2017年05月12日

高価なチラシ

一週お休みがあって、今日が5月最初の明治古典会。

汗ばむような日差しの中、古書会館に着き、4階の会場に入ると、新刊かと見紛うばかりの本が大量に出品されておりました。

「幻想文学・美術関係カーゴ8台!」とメールで知らされていた口です。幻想文学というのとは、少し違うような気もしましたが、いわゆる売れ筋ぞろいではあります。

RIMG1929店主も何点か入札を試みましたが、とても歯が立ちません。ようやくのことにマリオ・プラーツの翻訳書4冊を落札できましたが、売値を計算すると、全部売れてようやく多少の利益が出るくらい。

つまりほかの商品も、それくらいまで入れなければ落ちないということで、荷主さんもさぞや満足される結果となったことでしょう。

市場に出さず自分で売れば、一点ごとの利益は確かにもっと大きいかもしれません。しかしそれに要する経費と時間を考えれば、一日で利益を確定させてしまうほうが、はるかに効率が良い。

それが市場の利点です。今回のような量なら、なおさらのこと。

今日はその白っぽい口に目を奪われて、ほかのもっと明古らしい黒っぽい本に、なかなか目が向きませんでした。

その中で唯一気になったのは、最終台にあったバウハウス関連資料。Max Billのハガキと、dada dessau 1926 などの文字がデザインされた墨刷りのチラシ各1枚。

店主の想像をはるかに超えた価格で落札されましたが、後で聞くと、これもカーゴ8台の中から見つかったものだったとか。どんな方の蔵書だったのでしょうか。

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2017年05月11日

刺激を受ける

今週に入って月曜火曜と、夜、店を閉めて帰る時、菱田屋さんの前に誰も人が並んでいませんでした。しかも店内を覗くと、あろうことか空席が。

昨夜はようやく外に一人、お客様が待っておられました。

何が言いたいのかと申しますと、駒場隋一の繁盛食堂である菱田屋さんは、普段なら車の通行の妨げになるくらい「行列のできる店」なのです。

そのお店すらそんな状態であるというほど、連休が明けてこの方、駒場に人が、とりわけ学生さんの気配がありません。小店あたりに閑古鳥が鳴いているのも、当然のことかもしれません。

もちろん何の慰めにもなりませんが。

RIMG1928そんな今日、ひょっこりと珍しい来客がありました。Tシャツ半パンのラフないでたち。店主の息子ほどの若い同業が、「近くに来たので」と寄ってくれたのです。

もともと目黒区の住人で、現在は中目黒に住まいがあるそうですが、駒場に来たのは初めてのようなものとか。近代文学館や駒場キャンパスを自転車で回ってきた様子。

「軽井沢みたい」と感心していましたが、静かな環境ということでは、確かに負けていません。

あいにく店主一人でしたので、店先で立ち話しかできませんでしたが、紙ものを中心に7万点ほどをネットにあげていると聞き、そのこともなげな話しぶりに、とても刺激を受けました。

店が売れないなどと嘆いているだけでは仕方がないと。

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2017年05月10日

些末なこと

我ながら、どうしてこんな些末なところばかりに目が行くのか、情けないような気がします。

『日本文壇史』をカタツムリのごとく読み進めてきて、第7巻も終盤に近づきました。すでに20世紀に入り、時代は日露戦争前夜、次第にキナ臭くなっていくところ。

夏目金之助が日本に帰り、イギリスにいる抱月と嘲風、晩翠の三人の間に、こういう心理劇のような事件の起こっていた明治三十六年の一月に、数え年二十九歳の、野口米次郎という日本では全く無名の一青年が、突然ロンドンに現れた天才的詩人としてイギリスの文学者たちの間で評判になっていた。

と、ここから数頁にわたって野口についての叙述が続くのですが、そのなかに「野口米次郎は愛知県海部郡津島町の生まれで…」とあり、その「海部」に「かいふ」とルビがふられているのです。

これは「あま」でなければならないはず。しかし自信がなくなって、ついネットで調べてしまいました。

実際は調べるまでもなく、「あまぐん」とキーボードを打つと、そのまま「海部郡」と変換されます。ついでに「かいふぐん」が徳島県に存在することも知りました。

RIMG1917このルビが、誰によってつけられたのか、また現在の版がどうなっているのかは存じません。店主が読んでいるのは1995年刊の文庫版第一刷。まさに「校正おそるべし」です。

ちなみに店主がこの地名に初めて接したのは小学校3年生の時。臨時担任として来られた先生の、自己紹介を通じてでした。他はほとんど忘れてしまったのに、海部郡大治村という、そのご住所だけはずっと覚えております。

年配の、体格の良い女の先生で、給食時間に居眠りをされていたことも。

些末に目が向くのは、子供の時からの性分のようです。

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2017年05月09日

管理がルーズ

1年ほど前に市場で落札した『ピランデッロ戯曲集1・2』(新水社、2000年)。早速データ登録し、バックヤードの棚に納めました。もちろん「日本の古本屋」にも、すぐさまアップ。

