2017年04月19日

『古書の道』

sara思いがけなく同業の大先輩、沙羅書房さんから、記念誌をご恵贈いただきました。創業五十年の節目として出版されたものだそうです。

A5判上製布装カバー付251頁の立派な造本。ご本人のお仕事ぶりそのままに、本格正統の体裁となっています。

おもな内容は「沙羅書房五十年の歩み」と「沙羅書房古書目録掲載善本集」。まさに読んで字のごとく、沙羅書房半世紀の記録です。

そこから明らかになるのは、ご自身の絶大な努力と、いくつかの幸運なめぐりあわせ。

店主など伝説としてしか知らない、オイルショック前後の本が飛ぶように売れた話などを読むと、つい遅れてきた身の不運を嘆きたくなります。

しかし同時代の古本屋さんが、全て沙羅さんのように成功されたわけではないことを思えば、やはり幸運をつかむのも努力の結果。当たり前のことですが。

店主にとっては、立派な目録もさることながら、話に聞いていた様々な業界エピソードを、あらためて文字で確かめられたのが喜びでした。

それにしても、日ごろはご挨拶するだけで、お話しする機会もあまりない店主あたりにまで、なぜお送りくださったのでしょう。

以前一度ビニール傘をお貸しした、そのお礼だとすれば果報に過ぎます。あるいは、いつまでもうだつの上がらぬ後輩に対する、励ましなのでしょうか。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2017年04月18日

仕分け直し

出がけに雨は上がっていましたが、井の頭線も、半蔵門線も「強風の影響」で遅延、ダイヤ乱れ。

渋谷から神保町までがいつもの倍以上、30分近くかかりました。おかげで到着したのは10時5分過ぎ。ふつうなら10分以上前には着いていたはずです。

しかし今日も出品量は多くなく、しかも仕分けの口がありませんでしたので、ほかの当番会員ともども、午前中を手持無沙汰に過ごすことになりました。

そこで出品物をじっくり見ていくと、大きな山の中に、何とももったいない本がチラホラ見えます。荷主さんに連絡して、何点か分けさせてもらうことにしました。

チラシ話は変わりますが、今期の組合広報部は、前期までポスターとして各店に送っていた即売展情報を、チラシに変えました。店先に置いてお客様に持ち帰っていただこうという戦略です。

ただし各店に送ってくるのは2部ずつ。残部は古書会館に置かれています。ケチっているのではなく、無理強いを避けているのでしょう。そのように「忖度」し、今日一束、それを引き取ってまいりました。

その折り畳みチラシの一面に「私と市場」というエッセイ欄があり、若手の二人が寄稿。一人が、大山から宝物を見つけ出すような「ぼろ儲け」をしたいと書いています。

もちろん古本屋なら誰でも夢見ることですが、出品者(こちらの側となる可能性だって誰にもあります)とすれば嬉しい話ではありません。

そしてそれは、市会としても名誉な話ではない。宝物として「ぼろ儲け」されるならまだしも、気づかずに捨て去られることだってありえます。

そんなわけで、お節介を承知で、仕分け直しを申し入れたりするのです。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2017年04月17日

痩せても枯れても

最近では平日より土日の方が、賑わうようになってきました。小店のことというよりは、駒場東大前駅周辺について申しております。

RIMG1833昨日は汗ばむほどの陽気に恵まれ、花見がてらの散策に来られた方も多かったようです。確かに界隈には駒場公園、駒場野公園をはじめ、花見の楽しめる場所が沢山あります。

案外知られざる桜の名所が、東大駒場キャンパス。もとより土日なら構内は静かで、山桜や八重桜、他のさまざまな花も、ゆっくり愛でることが出来るはずです。

そんなお一人だったのでしょうか。店主と同年配の男性。店の前に立ち止まって、おそらくお連れ合いだろうと思われる女性に向かって一言。

痩せても枯れても東大前の本屋さんだね

ドアは開け放たれていて、良く通る声が、はっきりと店主の耳に届きました。一瞬、あっけにとられましたが、やがて可笑しさがこみあげてきました。

どうやら、お褒めに預かったらしいのです。むろん悪意はどこにも感じられませんでしたが、果たして素直に喜んでいいものやら。

しばらくするとその方、表の本を2冊手にして、帳場に来られました。お勘定を済まされると、再びよく通る声で「東大の先生が来られるのですか?すごいですね」。

そうおっしゃってからすぐ「すごくはないか」と、あわててご自身の言葉を打ち消し、お帰りになりました。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2017年04月16日

