよ遠い日のことです。大学を卒業したあと大阪に勤めた4年余りは、スーツとネクタイの毎日でしたが、もともと洋服の合う体型ではなく、吊るしで間に合わせるために、ずいぶん苦労したことを思い出します。

しかし何より辛かったのはネクタイ。勤めを辞めるに際して考えたのも、この先はネクタイの要らない仕事をしたいということでした。

その頃、ファッション関係の会社に勤めていた大学時代の友人が、仕事で出かけたヨーロッパでの見聞記を語ってくれるなかで「日本人の首はネクタイに向いてない」と断言したのに、大いに共鳴したものです。

懐具合は昔に変わらぬ店主ですが、服装への頓着はすっかり失くしてしまっております。

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2024年04月11日

研究室の今昔

新学期も始まって、退職研究室の整理もひと段落したともの思われます。

ただ実際には一部に、5月の連休辺りまで猶予を与えられている研究室もあるようで、小店にも現在、お引き取り時期を打ち合わせ中の先生がいらっしゃいます。

DSC_2405それでもラッシュは過ぎたのではないでしょうか。ラッシュなどという言葉を使ったのは、今年初めて大学研究室に買入のビラ撒きをしたという若手の同業が、先月ひと月、文字どおり三日にあげず引き取りに出かけたと聞いたからです。

どこの大学に、何枚ほど撒いたのか、などと野暮なことは訊いておりませんが、成果はあったものの、相当なハードワークを体験されたようです。

店主が開業したころには想像もできなかったことです。まず研究室から本が出るということ自体が、今ほどありませんでした。かりにあったとしても、図書館や後進などがあらかた抜き去ったあとのもの。

そしてたまに良い本があったと思うと蔵書印がしっかり押されていたりして、そうした本の処分は、今と違って学校側も、組合交換会も厳格でした。

研究室から本があふれ出すというようなことは、思いもよらないことでしたから、数少ないビラ撒き経験も、せいぜい新聞折り込みか、住宅地での投げ込み程度。一方、市場でも欲しい本は高くて買えず、年中、仕入れ不足に悩んでいたものです。

時移り、すっかり苔の生えた老店主のもとにさえ、ありがたいことに年度末になると、必ずいくつかの研究室からお声が掛かります。今の体力では、それらをお引き受けするのがようやくという状態。とてもビラ撒きまでする意欲がありません。

昔と今と、本屋にとって、どちらが望ましい状況なのでしょうか。

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2024年04月10日

謎の不掲載

古い山を崩していたら『京都青春街図』(プレイガイドジャーナル編・有文社刊)が現れました。奥付によると1974年発行の第2刷。

前にも一度取り上げたはずだと過去ブログを検索したところ、2015年2月1日に、書影とともに紹介しておりました。つまり8年ぶりの再会というわけです。

懐かしいと思いつつ、その時はじっくり目を通したわけでもなかったようで、今回あらためて頁を繰ってみて、気になる発見をいたしました。

「ちょっとだけちがってる喫茶店」という章に、覚えのある店が顔を並べるなか、店主が学生時代、ほとんど入り浸っていたといってよい店の名が、見つからないのです。ほかに取り上げられている店と比べても「ちがって」いなかったとは思えません。

duke掲載図でいうと「同志社学館」からの道が室町通に突き当たった場所(青く囲った位置)に、わが「Duke」はありました。もちろんこの本が出た時点にも営業しておりましたから、不掲載の理由が謎です。あるいはオーナーが断ったのでしょうか。

同大自動車部OBという、いまから思えばまだ30歳前後だった青年オーナーは、少し高級感のある店にしたかったようでしたが、学館裏という場所が災いして、金のない学生たちが長時間たむろする、想定外の展開となったと、これは何年か後、別の場所にパブレストランを開いたご当人の口から聞きました。

初めのうちはいまいましかったと、そんな昔語りが聞けるまでに親しくなっていたのです。

ただし本書の出た頃のマスターは、そのオーナーから店を譲り受けられた方。それにしても掲載を断るとも思えないのですが。

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12月31日から1月3日まで
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