2017年12月16日

人への興味

自分で店を持つとなったら、やはり何かしら得意分野を持つべきだろうと、漠然と考えたことがあります。まだ五十嵐さんで、店員をさせていただいている頃でした。

その時ふと思いついたのは、ジャンルにこだわらず、広く伝記とか自伝とかいった、一人の人間について書かれた本を集めてみたらどうか、というアイデアでした。

本の知識も乏しい、駆け出しの頃の思い付きに過ぎず、結局その後、まじめに取り組むこともありませんでしたが。

そんなことを思い出したのは、先日、不思議な本に注文が入ったからです。

そもそもネットに登録したからこそなのですが、登録しながら、果たしてこのような本を注文する人がいるだろうかと、かなり疑問を感じてもいたことを覚えています。

ご注文いただいたのは「別宮貞俊追悼集」という、A5版上製107頁の非売本。いわゆる「饅頭本」です。

RIMG2471巻末の年譜によれば、電気技術の研究者から住友電工へ移られ、社長にまで昇進。退任後は大学で教える一方、電気学会会長、日本山岳会会長、日本バラ会会長を歴任。

華やかなご経歴の割には、ごく地味な追悼集で、寄稿者の中で店主に聞き覚えのあるのは西堀栄三郎さんくらい。

しかしもうお一人、聞き知ったお名前があり、それが故人のご長男にあたる別宮貞雄さん。珍しい苗字なので、もしやと思って確かめてみたところ、やはり作曲家の別宮さんでした。

この本のどこにご関心を持たれたのか、ご注文者に伺ってみたい気がいたします。

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2017年12月15日

忘年会@神保町

昨日の「朝イチ」を録画しておいて、その夜、食事を終えてから、ゆっくり見ました。神保町の特集だという予告につられてです。

さすがだなと思ったのは、特集が始まってすぐ、「なんだ古本の話か」とチャンネルを変えないように、といったような注意喚起が、文字と音声で流されたことです。

RIMG2458高視聴率だと言われるこの番組で、朝っぱらから古本、古本屋をストレートに取り上げていたのでは、大勢の視聴者をつなぎ止めることは難しいと判断したのでしょう。

番組の内容にも、古本に興味のない人たちにも見てもらうための工夫が、よく考えられていました。古本の街の、本探し以外の楽しみを紹介するといった趣です。

確かに、古本の話で約30分間、何百万、何千万という人の興味をひきつけるのは難しいことでしょう。行列のできるカレー店や、アクセサリー、雑貨としての本という話題のほうが、よほど一般受けすることは確かです。

その意味で、あくまで神保町という町の特集であり、看板に偽りはなかったわけです。古本屋としては、特に感心する内容ではありませんでしたが、町おこしの観点からは慶賀すべき番組だったと云えます。

その神保町で、今日は恒例の旧理事忘年会。明治古典会の関係者が数名いるため、金曜日になることが多いのですが、昨年は手違いで会場手配が出来ず、今年になってから新年会を行っております。

その反省から、今回は早めに予約。いつもの「くろぶたきよし」で出席者10名、ゆっくり歓談し、あっという間に時が過ぎ、また来年の再会を約して(始終会っている仲間もいますが)散会いたしました。

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2017年12月14日

宅買い下見

「まず一度、見に来てもらえないか」というご要請を受けて、昨日、宅買いの下見に行ってまいりました。

大学で英文学を教えていらした先生の旧蔵書です。7年ほど前に、80歳の声を聞かず亡くなられたそうです。

拝見したのは書庫兼書斎として使われていたらしい、お二階の一室。正確には隣の小部屋を入れて二室。

もちろん普通からすれば大量の蔵書ですが、学者さんのそれとしては、決して驚くほどではありません。いつも利用する運送屋さんのトラックなら、何とか1台に載せられそうな量です。

ご依頼主がお知りになりたかったのは、その評価額という以前に、小店で取り扱えるかどうか、ということのようでした。そこで次のようにお話ししました。

まず小店で買い取るのではなく、お預かりして市場に出品することになるということ。そのためには、運送屋さんを頼む必要があること。その費用や諸経費は、市場の売り上げから差し引かせていただくこと。さらにそこから、一定の手数料をいただくこと。

RIMG2480「運送代を払ったら足が出るということはありませんか」というお尋ねを受けました。そこで「そういう心配があるときは、このようなご提案はしません」とお答えいたしました。

いくら何でも、運送代にもならないということはありません。保存の良さそうなハードカバー本が結構ありましたから。ただ殆どの本に書店カバーがかけられていてタイトルが見えないため、確かな値踏みはできませんでしたが。

お客様も、過大な期待はされていないようですから、その点では安心できますが、もし正式にご用命いただけたとすると、一番の問題は運び出しの動線です。

帰り道、考えているうちに、腰が痛くなってきました。

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2017年12月13日

送料で大慌て

店主もたまにやってしまうのですが、「日本の古本屋」からのご注文に対して、送料を入力しないまま、書籍代だけの確認メールを返信することがあります。

決済されたり、送金されたりする前に気がつけば、お詫びして送料を加算したうえで、メールを再送信いたします。

もし間に合わずに決済や送金をいただいた場合は、黙ってそのまま商品を発送することにしています。

しかし今日の場合、ちょっと事情が異なりました。家人が返信したうちの一件に、送り先が中国、書籍代金は2千円、それに対して決済金額も2千円のまま、というものを見つけたのです。

