2009年11月02日

子猫騒動

いまどき「犬や猫の子でも貰うように」猫の子を貰うわけにはいかない、というお話です。

家人が猫を飼いたがって、知り合いの獣医さんの斡旋で一匹、譲り受けることになり、可愛い子猫が我が家に来ました。

そこまでは良かったのですが、聞けば一週間は「お試し期間」で、飼い主のご夫婦は未だ譲ると決めたのではないといいます。

翌朝、その飼い主から店に電話がかかってきました。「昨日お渡しする時に、じっくりお話できなかったので、今日、30分でいいからお宅に伺って話し合いがしたい」と。

何を話すというのか、ともかく今日なら店で、家でなら別の日にと申し上げると、あくまで今日、家でと譲りません。話を続けるうちに次第にはっきりしてきました。

要するに実地検分をしたいというのが、一番の目的のようでした。こちらの言葉だけでは信用ができないというわけでしょう。

彼らの気持ちも分からなくはありませんが、これから先も、猫のために暮らす気はありません。お返しすることに決め、その旨をお伝えしました。

先方は、なんだかほっとされたようでした。彼らの方も、何か違う種族だと感じたのかもしれません。子猫は無事、飼い主の元へ戻っていきました。

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2009年11月01日

お持込み

「日本古典文学全集」と「大漢和辞典」があるのですが、買ってもらえますか、というお尋ねがありました。随分前のことです。

どんなお答えをしたのかも忘れていましたが、昨日になって「今からもって行きます」というお電話がありました。

いずれも基本図書中の基本図書。とりわけ大漢和は、我が国の出版史上にも特筆されるべき出版物です。

片や菊判51冊、もう一方も縮写版とはいえA5判13冊で、各冊が並みの本の2冊分以上の厚さ。このいずれも、セット価格の下落振りは目を覆いたくなるほど。

古典全集については、その後、一部が判型を変えて出されたうえ、近年になって新編が出版され、ほぼその役割を終えました。大漢和は修訂第二版が平成に入って刊行されたことで、元版は、かつて出回った台湾海賊版より安価なものとなりました。

電話からしばらくあって店の前に車が着き、大振りの段ボール箱が何箱か下ろされました。つけた値段は、本に対して申し訳ないようなもの。しかしもとより値段には拘っておられません。捨てるに忍びないというお気持ちからでした。

かくて出版界の良心64冊が、うずたかく残されたのです。

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2009年10月31日

「ねこに未来はない」

ある日、家人が猫を飼いたいと言い出しました。

猫の飼い主を募集するサイトやら、「里親求む」の貼紙のある獣医さんに連絡を取って、斡旋を頼んだのですが、条件が厳しくてなかなか譲ってもらえません。

条件の第一は、家の外へ出てしまうことはないか。第二は留守にすることはないか。

後者は調べようがないでしょうが、前者については家の構造についてまで詮索されます。あるグループに申し込んだ時には、網戸の具合を確かめに行くといわれたことがあり、さすがにお断りしたといいます。

それで分かったのですが、近頃、野良猫を殆ど見かけません。いわんや捨て猫においておや。

これはこうした皆さんの努力の賜物かもしれませんが、店主など、家から一歩も出してもらえない猫というのも、哀れな気がします。唐突に長田弘さんの本の題名が思い浮かんだ次第。

店番のミセスBにそんな話をしたところ、以前、自宅の前を通りがかった人から「この寒いのに犬を家に入れないのですか」と叱られたといいます。まるで虐待者扱いだったとか。

犬も炬燵で丸くなる時代なのでしょう。

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2009年10月30日

明古10月の特選市

10月も明日一日残すだけ。というわけで今日の明治古典会は特選市。国文学カーゴ10台という一口、錦絵コレクションの一口が目玉でした。

国文学は雑書が少なく、函入りの研究書が中心。以前なら一冊ずつでも入札できるような本が沢山ありました。いまでは少なくとも数冊、時には十冊以上まとめないと札が入りません。

それでもやはり筋が良かったので、近頃の学術系の出品としては、割合良い値段になったようです。

錦絵の方は画帖になったものが二点、巻物14本を一括としたものが一点あり、これらが本日の落札値トップスリー。

とはいえ、巻物14本には合計500枚を超える錦絵が貼り込まれていましたので、一枚当たりにすれば、高いものではありません。良い浮世絵なら一枚でその値段になることもありますから。

それより巻物というのは、確かに収納には優れた形ですが、中味を見るためには文字通りスクロールしてみるほかなく、入札しようとする業者は入れ替わり立ち代り、巻いたり戻したりして忙しそうに品定めしていました。

巻子は本の古い形とも言われます。今日の様子を見ていて、冊子という形は、優れた発明であったことが、分かりました。

先週に続き帰りの地下鉄が、人身事故によるダイヤ乱れ。久し振りにスシ詰め電車に乗り合わせました。

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2009年10月29日

猫またぎ

黄昏迫る頃、電話が鳴り受話器を取りました。

お客様:買取りはやってらっしゃいますか
店主:やっておりますよ
客:ドイツの古い辞典があるんですが
主:古いというのはどれくらいですか
客:さあ、何十年かな
主:うんと新しいか、うんと古いかだといいんですがね
客:どれくらい古ければいいんですか
主:百年、二百年古ければね
客:わたしの子どものころには新しかったので、そこまで古くはないですね。マイヤーという百科辞典です
主:とすると、今はディスプレイに需要があるくらいですね
客:じゃあ、きれいじゃないとダメですか。引き取っていただくだけで良いんですけど、なんだかもったいなくて
主:場所はどちらですか
客:川崎です
主:他に、本はないのですか
客:実は昨日、全部引き取ってもらったんです、リサイクル屋さんに。これだけは無理だといって残していかれて
主:良い本をお持ちだったんじゃないですか
客:父は剣道をやっていたので、そんな関係の本とか
主:そういうものでもあれば、一緒に引き取りにうかがえたのですがね
客:先にお電話すれば良かったですね
主:またご縁がありましたら

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2009年10月28日

いいんですか?

