2016年03月10日
合同役員会、懇親会
今朝の天気予報の、雨の降り出し時刻に関する予測は、かなり正確なものでした。
午後8時半に神保町から地下鉄に乗る頃、何となくパラつくのを感じましたが、午後9時過ぎに駒場東大前の駅に着いたころには、細かな雨ながら、はっきりとした降り。
今はまた上がっているようですが、この先しばらくの時間、弱い雨が続きそうです。
今夜は、合同役員会のあと、慰労のために年に一度持たれる懇親会。日ごろ、組合の事業や行政に協力していただいている役員の方々と、酒食を共にし、歓談するという一夕でした。
会場は「山の上ホテル」。参加者は職員さんも入れて総勢約70名。立食形式ながら、食欲旺盛な組合員が多いため、ほぼ人数分の料理をお願いしました。おかげで、全員に十分堪能してもらえたと思います。
品数も豊富でした。ですから、宴が終わったあと、少しずつ料理が残っているプレートがいくつもありましたが、決して美味しくなかったからではありません。店主がいただいたものは、どれも美味しく感じました。
通常、立食パーティーでは人数の7掛けから、8掛けというのが、お定まりの量だと言います。ところが以前、始まって幾らもしないうち、料理がなくなってしまった宴がありました。
その反省から、とにかく足りないことはないようにと、多目にお願いするようになったのです。それを、多少余す程度に平らげるのですから、やはり古本屋の胃袋は強靭なのかもしれません。
それも、ゆっくり落ち着いてというより、ひたすら飲んで食べるため、30分もすると、なんとなく一段落したような気分が漂います。
そこで用意のビンゴゲーム。ひとしきり盛り上がっても、まだ1時間ちょっと。結局、2時間の予定を、1時間15分で切り上げることになりました。
日本人、分けても古本屋には、立食スタイルは不向きなようです。それで雨に会わずに済んだのですが。
午後8時半に神保町から地下鉄に乗る頃、何となくパラつくのを感じましたが、午後9時過ぎに駒場東大前の駅に着いたころには、細かな雨ながら、はっきりとした降り。
今はまた上がっているようですが、この先しばらくの時間、弱い雨が続きそうです。
今夜は、合同役員会のあと、慰労のために年に一度持たれる懇親会。日ごろ、組合の事業や行政に協力していただいている役員の方々と、酒食を共にし、歓談するという一夕でした。
会場は「山の上ホテル」。参加者は職員さんも入れて総勢約70名。立食形式ながら、食欲旺盛な組合員が多いため、ほぼ人数分の料理をお願いしました。おかげで、全員に十分堪能してもらえたと思います。
品数も豊富でした。ですから、宴が終わったあと、少しずつ料理が残っているプレートがいくつもありましたが、決して美味しくなかったからではありません。店主がいただいたものは、どれも美味しく感じました。
通常、立食パーティーでは人数の7掛けから、8掛けというのが、お定まりの量だと言います。ところが以前、始まって幾らもしないうち、料理がなくなってしまった宴がありました。
その反省から、とにかく足りないことはないようにと、多目にお願いするようになったのです。それを、多少余す程度に平らげるのですから、やはり古本屋の胃袋は強靭なのかもしれません。
それも、ゆっくり落ち着いてというより、ひたすら飲んで食べるため、30分もすると、なんとなく一段落したような気分が漂います。
そこで用意のビンゴゲーム。ひとしきり盛り上がっても、まだ1時間ちょっと。結局、2時間の予定を、1時間15分で切り上げることになりました。
日本人、分けても古本屋には、立食スタイルは不向きなようです。それで雨に会わずに済んだのですが。
2016年03月09日
くたびれ儲け
こういうお天気の日にやらない方が良いのですが、次第に迫ってくる確定申告の締切日に間に合わせるために、証憑や帳簿類の整理をいたしました。
帳簿と言っても、PCの中に数字データを納めていくだけの作業です。証憑の方も、ネットで確認できるものが増えて、整理整頓の苦手な店主には、非常に助かります。
申告のための作業は、こうして年々楽になってくるのですが、そこに現れる数字は、年ごとに悲惨の度合いが増してきています。
だから、今日のような鬱々とした雨の日に、さらに気の滅入るような作業をすべきではないのです。
