2017年11月01日

玩志喪物

watanabe引き続き、宅買いしてきた本の話題です。

この本は献呈署名入りではありません。識語署名入り。その識語が「玩志喪物」。

いかにも渡辺一夫さんらしい一ひねり。見開きをスキャンしてお目に掛けたいところですが、見返しが開きにくいのでやめました。

なぜ開きにくいかというと、例によってカバーがしっかりフィルムコーティングされ、折り返しの部分がテープ止めされているからです。

watanabe2そのかわり、本に挟まれていた渡辺さんの自筆ハガキをお目に掛けます。お読みになれるでしょうか。かなり癖のある筆跡です。

内容は、次にお目に掛ける写真、これに対するお礼状と思われます。なぜその写真が本と一緒にあるのか。それはこの写真を撮った人物こそが、この本の持ち主だからです。

watanabe3つまり焼き増ししたものを、渡辺さんに贈られたのでしょう。旧蔵者、写真の腕も玄人はだしで、交流のあった人物をカメラに収めています。

実はその中に、三島由紀夫を撮った写真も何枚かありました。それはさすがに買い取るのはためらわれたので、お預かりして明古に出品したところ、予想より遥かに良い値になりました。

下手な値で買い取っていたら、かえって気まずい思いをしたところです。

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2017年10月31日

続・献呈署名本

昨日の写真を見ただけでは、それがどんな本か、お分かりにならない方も多いことと存じます。

so-un3金素雲『朝鮮民謡集』(泰文館 昭和4年)。もちろん、三島の本ほど高価なものではありませんが、どこにでもあるという本でもありません。

岸田劉生の装丁が印象的な、傷みやすい繊細な造り。それゆえに稀少なのですが、まさにこの本、そうして傷んでしまったうちの一冊で、函も失われております。

so-un2そんな本に、フィルムコーティングだけでなく、新しい見返し紙まで重ね貼りして保存を図ったのは、元見返しに書き込まれた著者の献呈署名がその理由でしょう。

まさにその通り。大切に思えばこそのフィルムコーティングでした。旧蔵者にとっては、ひとえに愛蔵の手段だったのです。それによって古書としての価値がいかに損なわれようが。

しかし、それならなぜ、このような状態になってからコーティングを施したのか。ひとつ考えられるのは、手に入れた時すでに傷んでいたということです。しかし、果たしてそんな傷んだ本を差し出して、著者に署名をお願いするでしょうか。

ここで気になるのは「恵存」の二文字。だからこそ献呈署名と申し上げたのでした。そしてそこにある日付。刊行から25年も後の、1954年とあります。

もしかしたら、著者自身が手元に残していた本だったのかもしれない。現時点で、それが一番納得できる推量です。

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2017年10月30日

献呈署名本

さて気分をリセットして、ゼロからの出発です。

朝から日差しがあり、しかし風が強く、木枯らし1号と認定されたとか。

今日は売上ゼロではありません。とはいえ、お客様の数より、店内に入り込んできた落ち葉の方が、よほど多かったでしょう。

何度か表に出て、キリなく落ちてくる枯葉を掃き集め、帳場に戻ると、先日の宅買い品の整理。そんな一日でした。

思い出すと、あらためてため息が出ます。お引き取りしてきた中には、珍しい本も何冊かありましたが、そういう本に限って、しっかりとフィルムコーティングされていたのです。図書館の本に施されている、あの透明フィルムを貼り付けたような処置です。

