2009年09月16日

ワークライフバランス

先日、古い友人から突然電話をもらい、格別の用件でもなかったので、その序でに近況などを聞きました。

マンション広告などに完成予想図が描かれていたりしますが、ああいった絵(建築パース)を描く仕事をしています。

そう聞いただけで察しがつくとおり、バブルの時期は仕事の依頼も多く、山荘風の家を郊外に建て、優雅に暮らしていました。依頼が多いということは、より条件の良い(ギャラの高い)仕事を選べるということです。

その後は段々と仕事が減り、何より仕事を選べなくなり、今では仕事があるだけましという状態だそうです。同じ時間働いても、実入りはぐっと減ったというわけです。

それでも無闇に仕事時間を増やさず、ワークライフバランスを堅持しているところは友ながら尊敬に値します。翻ってわが身を省みると、少し情けない。

こんな話を持ち出したのは、古本屋の仕事にも、似た部分があると思うからです。質の良い本を集めるためには、知識、経験に加え、それなりのスキルも必要、いわば職人仕事です。

しかし似ていないのは、よほどの専門店でも、時間にゆとりがあるようには見えないこと。要するに生産性が低いのでしょうか。それとも趣味も実益も一つになっているのでしょうか。

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2009年09月15日

『フックス風俗の歴史』

雨は朝方、本当にパラパラときただけで、あとは一日曇り空。昼前に店を出て洋書会へ。

エアコンを切ってドアを開けた店内は、半袖でちょうど良いくらいでしたが、そのままの格好で外へ出たら少し肌寒い。しかしわざわざ上着を取りに戻るほどでもないかと、歩みを止めずに神田へ向かいました。

昼過ぎに市場に着くと、当番の皆さんが昼食の最中。来週が祝日、その翌週が一新会の大市のため休会。つまり今月はこれが最後の洋書会、と気付いたのは食べていたのが月末恒例「うな重」だったからです。

出品の量は多くもなく少なくもなく、まあほどほど。しかし残念ながら小店のムキのものは見当たりませんでした。

目を惹いたのはFuchsやMoreckなど、独文好色風俗・美術書の一口。といっても全部で30冊ほど、それが6、7点に分けられていました。

本の状態がまずまずでしたから、昔なら結構良い値段になった筈です。一番有名な『フックス風俗の歴史』全6巻を例に取れば、その一点だけでまず10万円以上の札が入りました。しかし今日は他の全部を合わせても、それに届かなかったかったかもしれません。

豊富な図版はなかなか美しいものですが、それだけでは最早、顧客を見つけにくくなっています。エロチック美術書の凋落、果たしてそれは、世の中の健全化を意味しているのでしょうか。

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2009年09月14日

箱根周遊

昨日今日と、一泊で箱根へ行ってまいりました。旅の成否を決める第一はお天気。その点では二日間、お天気に恵まれ良い旅行が出来ました。

箱根というので、いささか侮る気分がなかったとは言えません。参加者数26名、総員の6割というのも、それを物語っているのでしょう。

それでも登山鉄道、ケーブルカーを乗り継いで、強羅まで来たのは店主自身、殆ど半世紀ぶり。ロープウェイで早雲山へ登ったのは初めてのことで、大涌谷を巡ってから、さらに桃源台までロープウェイで降りて船で芦ノ湖を縦断、そこからバスで湯本まで戻るコースの約3時間半、充分旅行気分を満喫できました。

小田急フリーパスで、上記行程の全ての乗り物を、無料で何度でも利用できるのが、移動にとても便利。外国からの観光客も多く、改めて観光地箱根の底力を感じましたね。

夜の宴席は、座興に全員が何かしら持ち寄ってのフリ市。生真面目に本や版画といった普段の扱い商品を持参したものもいれば、秘蔵の酒から、松井選手のユニフォームまで飛び出して大いに盛り上がり、売上げもなかなかのものでした。もちろんあくまでお遊びです。

二次会からは体力や酒癖の格差拡大にともない、幾つかのグループに別れ、それぞれに愉しんだ模様です。店主は早寝組、普段より早いくらいからぐっすりと眠り、早朝に露天風呂へ、その後また、しばしまどろむという贅沢をさせてもらいました。

店に戻ったのは午後四時。いろいろと溜まった仕事を片付けながら、日常に復帰します。

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2009年09月13日

研修旅行

かつては本屋仲間で「旅行」をする機会が数多くありました。

店主自身を例に取ると、洋書会、明治古典会の研修旅行。城南展(今は参加していません)同人の旅行。南部支部の店主旅行。理事会で出かける秋の役員会、春の総会(東京以外で開催される時)参加の旅行。

