2014年10月27日
雑誌とオモチャ
ご近所の歯医者さんの奥様が、ご自宅で読み終えた雑誌を、その都度一冊、二冊と持ってきてくださいます。
売り物になる雑誌も、そうでない雑誌もありますが、お代を求められるわけでもありませんから、ありがたく頂戴し、売れそうなものはすぐに値を付けて表に出しますと、最近の号が多いので、割合すぐに売れていきます。
今日も、月刊誌pen[ペン]の10/1号をお持ちくださいました。
ふだんはいちいち中を見るわけでもないのですが、何気なくパラパラと開くと、小店にあるのと良く似た業務用掃除機が載っているページに目が留まりました。カタログのようにメーカーと価格まで載っています。
その隣に、バルーン投光機(その名は初めて知りました)が並んでいます。工事現場などに使う、とても明るいやつで、こんなのを店の表に置けば、これからの季節に威力を発揮するのではないかと、価格を見ると¥450,000。桁を確かめて、諦めました。
このページにつけられた見出しは「日本通」がイチ押しする、知られざる逸品。ほかには砥石&革包丁、鰹節削り器、伸縮式コーンなどが並んでおります。一枚前へめくるとその「日本通」についての記事が、写真とともに掲載されていました。
その写真を見てビックリ。「ポスタルコ」のクリエイターと紹介されているマイク・エーブルソンさん(この名も今回初めて知りました)は、ご近所の顔見知りです。
ご本人は、来日当初、一、二度店に来られたくらいですが、後に奥様が時々、お買い上げや、ご整理にご利用いただくようになって、そのブランドの名は知っていました。
ちなみに、この月刊誌の、この号の特集は「カワイイ」JAPAN。
クールジャパンといえば今や国策のようなもので、日本のポップカルチャーを世界市場に乗せようと、経済産業省あたりが血道をあげているようですが、成長戦略のひとつなどと言われると、ちょっと白けてしまいますね。
ところで、頂戴した雑誌。奥様がお孫さんを連れて散歩の折に、せがまれて表の100円オモチャをお買い上げくださることがありますので、そんな時にオマケをしたりして、埋め合わせをしております。
売り物になる雑誌も、そうでない雑誌もありますが、お代を求められるわけでもありませんから、ありがたく頂戴し、売れそうなものはすぐに値を付けて表に出しますと、最近の号が多いので、割合すぐに売れていきます。
今日も、月刊誌pen[ペン]の10/1号をお持ちくださいました。
ふだんはいちいち中を見るわけでもないのですが、何気なくパラパラと開くと、小店にあるのと良く似た業務用掃除機が載っているページに目が留まりました。カタログのようにメーカーと価格まで載っています。
その隣に、バルーン投光機(その名は初めて知りました)が並んでいます。工事現場などに使う、とても明るいやつで、こんなのを店の表に置けば、これからの季節に威力を発揮するのではないかと、価格を見ると¥450,000。桁を確かめて、諦めました。
このページにつけられた見出しは「日本通」がイチ押しする、知られざる逸品。ほかには砥石&革包丁、鰹節削り器、伸縮式コーンなどが並んでおります。一枚前へめくるとその「日本通」についての記事が、写真とともに掲載されていました。
その写真を見てビックリ。「ポスタルコ」のクリエイターと紹介されているマイク・エーブルソンさん(この名も今回初めて知りました)は、ご近所の顔見知りです。
ご本人は、来日当初、一、二度店に来られたくらいですが、後に奥様が時々、お買い上げや、ご整理にご利用いただくようになって、そのブランドの名は知っていました。
ちなみに、この月刊誌の、この号の特集は「カワイイ」JAPAN。
クールジャパンといえば今や国策のようなもので、日本のポップカルチャーを世界市場に乗せようと、経済産業省あたりが血道をあげているようですが、成長戦略のひとつなどと言われると、ちょっと白けてしまいますね。
ところで、頂戴した雑誌。奥様がお孫さんを連れて散歩の折に、せがまれて表の100円オモチャをお買い上げくださることがありますので、そんな時にオマケをしたりして、埋め合わせをしております。