そこへ追い打ちをかけるように、先日の研究室引取り品を市場に出した、その結果が出ました。
水曜日は東京資料会といって、社会科学、自然科学といった学術系の本や、資料的なものを得意とする市場です。一番相応しいだろうと考えて、昨日のうちに会場に運び込み、仕分けもお願いしておきました。
店主などよりずっと詳しい同業が、およそ300冊ほどを、2点に分けてくれたようです。つまりせいぜい2点にしかならないと判断したわけです。
そして開札の結果は、その見立て通り、どちらも最低価格。つまり何十人かの目に触れたはずですが、札を入れたのは、それぞれ一人ずつしかいなかったということです。
早速、先生にご報告いたしましたところ、あっさりご納得いただきました。とくにガッカリされたご様子もありません。
その少ない売上から、手間賃をいただくわけにもいかず、運送にかかった実費だけを差し引かせていただくことで、ご了解を得ました。文字通り骨折り損。こういうこともあります。
帳簿と言っても、PCの中に数字データを納めていくだけの作業です。証憑の方も、ネットで確認できるものが増えて、整理整頓の苦手な店主には、非常に助かります。
申告のための作業は、こうして年々楽になってくるのですが、そこに現れる数字は、年ごとに悲惨の度合いが増してきています。
だから、今日のような鬱々とした雨の日に、さらに気の滅入るような作業をすべきではないのです。
そこへ追い打ちをかけるように、先日の研究室引取り品を市場に出した、その結果が出ました。
水曜日は東京資料会といって、社会科学、自然科学といった学術系の本や、資料的なものを得意とする市場です。一番相応しいだろうと考えて、昨日のうちに会場に運び込み、仕分けもお願いしておきました。
店主などよりずっと詳しい同業が、およそ300冊ほどを、2点に分けてくれたようです。つまりせいぜい2点にしかならないと判断したわけです。
そして開札の結果は、その見立て通り、どちらも最低価格。つまり何十人かの目に触れたはずですが、札を入れたのは、それぞれ一人ずつしかいなかったということです。
早速、先生にご報告いたしましたところ、あっさりご納得いただきました。とくにガッカリされたご様子もありません。
その少ない売上から、手間賃をいただくわけにもいかず、運送にかかった実費だけを差し引かせていただくことで、ご了解を得ました。文字通り骨折り損。こういうこともあります。
2016年03月08日
「いい町の条件」
今朝、用あって浅草方面へ出かけ、田原町から国際通りを北へ向かって少しばかり歩きました。
改めて感じたことは、東京というのは異なる顔を持ったいくつもの町の集まりだ、ということでした。銀座線で両端の一方となる渋谷はもとより、神保町とでも、まるで違う雰囲気が感じられます。
外国人観光客が、町のそこここをカメラに収めている姿を見かけました。彼らにとっては、この東京の多面性は、どのように映るのでしょうか。
先日来、バッグの中には『東京つれづれ草』が入っていて、電車の中で読み継いでいます。その影響もあって、そんなことを考えるのかもしれません。
店主の見るところ、この本のキーワードは、「変わっていない」です。昔の姿を今でも留めている、そういう場所を、求めて歩いている。それがこの本の成り立ちのように思われます。
様々な雑誌に発表したものを集めていますから、その古いものは、今から四半世紀も前に書かれています。つまり、その当時見つけた「変わっていない」も、今ではすっかり変わっている可能性が大きい。例えば――
いい町の条件とは、豆腐屋、古本屋、そして銭湯があることとは私の持論である。いずれも大企業が入ってこられない個人商店である。この三つがあると町に安定感が生まれる。私の住んでいる杉並区の浜田山には幸い三つともある。いい町である。
お豆腐屋さんはともかく、銭湯と、古本屋さんは、仮に店主が想像している場所であるとすれば、どちらももうなくなったはず。川本さんの「いい町」ではなくなったわけです。
ただし「個人商店」ではない、かの大型フランチャイズ店が駅前にあるのですが、これを古本屋と見るかどうか。つまり「いい町」の要素と見るかどうか。
川本さんなら、そうは見ないだろうと思われるのですが。
