2009年03月03日

出世払い

ちょっと意想外な、お申し出でした。

今僕は学生で金がありませんが、これから勉強して
研究者になるつもりです。
出世払いと言うことで本をお売りいただけませんか。

欲しい本というのは外国文学の個人全集。
9000円の付け値です。いつなら払えるのかと問うと
これから大学院に行き、その後、働くようになれば
払えると思うので、五年後です、ときっぱり。

実は前に一度お断りしました。改めての来店です。
地方の大学生で、この三月までしか東京にいない。
これが最後のお願いになると思う。その大学で
この春から大学院に入ることが決まった。そう言って
その通知やら、今東京で仕事をしている先の証明書やら
いろいろ見せてくれます。

あなたを信用しないということではなく、そういう
お話はお受けできません。と、再度お断りしましたが
その後も、15分ほどはあれこれ弁じ、帰ろうとしません。
お売り頂けばこの先もご縁が続きます、と真面目な顔で。
そのうち、実は自分のためではないのです、などと。
ついにはどこやらで25000円もする画集を貰ったが
申し訳ないから、いつかは払うつもりだとも。

こちらで受けられる条件を持ってきなさいと話し
ともかくお引き取り願いました。
また来そうな気がします。

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2009年03月02日

胸が詰まる

今朝の天声人語で、ホームレス歌人が話題として
取り上げられていました。
夫子はどうやら教養人らしい。そのような人が
「食うや食わずなんて胸が詰まります」
というような話でした。

教養と、地位、収入が必ずしも並行しないのは
いまさら驚くにはあたりません。

小店の表の均一台には、英・独・仏などの原書を
格安で並べていますが、その多くは学術系の本で
読み物も古典、名作といわれるものが中心です。
先生方、院生、学生さん、もちろん外国人とりわけ
留学生、といった方々が主に買っていかれますが
時折り様子の異なるお客さんがおられます。

ひとつはディスプレイ用に求められる場合で
これは今回の話とは別。
いまひとつが、まさに「胸が詰ま」るケースです。
このような本を求める人が、どうしてと思うような
風体の方が、過去に何人もおいででした。

格差社会というものは、今に始まったわけではなく
根深い要因を含んで確固としてあるように思うのです。


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2009年03月01日

駒場懐古:ゆき書房

店の前の通りを少し行った郵政宿舎の金網に
古い地図看板が残っているのに気がつきました。
ブリキに白いペンキを塗り、簡単な地図が書かれ
建物や店の名前が入っています。

そういえば随分前に、広告を取りに来ました。
その時、お断りしたので小店の名はありません。
しかしそこに、懐かしい名前がありました。
それが「ゆき書房」さんです。

この看板のちょうど向かいにあたる場所で
4、5坪ほどの小さなお店を開いていました。
小店より二年ほど遅れてだったと記憶しています。
勤めを定年退職され、かねて夢であった古書店を
始めたとの事。趣味で収集してきた文芸書を中心に
仕入れもご自身でセドリに回るという、商売気が
感じられない店作り。
一部に根強いファンも付いていたようです。

そんなに近くの同業でも、殆どお話しする機会は
ありませんでしたが、たまに顔を合わせると組合に
入るよう勧め、しばらくして組合員となりました。
しかしその後まもなく、店が閉められたままとなり
ご病気だという噂が聞こえてきました。

結局、店は再び開くことなく、やがて訃報が届きました。
お店として営業されていたのは、ほんの数年の間ですが
試みにWEBで検索をかけてみたら、思い出を語っている
方が居られました。
もって瞑すべし、でしょうか。


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2009年02月28日

ネットワーク工事

土曜の渋谷に昼過ぎ、用があって出かけました。

駒場で西口から乗ると、アヴェニュー口(という
ことを今日はじめて知りました)から出るまで
混雑に遭わないですみます。
しかし一歩、道玄坂へ踏み出すと、人の波と
あちこちから拡声器を通して呼びかける音の渦。
目的地へ着く前に疲れてしまいます。

