2009年05月29日

善因善果?

明治古典会は月の最終週で、特選市。粒が揃って出来高もまずまずでしたが、その話ではありません。ちょっとした失敗譚から。

今朝も昨日からの雨で肌寒く、長袖のシャツにしようとクリーニングの袋を破ると、小さな封筒が目に付きました。「お確かめの上、お出し下さい」というような文字があって、中に一万円札が二枚。胸ポケットに入れたままだったようです。

とっても得した気分ですが、もちろん自分のお金が戻ってきただけ、感謝感激しこそすれ、儲かったわけではありません。いずれ不足に気がついて、大騒ぎしたことでしょう。その前に出てきてくれて助かりました。商道徳いまだ廃れず、というところでしょうか。

それで思い出したのは、聖徳太子が福沢さんに代わった頃のこと、つまり店を始めて間もない頃です。お客様から買い取った本の中から、古い一万円札が七枚出てきました。

買い取り帳を調べてすぐにそのお客様に電話し、その旨をお伝えすると、やがて赤ちゃんを背負った若いお母さんが、受け取りに来られました。

当然、喜んでいただけるものと思って、お金をお渡ししたのですが、何だかご機嫌斜めな様子で、ムスッとしたまま受け取って帰られました。それがあまりにも意外だったので、長く記憶に残っています。

きっと、ご主人の秘密のヘソクリだったのだろうと、当時、結論付けたものでした。

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2009年05月28日

パヴロフ英訳初版

未明から雨。もう上がったかと思うとまた降りだして、結局夜までそんな具合で肌寒い一日です。来客も少なく、溜まっていた本の整理が捗りました。

科学哲学関係の口。主なものはホールデン(J. B. S. Haldane)とドリーシュ(Hans Driesch)の著作。前者はイギリスの生物学者、後者はドイツの動物学者。

1930年前後出版の本が中心ですが、調べてみると過半は現在でも新刊が出ていて驚かされました。今でも必要とされているということでしょうか。オリジナルで状態が良い、ということで手ごろな価格なら売れてくれると思います。

この口に、あのパヴロフの、条件反射についての英訳初版本が二点ありました。これも保存状態は悪くありません。こちらの方はちょっと気張って値をつけてみます。もちろん読むだけなら幾らも安い版があります。1927年、1928年に出た最初の英語版、そこにどの程度の価値を見るかです。

その他も含め数十冊、どこででも見かけるという本では有りません。興味のある方はどうぞご来店の上、ご実見ください。

追記:整理が捗ったというのは嘘です。その間にも別の荷物が入り、さらに未整理の山が増えております。

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2009年05月27日

もちろん悪気はないのです

外の絵本から始まって、店内の図録、画集を棚に沿って順にご覧になっていたご婦人、帽子と、大きなマスクで顔が見えませんが、良くおいでになる(おそらくご近所の)方です。

ひと回りして入り口横のクルクル棚まで辿りついた頃、二人の子を連れた若いお母さんがやって来たのに気がつき「まあ今日は」と挨拶が始まります。

「これから池の上(隣の駅です)まで散歩に行こうと出た途中で、ここに捕まっちゃったのよね。絵本は大概持ってるんだけど、最近スケッチを始めたのよ」

店の外でひとしきり話がはずむうち、お母さんか、お兄ちゃんか、絵本を一冊選ぼうとした様子。

すると「あら、その本ならバアバの家に有るからいつでも貸してあげるわよ」屈託ない声が聞こえてきます。バアバと言われて子供は理解できません、ウチのお祖母ちゃん?と質問。

「いえいえ、このバアバ」
もう一度「貸してあげる」を繰り返したあと「さあ散歩に出かけなくちゃ」と、朗らかにお出かけになりました。

後に残った若いお母さん、お料理本一冊お買い上げです。



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2009年05月26日

科学哲学関係の洋書

今日の洋書会は、量が多く賑やかでした。片付けを終えて店へ戻ったのは午後5時すぎ。日が長くなりました。

昼に市場へ着いたとき、地方から送られてきた生理学関係の一口が、手が付けられずに平台に広げられていました。動物学、生物学などを含む、どちらかといえば医学系の本です。