せり出しのわけ

古本屋の棚は、少し本がせり出すようにして背が揃えてあることを、ご存じでしょうか。

いまどきは、そうでない店も多くなったかもしれませんが、少なくとも店主が修業したころは、店員がまず初めに教わるのが、ハタキかけと、この背を揃える仕事でした。

毎朝のルーティンとして、体にしみこませることが大切だと、オヤジさんから教わったものです。

開業当初こそ真面目に教えを守っておりましたが、いつのまにかルーズになり、時々手を抜くようになって、やがては時々それを行うという程度になってしまいました。

そんな有り様で言えた義理ではありませんが、これはどちらも、理にかなった作業なのです。

埃を払うことの意味はどなたにもお分かりでしょうが、本を少し引き出して揃えることの意味は、案外気が付かれないかもしれません。

棚から本を抜き出す時、多くの方は無意識に、背の上部に指をかけて手前に引っ張ります。カバーのある本など、これで破れたりすること場合もありますが、この少しのせり出しが、多少ともそれを防ぐことになるのです。

ところが小店のお客様の中に、ご丁寧にこれを押し込めて行かれる方がRIMG1869おられるようです。とくに文庫・新書の棚を広範に。

きれいに揃えていただいているおつもりかもしれませんが、上記のような理由で、ちょっと小店としては困っているということを、ここで申し上げておく次第です。

konoinfo at 18:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2017年04月15日

在庫切れのお知らせ

一昨日、本ブログでご紹介いたしましたBlood and Thunderは、早速にご注文をいただき、売切れとなりましたのでお知らせ申し上げます。

ことごとしく、このように申し上げますのは、他にもすでにお二方からお問合せをいただき、大変申し訳ない結果となってしまったからです。

この先、さらに同書の記事が目に留まり、ご興味を持たれる方がおられないとも限りません。そのためにも、この場で結末をお伝えしておこうと考えた次第です。

ご注文いただいたのは関西の大学の先生。良く存じ上げている方です。たまたま検索されたにしては間が良すぎますから、小店のブログをご覧いただいたのでしょう。速攻で受注メールが入りました。

RIMG1834同じくその夜、ふだんから良く週末にご来店いただく、常連のお客様から、興味があるので取り置いてほしいというメール。

この時点では実際のところ、まだどちらにお譲りすることも可能でした。しかし、やはり「ご注文」の順序に従うべきだと考えたのです。

記録の上ではもう一冊、在庫があることになっていますので、見つかり次第、お知らせするとお約束して、お許し願いました。

そして今日、もうお一方、やはり週末にお越しになることが多い常連様からも、この本についてお尋ねがありました。事情をお話しすると、あっさりご了解くださいましたが、どこかにもう一冊隠れていないものでしょうか。

konoinfo at 18:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2017年04月14日

一目見たかった

今日の明治古典会で目立ったのは、本よりもいわゆる「紙もの」と呼ばれるような資料類。

古書業者が取り扱う商品が、いかに多様なものかをご理解いただくために、組合員向けに送られてくる同報メールの内容を、少しばかりご紹介してみようと思います。

RIMG1814◆郵便資料・九州郷土資料の一口◆詩集・歌集カーゴ1台◆林与一旧蔵台本・雑誌カーゴ1台◆大坂冬陣両軍配置之図・日本海陸全図・島原御城下絵図・大阪実測図他地図の一口

さらに◆上総国市原郡青柳村文書◆伊達弥助関係文書 江戸〜明治期◆江戸切絵図 近吾堂・柔術極秘雛形解体巻◆原敬書簡幅◆雨瀟瀟 永井荷風 限300◆有島武郎葉書 滝田樗陰宛◆棟方志功画幅 彩色 一幅

もう少しあげましょう◆グラフィックアート・ギャラリーポスター他 亀倉雄策他◆立川談志葉書、署名本 一括◆フランス座ストリップ他プログラム・チラシ 53点◆中国タバコポスター他 18枚

もちろんこれ以外に多くの本や、紙ものが出品されていましたが、こうして案内に載せるものは、多少とも珍しいものであったり、人気のあるものであったりするわけです。

もしこのようなものをお持ちで、処分を考えておられるなら、ぜひとも古本屋に声をかけてみてください。思わぬお宝であったりするかもしれません。

ところで本日一番の高額品は、このお知らせには載らなかった、古い裂地。それがじつは正倉院裂であったとか。どこに目をつけているのか、店主はそのようなものが出品されていたことさえ知りませんでした。一目見ておけばよかったと悔やんでも後の祭りです。

konoinfo at 20:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2017年04月13日

今昔の感

starrettVincent Starrettとは何者か。さっそくネットで調べてみました。こういう時の便利さは、昔とは比べ物になりません。すぐ答えが見つかりました。

アメリカの探偵小説作家。生没年(1986-1974)から主な作品、受賞歴まで分かります。Wikipediaには、かなりマニアックなBiographyが書き込まれていました。

店主がこの名前を検索したのは、画像にある通り、本の見返しに、その名が記された蔵書票が貼られていたからです。ちなみにわが国ではThe private life of Sherlock Holmes(1971)が「シャーロック・ホームズの私生活」として出版(文藝春秋1987、河出文庫1992)されている作家です。

73293そのStarrett氏旧蔵本であるBlood and Thunderは、今でこそBookFinderなどで調べると、いくらでも安く手に入れることができそうですが、かつてはそうではありませんでした。