今日の目的地はビックカメラ。
店の二台のコンピュータをつなぐネットワークが
不調で、原因はケーブルのコネクターが磨耗した
のではないかと見当をつけ、新たに買うため。
思えば渋谷で買い物をするのは、この店以外には
デパ地下か、のれん街で食品類を買う時だけ。
もう何年も、そんな淋しい消費生活です。

すぐに戻って、新しいケーブルで接続を試みました。
ぎっしり詰まった本箱や、本棚の裏を這わせるので
まず一苦労。さらにずいぶん余裕を見たつもりが
あわや足りないかというほど長さギリギリ。
これで見当が外れていたら、ここまでの努力が
まったく水の泡となるところでした。
幸いなことに、接続は順調、無事に一件落着です。


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2009年02月27日

この冬一番

雨が、市場に出かける頃には雪混じりに。
そのまま一日降って、この冬一番という寒さ。
明治古典会も、特選市ながら出品少なめ。
もっとも、特選は、量的には多少絞っても
良いものをきちんと並べようというのが主旨で
その意味では、見やすい市だったともいえます。

いつもよりかなり早めに終わり、終了後、総会。
折に触れ、市会の運営などについて報告したり
話し合ったりする会議で、現在30名の会員の
9割近くが出席するというまじめさ。
いまは早くも、この7月に開催予定の七夕大入札会
の準備に取り掛かっていて、そんな話題も。

いつもならその後、会員仲間で食事をしてから
店に戻るという段取りが、本日は訳あって
すぐ店に帰ってきました。訳というのは、バイトの
可Y君が都合でお休みなのに加え、末娘が発熱。
店番、店閉めが手薄になったためです。

帰ってみると、店もこの冬一番の寒さ。
ただ買い取り希望のお客様から荷物が三箱
お持込が二袋。
明日は日差しが望めるのでしょうか。


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2009年02月26日

教科書売ってます

今日も曇って、時々雨、そして入学試験二日目。
昨日に続いて教科書の話をします。

教科書を扱う古書店が何故少なくなったのでしょうか。
学生が勉強しなくなったからだ、という答えは年輩の
かたには受けが良いかもしれませんが、必ずしもそう
とは思えません。むしろ試験で良い点を取ることには
昔より、よほど熱心な学生が多いようです。

理由の詮索はともかく、小店も開業以来、教科書売買を
柱の一つにできないかと、いろいろ試みました。
新学期に使われる教科書、参考書リストを入手し熱心に
拡充を計画した時期もあります。

しかし教科書売買の難しさは、必要とされる本が限られ
必要な時期もまた限られていること、買う人、売る人も
限られていることです。
何年か前、この中古教科書売買を事業化しようと試みる
学生グループが現れ、店先を貸したこともありますが
結局、継続できませんでした。

そんなわけで昨日も言うように、細々と、店の一角を
教科書、参考書コーナーとして、扱いを続けています。
この一角に引き寄せられて、やがては古書の世界に
興味を持つ、そんな学生さんが一人でも多く生まれる
ことを願いつつ。


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2009年02月25日

教科書買います

朝、家を出る時は細かな雨がしっかり降っていて
今日、明日は、東京大学の試験日、お客様など
一人もおいでにならないのでは、と案じておりました。
昼ごろ雨がやみ、時折薄日も差して、どうやら
本屋へ足を運ぼうという奇特な方も現れた様子。
ありがたいことです。

学校の方は年度末を控え、先生方は残務処理に
学生さんは引越しやら卒業準備に、それぞれ忙しく
なってきました。
小店でも、学生さんの教科書、参考書などの持込が
このところ増えてきています。

教科書というのは、古本の中でも基本的な商品でした。
神保町に古本屋街が生まれたのは、かつて辺りに
学校が多かったからだという説もあります。
本郷は言うまでもなく、早稲田でも、一世代前までは
軒を並べた古書店の多くが、教科書を扱っていました。
少し大きな大学の周りには、必ず一軒や二軒、そうした
教科書屋さんがあったものです。