改めて感じたことは、東京というのは異なる顔を持ったいくつもの町の集まりだ、ということでした。銀座線で両端の一方となる渋谷はもとより、神保町とでも、まるで違う雰囲気が感じられます。
外国人観光客が、町のそこここをカメラに収めている姿を見かけました。彼らにとっては、この東京の多面性は、どのように映るのでしょうか。
先日来、バッグの中には『東京つれづれ草』が入っていて、電車の中で読み継いでいます。その影響もあって、そんなことを考えるのかもしれません。
店主の見るところ、この本のキーワードは、「変わっていない」です。昔の姿を今でも留めている、そういう場所を、求めて歩いている。それがこの本の成り立ちのように思われます。
様々な雑誌に発表したものを集めていますから、その古いものは、今から四半世紀も前に書かれています。つまり、その当時見つけた「変わっていない」も、今ではすっかり変わっている可能性が大きい。例えば――
いい町の条件とは、豆腐屋、古本屋、そして銭湯があることとは私の持論である。いずれも大企業が入ってこられない個人商店である。この三つがあると町に安定感が生まれる。私の住んでいる杉並区の浜田山には幸い三つともある。いい町である。
お豆腐屋さんはともかく、銭湯と、古本屋さんは、仮に店主が想像している場所であるとすれば、どちらももうなくなったはず。川本さんの「いい町」ではなくなったわけです。
ただし「個人商店」ではない、かの大型フランチャイズ店が駅前にあるのですが、これを古本屋と見るかどうか。つまり「いい町」の要素と見るかどうか。
川本さんなら、そうは見ないだろうと思われるのですが。
2016年03月07日
品薄状態
雨の月曜日。寒くないのが救いですが、お客様の足はパッタリ。
土曜日あたりから「日本の古本屋」の注文もパッタリ止まっていて、それも気を重くさせていました。システムがダウンしているのではないかと、疑ったくらい。
そちらの懸念は、今日のお昼前になって解消されましたが、店の方は一日不振が続きました。午後6時の時点で数えて見たところ、レジを打った回数より、ネット注文の数の方が多い。
それほど注文が多かったわけではありません。まあ、普段よりやや多めではありましたが、要するに、ご来客がきわめて少なかったというわけです。
昨日の場合は、ネット注文が入らなかったうえに、ご来客も少ない、今日以上に淋しい一日ではありましたが、商談の電話が2件ありました。
その商談というのは、ディスプレイ用書籍に関するもの。某日までにしかじかのタイプの本を、〇mほど揃えられるかというお問合せです。
実は現在、1件のご用命をいただいていて、それはどうやら目途がつきました。しかし昨日の2件は、要望条件もきびしいため、今のところ、一方だけお受けするつもりでおります。
小店は積極的に営業をしているわけではありませんから、ごく限られた業者さんからしかご注文は入らないのですが、その小店にすら引き合いが重なるということは、世のディスプレイ需要はますます高まっているとしか思われません。
実際、洋書会でもこのところ、ディスプレイに使えそうな本は、複数の業者の競り合いで、かなり高騰しています。つまり文字通り、安請け合い出来ない状況なのです。
「ご要望に沿うものが手に入りましたら、ご連絡いたします」、とはお答えしてあるのですが。
土曜日あたりから「日本の古本屋」の注文もパッタリ止まっていて、それも気を重くさせていました。システムがダウンしているのではないかと、疑ったくらい。
そちらの懸念は、今日のお昼前になって解消されましたが、店の方は一日不振が続きました。午後6時の時点で数えて見たところ、レジを打った回数より、ネット注文の数の方が多い。
それほど注文が多かったわけではありません。まあ、普段よりやや多めではありましたが、要するに、ご来客がきわめて少なかったというわけです。
昨日の場合は、ネット注文が入らなかったうえに、ご来客も少ない、今日以上に淋しい一日ではありましたが、商談の電話が2件ありました。
その商談というのは、ディスプレイ用書籍に関するもの。某日までにしかじかのタイプの本を、〇mほど揃えられるかというお問合せです。
実は現在、1件のご用命をいただいていて、それはどうやら目途がつきました。しかし昨日の2件は、要望条件もきびしいため、今のところ、一方だけお受けするつもりでおります。