それが研究書ばかりか、小説や詩集にも掛けられていて、とりわけ愕然としたのは、三島由紀夫の「魔群の通過」を目にした時でした。

確かに状態は良くなかったのですが、それでも稀少な本ですから、そのままならそこそこの値になったはずです。しかし、ベッタリと表紙に貼りついたフィルム。

肩を落としながら扉を開くと、なんとそこに三島から旧蔵者にあてた献呈署名。ご遺族に本の珍しさと難点を説明すると、がっかりされていましたが、店主も同様でした。

so-un明古に出したところ、いくらかの値は付きました。しかしフィルムが貼られていなければ、その何十倍かの値になったことでしょう。

ちなみに、右の本にも献呈署名が入っております。やはりフィルムコーティングされているのですが。

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2017年10月29日

大記録達成

ついにこの日が来ました。開業以来、34年7ヵ月と28日にして、初の売り上げゼロ。

もちろん休日閉店の日は除いて、開けさえすれば、台風の時も、大雪の時も、あの3.11の時でさえも、何かしらの売り上げがありました。それが、今日――。

朝から冷たい雨の降り続く日曜日で、店を開けてから夕方まで、一人のお客様も店内に入ってこられません。店内どころか、表に立ち止まる姿も無し。

昼前に、いつもの古道具屋さんが、プラモデルを20箱ばかり持ち込んでくれました。

同じ時に一件、車でお持ち込みがあったのですが、油煙で煤けたような文庫本の束でしたので、せっかく雨の中お持ちくださったのですが、お断り申し上げました。

それっきり、人のやってくる気配もありません。静かな店で、先日の宅買い品の整理をいたしました。

夕刻、表の棚の前に座り込んで、本をご覧になるお客様がおられます。時々ご来店になり、そのたびに、ほぼ決まって均一本3冊をお買い上げくださる方です。

RIMG2350これで、今日もまたゼロデーは回避されたのかと思いました。しかし、しばらくすると、そのまま立ち去って行かれました。

ここに至ってついに覚悟をいたしました。そして閉店の時間。

もう一人、店内に入って来られた方がいます。目黒郵便局の集荷員さんです。都合3名、それが本日ご来店の総数でありました。

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2017年10月28日

ワイヤープランツ

さすがは「古本まつり」の土曜日。朝から、ほとんどお客様の姿が見えません。

弱い雨が早い時間から降り出して、露店の方は早めに営業を諦めたらしい。そんな空模様なので、客足のなさを、青展のせいにするのは筋違いかもしれませんが。

しかし昨日は、家人やバイトのχ君の話によれば、神田から回ってきたスタンプラリーのお客様が、何人もおいでになったようです。

皆さんすでに紙袋を提げていらして、もう本にはあまり食指が動かないご様子だったとか。買いすぎれば、書店巡りの重荷になるからでもあったでしょう。

さてところで、久々雨が上がった一昨日の木曜日、毎年のごとくハナミズキの枝を刈り込みに、植木屋さんがやってこられました。

家人が植えたワイヤープランツが、中の一本に絡みつくまでに育っています。それを見て「どうしましょうか」と声をかけられました。

家人と二人して「どうぞ適当に」と答えておいたところ、終わってびっくり、長髪が坊主頭になったほどに、サッパリと刈り取られていました。

おかげでネームプレートがはっきり見えます。しかし家人は、荒れ放題になっていた下地が前面に現れ、ほとんどうろたえんばかり。RIMG2369

一方、娘などは「これで看板がはっきり見える」と、あっさりしたもので、店主もまあどちらかと言えば、その組です。

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2017年10月27日

明古と青展と

今日から「神田古本まつり」。

明治古典会に行くために、神保町駅に着いたのが午前10時を少し回った頃。地上に出ると、靖国通りを挟んだ向かい側に、例年のようにずらりと露店が並んでいます。

もう少し人混みを予想していたのですが、それほど人だかりしている感じがありません。

以前のように、限られた会場で開かれているのではなく、とりわけ一丁目は、道路に沿って長く店が続いているためでもあるでしょう。

二丁目には横町に露店が並ぶ一画があるはずで、そこに行けばもう少し賑わいが見られたかもしれません。

ただ、かつてのように先陣争いをするお客様が少なくなったことは確かです。それも会場が拡散したことと関係しているはず。いくら急いでも、先に見られる範囲は知れていますから。

押すな押すなの熱気はなくなっても、逆にゆっくり本を見て回る人にとっては、現在の形の方が望ましいとも言えます。来場者数も、おそらく全体でみれば昔より増えているでしょう。

実際、時間と共に、人出も多くなったと聞きました。明古の会員、経営員にも出展者は多く、市場の仕事の合間を縫って、売り場との行き来に忙しそうでした。

RIMG2348例年「古本まつり」初日と重なるこの日は、市の出品が比較的少なくなるのですが、今日は点数も量も、むしろ多め。掛け持ち作業の仲間にとっては、お疲れの一日だったことでしょう。

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2017年10月26日

車で古書会館に

RIMG2361ずいぶん久しぶりのこと、古書会館へ車で出かけました。

洋書会など、ひと頃は電車より、むしろ車で行くことの方が多かった時期もありました。落札品を持ち帰るのに、その方が便利だったからです。

現在の会館になった頃から、周囲の安い時間駐車場が次第に減っていき、そのためもあって、ルート便(コショタン)制度が設けられるに及び、ほぼ車で出かけることがなくなっていました。

最近では、よほどのことがない限り、出品も落札品の運搬もコショタンにお願いして、専ら電車で出かけています。そのほうがずっと楽なのは言うまでもありません。

しかし今回は、ちょっと事情がありました。昨日仕入れた宅買い品、これを明日の明治古典会に出品したかったのです。明日を逃すと、翌週が祝日で休会のため、2週先になってしまいます。

本当は、昨日お昼までに作業を終えて店に戻り、午後に来るコショタンで運んでもらおうという算段でしたが、そんな日に限っていつもより早い到着で、こちらが予測より手間取ったこともあって、間に合いませんでした。