どんな事情の変化によるのか、今では教科書を扱う店は
数えるほどになりました。
中古教科書がよく売れた時代には古本屋がなかった駒場で
今になって細々と教科書を扱っていると言うのも、何やら
不思議な気がします。



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2009年02月24日

洋書にもいろいろ

今日は火曜日、東京洋書会。
2月は当番の月ではないので、普通なら
昼過ぎに出かければ良いところですが
特別に大口の出品があるということで
呼び出しがかかりました。

朝10時過ぎに古書会館へ着くと、4階の
会場には既に本が広げられています。
90×180cmのテーブルを3台並べて一列。
それを中央に8列ほど並べ、他にも壁に
沿ってぐるりと同じテーブル。
窓側には形の異なる陳列棚、よほど多い
量でも、ここへ持ち込めば広げて整理する
ことができます。

今日の一口はそのうち6割ほどの場所を
占領して、なるほどかなりの大口です。
聞けば、これでまだ半分。同じくらいの量を
日を改めてもう一度、持ち込むとのこと。

問題はその本の種類ですが、経済、それも
金融、財政関係の専門書。仕分けと言って
本を買いやすく、かつ高値になるように分ける
作業が、市場ではもっとも大事な仕事ですが
専門違いの店主には、皆目手がつけられません。
仕分けた本を縛ったり、それを並べたりという
下働きを手伝いました。

もちろん、それ以外の出品もあって、小店の
本日の収穫は日本書(文庫、新書)とドイツ
文学の小さな揃い物。
良い文庫が入りましたので、早速、棚に入れる
つもりです。

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2009年02月23日

雨で月曜で

それでなくとも憂鬱に支配されがちな日
朝刊を開いて、さらに暗い気分になりました。

朝日新聞第二面、グーグルが著作権集団訴訟で
原告と和解し、裁判所の承認を受け、本格的に
デジタルライブラリー事業を促進させるだろうと
書かれています。

そのやっている半分は、図書館から本を借り出して
コピー出版する、いわゆるリプリント屋さんと
変わりありませんが、理屈と膏薬はどこにでも
貼りつく喩えどおり、高邁な目的がサイトでは
述べられています。

グーテンベルク以来といわれる出版革命が
どのような方向へ進むか、予測はつきません。
写本が活版に取って代わられた、さらには活版が
電算写植、DTPに移行したより、ずっと短い時間で
はるかに大きな変化が起きることでしょう。
やがては本というものが図書館ならぬ博物館でしか
お目にかかれない時代が来るかも知れません。

本がなくなれば、もちろん古本屋はありません。
しかし、幸か不幸か、それよりもっと切実な問題が
日々数多あって、明日を思い煩うまでには至らない
のが現実です。


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2009年02月22日

老舗とは

テレビから「50年続く老舗旅館」という言葉が聞こえ
違和感を感じたことがあります。

確かに短い時間ではありません。
10年続く企業は5%に過ぎないという話を聞いたことが
あったので調べてみると、やはりそのようなデータがあり
50年続くのは0.7%となっています。

しかしそれは、あらゆる企業を平均的に見たものでしょう。
たとえば旅館1000軒から50年以上続いている所を数え出せば
7軒ということはないはずです。
一般的な印象として、旅館の50年は特に老舗とは思えません。

では古本屋の場合はどうでしょうか。
100年以上続く店を数えれば、すぐさま10指に余るこの業界
ですが、50年以上続いている現存店舗は、同業間でも古株に
入ることは確かです。
ただ、50年というのは微妙な数字です。
生涯現役を続けられるこの業界では、ご自身で始められ
跡取りもないまま店を閉じられる方でも、50年続けることは
可能だからです。
しかしそのような場合、例えば弘文荘反町さんでさえ
老舗とは言い難い。
一方で、50年経てば3代目が店を継いでいる場合もあります。
3代続けば立派な老舗、という見方は出来るかもしれません。

企業と個人営業とでは事情が異なるとはいえ、経営環境が
厳しいことは同じです。
小店はようやく26年、先のデータに照らせば存続率は3%。
老舗への道は遠いですが、よくやってきたと思います。


konoinfo at 13:57|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
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