小店は積極的に営業をしているわけではありませんから、ごく限られた業者さんからしかご注文は入らないのですが、その小店にすら引き合いが重なるということは、世のディスプレイ需要はますます高まっているとしか思われません。
実際、洋書会でもこのところ、ディスプレイに使えそうな本は、複数の業者の競り合いで、かなり高騰しています。つまり文字通り、安請け合い出来ない状況なのです。
「ご要望に沿うものが手に入りましたら、ご連絡いたします」、とはお答えしてあるのですが。
2016年03月06日
バックナンバー
昨日、日吉からお引き取りしてきた中に、『英語青年』(研究社)が30冊ばかりありました。2000年代前半、この雑誌の最末期に属するバックナンバーです。
雑誌の形で出されていたのは、2009年3月まで。その後、WEBマガジンとして2013年3月まで発行されましたが、その 第 158 巻第 12 号(総号 1970 号)をもって、「諸般の事情により休刊」(研究社HP)となりました。
英語の先生ならどなたでも購読しておられる、というくらいポピュラーな雑誌でしたから、英語学界の成長期にあっては、バックナンバーに高値が付いたりした時代もありますが、飽和し、縮小の時期に入ると、古本屋にとっても有難いものでなくなりました。
久々手に取って、興味を持って調べてみましたが、復刻版まで出ているこの雑誌の、完全な揃いというのが、果たして存在するのかどうか、ネットでは確かめることができませんでした。
ちなみに2004年以降のバックナンバーには、まだ在庫が残っている号もあるようです。2009年からの「WEB英語青年」のバックナンバーは、HPから目次をみることができますが、記事が閲覧できるのは2012年3月以降に限られます。
一定の年数でリンクを外しているようで、雑誌で言えば断裁処分ということになります。この消えてしまった記事は、どこに行ったのでしょう。雑誌であれば、ある日偶然に遭遇するということもあるのですが。
そんな偶然の一つと言ってもいいかもしれません。今回の一束の中から、高橋康也先生の追悼特集を見つけました。
昨日、M先生と車で日吉まで向かう間、何かのきっかけからお互いの知っている先生方の話となり、高橋先生のお名前も当然のように出たのです。
店主は直接に知遇を得る機会はありませんでしたが、この追悼号に寄稿されている何名かの先生は、良く存じ上げています。それらを読みながら、しばし当時を、思い起こしたりいたしました。
雑誌の形で出されていたのは、2009年3月まで。その後、WEBマガジンとして2013年3月まで発行されましたが、その 第 158 巻第 12 号(総号 1970 号)をもって、「諸般の事情により休刊」(研究社HP)となりました。
英語の先生ならどなたでも購読しておられる、というくらいポピュラーな雑誌でしたから、英語学界の成長期にあっては、バックナンバーに高値が付いたりした時代もありますが、飽和し、縮小の時期に入ると、古本屋にとっても有難いものでなくなりました。
久々手に取って、興味を持って調べてみましたが、復刻版まで出ているこの雑誌の、完全な揃いというのが、果たして存在するのかどうか、ネットでは確かめることができませんでした。
ちなみに2004年以降のバックナンバーには、まだ在庫が残っている号もあるようです。2009年からの「WEB英語青年」のバックナンバーは、HPから目次をみることができますが、記事が閲覧できるのは2012年3月以降に限られます。
一定の年数でリンクを外しているようで、雑誌で言えば断裁処分ということになります。この消えてしまった記事は、どこに行ったのでしょう。雑誌であれば、ある日偶然に遭遇するということもあるのですが。
そんな偶然の一つと言ってもいいかもしれません。今回の一束の中から、高橋康也先生の追悼特集を見つけました。
昨日、M先生と車で日吉まで向かう間、何かのきっかけからお互いの知っている先生方の話となり、高橋先生のお名前も当然のように出たのです。
店主は直接に知遇を得る機会はありませんでしたが、この追悼号に寄稿されている何名かの先生は、良く存じ上げています。それらを読みながら、しばし当時を、思い起こしたりいたしました。
2016年03月05日
