2015年12月20日

カレンダー

RIMG0637昨日、土曜日なので午後6時に店を閉めておりましたところ、「もうおしまいですか」と家人に尋ねている一人のご婦人がおられました。

片づけを続けながら、聞くともなく聞いておりますと、どうやら小店のカレンダーがお目当ての方のようです。

「もう一日こちらにいますから、明日はもう少し早く来て、少しでもお店を見せていただきます」と言ってお帰りになったとか。

以前、カレンダーを差し上げたことがあり、それがいたくお気に召されたようで、そのためにわざわざお寄りいただいたらしいのですが、結構遠くからお越しいただご様子。

毎年この時期に、こちらに来るご用があり、しかしその用事の関係で、閉店間際になってしまうことを、悔やんでおられたらしい。

別段、明日また来られずとも、今、差し上げますよと、家人も申し上げたと言うのですが、それを振り切るようにお帰りになったそうでした。

そして今日、閉店時間も迫り、果して本当においでになるのだろうかと案じておりましたところ、6時の15分ばかり前、表の棚をご覧になっているご当人が眼に入りました。

それから閉店までの間に、2冊の本をお選びになり、帳場に来られましたので、わざわざお越しいただいたお礼を申し上げ、謹んでカレンダーを贈呈させていただきました。

するとそれに対して、「一年、机の上において楽しませていただいています」とのお言葉。なんだかかえって申し訳ないような。

そこでふと思い出したのは、先日、閉店後に起こしになった「一年に一度」というお客様。あの時、せめてカレンダーでも差し上げるのだったと、今頃になって思うのです。

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2015年12月19日

多言語趣味

RIMG0670アルメニア語の辞典、リトアニア語の聖書……

大きなキャリーバッグから次々出てくるのは、例によって世界各国の言語に関する書物。もうお馴染みになった、Mさんのお持込です。

辞典や聖書なら、結構お客様もいらっしゃいます。マイナーな言語でも学習書であれば、その本自体が何語で書かれているかが問題ですが、売れないこともありません。

日本語で書かれている学習書は、適切な値段さえつければ売ることが可能。英語でもなんとかなります。仏語独語で書かれていると、お客様はかなり少ないでしょう。

さらに売り辛いのは、学習書より一段レベルが上がった、語学研究書。このクラスになれば、書かれている言語はさほど問題ではありません。その言語を研究している人が、どれくらいおられるかのほうが問題です。

一番売り辛いのは、マイナー言語自体で書かれた、聖書以外の書物。聖書なら何とかなるというのは、先に申し上げた通り。

ただし、マイナー言語などと呼んでおりますが、その定義を承知しているわけではありません。店主が見て何語か分からないようなものは、とりあえず勝手にそう呼んでいるだけです。ですから話者の数で言えば、日本語より多い場合もあるでしょう。

ともかく、そうしたマイナー言語の学習書、語学書などを、今日もまた30冊ばかりお持ちくださいました。チベット語の辞典もあれば、ノルウェー語、スウェーデン語もあるといった具合。

一体どれくらいの言語の本を集めておられたのか、感心を通り越して、ちょっと呆れます。などと言っては申し訳ありませんが、何度かお越しいただくうちに、いささか親近感も生まれ、ご本人に直接そう申し上げたこともあります。

「私が買ったくらいだから、必ず買う人がおられますよ」というのが、Mさんの言い分なのですが。

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2015年12月18日

『失敗の本質』という成功

RIMG0676柄にもない本を読み始めてしまいました。『失敗の本質――日本軍の組織論的研究』です。

初版が出たのは1984年でダイヤモンド社から。今読んでいるのは中公文庫の44刷で2011年刊。当時から話題になったベストセラーで、文庫化されたのは1991年のことですから、息の長いロングセラーです。

なぜ読み始めたのかといえば、いつもながらの理由、たまたま手に入ったからですが、手に入る本をすべて読むわけではありませんから、自ずから別の理由もあるわけです。

そもそもこの本が、これほどのロングセラーとなったのは、そのタイトルの功績によるところが大きいでしょう。

文庫版あとがきにも、刊行以来、本書はわれわれ執筆者の予想、あるいは期待以上の反響を呼び、その大きさに執筆者たるわれわれ自身さえ当惑させられる程であった。『失敗の本質』というやや誇大なタイトルが、読者に誇大な期待を抱かせ、多くの関心を引いたのかもしれない。とあります。

では、人は失敗を避けようとしてこの本を読むのでしょうか。いわゆるベストセラーの時期は、確かにそんな側面があったかもしれません。その手の啓発本でないことは、はしがきを読むだけで分かるのにもかかわらず。