2014年10月26日
便利の落とし穴
ISBNコードの表示義務化に、欧米で最も強く反対したのはフランスの出版界だったということを、どこかで読むか聞くかした記憶があります。
もっぱらデザイン上の問題から、抵抗が大きかったと。
それかあらぬか、フランス書籍のISBNコードは、往々にしてとても分かりにくいところについていることがあります。豆粒のような数字が、仕方なく、いやいやながら、といった様子で隅の方に載っていたりします。
ハイフンの代わりにドットが打たれていることが多いのも、目立たせない工夫かも知れません。
バーコード表示になっても、何とか少しでも全体のデザインを壊さないように工夫をしているようです。日本ほど表示位置や、大きさなどの規則が厳しくないのかもしれません。読み取れるかと思うほど、小さなバーコードがついていたりします。
写真のプレイヤード叢書の場合、ご覧のとおり函の地に印刷されていて、ヒラの部分にはコードのコの字もありません。
それほど冷遇されているISBNコードですが、検索するときにはとても便利で、値段調べには重宝させてもらっております。
たとえば、このプルースト『失われた時を求めて』などのような場合は、著者と書名だけでは実に様々な版があり、全く同定できません。プレイヤードという叢書名まで入れて、巻数を入れて、ようやく目指す本にたどり着くことができるわけです。
ただしこの本は、新版(全4冊)と旧版(全3冊)では、まったく編集が違います。不思議なことに第1巻から第3巻までは、叢書の通し巻数も同じ(100-102)ですから、校註者まで調べなければ、どちらの版かが分かりません。
その点ISBNなら一発で分かる――筈のところですが、その区別も定かでなく、ネットに便乗出品している人が外国にもおられるのですね。日本のサイトと違い、それが素人さんかプロなのか、判断しづらいのが困るところです。
もっぱらデザイン上の問題から、抵抗が大きかったと。
それかあらぬか、フランス書籍のISBNコードは、往々にしてとても分かりにくいところについていることがあります。豆粒のような数字が、仕方なく、いやいやながら、といった様子で隅の方に載っていたりします。
ハイフンの代わりにドットが打たれていることが多いのも、目立たせない工夫かも知れません。
バーコード表示になっても、何とか少しでも全体のデザインを壊さないように工夫をしているようです。日本ほど表示位置や、大きさなどの規則が厳しくないのかもしれません。読み取れるかと思うほど、小さなバーコードがついていたりします。
写真のプレイヤード叢書の場合、ご覧のとおり函の地に印刷されていて、ヒラの部分にはコードのコの字もありません。
それほど冷遇されているISBNコードですが、検索するときにはとても便利で、値段調べには重宝させてもらっております。
たとえば、このプルースト『失われた時を求めて』などのような場合は、著者と書名だけでは実に様々な版があり、全く同定できません。プレイヤードという叢書名まで入れて、巻数を入れて、ようやく目指す本にたどり着くことができるわけです。
ただしこの本は、新版(全4冊)と旧版(全3冊)では、まったく編集が違います。不思議なことに第1巻から第3巻までは、叢書の通し巻数も同じ(100-102)ですから、校註者まで調べなければ、どちらの版かが分かりません。
その点ISBNなら一発で分かる――筈のところですが、その区別も定かでなく、ネットに便乗出品している人が外国にもおられるのですね。日本のサイトと違い、それが素人さんかプロなのか、判断しづらいのが困るところです。
2014年10月25日
数は力なり
世の中には実に様々な団体があるものだと、改めて知りました。
「文化芸術振興議員連盟」という組織があり、一方に「文化芸術推進フォーラム」という組織があって、どちらが鶏でどちらが卵かは存じませんが、手を携えて我が国に「文化省」を作ろうという運動をしています。
日本は「文化」をもって立つべきで、そのためには現在の文化庁を格上げするのではなく、省庁再編により新たな省を作って「文化立国」を進めよう――というその趣旨自体は、まことに反対すべきところのない立派なものです。