手間をかけて
昨年暮れから数えて、今日で7回目の日吉詣で。
午前10時過ぎに、まずM先生のご自宅に寄り、そこで少し積み込み、さらに先生も乗られて、一緒に学校へ向かいました。たいした寄り道ではありません。
店に戻ったのは、いつもとほぼ同じ午後1時。早速、荷をほどいて整理を始めました。今回は日本書が多目で、店の棚に入れられるものが結構ありそうです。
ただし、例によって線引き耳折。割合としてはかなり減ってきましたが、これはと思うような本に限ってそれがあります。たとえば『狂気の歴史』(フーコー、新潮社)、『倒錯の偶像』(ダイクストラ、パピルス)。
これらの本を開いて、そこに耳折や、ボールペンによる線引きなどを見つけた時の落胆を、同業なら理解してもらえるはずです。
もちろん、評価はこれからつけるのですし、先生は金額にこだわってはおられませんから、損害が生じたわけではありません。
しかし、扱いに困るのですね。そのまま処分する、という判断もあるのですが、惜しいというのではなく、もったいない。そこで、まず値付けに悩みます。線引きの量や、耳折の数、本の傷み具合なども考慮に入れなくてはなりません。
価値を高めるために本を調べるのならともかく、価値を差し引くためにアラを探すのでは、まったく時間の無駄。合理的に考えればそうでしょう。そこがそう割り切れないのが、古本屋の古本屋たる所以です。
せっせと整理を進めておりましたら、語学マニアのご常連が、大きなキャリーバッグを転がしてこられました。今回はカザフ語、タタール語などのタイトルが目につきます。
この方の場合も、線引きの癖をお持ちで、一冊ずつ調べなくてはなりません。良い本をお持ちいただく、ありがたいお客様であることは紛れもないのですが。
午前10時過ぎに、まずM先生のご自宅に寄り、そこで少し積み込み、さらに先生も乗られて、一緒に学校へ向かいました。たいした寄り道ではありません。
店に戻ったのは、いつもとほぼ同じ午後1時。早速、荷をほどいて整理を始めました。今回は日本書が多目で、店の棚に入れられるものが結構ありそうです。
ただし、例によって線引き耳折。割合としてはかなり減ってきましたが、これはと思うような本に限ってそれがあります。たとえば『狂気の歴史』(フーコー、新潮社)、『倒錯の偶像』(ダイクストラ、パピルス)。
これらの本を開いて、そこに耳折や、ボールペンによる線引きなどを見つけた時の落胆を、同業なら理解してもらえるはずです。
もちろん、評価はこれからつけるのですし、先生は金額にこだわってはおられませんから、損害が生じたわけではありません。
しかし、扱いに困るのですね。そのまま処分する、という判断もあるのですが、惜しいというのではなく、もったいない。そこで、まず値付けに悩みます。線引きの量や、耳折の数、本の傷み具合なども考慮に入れなくてはなりません。
価値を高めるために本を調べるのならともかく、価値を差し引くためにアラを探すのでは、まったく時間の無駄。合理的に考えればそうでしょう。そこがそう割り切れないのが、古本屋の古本屋たる所以です。
せっせと整理を進めておりましたら、語学マニアのご常連が、大きなキャリーバッグを転がしてこられました。今回はカザフ語、タタール語などのタイトルが目につきます。
この方の場合も、線引きの癖をお持ちで、一冊ずつ調べなくてはなりません。良い本をお持ちいただく、ありがたいお客様であることは紛れもないのですが。
2016年03月04日
古本屋どまり
しばらく前に、ある同業から「今度、ご都合の良い時に、話を聞いてくれますか」と問われ、てっきり何かの相談ごとだろうと思って、「いいですよ」とお答えしました。
そして後日、古書会館7階の一室で、そのお話を聞く機会を持ちました。
ところが同業が始めた話は、案に相違して、自身で長年温めてきたと言う、「画期的な納税システム」についての説明でした。
それというのも、近々、ある公開の場で、そのアイディアを発表する機会を得たため、いわば練習台として、聞き手役を務めて欲しい、というのが彼の意とするところだったのです。
店主としては、役目柄、何か業界や、仕事がらみの相談ごとでもあるのかと想像して時間を割いたので、いささか不本意ではありましたが、お話を聞いているうち、次第に感心するに至りました。
