2017年11月11日

不審物

一昨夜のことです。そろそろ店を閉めようかと表に出ると、大きな旅行カバンが、ジャンクおもちゃの棚の横に立ててありました。

店番のχ君に「これどうしたの?」と尋ねると、自分も今まで気づかなかったと言います。

「そういえば、少し前、2度ほど車が止まって、中国人らしい人たちが乗り降りしてました。その時でしょうか」

確かに中国語で書かれたタグもついています。しかし、ちょっと置いてあるのか、置き忘れていったのか、見当がつきません。

ひとまず店を閉め終えてから、おそるおそるカバンに手を触れてみると軽い。どうやら中身は空のようです。そこでようやく、放置の可能性に思い至りました。

しかし万一にも忘れ物であれば、取りに戻ってくるかもしれません。そこで一晩、店の表にそのまま置いておくことにしました。雨の予報もありませんでしたので。

KIMG0272そして翌朝、店に来てみると案の定、カバンはそのまま残っています。ともかく店を開け、昨日置かれていたのと同じような状態にいたしました。それがこの写真。

さてどうするか。家人と相談した挙句の結論は、ひとまず警察に電話してみようということ。店主が市場に出かけた後、家人が連絡してくれました。

するとすぐに駐在さんが自転車で来られたそうです。一目見て、これは無理だと判断したのかパトカーを呼び、それに積んで行ったという顛末を、後から聞きました。

隣のマンションの民泊利用者が、新しいカバンを買ってそれに詰め替え、古いカバンを置いて行った。というのが一番ありそうな線ですが、一応不審物ですから慎重に取り扱うということなのでしょう。

konoinfo at 18:30|PermalinkComments(0)

2017年11月10日

一番売れた話

先週が文化の日で明治古典会は休会でしたから、2週間ぶりの市会。1週空くだけで、久々の感があります。来週がまた、東京古典会大市会のために休会となり、11月は今日と再来週の2回だけしか開かれません。

RIMG2390そのためもあって今日、早くも12月22日のクリスマス特選市にむけて、同業にお送りする宣伝ハガキが出来上がってきました。

すでに年末モードです。担当幹事は、その特選市の打ち上げ会場と、来年の新年会会場の予約まで、手回し良く手配しておりました。

幹事会を兼ねた昼食時、先日N書店であった韓国客の爆買いが話題になりました。大判画集類中心に約300冊、金額にしてン百万円。送料だけで60万円余りになったそうです。聞くところでは、新設の美術館の資料集めだとか。

一同羨ましがっておりますと、同席した先輩会員が「過去、一番売れた話」というのをしてくれました。

売れたお店は一誠堂書店。その昔、京城帝国大学が図書館を開設するにあたり、店に有る本を丸ごと全部、買い上げることになったのだそうです。

売れるのは良いとして、後の補充がつかなければ、その間はまともに店の営業ができません。一誠堂さんの凄いところは、納めたあと一週間ほど店を閉めただけで、棚を埋めて営業を再開したことだといいます。

ところで、もし小店の本が全部売れたら、また棚を埋めて続けようと思うでしょうか。

konoinfo at 22:45|PermalinkComments(0)

2017年11月09日

気になる癖

開いた本の奥に鼻を突っ込んで、匂いを嗅いでおられるお客様に気が付きました。それもひとところだけでなく、あちらこちら開いて。

やがて静かに本を閉じて、棚に戻されました。

気になったので、それとなく様子を伺っておりますと、別の本を取り出して、しばらくお読みになってから、先ほどと同じように鼻を突っ込み、また棚に戻されます。

何度か繰り返されたあと、たまりかねて「なにか臭いますか?」とお尋ねしたところ、返ってきたお答えは「古い本は時々臭うものがありますでしょう」。

RIMG2344否定はいたしません。たとえば煙草臭、あるいはカビ臭、さらには化粧品臭。そういったはっきりした臭い以外にも、各ご家庭には独特の臭いがあり、本は多かれ少なかれ、その臭いを吸い込んでいるものです。