しかしロングセラーとして読み継がれてきた要因は、店主が推測するに、なんらかの失敗を経験した人が、ふとした拍子にこのタイトルを目にし、つい手にとって読むケースが多いからではないかと思います。

そして何らかの失敗というのは、経験しない人の方が稀でしょうから、まさに浜の真砂ほどにも、読者予備軍は控えているといえるわけです。

かく申す店主も、最近、いささか失敗感に捉われることがありまして、その原因を分析するヒントが得られるかもしれないと、読み始めたのでした。

読み始めて見ますと、なかなか面白い。面白いというのは不適切かもしれませんが、とても興味深い。日本軍が、いかにダメな組織であったかということが、良く分かります。

とはいえ、本書には数字としてしか表れない兵の数が、1つ1つかけがえのない人命であることを思うと、決して興味本位に読んではならない本であるとも思うのです。

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2015年12月17日

壮行会、忘年会

昨日は、我が家族5人のうち4人までが揃って横浜中華街に出向き、南半球一周の船旅に出る友人一人のための、壮行会をいたしました。

尊敬する先輩のKさんから事前に情報を貰い、上海蟹と紹興酒が絶品と言う店を予約してあったのです。Kさんは元横浜国大教授。現在も市内にお住まいです。

美術史がご専門ですが、食に対しても優れた感覚をお持ちですから、そのオススメならまず外れはないと確信しておりました。

テーブルが4つ。12人も入れば一杯という小さな店で、知らずに訪れたらまず入ることはないでしょう。そのご主人が独特な方で、ちょっと水を向けると、さまざまな薀蓄を語ってくださいます。

KIMG0244そしてそのご自慢が「酔っぱらい蟹」と、「シングルモルト」の紹興酒。プロが食べにくる店だとは、ご自身の解説。確かにどちらも絶品でした。

あまり宣伝して欲しくないとおっしゃいますから、あえて店名は伏せます。もしご興味があれば、メールででも直接お問い合わせください。秘密にはいたしません。

そして今日は、今年最後の、となるはずのTKI会議。月に一度の定例会議でした。ただし開始時間は、3時間前倒しして午前11時。しかし終わったのは結局いつもと同じ、午後6時半。

それでも8時近くになる時もありますから、少し早めに終了できたと言えるでしょうか。

いつもの年なら忘年会でも開くところですが、今年は諸事情により、取りやめ。その代り新年会を持つことになったようです。

ようです、というのは、その話し合いの席には居りませんでしたので。今日になって知りましたが、もちろん異議はありません。

むしろ、今日が忘年会でなくて助かりました。明日はまた、忘年会が入っているからです。

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2015年12月16日

あるお客様のお話

全共闘本が、ブームだそうです。

お断りしておきますが、根拠のある情報ではありません。昨日ご来店になった、初めてのお客様が、お話しくださったことです。

「社会科学関係は、このあたりですか」とお尋ねになってから、「お、これいただきます」と仰って、『1968年には何があったのか : 東大闘争私史』(唐木田健一 批評社 2004年)を、帳場までお持ちになりました。

どうやらご当人も、その手の本をお集めになっているようで、「東大駒場の近くだから、もしや面白い本があるのではないかと、寄ってみた」のだそうです。

反逆のバリケード』やら『知性の叛乱』やらの初版本が、Am*zonなどでも、ずいぶん高値を付けている。何とかいう本は、今はン万円もしているが、自分は若い頃、水道橋の本屋さんで300円で買ったことがある――というようなことを、滔々と語られました。

お話の中でご自身を「自分は団塊世代より10年後の、昭和32年生まれです」と告げられ、「渋谷のジュンク堂へ行くと、定年退職した団塊世代が、本を沢山積んで読み耽っていますよ」と、羨ましいのか、腹立たしいのか。

そもそも目の前の店主を、幾つくらいとお考えになっているのでしょう。話はさらに続きます。

「SEALDS以来、あの時代がまた脚光を浴びているんじゃないでしょうか。若い人たちにも関心が高まっているようです。もっとも彼らにとっては『水戸の天狗党』のようなものかもしれませんね」

RIMG0497ひとしきり話してお帰りになりましたが、なるほど小店で『反逆のバリケード』や『知性の叛乱』を最後に売ってから、もうどれくらい経つでしょうか。過去はいつの間にか、歴史の中に回収されていきます。

と書いているうち、『新左翼の遺産』(大嶽秀夫 東京大学出版会)にネット注文が入りました。ホントにブーム?