73203一瞬、事情がつかめず、送料を調べている間にも、ご決済されてしまうかもしれないと、慌ててキャンセル処理をいたしました。重量1.1kgの本ですので、送り方によっては書籍代金以上の費用が掛かってしまいますから。

その上で「決済金額に送料を加え忘れたため、一旦、キャンセルとさせていただきました。申し訳ありませんが、再度ご注文いただけないでしょうか」とメールいたしました。

そうしておいて、改めて送料を調べ、EMS、航空便、SAL便それぞれで、いくらいくらと追伸しました。

さて落ち着いて、家人が送ったメールを調べてみると、文面には、ちゃんとSAL便でいくらと説明されています。ただ管理画面に、送料を入力しなかっただけのようです。

そこまで分かっていれば、送料を入力して再送信するだけで済んだことでした。慌てふためいた結果、お客様にご面倒をかけてしまったわけです。反省。

ただひとつ問題が残っています。果たしてお客様は、日本語を理解されているでしょうか。

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2017年12月12日

過去からのお客様

一人は白人の男性、もう一人は日本人ともみられる東洋人の女性。お二人でかなり長い時間、店の中をご覧になっておられました。

時々何やら話されていますが、それが何語であるかも分からないほどの小声。

やがて3冊の本を携えて帳場に来られ、店主が伝票を抜き取っているうちに、男性が「計算尺はありますか?」とお尋ねになりました。

RIMG2465その話しぶりから、言い間違いをされたのかと感じ「計算機ですか?」と問い直すと、女性のほうが日本語がお上手らしく「いえ、計算機じゃなく、計算尺です」と引き取られました。

もちろん小店に計算尺があるはずもなく、お客様もダメもとでお尋ねになっただけのようです。

それでその話は終わりましたが、続いて「こちらは長いのですか?」と、女性からご質問を受けました。

「34年になります」とお答えすると「34年…」と頭で数えるようにされてから「ずっとここですか?」「そうです。ただ途中で少し移動しましたが」「駅のすぐ前のところですか?」

立て続けのご質問のワケが分かりました。女性は昔、留学生として駒場に居られ、そのころ時々、小店をご利用いただいていたようです。

懸命に記憶をたどりましたが、申し訳ないことに、店主の脳内に昔のお姿は像を結びませんでした。

女性は男性に「同じ人」と英語で伝え、店主には日本語で「今はシンガポールから旅行で日本に来ています」。

「どうぞ良い旅を」そう言ってお見送りしました。

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2017年12月11日

乙種防火管理者

普段あまり見かけない制服制帽姿の男性が店に入ってこられて「目黒消防署のものです」と名乗られました。

さて何のご用かと、続く言葉を待っておりますと「こちらには防火管理者の資格を持った方はおられますか」というお尋ね。

「おりません」とキッパリお答えいたしますと、「それではどなたかに講習を受けて、資格を取っていただかねばなりません」

RIMG2466まるで初耳でしたから、狐につままれたような気分で消防官のお話を伺いました。講習日はいついつ、それがだめなら他の方法はこれこれ、費用がいくら、必要書類が……

古書会館では事務局長が防災管理者になっていて、年に一度、講習に出かけていることは知っております。

しかしそれは、そうした大きな建物の、所有者もしくは責任者の役割だと思っておりました。ところが、小店の入っている建物の規模であると、テナントにもそれぞれ管理者が要るのだそうです(それが乙種)。

細かな要件は省くとして、このことは消防法第8条で定められており、その第3項には「消防長又は消防署長は、第1項の防火管理者が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により防火管理者を定めるべきことを命ずることができる」とあります。

ソフトな口調で丁寧にご説明いただいたのですが、詰まるところ、来年2月に開かれる同署の講習会に参加することを「命ぜられた」わけです。

大切なことだとは理解できますが、あまりにも突然で、しかも講習は朝の9時から夕方5時まで一日がかりだとか。気の重い話ではあります。

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2017年12月10日

封筒の書き方

昨日の落札品を引き取りに、五反田まで出かけました。日曜日の朝とあって交通量が少なく、実に気持ちよく車を走らせることができます。

南部会館に着くとすでに同業が2名、やはり昨日の引き取りでしょうか、作業をしていました。

もちろんどちらも顔見知り。特にその一人は、業界的に言えば多少の縁続きでもある先輩で、グループ旅行などで何度かご一緒しているような仲です。

先日、明治古典会に少しばかりまとまった出品をされたところで、そのことを話題にすると、「久しぶりにまともな口に当たったよ」と素直に喜んでおられました。

RIMG2459さて小店の落札品2点はすぐに見つかり、一度に抱えられるほどの量でしたので、そのまま車まで運び、お二方より先に、会館を後にしました。

で、昨日の不可解な1点ですが、間違いなく店主の入札したものでした。

落札表に「ワイン学入門」と書かれていたのが「?」となった理由ですが、全部で12冊が一束にされた中には、トドロフ『他者の記号学』、宮下志朗『神をも騙す』など、確かに欲しいと思った本が入っておりました。