正直、熱心にご説明いただくアイディア自体は、もともと税の問題に疎い店主などには、なかなか理解しにくいものでしたから、店主が感心したのは、その内容ではなく、彼の不思議な情熱に対してです。
ご当人曰く「4年間これを考え続けてきた」とかで、特許の申請も進めているところだと言い、40分ばかり話を聞いた後、A4用紙7枚にワープロ印刷された紙を渡されました。彼の理論を、時代小説の形を借りて書き上げたものです。
およそこの業界で、店主がこれまで接してきたのは、好きで古本屋を始めたにせよ、そうでないにせよ、日ごろは本のことしか頭にないような人ばかり。
それに対し、この同業にとって古本商売は、あくまで身過ぎ世過ぎ。本当にやりたいことは別にあるらしい。
考えてみれば、そういう人が他にもっといても不思議はありません。ただ大方は、身過ぎ世過ぎに汲々としているうちに、やりたいことを諦めてしまう、というのが現実でしょうか。
そして後日、古書会館7階の一室で、そのお話を聞く機会を持ちました。
ところが同業が始めた話は、案に相違して、自身で長年温めてきたと言う、「画期的な納税システム」についての説明でした。
それというのも、近々、ある公開の場で、そのアイディアを発表する機会を得たため、いわば練習台として、聞き手役を務めて欲しい、というのが彼の意とするところだったのです。
店主としては、役目柄、何か業界や、仕事がらみの相談ごとでもあるのかと想像して時間を割いたので、いささか不本意ではありましたが、お話を聞いているうち、次第に感心するに至りました。
正直、熱心にご説明いただくアイディア自体は、もともと税の問題に疎い店主などには、なかなか理解しにくいものでしたから、店主が感心したのは、その内容ではなく、彼の不思議な情熱に対してです。
ご当人曰く「4年間これを考え続けてきた」とかで、特許の申請も進めているところだと言い、40分ばかり話を聞いた後、A4用紙7枚にワープロ印刷された紙を渡されました。彼の理論を、時代小説の形を借りて書き上げたものです。
およそこの業界で、店主がこれまで接してきたのは、好きで古本屋を始めたにせよ、そうでないにせよ、日ごろは本のことしか頭にないような人ばかり。
それに対し、この同業にとって古本商売は、あくまで身過ぎ世過ぎ。本当にやりたいことは別にあるらしい。
考えてみれば、そういう人が他にもっといても不思議はありません。ただ大方は、身過ぎ世過ぎに汲々としているうちに、やりたいことを諦めてしまう、というのが現実でしょうか。
2016年03月03日
濃密な時間
当たり前のことですが、本というのは、それが形になった時点で、既に過去に属しています。
文字、あるいは図版として定着し、著者の手を離れてから出版されるまでにでも、ひと月、あるいは数か月の時間を要しているはずだからです。
それ以前の状態、つまり着想し、文字なり、図像なりにするまでの時間を含めれば、さらに長い時間が費やされていることは言うまでもありません。
つまり新刊として出版された時点で読んだとしても、それはすでに著作者の過去に向き合っているというわけですから、つまらない本がすぐ陳腐化してしまうのも道理です。
逆に、良い本というのは、それを古本で読んでも感銘を得ることができます。言い方を変えれば、古本で読んで面白い本こそが、良い本なのです。というのは、あまりにも手前味噌なものいいでしょうか。
読み終えるのが惜しい、と言う本に最近また出会いました。『戦争が遺したもの』(新曜社、2004年)。鶴見俊輔、上野千鶴子、小熊英二の三方による鼎談録。というより、上野、小熊両氏による、鶴見さんへのインタビュー録ですね。
鶴見さんは成果や損得を念頭に置かないわたしたちの提案に、乗り気になってくださった。どんな出版社とも約束しない、編集者を介在させない、費用をどこからももらわず、謝礼もお払いしないという条件で、二〇〇三年の春の京都で三日間をわたしたちとともにつきあってくださった。それはこのうえもなく濃密で豊かな時間だった。
これは上野さんによる「あとがき」の一部ですが、この「この上もなく濃密な時間」こそは、まさに店主が読みながら感じていたことでした。あたかも、自分もその場に同席させていただいているかのように。