犬の嗅覚があれば、飼い主の蔵書を嗅ぎ分けるのは造作もないことでしょう。

お客様の行為は、決してそこまで厳密に、異臭を嗅ぎ分けようとしてのものではなさそうです。現に後から、何冊かをお買い上げいただいたのですから。

いわば一種の、癖のようなものかもしれません。本屋にとっては、見ていて気持ちのいい癖ではありませんが。

そういえば昔、手にされた本の頁を何度も何度もパラパラと、前後に送り続けるお客様がおられました。線引きを確かめておられるのだと思っていましたが、あるいは臭いを嗅いでおられたのかも知れません。

その癖のおかげで、今でもその方の面立ちを思い浮かべることができます。即売展でも、小店でもよくお見受けしたのですが、お姿を見なくなって、もう随分と経ちます。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)

2017年11月08日

パールハーバー

日米は、かつてないほどの親密な関係だそうです。詳しくニュースを読んでおりませんから、あるいは親密なのは日米ではなく、日米首脳のことだったかもしれません。

まあそれならば、どう考えるかは当事者お互いのご自由ですから、傍からどうこう言う話ではないわけです。

しかしどうも気になっているのは、あちらの首脳が、来日直前のハワイで放ったという「リメンバー・パールハーバー」なる言葉。

どんな文脈で、どんな意図をもって発せられたのか詳しく知りませんし、店主の読んだ小さな記事にも、語られておりませんでした。

例によって訳の分からない人の妄言と片付けられそうですが、店主は、案外そうでもないような気がしています。

日本が真珠湾奇襲攻撃に至るまでには、ABCD包囲網などと呼ばれる、諸外国からの「最大限の圧力」があったことは、歴史を学んだものなら誰しも知っているはずです。

となればいま、かつて日本に対したのと同様、あるいはそれ以上の圧力を北朝鮮にかけようとするとき、「パールハーバー」を想起しないほうがおかしいくらいです。

RIMG2395この言葉は米国にとって、悲劇の一幕であると同時に、最終的には日本を民主国家へと解放した、成功体験を意味するものでもあるでしょう。彼らがそれを「すべての選択肢」から、外す必要を認めないとしても当然です。

そんな米国に「百パーセント同意」して追随するのが、果たして日本の取るべき道でしょうか。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)

2017年11月07日

葬儀の二日間

昨夜と今日、葬儀で町屋斎場に出かけました。

池袋の八勝堂書店、八木勝さん、享年88。店主にとっては明治古典会の大先輩です。いつも大きな声で「男ならやってみろ」と、後輩会員にハッパをかけていた印象が強い、豪快さが持ち味の方でした。

明古の会長をされたのが平成2年。バブル絶頂期で、会の年間出来高も今の倍以上あり、高級料亭での会食や、豪華旅行などで会員に還元された、まさに夢のような時代。そんな時代にふさわしい会長だった気がいたします。

そして平成3、4年には、神田、文京支部員以外では初めてとなる、組合理事長も務めておられます。ちなみにそれ以後も、両支部以外から理事長に選ばれた人はいません。

当時、その人選は、業界にとってちょっとしたニュースでしたが、一方で「八勝さんなら」と、多くが認めるような存在でもありました。

そんな八勝さんにとって、バブル以後の、長きにわたる業界の低迷は、歯がゆいものだったかもしれません。

RIMG2387体力気力の人である八勝さんは、酒豪としても知られ、午前3時、4時まで仲間を引き連れて飲み歩いたときでも、ほんの数時間の睡眠で起きだして、朝早くから店の掃除をするのが常だったといいます。

この2年ほど、大病から車椅子生活を余儀なくされておられましたが、毎週明古に顔を出されるなど、気力は最後まで失われなかったようです。

ご親族の話では、眠るがごとく穏やかなご最期だったとか。賑やかな方だっただけに意外な気もしますが、何よりのことだったと思います。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)