封筒に書かれた書名あるいは品名が、そのまま落札表に転記されるのですから、本来それを見て出品物がすぐに思い出せるような表記であるほうが、何かと便利です。

何冊かまとめて出品する場合、封筒には入札者の興味を惹きそうな、それが分からなければ、とにかく目につく本の題名を書くように。というようなことを、昔教わったのを思い出しました。

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2017年12月09日

南部入札会

KIMG0296月に一度の南部地区入札会ですから、今日が今年の最終回ということになります。

朝のうちに出かけて、お昼前には店に戻るというのが、最近のパターン。よほど入札に手間取らない限り、帰りに東横のれん街で昼食を買い込む時間も十分あります。

今日もさして手間取りませんでした。いつものお目当てである店頭用文庫本も、量こそたくさん出ていたのですが、今一つ食指が動きません。

洋書は、特に気を引くものが見当たりませんでした。

それでも白っぽい学術書などがたくさん出ておりましたので、いつもより多いくらいの札を書いて入れてきたのですが、夜になってエクストラネットで確認してみると、まるで落ちておりません。

まあ、その手の本に強い同業の顔を、会場で何人も見かけたときから、無理だろうなとは思っておりましたが。

それでも、まったくの空振りではなく、2点ばかり落札しているようです。しかし、そのうちの1点は確かに荷姿が思い浮かび、間違いなく入札したものですが、もう1点については品名を見た限りでは、一体なんだか分かりません。

明日、引き取りに行けば分かることですが、果たして何が落札出来たのでしょう。

確かめて入札しているはずなので、大丈夫だとは思いますが、別の本についていた封筒に、札を入れ間違ったのでなければよいがと、多少危ぶんでおります。

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2017年12月08日

ある雑誌企画

今朝、市場に着くと、明治古典会の一日を締めくくるべき最終陳列台のうえには、挿絵画稿やら、著名写真家のオリジナルプリントなどが載せられていて、本らしいものの姿は見られませんでした。

画稿や写真も、日頃から明古で取引されている商品であることは間違いないのですが、古本屋の市場らしい出品物かと問われると、胸を張ってそうだとは言い難いところがあります。

普段なら、「そんな日もある」で済まされることもあるでしょう。しかし、実は今日、ある雑誌の取材が入ることになっておりました。当然、市場の様子をカメラに収められるはず。

そこで、多少なりとも本筋の商品を最終台に並べたいものと、運営にあたる事業部では気をもんでおりました。

その願いが通じて、やがて漱石、谷崎、川端の書簡を始めとする本屋らしい商品の出品があり、何とか体裁を整えることができたのですが、それが雑誌側にどう受け止められたかは、はなはだ疑問です。

この取材は、神保町特集の一環としてだとか。どんな切り口で、どんな取り上げられ方になるのかは全く分かりませんが、店主にすれば「ブルータス(誌名ではありません)お前もか」といったところ。

RIMG2449「古書」と「神保町」が結び付けて語られるたびに、それ以外の地で商売を営む古本屋である店主は、いつも複雑な思いに駆られます。

どんな形にせよ、業界に脚光が当てられるのは喜ばしいことだと思う一方で、その光の当たり所が、いつもあまりに偏っているのではないだろうかと。

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2017年12月07日

老父の読書

RIMG2454あっという間に今年も、残りの日数を数える時期になりました。

実は先日、すでに正月の新幹線を予約しております。同じことを何十年と繰り返していると、さすがに要領も良くなって、何よりもまず、正月明けのUターン列車を押さえることが肝であると、了解しているのです。

つまり予約したのは1月4日の朝の新幹線。名古屋から新横浜まで。これさえ取れていれば、あとはそれほど慌てることもありません。

このところ店主の正月休みは、元旦から3日までと決まっています。大晦日、店を閉めてから、その足で名古屋に向かいます。そして4日の朝、家に戻り、荷物を置いてすぐに店に来るというパターン。

月並みですが、こう書いていると、去年の暮が、まるで昨日のよう。

店の方は、家人が一足早く3日から開けるというのが、今年までのパターンでした。しかし来年は、店も3日までお休みさせていただく予定です。

正月三が日お休み、というと、やっと人並みな感じがいたしますが、本当のところはこの3日間、家人は家の片付けなどで、普段より忙しいらしいのです。

家人が忙しい3日間、店主はのんびり休暇というのも後ろめたいところですが、来年8度目の年男となる老父と、あと何度一緒に正月を過ごせるやら分かりません。それに免じてお休みをいただきます。

といっても、話らしい話もせず酒食を共にするだけのことですが。

その父が珍しく、読みたい本があると言ってきました。佐藤愛子『血脈』がそれ。さっそく今日、「日本の古本屋」から同業に注文しました。

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