それゆえにこの議員連盟には、自民党から共産党まで、党派を超えて衆参両院の96名(2014年9月現在)の方が、名を連ねておられます。
その議員連盟を後押しする推進フォーラム側には、公益社団法人日本芸能実演団体協議会(芸団協)、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)をはじめ、15の組織が参加しています。
各組織はそれぞれが参加に団体組織を抱えた協議会、連合会などですので、その全体の団体数は一体幾つになるのか、見当もつきません。
今回、この15組織の一つ「全国美術商連合会(全美連)」さんが、わが古書組合に対し「仲間に入りませんか」と声をかけてこられました。
昨日、理事長とともに、古書会館の応接室で、全美連会長さんほか三名の方と、一時間近くにわたり、面談をしたのです。
全美連は美術商唯一の全国組織として、各地の美術商協同組合、及び洋画・版画・浮世絵・刀剣の各協同組合の組合員さんを中心に構成されています。
ただ、推進フォーラムのなかでは、抱える会員数が少ない組織なので、発言力を高めるために、少しでも会員を増やしたいというのが、今回お声掛けいただいた理由のようでした。
団体の利益のために、役員として熱心に活動されているご様子には、頭が下がりました。
「文化芸術振興議員連盟」という組織があり、一方に「文化芸術推進フォーラム」という組織があって、どちらが鶏でどちらが卵かは存じませんが、手を携えて我が国に「文化省」を作ろうという運動をしています。
日本は「文化」をもって立つべきで、そのためには現在の文化庁を格上げするのではなく、省庁再編により新たな省を作って「文化立国」を進めよう――というその趣旨自体は、まことに反対すべきところのない立派なものです。
それゆえにこの議員連盟には、自民党から共産党まで、党派を超えて衆参両院の96名(2014年9月現在)の方が、名を連ねておられます。
その議員連盟を後押しする推進フォーラム側には、公益社団法人日本芸能実演団体協議会(芸団協)、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)をはじめ、15の組織が参加しています。
各組織はそれぞれが参加に団体組織を抱えた協議会、連合会などですので、その全体の団体数は一体幾つになるのか、見当もつきません。
今回、この15組織の一つ「全国美術商連合会(全美連)」さんが、わが古書組合に対し「仲間に入りませんか」と声をかけてこられました。
昨日、理事長とともに、古書会館の応接室で、全美連会長さんほか三名の方と、一時間近くにわたり、面談をしたのです。
全美連は美術商唯一の全国組織として、各地の美術商協同組合、及び洋画・版画・浮世絵・刀剣の各協同組合の組合員さんを中心に構成されています。
ただ、推進フォーラムのなかでは、抱える会員数が少ない組織なので、発言力を高めるために、少しでも会員を増やしたいというのが、今回お声掛けいただいた理由のようでした。
団体の利益のために、役員として熱心に活動されているご様子には、頭が下がりました。
2014年10月24日
我慢が足りない
いよいよ「神田古本まつり」。
特選会場は今日から始まりましたが、メインの屋外会場は明日オープン。出展するメンバーは今日一日、それぞれの都合に合わせたまちまちな時間帯で、開場準備に余念がありませんでした。
明日は好天の予報。台風襲来でテープカットが中止された昨年のことを思えば、じつに喜ばしいことです。市場で会った神田支部長も、それが何よりうれしいようでした。
一時期、少なくなっていた地元神保町の書店の参加が、ここ数年増加傾向にあり、そのために市場の人手のやりくりに苦労するようになっています。そんなことも影響してか、今日の明古は出品点数も少なめで、早めに終了いたしました。
いつもの夕食会も今日はナシ。珍しく早い時間に帰路につくと、神保町から青山一丁目まで来たところで、電車が動かなくなりました。