その他に、洋書会でも、明治古典会でも役員・幹事だけで出かける旅行や、忘年会を兼ねて出かける旅行など、多い時は年に7回から8回もありました。

もっともその大半は「旅行」とは名ばかりで、近場の温泉地で一泊し、宴席を共にするだけの慰安、懇親会でした。

それでも景気の良い時期には、道東や四国足摺など、殆ど不可能と思えるような旅程を一泊(!)でこなしたりして、それなりの旅行気分を味わったものです。

最近ではそれらの殆どが、行われなくなりました。どこの店もそんな余裕がなくなってきたのが一番の原因です。金銭的な面もさることながら、なにより時間に余裕がないのですね。

今日は明治古典会の「旅行」です。場所は箱根。つまり懇親会。それでも会としてどこかへ出かけるのは何年ぶりか。冷めていても詰まらなくなるだけ、せっかくの機会ですので、仲間と懇親を深めて参ります。ご報告は明日にでも。

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2009年09月12日

五反田のグリル・エフ

朝から雨模様ながら、いっとき強く降った後は小止み状態。気温も低めで、半袖で外に出ると少しひんやり。

昼前五反田の南部会館へ入札に。そのあとNさんと駅前のグリル・エフ(F)で昼食。毎月入札会の度ご一緒し、エフか市場か、どちらが主目的か分からないような時期も有りましたが、このところ時間が合わなくて、随分と久し振りです。

エフは駅前の通りから一本入った裏路地の、分かりにくいところにあるレトロなフレンチ・レストラン。というよりビストロといったほうが良いでしょうか。カウンター6席、テーブルが3卓の小さなお店で、テレビや雑誌でもしばしば取り上げられた人気店ですが、何時行っても案外間が良く、入れなかったことは殆どありません。

というのも、何時からか二階にも席を設けたからで、今日も総勢四名、その二階へ上げてもらいました。これが昭和中期の町屋そのまま。座敷に座卓、白いテーブルクロスと白い座布団カバーが何とも気取りのない、落ち着いた気分にさせてくれます。

いつものカニクリームコロッケとレバーシチュー、それにライス。食後のコーヒーまでゆっくり一時間。宅買いの苦労話などで盛り上がりました。

畳は確かに寛げるのですが、長時間座っていると腰や膝が痛くなるのが難点。このくらいの時間が良いところです。日本人の生活様式の変貌を、改めて自覚させられました。

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2009年09月11日

鷗外の珍本で反省

明治古典会。終わって幹事会、その後いつもの仲間と食事。またこんな時間になってしまいました。

今日の明古は、近代文学の一口が目玉。自店在庫の閉店処分だと言われながら、もう何年も、月に一度くらいのペースで黒っぽい本をまとめて送ってくださる関西の老舗。毎回、稀本、珍本が沢山含まれていて、いったいどれだけの在庫があるのか、その度に話題になります。

今回は森鴎外の衛生学に関する講義録一冊が、今日一日の最高値となりました。専門書店でも、初めて目にするというほど珍しいものだったようです。

ちょっと残念だったのは、そのような本を、最終開札台に持ってこられなかったこと。そんな珍しいものなら、知らなくても仕方ないということもできるかもしれませんが、ちゃんと入札する業者がいて、高い値になっているということは、運営側にそこまでの目がなかったということになります。

これが例えば和本や洋書といった、明古の専門でない分野ならご愛嬌かもしれませんが、いわば本丸ともいうべき明治文献。もっと勉強しなければと、幹事会でも反省の言葉が出ました。

会の名誉のために付け加えますが、後で聞くと、その本について知っている会員もおりました。しかし現場にいて、それを眼にしなければ如何ともしがたいわけで、それはそれで、今度は市場をしっかり見なければという、もう一つの反省となりました。

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2009年09月10日

『電子図書館』

昨夜、組合のイベント企画についての打ち合わせを兼ねた、ちょっとした食事会に出ました。その席で耳にした話。

国立国会図書館長の長尾真さんの著書『電子図書館』(岩波書店、1994年)が絶版となり、とたんにAMAZONから安い本が消えて、6000円台のものしか残っていない、とか。科学ライブラリーシリーズなので定価は1000円台だったと思います。

岩波は「絶版」にはしないと聞いたことが有ります(同社HPによれば「品切重版未定」)が、今はその話しでは有りません。とりあえず早速AMAZONを見てみました。確かに一件、6300円。

その出品者は、店主も何度か眼にしたことがあります。このサイトは新刊が有るか無いかを調べるには、いまや一番便利なサイトなので、ちょくちょく利用するのですが、その度に、たとえ新刊があろうがなかろうが、飛びぬけた高価格をつけている人たちがいて、その一人です。彼(彼女かもしれません)にしてはむしろ抑えた価格でしょう。