荷造りして、宅配便で送るという選択肢もありました。ダンボール箱3個ほどで、済ませるようにして。

ただ、その場合、洋書会に出品したい本は、後日に回すことになります。こちらの方も2〜3箱の量があります。

そこで、ついに意を決して、本日お昼過ぎに、車を運転して古書会館に向かったのです。

出発は午後1時半、戻ったのは2時45分。時間帯もあるでしょうが、昔よりずいぶん交通量が少なかった気がします。

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2017年10月25日

雨中の宅買い

何年振りかでお声が掛かって、おなじみのお宅に買い取りに行ってまいりました。

間をおいて、これまでに何度か伺っています。最初にお約束した日が先週の土曜日でした。朝から雨だった日で、延期を申し入れたのですが、「今回はたくさんなので、ともかくまず見に来てほしい」とのご要望。

それで下見ということで伺いました。

従来は居間に(時には庭に)本が出してあって、それをお引き取りしてくるという形でしたが、今回は建物を明け渡すらしく、ほかの部屋の書棚も見せていただきました。

確かに多くの書棚。しかもすでに主がいなくなって10年以上たつこともあり、どこから手を付けたらいいかわからないような状態。

そしてもうひとつ、旧蔵者の特異な趣味で、ほとんどの本にフィルムコーティングが掛けてあります。

売り物になりそうな本を選んで引き取らせていただく、ということで、今日をその日としてお約束しました。

RIMG2365 (2)そして今日、なんということかまたしても雨。しかし先方のご都合が、これ以上伸ばせないとのことで、雨の中をお引き取りしてきたのです。

小店の車にほぼ一杯。選び出し、運び出すのに朝の10時から午後1時半までかかりました。

この仕入れの内容については、この先、追々お伝えすることになるはずです。

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2017年10月24日

ホラー物の一口

RIMG2353今日の洋書会、「英語の推理怪奇小説を21箱ほど出品」という連絡が、昨日のうちに入っておりました。

果たしてどれほどの量かと想像しながら出かけてみると、思ったほど台が埋まっていません。

殆どがペーパーバックだったこと、そしてなにより「箱」が小さかったことが、その理由でしょう。

とは言っても、いかにも怪奇、ホラーらしく黒に銀や赤の配された表紙の本が、冊数にすれば数百冊はあった気がします。いくつかの山に分けられて、ずらりと並んでいるのは壮観でした。

そんな風で、表紙の色は黒かったのですが、いわゆる黒っぽい本ではなく全体に白っぽい本。つまり比較的新しい本が中心。あまり店主の趣味ではないので、じっくりとは見ませんでしたが。

関心が低かったから、大した量に見えなかったのかもしれません。もし自分で買うとなったら、置き場所に困るような量であったことは確かです。

それが一番大きな一口物で、ほかにも何口かの出品がありましたが、見て回ったところ、どうも入札意欲をくすぐる物が見つかりません。

そこで、雑用を済ませたあと、開札まで待たずに先に失礼することにいたしました。

雑用というのは昨日、中央市会に出品してボーになった本の片づけ。何度か組みなおしては出品している本も多く、いい加減に処分しようかと思ったのですが、しかし捨てるには惜しい。

そこでロッカーに押し込んできたのです。冷静に考えれば、ロッカー代がもったいないようなことですが、やはり本が一番捨てられないのは、古本屋自身なのです。

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2017年10月23日

台風を恐れる

KIMG0257大きな被害もなく台風が過ぎてくれたのは、幸いなことです。

昨晩のこと、娘の一人が「今度の台風は伊勢湾台風に似ているらしい」と、ネット情報を伝えたのに家人が反応して、思い出話が始まりました。

裏の呑川が氾濫して、とても怖い思いをしたという、何度も聞かされた話。

現在、住んでいる場所が家人の生まれ育ったところですから、60年近く前の記憶も、土地と結びついて鮮明なのかもしれません。

名古屋生まれの店主にとっても、切れ切れな場面としてですが、いくつか忘れがたい光景が頭に残っています。そのひとつは、泥のように濁った水が階段の途中まで競りあがってくる様子。

歯の根が合わない思いをしたことは確かで、数年後に妹が作文に暴露するところとなりました。今から思うと、妹は水害当時まだ小学2年生。よく観察していたものです。

もうひとつ記憶にあるのは台風の目。それまでの暴風が嘘のようにやみ、表に出ると空に星が見えたような。しかしこれは、その時だったかどうか今一つ確信がありません。毎年のように、強い台風に襲われていた気もしますから。

あのころの台風の恐ろしさに比べると、昨今は、肩透かしを食わされることが多いのですが、油断は禁物です。

台風が弱くなったわけでも、都市が災害に強くなったわけでもなく、僅かなコースの逸れに救われているにすぎないのですから。

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