「渋谷駅で非常停止しため安全確認を行っています」という車内アナウンス。それほど混んではいなかった車両ですが、停車しているうちに次第に乗客が増えてきます。
手に持っていた冊子をパラパラ眺めて待っていると、やがてホームのアナウンスが耳に届きました。
「渋谷駅までの間、各駅に車両が停車しているため、この電車の発車は遅れる見込みです。表参道、渋谷方面にお急ぎの方は、銀座線をご利用ください」
5〜6回も繰り返されたでしょうか。ついに意を決してアナウンスに従うことにしましたが、乗っていた位置の関係で、銀座線のホームが遠い。ようやくホームへ上る階段近くまで来ると、人が詰まって流れていきません。
あきらめてもう一度半蔵門線ホームに降りると、さっきまで乗っていた電車はすでに出た後でした。すぐ後続が来るには来たのですが、朝のラッシュ並みの混雑。
表参道に着くと向こう側に、嘘のように空いている銀座線が停まっておりましたので、たまらず乗り換えるという、間の抜けた一幕を演じたのでした。
特選会場は今日から始まりましたが、メインの屋外会場は明日オープン。出展するメンバーは今日一日、それぞれの都合に合わせたまちまちな時間帯で、開場準備に余念がありませんでした。
明日は好天の予報。台風襲来でテープカットが中止された昨年のことを思えば、じつに喜ばしいことです。市場で会った神田支部長も、それが何よりうれしいようでした。
一時期、少なくなっていた地元神保町の書店の参加が、ここ数年増加傾向にあり、そのために市場の人手のやりくりに苦労するようになっています。そんなことも影響してか、今日の明古は出品点数も少なめで、早めに終了いたしました。
いつもの夕食会も今日はナシ。珍しく早い時間に帰路につくと、神保町から青山一丁目まで来たところで、電車が動かなくなりました。
「渋谷駅で非常停止しため安全確認を行っています」という車内アナウンス。それほど混んではいなかった車両ですが、停車しているうちに次第に乗客が増えてきます。
手に持っていた冊子をパラパラ眺めて待っていると、やがてホームのアナウンスが耳に届きました。
「渋谷駅までの間、各駅に車両が停車しているため、この電車の発車は遅れる見込みです。表参道、渋谷方面にお急ぎの方は、銀座線をご利用ください」
5〜6回も繰り返されたでしょうか。ついに意を決してアナウンスに従うことにしましたが、乗っていた位置の関係で、銀座線のホームが遠い。ようやくホームへ上る階段近くまで来ると、人が詰まって流れていきません。
あきらめてもう一度半蔵門線ホームに降りると、さっきまで乗っていた電車はすでに出た後でした。すぐ後続が来るには来たのですが、朝のラッシュ並みの混雑。
表参道に着くと向こう側に、嘘のように空いている銀座線が停まっておりましたので、たまらず乗り換えるという、間の抜けた一幕を演じたのでした。
2014年10月23日
レターパックに望むこと
これまでにも何度か書いておりますが、ゆうメール(旧冊子小包)は、書籍を送るうえで本当にありがたい制度です。
比較的安価で、最近は届くのも早い。その上、北海道であろうが沖縄であろうが、全国一律料金というのが、実に助かります。
ビジネスモデルとして考えたら、とても成立しないように思いますが、是非とも末永く維持していただきたい仕組みです。
今日の「日本の古本屋」リニューアル会議では、送料問題がまた蒸し返されて、いつものごとく終了時間が伸びてしまいした。紛糾した原因は、検索結果の一覧画面に、それぞれの店の送料も表示させるかどうかについてでした。
詳しく話していると長くなりますので、委細は出来上がってからのお楽しみとしておきましょう。
ただ、その議論の際に、重量による区別はあっても距離に制限のない、ゆうメールのありがたさを再認識した、とだけ申し上げておきます。
それほど重宝しているゆうメールですが、唯一の欠点は、配達記録が付かないことにあります。
一年に一件あるかないか、という頻度ではありますが、お客様から本が届かないという連絡を受けます。そしてそうした場合、大抵は、結局のところ行方不明のまま終わることになります。
それがごく稀なケースであるということは、送った側にも、受け取るべきだったはずの側にも、慰めにはなりません。