この本が出版されて、12年が経ちます。鶴見さんも昨年、長逝されました。しかしそこに語りだされた戦後60年は、今もなお、耳を傾けるべき話に満ちています。
文字、あるいは図版として定着し、著者の手を離れてから出版されるまでにでも、ひと月、あるいは数か月の時間を要しているはずだからです。
それ以前の状態、つまり着想し、文字なり、図像なりにするまでの時間を含めれば、さらに長い時間が費やされていることは言うまでもありません。
つまり新刊として出版された時点で読んだとしても、それはすでに著作者の過去に向き合っているというわけですから、つまらない本がすぐ陳腐化してしまうのも道理です。
逆に、良い本というのは、それを古本で読んでも感銘を得ることができます。言い方を変えれば、古本で読んで面白い本こそが、良い本なのです。というのは、あまりにも手前味噌なものいいでしょうか。
読み終えるのが惜しい、と言う本に最近また出会いました。『戦争が遺したもの』(新曜社、2004年)。鶴見俊輔、上野千鶴子、小熊英二の三方による鼎談録。というより、上野、小熊両氏による、鶴見さんへのインタビュー録ですね。
鶴見さんは成果や損得を念頭に置かないわたしたちの提案に、乗り気になってくださった。どんな出版社とも約束しない、編集者を介在させない、費用をどこからももらわず、謝礼もお払いしないという条件で、二〇〇三年の春の京都で三日間をわたしたちとともにつきあってくださった。それはこのうえもなく濃密で豊かな時間だった。
これは上野さんによる「あとがき」の一部ですが、この「この上もなく濃密な時間」こそは、まさに店主が読みながら感じていたことでした。あたかも、自分もその場に同席させていただいているかのように。
この本が出版されて、12年が経ちます。鶴見さんも昨年、長逝されました。しかしそこに語りだされた戦後60年は、今もなお、耳を傾けるべき話に満ちています。
2016年03月02日
市場があればこそ
3月に入って、何かと慌ただしくなってきたようです。それもそのはず、学校にとっては年度末。退職、転職の先生方にとっては研究室の整理が最大の厄介事。
土壇場になって依頼してこられる先生も毎年おられるのですが、今年は例年より早目にご連絡をいただいている気がします。
昨日と今日、続けて2件、駒場の研究室に下見に伺いました。そのうち昨日の分は、整理される量がさほど多くありませんでしたので、今日、小店の小型車で引き取りに上がりました。
つまり今日は、下見が1件と、引取りが1件、というわけです。
引き取ってきたのは、生物系の先生のご蔵書。理系の本は賞味期限が短いものが多いため、全般に古本屋向きでないのですが、特に生物系となるとまずほとんど値が付きません。
とはいえ、お断りすれば、そのまま処分されるしかないでしょうから、ひとまずまとめてお引き取りして、市場に出してみますとご提案し、了承いただいたのです。
冊数としても300冊くらいのものですから、縛って運びだし、車に積んで店まで持ち帰る。そうして店で、カーゴテーナに積み替える。そこまでを午前中に済ませました。
今日はルート便「コショタン」の日です。昨日の洋書会で落札した本がお昼過ぎに届き、それと入れ替えに店のカーゴを積み込んでもらい、来週の洋書会に出品するという段取り。
昔なら、自分で古書会館まで運んでいたのですが、運送賃はかかっても、この方がずっと楽。
楽と言えば、今日下見させていただいた1件。こちらも日取りを合わせて、運送屋さんを頼むことにしました。20年以上前に駒場を退職された先生の蔵書が、訳あって里帰りしたもので、多分カーゴにして5台ほど。
選んでより分ける手間暇を考えると、やはり市場に出すのが一番だと考えたのでした。
土壇場になって依頼してこられる先生も毎年おられるのですが、今年は例年より早目にご連絡をいただいている気がします。
昨日と今日、続けて2件、駒場の研究室に下見に伺いました。そのうち昨日の分は、整理される量がさほど多くありませんでしたので、今日、小店の小型車で引き取りに上がりました。
つまり今日は、下見が1件と、引取りが1件、というわけです。
引き取ってきたのは、生物系の先生のご蔵書。理系の本は賞味期限が短いものが多いため、全般に古本屋向きでないのですが、特に生物系となるとまずほとんど値が付きません。