2017年11月06日

みすずのカレンダー

「みすずのカレンダーを差し上げればよかった」と昨日書いて、そうしたら家人から、まだ今年のカレンダーについての紹介がない、と指摘されました。

忘れていたわけではありません。まだその時期でないような気がしてためらっていたのです。来年のカレンダーの話なんて、なんだか気ぜわしいようで。

しかし世間では疾うに来年のものが売り出されており、現に我が家でも、このところ家人や娘たちのお気に入りである岩合光昭さんの猫カレンダー2018年版が、既に壁に掛けられております。

RIMG2401 (2)そこでさて、みすず書房の来年版は「マルクのまなざし」。採りあげられたのは早逝のドイツ人画家、フランツ・マルクの作品。

マルクは、カンディンスキーとともに結成した「青騎士」によって、ドイツ表現主義を代表する画家の一人とされるのですが、長命だったカンディンスキーが様々な芸術運動にかかわったのに比べて、より純然たる表現主義者の趣きが感じられる人です。

まあそんなことは、いまさら店主が知ったかぶりして言うことでもありませんが。

ところで「青騎士」Der Blaue Reiter (Piper, 1912)といえば、店主の知る限りでも洋書会と明古と、それぞれ1度ずつ、市場に出たことがあります。

1度は他の本と束になって出品され、もう1度は1冊だけ単独で出品されました。初版ではなく第2版だった気もしますが、そのどちらの時も、結構よい価格で落札され、さすがにプロは見逃さないものだと感心した覚えがあります。

そんなマルクの作品が、今年はいつもより1点多く8点。表紙の1枚、一年分で6枚、そのあとに絵葉書仕立ての1枚がおまけについています。

例によって、お店でお買い上げのお客様と、お得意様にお配りし、品切れご免です。どうぞご来店の際に、ひと声ご請求ください。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)

2017年11月05日

コンプリート

昨日、閉店時間も近づいたころ、しばらく前から店内をご覧になっていた中年男性が、何冊か本を持って帳場においでになりました。

お勘定を済ませると、おもむろに「スタンプを押させてください」と仰います。

「どうぞどうぞ」とお答えしてから何気なく「どれくらい埋まりましたか?」とお尋ねしたところ、思いがけないお返事に驚かされることになりました。

「これでコンプリートです」

RIMG2394「それはそれは」と、一瞬言葉に詰まり「大変だったでしょう」などと意味のない質問をいたしますと「ほぼ普段のペースで回ったら達成できるかなと。その通りできました」

そのゴールが小店となったのは、偶然ではなかったようです。淡々とした口調で、その昔、駒場の学生さんであったこと、当時から小店をご存知だったことをお話しくださいました。

「初めは1983年、もっと駅寄りにお店がありましたね」

どこでお知りになったのか、店主の組合との関わりなどについても情報をお持ちのようでした。それやこれや考えると、懐かしい駒場再訪をラリーの到着点とすることを、ある程度計画されていたような気がします。

お帰りになった後で、そんな方にこそ「みすずカレンダー」を差し上げるべきだったと気が付きました。

「また伺います」と言ってお帰りになりましたので、その言葉を信じてお待ちしようと思います。

konoinfo at 18:30|PermalinkComments(0)

2017年11月04日

録画の利点

風が吹いて、ハナミズキの赤みを帯びた大きな枯葉が、カサカサ音を立てながら驚くほどたくさん落ちてきました。

RIMG2388表に出て木を見上げると、もう残っている葉はほんの僅か。剪定されてすっきりした枝のあちこちに、一枚、二枚と付いているばかり。

さらに風が吹くたびに、それらも次々に枝を離れていきます。今日中に、ほとんど枝だけになりそうな勢いです。

不順な天候に惑わされているうちに、気がつけば11月。落ち葉掃きに追われるのも、束の間のことに過ぎないのでしょう。そのさなかは大変ですが。

昨夜、NHKBSで『サージェント・ペパー〜ビートルズの音楽革命』を観ました。しつこいほどの番組宣伝で、知らされていたものです。

このところ、期待しても裏切られることの方が多いので、録画しておいて後から観ました。

店主が恐れていたのは、タレントやらゲストやらが登場して、余計なおしゃべりや、妙なドラマ仕立てが挟まれるという、日本版スペシャル番組のパターン。

しかし今回は、Apple社とBBCの共同制作だそうで、豊富な映像資料や貴重な音源を使いながら、番組の構成はいたってシンプル。一人の作曲家による解説や実演にも、冗長なところがありません。大変面白く観ることができました。