医学系を専門にしている書店主の到着が遅れたため、手付かずになっていたのですが、そのままにもしておけません。分からないなりに、仕分けをしてみました。

ダンボールに10箱ほどで送られてきたらしいのですが、大きく四つの山に分けるのが精いっぱいでした。もともと理工系の分野のものは、洋書に限らず、古書としては値になりにくいものが多いからです。

やがて、専門店主が到着したのでバトンタッチすると、四つを三つにまとめてしまいました。もちろん細かく分ければ良いというものではないので、それも見識です。

自分でも欲しかった科学哲学系のものを一山に集めておいたのですが、それと別の一山が一つにまとめられてしまいました。それでは、と改めて評価をし直して札を入れ、その一山を手に入れることができました。

ちょっと頑張りすぎたかもしれないので、明日届いてから、成果をあらためて確認することにします。

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2009年05月25日

ケッコーダイジョーブ

「袋とか、ダイジョーブだったんですけど…」気弱そうに若者が言うので、テープで留めた「日本の古本屋」ロゴ入り紙袋から、本を取り出してお渡ししました。

包装は要らない、袋は要らないというお客様が、特に若い世代に増えているような気がします。エコ・キャンペーンの力でしょうか、悪いことではありません。

しかし今回、気になったのはそのことではなく、ダイジョーブという言葉の方。

思い返してみると以前から、例えば「袋にお入れしますか?」と訊けば「いえ、ダイジョーブです」という返事が返ってきていました。あるいはお客様から先に「袋ダイジョーブです」とも。

このダイジョーブは、どこから来たのでしょう。ほとんど同じ意味で昔から使われてきたケッコーも、不思議な言葉ではあるのですが、この用語の変化にはどんな違いがあるのでしょうか。

断る時がダイジョーブなら、頼む時は例えば「カバーしてもらっていいですか」となります。このあたりから現代若者論でも展開できそうじゃないですか。


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2009年05月24日

日本の想い出 souvenir du japon

降ったり照ったり、お天気ばかりが忙しい日曜日。

明古で珍しい本が出たと言い置いたままでしたので、それについて少しばかり。

明古では、その日の出品の中でも特に目ぼしいものを選んで、最終台と呼ぶ緋毛氈を敷いた台の上に並べますが、一昨日はその中に珍しく洋書が三点並びました。一点十万円以上になると予想されている、ということです。

一つはシャルルヴォワ(Charlevoix)の「日本史」初版(1736年パリ刊)ですが、残念ながら二巻本の第一巻のみ。もう一つは明治の元勲の一人が外遊した際に使ったとされるガイドブック。

最後の一つは薄手ながら背革装の、長辺が70僂鯆兇┐訛腓な本で、中に多色石版画が8枚。一緒に添えられていた復刻版・リンデン伯『日本の想い出』(長崎文献社)の1860年頃刊行された元版です。こちらも本来は全20枚なので、端本ということになります。

三点とも良い値段が付きましたが、中でも最後のものは桁違い。洋書といってもヴィジュアル資料としての価値なので、洋書専門店以外も入札に参加したことで、高値を呼んだようです。

この本の揃いが出たら一体幾らになるのだろうと、市場の引けた後、仲間内でひとしきり話題となったのでした。


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2009年05月23日

やっぱり店を開きたい

今朝は五反田の南部会館へ、支部役員会議に。

前にも書きましたが、同業の動向を知る貴重な機会です。例え担当地域の班長さんからの報告が、多くの場合「特に変わったことはありません」というだけであっても。

今日は、ずっと先輩の店主お二人が入院された、という話を聞きました。南部支部は他の地域に比べ、新しい顔ぶれも多いのですが、それでも小店主などがようやく中堅というくらい高齢層も厚いので、勢い健康状態に関する話題も増えます。

興味深かったのは、相反する二つの報告があったことです。気がつくと店舗営業をする人が減って、地域の様子も様変わりしている、という報告に対し、今月店舗をオープンした、する、という同業二人の報告。