とはいえ、お断りすれば、そのまま処分されるしかないでしょうから、ひとまずまとめてお引き取りして、市場に出してみますとご提案し、了承いただいたのです。
冊数としても300冊くらいのものですから、縛って運びだし、車に積んで店まで持ち帰る。そうして店で、カーゴテーナに積み替える。そこまでを午前中に済ませました。
今日はルート便「コショタン」の日です。昨日の洋書会で落札した本がお昼過ぎに届き、それと入れ替えに店のカーゴを積み込んでもらい、来週の洋書会に出品するという段取り。
昔なら、自分で古書会館まで運んでいたのですが、運送賃はかかっても、この方がずっと楽。
楽と言えば、今日下見させていただいた1件。こちらも日取りを合わせて、運送屋さんを頼むことにしました。20年以上前に駒場を退職された先生の蔵書が、訳あって里帰りしたもので、多分カーゴにして5台ほど。
選んでより分ける手間暇を考えると、やはり市場に出すのが一番だと考えたのでした。
2016年03月01日
落ちれば落ちたで
また一つ会議をすっぽかしそうになりました。というより、ほとんどすっぽかしたに近い状態。午前11時からの会議に、その時間に電話を受け、それからすっ飛んで会館に向かったのですから。
着いたのは11時45分。それから30分と経たず、会議は終了。
言い訳をしても仕方ないのですが、予定表に入れておかなかったのは、ちょっとした思い違いからです。火曜日の会議なら、どうせ洋書会で会館に来ているから、もし忘れていても大丈夫だと。
ところが店主の当番は前回で終わっていて、今日3月からは別の班の担当。だからお昼から出かければ良いと、悠然と構えて店で買入れ品の整理などをしておりました。
確かに今週は、予定が立て込んでおりますが、それであればこそ、しっかり管理しておかねばなりません。と反省したところで、昼食も済ませて、洋書会の会場に向かいました。
午後1時を回ったくらいでしたが、今年一番の出品量で、一部は、まだ仕分けも済んでいない状態。下手な手出しはできませんから、仕分けが終わった本を何本か縛って、形ばかりのお手伝い。
そのあと暫く席を外し、開札の3時前に会場に戻ると、普段は見通しのいい会場に、本の壁が出来て、入札の同業もいつもより多く見受けられました。
カーゴ3〜5台という口が、何件か重なって、都合15台近い出品量になったようです。それぞれに面白い口でしたが、あまりに量が多くて的が絞りにくい。
相変わらずディスプレイ用仕入れの書店さんたちが、旺盛な食欲を見せている中で、絞りに絞って入札し、一応すべて落札することが出来ました。
今日狙いを定めたのは、スペイン演劇関係の口。仕入れたのは良いのですが、これをどう売り捌くか。落ちてきてみると、あまり成算がなさそうな気もしてきました。
着いたのは11時45分。それから30分と経たず、会議は終了。
言い訳をしても仕方ないのですが、予定表に入れておかなかったのは、ちょっとした思い違いからです。火曜日の会議なら、どうせ洋書会で会館に来ているから、もし忘れていても大丈夫だと。
ところが店主の当番は前回で終わっていて、今日3月からは別の班の担当。だからお昼から出かければ良いと、悠然と構えて店で買入れ品の整理などをしておりました。
確かに今週は、予定が立て込んでおりますが、それであればこそ、しっかり管理しておかねばなりません。と反省したところで、昼食も済ませて、洋書会の会場に向かいました。
午後1時を回ったくらいでしたが、今年一番の出品量で、一部は、まだ仕分けも済んでいない状態。下手な手出しはできませんから、仕分けが終わった本を何本か縛って、形ばかりのお手伝い。
そのあと暫く席を外し、開札の3時前に会場に戻ると、普段は見通しのいい会場に、本の壁が出来て、入札の同業もいつもより多く見受けられました。
カーゴ3〜5台という口が、何件か重なって、都合15台近い出品量になったようです。それぞれに面白い口でしたが、あまりに量が多くて的が絞りにくい。
相変わらずディスプレイ用仕入れの書店さんたちが、旺盛な食欲を見せている中で、絞りに絞って入札し、一応すべて落札することが出来ました。
今日狙いを定めたのは、スペイン演劇関係の口。仕入れたのは良いのですが、これをどう売り捌くか。落ちてきてみると、あまり成算がなさそうな気もしてきました。