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2015年12月15日

午後から洋書会

午前中はひたすらデータ入力。

最近、国際関係論関係(ややこしい!)のまとまった入荷がありました。そのうちの日本書だけでも、まずは「日本の古本屋」に上げてしまおうと、昨日から続いての作業です。

比較的新しい研究書ばかり。もっともこの分野、古くなったらあまり役に立たないものも多そうです。そんなこともあって、とにかく早めにと、40点ばかりをお昼までにアップしました。

現在のシステムになって、この登録作業については、格段に楽になりました。他にいろいろと不満な点はあるにせよ。

午後からは洋書会です。お昼を済ませてからゆっくり出かけました。着いたのは午後2時近く。それでも開札までには、まだ1時間あります。

RIMG0663出品量は多くもなく、少なくもなく。ただし、2、3の大口出品で、ほぼ占められていましたから、ジャンルとしては偏りが生じます。関心のある業者が限られてくるわけです。

幸いなことに、店主にとっては関心のある口が出ておりました。フランス文学者の旧蔵書です。文学、思想、それに演劇などなど、カーゴにして4〜5台。

それらが大きく10点ほどに仕分けられていましたから、1点が2、3百冊くらいの分量。見ていくと、その1点ごとに少しずつ、欲しい本が混じっています。こういう時が一番悩ましい。

全部を買い占める力もありませんが、仮にそんなことになれば、たちまち置き場に窮します。結局、お目当ての本の多さに比例して、少しずつ値段を加減して入札いたしました。

結果、落札できたのは一山だけ。皮肉にも、一番お目当てが少ない山でした。明日運んでもらうために、縛ってカーゴに積むと、ほぼ半分の高さまで埋まりました。

明日は、この本の整理です。

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2015年12月14日

ある目録集成

稲垣書店「二代目」店主、中山信行さんから本が届きました。

nakayama非売品だというので、ここでご紹介するのも気が引けますが、同封の挨拶状に「六百人からの方にいっせいに発送した」とありますから、本人を知るほどの同業には、届けられていることでしょう。

その1人に加えていただいたことを、まず有り難く思います。

などと殊勝なことを言っていると、すぐ突っ込まれそうです。なにしろ「通りいっぺんの返礼など無用、どうぞじっくりご一読の上、正直なキタンのない感想を」と書いてくるご仁です。社交辞令など一番嫌いなはず。

この本の口絵写真の中に、ご当人の出版記念パーティーの写真が何枚か載せられていますが、この時、店主は事前に、スピーチを求められておりました。その理由がふるっています。

自分の知っている同世代の仲間で、自分より商売が下手な唯一の男だからというのです。

下町ッ子の口の悪さは、嫌いではありません。しかも言うことが正鵠を射ていましたから、断る理由もなく、短いスピーチをいたしました。無論、今となっては何をしゃべったか、思い出しようもありませんが。

さて、まだとても「じっくりご一読」などできていないのですが、この本を何と称したらよいのでしょう。副題にあるとおり、「日本古書通信」に107回にわたって掲載した、稲垣書店目録の再録がベース。

その各回に、それぞれ解説を付したのが第一部。さらに「古通」に寄せたものが中心の「文章あれこれ」が、第二部としてまとめられています。

稲垣書店の歴史でもあり、目録営業という形の記録でもあり、さらに映画文献資料集成として、それ自体貴重な資料であることは言うまでもありません。

なによりその包み隠しの無さ。ここまで自分の商売を白日の下にさらけ出せるとは。あらためて彼の「もともとしつこい(原文傍点)タチ」に驚異と敬意を覚えたのでした。

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2015年12月13日

文庫買います

昨日は南部支部の入札市でしたので、朝一番に五反田の南部地区会館に行きました。いつものことながら、大量の出品で、会場はさながら本の迷路。

RIMG0669その中を、目当てのものを探して順に一回りするだけで、30分以上はかかってしまいました。小店の場合、支部市では、目的を文庫本の仕入れに絞っていますから、まだそんなもので済むのです。

無論、店向きの本があれば足を止め、入札できそうかどうか検討します。しかし昨日の市では、文庫以外に入札したのは数点。しかも、それほど熱のこもった札ではありませんでした。

夕方には、結果がネットに上がっておりました。文庫は5本口と6本口の2点を落札。合わせておよそ250冊ほど。一番欲しかった口ではなく、いわば保険として札を入れておいた口。