店も、一旦開いたら後はただひたすらお客様を待つ、というのではなく、自らの商売に相応しい場所を見つけたら、そこへ移ってでも展開を図るという時代になってきたのでしょうか。

ちなみに二人の同業は東塔堂さんとうさぎ書林さん。どちらも既にホームページを持って営業していて、特にうさぎさんの場合はオンライン古書店の先駆的な存在。ビジュアル書に中心をおいている点はお二人共通しています。

古書の店舗販売に、新しい可能性を感じさせる動きです。

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2009年05月22日

遅くなった訳

今日の明治古典会は、通常市ながら出品点数1200点。といってもそれが多いのか少ないのかお分かりにならないでしょうが、かなり多いのです。

明古の場合、1000点を超えると多いと感じますので、更にそれより200点多いのは、作業量が普段より5割り増しという感じでしょうか。最終発声が午後6時近くになってしまいました。

もちろん会にとっては(つまり組合にとっても)有り難いことですが現場の連中は大変です。いつもは一度の途中休憩を、今日は二度とって集中力の低下によるミスの防止に努めました。

終わってから引き続き、来る7月の七夕大入札会準備会議。すでに目録編集、入稿を終えましたので、今度は会場の設営と入札会当日の運営方法についての会議です。

担当から原案が提示され、それに対して異論が出、甲論乙駁の挙句、一週間後に再度練り直して提案してもらうということでひとまず終了、午後8時を回っておりました。

近くの中華料理店(値段が魅力)で食事。疲れもあり、誰言うとなく早目に切上げ、帰り着いたのが午後10時半。

市場では興味深い洋書も出ていて、良い値段になりましたが、それについてはまた改めて書くことにしたいと思います。

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2009年05月21日

ご機嫌なお客様

「入っていいですか、まだ閉店じゃないですね」と入り口で大きな声。どうぞとお答えすると「月に一度の楽しみなんですよ」とおっしゃって、入ってこられます。

俳句の会があるのだそうで、それが終わってから小店へお寄りいただくのですが、やや足元が覚束ないのは、昭和2年生まれだというそのお年のせいではなく、赤いお顔からプンと匂ってくるアルコールのなせる業でしょう。

缶を片手のご入店でしたので、それは帳場の机に置いていただきました。「一回りしますよ」と店内を見て回られ、「いつもこれを買うんだ」と木版画、今回は「駒場みやげ」セットをお買い上げいただきました。

「一度表も見てきます」と外へ出て、戸川幸夫動物文学全集に眼を留め、あれはいくらかとご下問。函もヤケてクスミもあり、セットで2000円の大特価。「買うけど重いなあ」「お送りしますよ」「じゃお願いしよう」となって、送り状を書いていただき、お支払いいただいて「なんかおまけはないの?」となりました。

「何でもいいんだ、気は心だから」「送料を少し返金しましょう」「金は要らない、あるから」。結局木版画一枚(¥300)おまけにつけました。

お一人住まいだそうで、こんなやり取りも楽しみの一部なのだと、甘んじて受け止めることにいたしました。

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2009年05月20日

蝶のひやかし

朝から明るい日差しで初夏の陽気。日向は汗ばむほどでも、店の中は暑くもなし、寒くもなし。せっかくのお天気なのでもちろんドアは開け放し。

するとお昼前、大きなクロアゲハが一匹(正確には一頭)店内に迷い込んできました。

ヒラヒラ舞いながら蛍光灯にぶつかったり、グリーンにとまろうとしたり、店内をひやかして、なかなか出て行く様子はありません。というよりは、出たくとも出られないのか、幸い店内にお客様もおられず、電気を消してみました。

一、二度硝子にぶつかった後、戸口を見つけてサッと抜け出し、空が開けたほうへ向かって、あっという間に姿を消しました。

蝶などはまだ優雅ですが、蜂が入ってきたこともあります。やはり出ていただく時は電気を消す一手。

それでひとつ思い出しました。以前、早稲田のある店(今は有りません、念のため)の奥さんは、店番をしていてイヤなお客様が来ると、電気を消して「すいません、出かけますので」といって追い返していたというのです。

きっと蝶ではなく、蜂だったのでしょうね。

konoinfo at 18:33|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
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