今朝、注文メールが入っておりました。喜び勇んで記録されている棚へ向かったところ、見当たりません。

それなりの厚みのある本が2冊。あれば目に入らないはずはありません、慌てて近くの棚も探し回りました。しかし結局見つからず。

記録が残っていない以上、考えられるケースはただ一つ。直接ご来店いただいてのお買い上げ。そして売切れ処理のし忘れ。

RIMG1926実際にはもう少し複雑なケースもあるのですが、今回はまずそれに違いない。ただ情けないことに、まるで記憶にないのです。お客様には、ひたすらお詫びするしかありませんでした。

それでもこれはまだ、想像のつく範囲。現在、もっと不可解な失せ物を探しております。Grammaire homerique, 1-2. Klincksieck,1963,1973.という2冊。

これも1年近く前に市場で手に入れたもの。ただしこちらは、自店HPカタログにだけ上げてありました。

それがお客様の目に留まり、お問い合わせを受けたのですが、保管場所が未記入。売れてしまったはずはないのに、ありそうな場所をくまなく探しても出てきません。

幸い「気長に待つ」と言っていただきましたので、もっか暇を見つけては、捜索を続けている状況です。

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2017年05月08日

注文代行

RIMG1911連休が明けて町がにぎわいを取り戻した――と申し上げたいところですが、昨日までより、さらにひっそりと静かな駒場の町です。

その静かな午後、店の電話が着信を告げました。受話器を取ると「もしもし」と大きな音量。

2週間ほど前、ほとんど10年ぶりくらいにお電話をいただき、本を一冊探してほしいとのご依頼があったNさんです。

一時期、立てつづけに探求書のご用命を受け、いくらかは市場やネットで探してお納めしたことがあります。その後、長らく音信が途切れておりましたが、ふたたび小店のことを思い出していただいたようでした。

今回ご依頼を受けたのは30年ほど前に出版され、当時は良く売れた本。簡単に見つかるかと思いきや、案に相違してネットでもさほど数が出ていません。それでも「日本の古本屋」を初めとして10点ばかり見つかりました。

しかし困ったのは、それらの価格のばらつきが大きいことです。安いものは千円以下。高いものは1万円以上。状態表記を比較検討しても、お勧めできる本が決まりません。

そこへ今日のお電話でした。それによると、痺れを切らして知り合いである著者に連絡を入れたらしい。するとAmazonで探したらどうかとの返答。そこで娘さんに調べてもらったといいます。

当然店主と同じ情報を得たわけですが、ご自身で注文というお考えはなかったらしく、あらためて「手に入れて欲しい」とお電話をくださったのでした。

「それで、どの程度のものをご希望ですか」とお尋ねしたところ、お答えは「中間くらいのもの」。

早速「日本の古本屋」から、知り合いの書店に注文を入れました。

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2017年05月07日

一攫千金

我が家のTV受像機は1台、それも26インチほどの小さなものが、店主の寝室にあるだけです。ほかの家族は殆んどTVを見ませんから、それでべつだん不満も出ません。

ただし家人は、好みのヴィデオを借りてきては、店主のいない時を見計らって観ております。

先日の夜は珍しくNHKBSの猫番組に見入っておりましたが、なにかを観終えた後だったのでしょう。店主が現れたのをしおに退出しました。

部屋を明け渡された店主は、そのまま猫を見ている気にもなれずチャンネルを変えてみると、薄暗い洞穴を進む男性が画面に現れました。

ナレーションによれば、カリフォルニアの廃坑となった古い炭鉱跡で、坑夫たちが残した衣類を探しているらしい。

ものの2分と経たないうち、何かを見つけた男性が大興奮して叫び始めました。Shit! Holy Shit! Unbelievable! 店主でも分かるような単語を、何度も何度も繰り返します。

見つかったのは1870年代のものという、デニム地のジャケット。1万ドルの値はつくお宝だそうです。くだんの男性、感動さめやらず「これがあるからやめられない」と、これはテロップ。

廃坑などで、売り物になるような状態の衣服が見つかるというのは驚きでした。しかしさらに興味深かったのはヴィンテージジーンズの取引です。
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「格別状態の良い出物」を300万円で日本の業者が購入。店に出すとすぐに売れたという話。古書の世界と引き比べ、あれこれと考え込まされました。

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2017年05月06日

束の間の季節

RIMG1918今日はとりわけ静かな一日でした。昨日のことを思うとなおさらにです。

昨日の夕方、といっても日も高い午後5時前。制服姿の一団が、歓声を上げて店頭のジャンクおもちゃのワゴンの前で立ち止まりました。

どうやら高校生らしい男女それぞれ4名ずつ。大声を競い合うようにして喋り始めます。そのけたたましいこと。

5分もすると話題はいつしかおもちゃから離れ、クラスの誰それの噂話。親の職業がどうだとか、住所がどこそこの高級住宅街だとか。

やがて誰かが「キノコを採ると共謀罪」というと、一人が「ニュース見ないから知らない」と応じ、別の一人が「キノコ嫌い」と言い、また別の一人が「えーっ、キノコおいしいよ」。