その価格は何の参考にもならないのですが、世の中、そのことを知っている人ばかりではありません。それが一つの問題。

ちなみに「日本の古本屋」には、525円から1000円で、まだ三点の在庫が有ります。AMAZONにも安い価格で出ていて、それらは売れてしまったのでしょうか。だとしたらそこにも一つの問題。

この二つの問題から「日本の古本屋」の弱点も、大きな利点も見えてくるような気がします。

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2009年09月09日

断ってはいけない

先週の明治古典会が、大量の出品で賑わったということは、お伝えしましたね。おかげでその後の勉強会の開始、終了が遅くなったことも。

市会から事前に案内のメールやファックスが届くのですが、この時の文面は「美術関係書カーゴ6台」「和本・歴史・美術関係書3t車満載約カーゴ15台」カーゴというのはカーゴテナーというキャスターつきのコンテナです。

この市で小店も一点、11本口という山を買いました。中に何冊か欲しい本があったからです。持ち帰る前に、生かす本、処分する本を選り分けたのですが、作業中何気なく一冊の本を開くと、古いハガキが挟まっていて、そこに見覚えのある文字が書かれています。

良く見ると、岳父が当時の勤め先から出した、仕事上のハガキでした。記名は有りませんが、筆跡で分かります。日付を見ると約四十年ほど前。数え切れない偶然が重なって、手にすることになった一枚です。その不思議につくづく感じ入りました。でもまあ、これは他人様にはどうでも良いことでしょう。

それよりも、そのカーゴ15台は、かなり古びて傷んだ本も多い口でした。しかし和本だけでカーゴ3台、これが相当良い値段になった様子です。宅買いとしては近年にないヒットだと噂されていますが、これを持ち込んだ業者が言うには「何軒にも断られてウチに回ってきた」。

関東近県、廃屋同然のところに放置された本、そう聞いて尻込みした何軒かの業者は、今頃切歯扼腕しているかもしれません。

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2009年09月08日

高林さん

神保町の東陽堂書店といえば、業界屈指の仏教書専門店。その当主・高林恒夫さんが急逝され、今夜、上野寛永寺で通夜がありました。

訃報は昨日のうちにFAXで回されていたのですが、うっかり見落としていて、今日、洋書会を終えて帰る途中、同業の喪服姿にわけを尋ね、初めて知ったのでした。

慌てて香典を知り合いに託し、帰路についたのですが、道すがら何とも落ち着かない気分になり、店に戻るまでには通夜に出ようと心を決めました。

故人と格別親しかったわけではありません。会えば挨拶を交わす、たまに世間話をするという程度のお付き合いでしたが、不思議と親近感を抱かせる方でした。

立教大学を出てプロ野球選手となり、巨人軍、国鉄スワローズで活躍。「長嶋茂雄」「王貞治」と書かれた二つの供花が一際目を惹いていました。

享年71。神田では二代目(あるいは三代目)が、この年頃に集中していて、団塊の世代を形成しています。誇れる幼なじみでもあった高林さんを失い、参列のご店主方も、一様に寂しげでした。

供花の並べ方一つとっても、業界葬には何かと気遣いが必要です。故人はそうした段取りに長けておられました。お焼香をしながら、差配したくてうずうずしている、愛すべき世話焼きのお姿を、つい思い浮かべてしまいました。


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2009年09月07日

漱石の『明暗』

気温はきっと盛夏に較べれば低いのでしょうが、何か体にこたえるような暑さ。これが残暑というやつですね。

けだるさも加わって仕事の手も止まりがちな昼下がり、今風に言えばアラサー男性、入ってくるなり「夏目漱石。どこですか?」。

もちろん初めてのお客様。どころか、きっと古本屋に入るのも初めてなのでしょう。その眼は「さあどこだ」と返答を促すように店主を見据え、店内を見回そうという気配は微塵も有りません。

「漱石の何をお探しですか」と尋ねると、まるで質問を受けることなど予期していなかったかのようにためらった後、『明暗』だと答えられました。

そこでやおら立ち上がり、文庫の棚へ向かい、岩波の緑帯、新潮など近代文学を集めたところ、それぞれの漱石を調べました。あいにく見つからず「残念ながら有りませんね」と申し上げると「そうですか」、現れた時と同じ素早さで、出て行かれました。

決して珍しいパターンでは有りませんが、今日は何だかいつもより疲れが残りました。折りしもよちよち歩きの子が親御さんと一緒に通りかかり、「本屋さんだー」と声を上げます。

本が置いてあるから本屋、そこまでのことは二つ三つの子にも分かります。その先の違いを、本屋にもいろいろあるのだということを、どれほどの人々に理解して頂いているのでしょうか。

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