その点、レターパックというのは、ゆうメールの弱点を補ったものとして、とりわけ遠隔地に高額な書籍を送る場合に、この上なく便利です。
しかしこの封筒の形状は、何とかならないものでしょうか。せっかく重さ4キロまで大丈夫と言いながら、厚かったり重かったりする本を入れるには、あまりにも頼りない紙の厚さです。
さらに封筒の口を閉めると、ほとんどいの場合いびつになって、美しくないこと甚だしい。
ここはひとつ封筒ではなく、包み込める形のヤッコ型の紙で販売してもらえないものだろうかと、店主の強く願うところです。
比較的安価で、最近は届くのも早い。その上、北海道であろうが沖縄であろうが、全国一律料金というのが、実に助かります。
ビジネスモデルとして考えたら、とても成立しないように思いますが、是非とも末永く維持していただきたい仕組みです。
今日の「日本の古本屋」リニューアル会議では、送料問題がまた蒸し返されて、いつものごとく終了時間が伸びてしまいした。紛糾した原因は、検索結果の一覧画面に、それぞれの店の送料も表示させるかどうかについてでした。
詳しく話していると長くなりますので、委細は出来上がってからのお楽しみとしておきましょう。
ただ、その議論の際に、重量による区別はあっても距離に制限のない、ゆうメールのありがたさを再認識した、とだけ申し上げておきます。
それほど重宝しているゆうメールですが、唯一の欠点は、配達記録が付かないことにあります。
一年に一件あるかないか、という頻度ではありますが、お客様から本が届かないという連絡を受けます。そしてそうした場合、大抵は、結局のところ行方不明のまま終わることになります。
それがごく稀なケースであるということは、送った側にも、受け取るべきだったはずの側にも、慰めにはなりません。
その点、レターパックというのは、ゆうメールの弱点を補ったものとして、とりわけ遠隔地に高額な書籍を送る場合に、この上なく便利です。
しかしこの封筒の形状は、何とかならないものでしょうか。せっかく重さ4キロまで大丈夫と言いながら、厚かったり重かったりする本を入れるには、あまりにも頼りない紙の厚さです。
さらに封筒の口を閉めると、ほとんどいの場合いびつになって、美しくないこと甚だしい。
ここはひとつ封筒ではなく、包み込める形のヤッコ型の紙で販売してもらえないものだろうかと、店主の強く願うところです。
2014年10月22日
開高さんも驚いた
昨日、触れておこうと思って抜け落ちたことがありました。五反田にある南部古書会館での「フリ市」について。
あの画面に映っていたような、テーブルを取り囲んでという形になってから、実のところ店主は、一度も南部のフリに参加したことがありません。
ですから一般の視聴者と同じように、興味深くその光景を見せてもらいました。良く知った場所、良く知った面々が出ていたのではありますが。
そして、しつらえは変わっても、また、扱う量や質に物足りなさは見て取れても、その流れやテンポの変わりなさに、安堵のようなものを感じました。
近年、古本屋を取り上げたTV番組などでは、必ずと言っていいほど、この南部のフリが紹介されるようです。入札と違って、絵になりやすく、いかにも古本屋の市場というイメージがあるからでしょう。
この古本=フリ市というイメージは、開高健が『ずばり東京』(朝日新聞社 1964年)の「古書商・頑迷堂主人」で紹介したあたりから、世間に広まったのかもしれません。
そして、確かそのなかで著者の開高も、ポンポンと本が放り投げられるさまを、驚きを込めて書いていたような記憶があります。開高も、というのは、初めてこの様子を見ると、まず大方の人が驚かれるからです。
で、大抵はここでフォローが入ります。派手に音を立ててブン投げているように見えても、「熟練のフリ手は決して本を傷めない」というように。
今回、このフォローがなかったので、あるいはショックを受けたままの方もいらっしゃるのではないかと思い、敢えて店主がフォローを入れさせてもらいました。