聞き耳を立てていたわけではありません。スズメなどが木の枝で一斉に囀るのを聞いたことがおありでしょうか。まさにあれ。そのなかから時おり、意味のある言葉が聞こえてくるといった具合。

甲高い笑い声も混じります。よほど止めてもらおうかと、何度も思いました。仮にも本屋ですから、お客様には静かに本をご覧いただきたい。しかし店内にはまるでお客様がおられないし、あまりに楽しそうでもあります。

結局、店も閉め終え、帰るばかりとなった午後6時半、宵闇の増してきた表で、ついには座り込んで話し始めたのを見るに及び、ようやく退去を促したのでした。

おとなしく引き上げた彼らを見て、途中で追い返さなくてよかったと思いました。青春は束の間です。店頭で楽しく話せるのも束の間。何しろ直に蚊の季節です。

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2017年05月05日

花相似たり

お客様からの段ボールがさらに4箱届き、いよいよ片付け作業との追っかけっこになってきました。

早速開梱して中の本を出していくと、久々に『大森荘蔵著作集』が出現。端本で3冊だけでしたが。

この本については、何年か前にブログで取り上げたことがあります。当時、あまりの高値が付いていたのに驚いて。

いま改めて調べてみると、ずっと落ち着いた価格になっています。あれは何時のことで、いつの間に値下がりしたのだろうと、過去のブログを検索してみました。

すると2013年5月3日、4年前のちょうどこの時期でした。今回送られてきたのは第1、2、7巻。ブログによれば、第7巻に付けられていた価格は29万8千円。

もしその当時、これを手に入れていたら、店主は果たして幾らの売り値をつけたでしょう。それ以前に、お客様に幾らの買い入れ価格をご提示できたでしょうか。

現在は、ほぼ定価で売られているようです。おかげで安心して値踏みすることが出来ました。

ちなみに、2015年12月2日のブログにおいて、すでにこの全集が10万円以下の価格で売られていることをご報告しております。こちらのほうはすっかり忘れておりました。

RIMG1915ところで4年前のブログに載せた写真は、昨日も載せたブルーベリーの花。今日のクレマチスも、おそらくその前後に登場しているはず。

年年歳歳花相似たり。歳歳年年人同じからず。本の価格もまた、同じからずです。

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2017年05月04日

整理に追われる

土曜日の鎌倉は空いていたらしい。火曜日の市場の合間、同業の先輩とお茶をしていて聞いた話。鎌倉文学館から葉山の日影茶屋までの、車の移動が驚くほど楽だったとか。

昨日の鎌倉は混雑していたらしい。江ノ電に行列、乗車に何十分待ちとかだと、同地の同業のツイッター情報。

昨日の渋谷はあまり人出がなかったらしい。夕方、東横百貨店の伊東屋を通り抜けた家人の感想。渋谷の大型書店で働く娘に尋ねても「普通だった」という答え。

空いているとか混んでいるとか言っても、ピンポイントの情報では全体の様子は分かりません。一体この連休、世間の方々はどうお過ごしなのでしょう。

RIMG1901今朝、店に来る前に、地元のパン屋さんに寄ると、お目当てのパンはすでに売り切れ。いつも混雑している人気店ですが、正月とか連休には休まないので、普段以上に売れるようです。

その代り、時期をずらしてたっぷり休みを取るのが、同じく連休関係なしの、小店などとは違うところ。

小店はと言えば、昨日今日どころか、今週に入って連日変わらず静かな駒場の町で、とりわけひっそりと営業中。

ただしお客様からの段ボール4箱、別のお客様のお持ち込み数十冊と、店向きの学術書が続々入荷。暇を持て余すどころか、整理に追いかけられております。

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2017年05月03日

連休を乗り切る

RIMG1907今年の連休は、曜日の並びが良いのか悪いのか、古書会館の市場がお休みになるのは今日からの三日間だけです。

店主の関係する市場としては、金曜日の明治古典会が、次の一回休会となるだけ。洋書会の方は一度の休みもなしで、5月は大市を含め5回開催。

昨日の洋書会では、フランス書と美術書と、それなりの量が出ていたのですが、問題は連休に入るためルート便が動かないことでした。

普通なら昨日までの落札品は、今日運んでもらえるのですが、それが出来ないとなるとロッカーにしまっておける量しか入札できません。

そのロッカー、たださえ満杯なのに、月曜日に整理のつもりで出品した大判4本口が、まさかのボー(入札なし)。廃棄処分にするのも忍びなく、一旦ロッカーに押し込むことにしました。

そのためいよいよ隙間もなくなり、むやみと入札することができません。よほど欲しいものがあれば、それでもなんとかするつもりでしたが、幸か不幸か、どうしても入札したいというものは見つかりませんでした。

というわけで昨日は落札なし。それで良かったかもしれません。毎年連休シーズンは、店内の整理どころか、お客様からの買取が多くなるため、かえって乱雑が増します。

今年はせめて、現状は維持して乗り切りたいものです。

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