小店のデータベースには、1994年に1冊、1996年に1冊が登録されています。信頼できる日付が残っている記録としては、最古の部類。

最初の1冊はイギリスの本屋に、ほかの演劇書と一緒に注文して取り寄せたものです。仕入れ価格も記されています。当時つけた価格は1万2千円。

そして備考欄には「目録発行前に店頭で」と、売れた時の状況も記録されております。ただしこれが何時のことかは、正確にはわかりません。

いずれにせよお客様が目ざとく見つけてお買いになるような、手に入れにくい本だったのです。

今回、つけた値段は2千円。本の状態にやや難があるとはいえ、面白い蔵書票までついてこの価格。ちなみにあるはずのもう1冊は、現在どこかに埋もれて所在不明です。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2017年04月12日

見識を欠く見出し

RIMG1827「日本の古本屋」事業部の仲間が、こんな記事を見つけたと報せてくれました。

いわく「ブックオフ、深刻な赤字転落。日本の「古本屋」はもうダメなのか?

あるウェブマガジンのビジネスニュースとして取り上げられたようですが、人騒がせなタイトルです。

あまりまともに取り合う気もしないのですが、どんなことが書かれているのか、一応確かめてみました。

電子書籍の普及やオークションサイトの利用者が増加したことにともない、中古本の買い取り業者などは逆風にさらされています。そんななか、上場以来初の赤字を計上した「ブックオフ」が立て直しを図るために動き出しました。

これがリード。日付を見ると2016年9月。その3月期に上場以来、初めての赤字を計上した同社の、現状分析と今後の展開についてがその内容です。

要するに「生命線」である「買取」の減少でこれまでのような「本のBOOKOFF」が成り立たなくなった。そこで「何でもリユースのBOOKOFF」を目指すらしいが、それには新たな戦略が必要だろう、ということでした。

この記事の内容については、あえて論評いたしません。ただ、その見出しがあまりに非見識。別の仲間が早速「『日本の古本屋』はダメじゃないですから!」とツイートしてくれました。

括弧の位置がどこに来るにせよ、日本の古本屋は、ブックオフとはまったく別物です。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2017年04月11日

多少の獲物

今日の洋書会は久しぶりに大量の出品。すべての平台が出品物で埋まりました。

しかもそのほとんどが要仕分け。会に仕分けを依頼された口です。正午過ぎまで、目一杯作業をいたしました。

とくに店主も担当した関西からの2tトラック1台は、例によって何件かの仕入れを、まとめて出品されたもの。ほとんどは学術書ですがそのジャンルが多様ですから、まずそれらを分けるのに一仕事。

今回目立ったのはアラビア語を含むイスラム関係の口、認知言語学関係の口などでした。

大まかにジャンル分けしてから、目ぼしい本を抜き出していきます。1冊、1組でも充分札が入るものもあれば、ある程度まとめなければ入らないものもある。さらには、数量で勝負するしかないものもあります。

それらを、できるだけ札が競合するようにまとめ、封筒を付けていくのです。

自分で仕分けしたものは、出来る限り札を入れるようにしています。責任上ということもありますが、そもそも自分でも欲しいものである場合が多いからです。

今日もそうして何点かに札を入れました。もちろん他の会員が仕分けしたものにも。

欲しかった何点かは落札できませんでした。逃したとたんに、大きな魚だったような気がしてくるのが不思議です。
RIMG1820
しかし自分で仕分けたうちの、3点は手に入れることが出来ました。明日、ルート便で荷が届いたら、じっくり戦果を確かめてみようと思います。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2017年04月10日

『はるよこい』

小店、絵本にも力を入れております。

といってもヴィンテージものなどではなく、普通にお子さんに読ませるための絵本。あえていえば、お母さんが読み聞かせたいと思うような絵本。

もっぱら家人が仕入れ、値付けを担当しておりますが、最近は良い仕入れの口が少なく、ストックをひっぱり出して棚に入れ、あるいはネットに上げたりしているようです。

ネットに上げるのは、品切れなどにより、定価あるいはそれ以上で販売できるものに絞っていますが、今日、お電話でご注文を受けたのもそんな一冊でした。

「スマホで見たのですが、操作が苦手なので」と、まだ若い女性の声。在庫を確認してから掛け直し、送料と送金口座をお知らせして、送り先住所をうかがいました。

お互いの復唱、確認が終わったあと、「少し話を聞いていただいていいですか」とお客様。

29547実は娘が2歳になった頃、この絵本を図書館で借りて読み聞かせると、すっかり気に入ってしまい、返却すると泣いてせがみます。結局長期間、借り出しました。他の本も与えたりして4歳になった今でも『やっぱりおひなさまがいいね』と言います。それで福音館に問い合わせたら、品切れで在庫がないというお返事でした。どうしたものかと思っていたら、知り合いがネットで調べてみたらと教えてくれて、スマホからこちらを見つけたのです。こんなうれしいことはありません

同じ本を、しばらく前に売った記憶があったので、在庫の消し忘れではないかと危ぶんだのですが、別本が残っていて、店主としてもホッといたしました。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
Profile