録画しておいたおかげで、また観ることができます。今度は、家人と一緒に観ることにしますか。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)

2017年11月03日

2冊のプロコフィエフ

prokofievこの2冊が同じ本だと気が付くのに、少し時間がかかりました。

アメリカとイギリスで、同じ本を別の出版社が刊行しているのは良くあることです。両国の出版産業を保護するためでしょうか、互いに販売圏が制限されているからのようです。

同じ出版社からアメリカ版、イギリス版が出ている例もあり、学術書の場合には、イギリス版を買うのが、学者さんのたしなみとされていました。

文学作品などの場合は、もちろん、どちらが本当の初版かによって値打ちが決まります。

英米で別の出版社(組み合わせがほぼ決まっています)から出されるとき、タイトルが微妙に異なるのは良くあることですが、紙型などは流用されていることも多いように感じます。

casselしかし、この2冊のように、まったく異なる組版で、造りからなにから別ものになる場合もあり、そんな時に、旧蔵者のように(たぶん)うっかりまた買ってしまうようなことが起きるのかもしれません。

randomこの2冊に関して言えば、Random House版のほうが、本としての造りが上等に見えます。ジャケットが残っているからだけでなく、Cassel版は表紙が紙クロースで用紙のヤケが進んでいるのに対し、RH版は2色の布で継ぎ表紙。小口もアンカットで風情があります。

なにより文字が大きく、ゆったり組まれていて、その分ページ数が5割ほど多くなり、厚い本になっています。

比べるとCassel版は、ちょっと分が悪い。当時の二国の、経済力の差でしょうか。とはいえ現在の古書価は、どちらも大差なく、かなり安価なものになっております。

konoinfo at 18:30|PermalinkComments(0)

2017年11月02日

舌足らず

宅買い本の話は、いったんおしまい。本日はメールのやり取りにおける、ちょっとした行き違いについてです。こんなご注文をいただきました。

公費による購入のため、以下の書類を添付してください。1.納品書 2.請求書 3.領収書 4.本体価格と送料は別記してください。 5.支払い方法は、着払いを希望します。

これに対する小店の返事。

ひとつお尋ねがあります。「着払い」というのは、代金引換のことでしょうか。その場合、送料+代引き手数料+送金料で合計690円となりますが、よろしいでしょうか。また、商品到着後の支払いという場合、領収書の同封は、いたしかねます。今一度、ご希望をお知らせください。

その、ご回答。

「着払い」というのは、代金引換のことでしょうか。その場合、送料+代引き手数料+送金料で合計690円となりますが、よろしいでしょうか。商品到着後の支払いという場合、領収書の同封は、いたしかねます。 → 公費ではなく、自費購入への切り替えを希望します。

これを読んで店主は、通常の先払いによる自費購入に変更されるものと思い、振込口座などが記載された、定型の確認メールを送信いたしました。すると――

「通常の自費ご購入とのことですので、以下の文面をご確認の上、ご送金ください。」 とのことですが、「送料+代引き手数料+送金料で合計690円となりますが、よろしいでしょうか。」との確認があり、応答しましたように、支払いは代引きでお願いします。多忙のため、この方法が取れない場合には、購入をキャンセルさせてください。

そもそもの行き違いは「代引きで公費」という方式が聞き慣れないものだったため、この「着払い」は単なるRIMG2370「後払い」の言い間違いかもしれないと、店主が気を回したことが原因です。しかも、その表現が舌足らずでした。

一方、お客様のお返事も、いささか分かりにくかったことも確かです。そこで、ともかく「代引き可能です」とお返事し、本日発送したのでした。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)
Profile