前から約束してあった宅買いに、午後、行ってきました。

行く前にグーグルマップで確かめると、かなり道の狭そうなところです。しかし距離にすれば4、5キロ、ともかく出発しました。

近くまで行って比較的道幅のあるところへ止め、歩いてお宅を探すと、細い路地を入った先に、すぐ見つかりました。玄関先に車庫もあります。しかし今来た路地からは入れません。

進入路を教わって一回りし、別の路地からバックで入ったのですが、これがなかなか難儀しました。

さてお宅には本棚から下ろした本が一階と、二階に平積みしてあります。小店の向きではありませんから、お引取りしてもそのまま市場に出すことになりますと申し上げると、とにかく片付けてもらえればというお返事。

車にほぼ一杯積んで、御代を渡そうとすると、とても驚かれました。片付けていただいた上に、お金までもらっては申し訳ないと、なかなか手をお出しになりません。

ともかく受け取っていただき、戻ってその整理、結局午後はこれでつぶれました。

明日、古書会館へ運ぶつもりです。市場の結果次第では、無理に御代を置いてきたことを、悔やむことになるかもしれません。

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2009年10月27日

本余り

ようやく一区切りがついた気がします。洋書まつりで売れ残った本の、かなりの部分を今日の洋書会に出品し、ある程度、売りさばけました。

ディスプレイ需要によるところが大です。

おかげでセール前より本が増えるという状況だけは、回避することができました。

とはいえ投げ売りする踏ん切りのつかない本も、まだカーゴ半分ほどは残っています。既に持ち帰ってある分と合わせ、これらはもう一度、更に値を下げて店で売っていくつもりです。

何とか次の読み手に巡り合って欲しい。戻ってきた一冊一冊の本を改めて手に取って、そう思います。それでも売れ残り、最後には資源ゴミに出すしかないものも、少なくありません。

古本屋の店の棚にある本は、決して売れ残っているわけではなく、書店主がまだその命を永らえさせようとしている本なのです。世にある本の量に比べ、一軒の本屋はあまりに狭く、日々、苦汁の選択に晒されながら、なお生き残っている本なのです。

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2009年10月26日

神保町だけじゃなく

朝から冷たい雨が降る、静かな月曜日。

約束通り、開店早々に荷物が届き、予想した通り、一日がかりで片付いたのは半分くらい。ご来店のお客様も少なく、捗る条件は整っていたにも拘らず。

いよいよ明日から神田の古本まつり。第50回の節目でイベントも盛りだくさんです。

どこであれ、何であれ古本、古本屋に関心が集まるのは良いことですから、その意味で神田が頑張ってくれるのは有り難い。

それでもやはり、複雑な思いが残ります。何時でも話題は神田、神保町。毎日新聞社が出していた「アミューズ」という雑誌が、ムックとして生き残ったのは、年に一度、この「神保町特集」があったおかげだと聞きました。

確かに神保町の求心力は、ますます大きくなっています。組合加盟店だけで170軒に迫ろうという勢い。

しかし東京で約630軒以上。全国で約2300軒。この業界全体が元気でなければ、神保町の明日もありません。

古本文化人(?)の皆さん、この点への目配りも忘れずに、応援よろしくお願いします。

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2009年10月25日

体力勝負

雨のち曇り。ドアを開放して帳場に座っていると、足元がヒンヤリするような薄ら寒い天気。空の暗さも相俟って、晩秋の気配さえ漂っています。

行事が終わって、一息つきたいところですが、二日間店を留守にした、その皺寄せがきて、今日も朝からひたすら片付け仕事。

お客様の持込が何件かあり、値踏みしてご連絡し、ご了承を頂いたものから値付けして店に出す。この仕事が、結構時間を食いました。

売れ筋の本であれば、値踏みも楽ですし、連絡するのも気が楽ですが、実際はその逆のケースの方が多く、何とかご納得いただけるよう何度も本を見直し、言い訳も用意して電話しなくてはなりません。

これを一渡り済ませて外を見ると、5時過ぎというのに、すでにとっぷりと暮れています。

明日は朝一番で、洋書まつりの売れ残りと、新たに仕入れた本とがカーゴ一台着くことになっていて、この整理に、また一日が費やされることになる筈。

明後日は洋書会。大量の出品が予定されていて、しかも当番の人数が少ないことが分かっています。体力が持つでしょうか。

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2009年10月24日

洋書まつりを自己総括

朝から曇り空で、予報より早く、夕方から雨。

このお天気が、出足に影響したのでしょうか。昨日とは違って、なかなか客足が伸びない一日でした。

帰りに運ぶ荷物が少しあったので、久し振りに車で会館へ。土曜日の朝とあって交通量も少なく、予想より早く到着。

帰りも表参道を過ぎる辺りまでは、全く順調。ただし、そこから渋谷駅を抜けるまでは、相変らずの混雑。店に着く頃には本降りになりました。

さて二日間の成果ですが、参加各店悲喜交々。準備や宣伝に努力した店は、それなりに良い成績を上げた、ということでしょうか。

小店の場合は、ほぼ前年並み。数は伸びませんでしたが、金高のものが前回より出ました。この結果を次回にどう活かすか。などと今は思っていても、また直前の泥縄になる恐れは多いにあります。

一向に懲りないところが、古本屋らしい?しかし、それなりに懲りて、他の即売展からは足を洗ったのですから、残る一つくらい、それも年に一度くらい、まじめに取り組まなくてはいけませんね。


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