なにしろ表の文庫棚の空きが目立って困ります。何とかして棚埋めの材料を確保することが、最大の使命でした。とはいえ、文庫なら何でも良いというわけでもありません。

今朝一番に車で引き取りに行き、店に持ち帰って改めてその成果を見直したところ、案外売れそうな本が揃っておりました。決して大漁とは言えませんが、まずまず良い収穫であったと思います。早速値札を貼って、並べることにしました。

それにつけても、落ちなかった口は、果たしていくらで落札されたのか、いささか気になるところです。僅かの差であったことはまず間違いない。

それがどうして落ちたり、落ちなかったりするのかというのは、実際、微妙なところです。まず歩留まりをどこまで見込めるか。要するに、どれが活かせる文庫かという判断。次には、その売値。幾らにつけられるか。そうしたことを短い時間で判断して、札を入れるのですから、勝敗はまあ時の運。

ですから、お客様から直接買い取らせていただくのが、一番ありがたいのです。

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2015年12月12日

年に1度

口を開くとグチになりそうで、と言いつつ、もう開いてしまいましたので申し上げますが、今週は本当に惨憺たる売上の日々で、契約更新などすべきではなかったのではないかと、つくづく考え込んでしまいました。

1449637666217-1183307007冗談ではなく、道路工事で前の道路が通行止めになっていることが、影響しているのではないかと疑っております。それくらい、ご来客数が激減しました。

何度も東京大学のホームページを開いて駒場の授業日程を確認してみるのですが、今年の学期末試験が終わるのは12月25日。授業も来週いっぱいはあるはずです。

まさか試験勉強に忙しくて、本屋を覘く時間がない、というわけではないと思いますが。

正直なところ、前期課程生(1・2年生)約6千名の方々には、さしたる期待を寄せてはおりません。以前のように教科書系の本が入らなくなったこともあり、河野書店の認知度は、せいぜいその数%であろうと観念しております。

しかし、後期課程生(3・4年生)、大学院生、さらには教職員の方々が、駒場には大勢いらっしゃるはずで、数え方にもよりますが、合わせれば3千名は超えるでしょう。

その3千余名の方が1年に1度くらい、気まぐれにでも小店を訪れていただきさえすれば、毎日10名ほどが、ご来店になる勘定。授業期間は1年の半分もありませんから、それを勘定に入れれば、毎日20名です。

あまりのヒマさに、そんな埒もない計算をしておりましたら、数年前に退職されたM先生が、それこそ1年ぶりくらいにお越しになり、AdornoかHorkheimerはないかとお尋ねになりました。

運よく在庫があり、ご覧にいれると1冊お買い上げ。どうやら車で来られた様子でしたので、今日が土日の休工日であったことも幸いしております。

さて、店を閉めて出ようとしたとき、「もう閉店ですか」とお一方。「年に一度こちらへ来るので、その時、寄るのをいつも楽しみにしているのですが、残念、また来年ですね」とお帰りになりました。

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2015年12月11日

本屋の本知らず

本降りの雨が午前10時頃に上がると、日が差してきて、強い風が吹き荒れ始めました。気温も上がり、昼過ぎに会館へ向かう時、コートは置いて出ましたが、上着すら脱ぎたくなるほど。

大雨強風のために京王線が乱れ、その影響が井の頭線にも及び、ホームで随分と待たされました。

市場に着いたのは午後1時を回っていて、4階の会場は本も人も一杯。明治古典会は今日も盛況です。

会場全体がクロっぽいのは、ずっと続いている先輩会員の在庫整理品が、かなりのスペースを占めていたため。

大事に取っておいたというよりは、有体に言えば、一度は即売展などに出した残り物という感が強いのですが、それとて何十年と経てば、稀本、珍本となっているものも多い。

特に若い本屋さんで、自家目録や、即売展を主力とされる方々には、ほとんど宝の山に見えるのではないでしょうか。熱心に入札する姿を、そこここで見かけました。

などとお報せしておきながら、店主自身はといえば、会場を全部周りきることができませんでした。午後2時から会議です。お昼も食べておかなければなりません。4階の途中で打ち切り。

仕事熱心な人なら、食事など後回しで、まず本を見ようとすることでしょう。それ以前に、こういう時間帯に会議を入れません。

2時からの会議は結局4時までかかり、それでもその時点で3階へ向かえば、まだ開札前の品々を見る時間はあったのですが、別の用件が入ってしまい、それが済んだのは最終発声も終わった午後5時過ぎ。

RIMG0668たとえ見たところで、入札する気になるようなものがあったとは思えませんが、市場を勉強の場でもあると考えれば、その機会を逃したことは間違いありません。

こうして相変わらず、不勉強な古本屋なのであります。

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12月31日から1月3日まで
休業いたします
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