ちなみに開高の本では、フリの他に、廻し、椀伏せといった入札方法も紹介されています。現在の置き入札が主流となったのは、11年前に建て替えられた前古書会館が、1972年に落成して以降のことです。
あの画面に映っていたような、テーブルを取り囲んでという形になってから、実のところ店主は、一度も南部のフリに参加したことがありません。
ですから一般の視聴者と同じように、興味深くその光景を見せてもらいました。良く知った場所、良く知った面々が出ていたのではありますが。
そして、しつらえは変わっても、また、扱う量や質に物足りなさは見て取れても、その流れやテンポの変わりなさに、安堵のようなものを感じました。
近年、古本屋を取り上げたTV番組などでは、必ずと言っていいほど、この南部のフリが紹介されるようです。入札と違って、絵になりやすく、いかにも古本屋の市場というイメージがあるからでしょう。
この古本=フリ市というイメージは、開高健が『ずばり東京』(朝日新聞社 1964年)の「古書商・頑迷堂主人」で紹介したあたりから、世間に広まったのかもしれません。
そして、確かそのなかで著者の開高も、ポンポンと本が放り投げられるさまを、驚きを込めて書いていたような記憶があります。開高も、というのは、初めてこの様子を見ると、まず大方の人が驚かれるからです。
で、大抵はここでフォローが入ります。派手に音を立ててブン投げているように見えても、「熟練のフリ手は決して本を傷めない」というように。
今回、このフォローがなかったので、あるいはショックを受けたままの方もいらっしゃるのではないかと思い、敢えて店主がフォローを入れさせてもらいました。
ちなみに開高の本では、フリの他に、廻し、椀伏せといった入札方法も紹介されています。現在の置き入札が主流となったのは、11年前に建て替えられた前古書会館が、1972年に落成して以降のことです。
2014年10月21日
人生デザイン U−29「古本屋」
Eテレで昨夜、再放送を見ました。初回放送の時、チャンネルを変えていて偶然眼にし、途中から見たのですが、今回改めて初めから終わりまで。
内容については、「NHKネットクラブ 番組ウォッチ」に端的にまとめられていますので、そのままご紹介します。
東京郊外の古本屋で働く前原航平さん・28歳。競争の厳しい就職活動を嫌い、大学卒業後もフリーターをしていたが、古本屋に憧れ、ハローワークで今の店に出会った。古本屋の“何でもあり”の空気に居心地の良さを感じた前原さんは、ネット販売やカフェでの販売など店のアップデートに取り組んできた。20〜30代が古書業界に参入し、新感覚の古本屋の開店が相次ぐなか、前原さんも独立の道を拓くため新たな古書ビジネスに挑む。
若者応援番組という性格上、当業界も好意的に取り上げられていて、文句をつける筋合いはないのですが、いくつか気になる点がありました。
ひとつは「いくらで買った」「いくらで売った」は、とりわけ市場における売り買いは、従来、こうした番組などでは伏せられるのが習わしだったことです。
それは営業秘密を守るということ以上に、一面的に捉えられて誤解を生みやすいと懸念されてきたからです。俗に「数字が独り歩きする」ことを恐れるわけです。
しかし今回については、そうした数字が番組にリアリティーを与えていた点は認めざるをえません。店主自身、不自然に情報を隠すよりは、ある程度(関係者の了承を得たうえで)ありのままを見ていただく方が良いと考えます。
ただし、そうした場合には、業界としても、より正しい姿が伝わるように、取材側に働きかけることが大切です。もっとも、こちらが働きかけても、そのように対応していただけるかどうかは、相手方の判断に委ねられていますが。
例えば今回のことでいえば、若者が身の丈で始めて、そこで自足できるような業界としてだけでなく、奥行きの深い、社会的にも大きな意義を持つ業界であることを、さりげなくアピールできていたら満点だったのにと残念です。
折から、今朝の日経新聞に、このブログでも以前ご紹介した「ヘーゲル、自著に書評転記 東京の古書店で発見」という記事が出ました。
25分の番組に、ほんの数分でも、こうした視点を入れられなかったものでしょうか。
内容については、「NHKネットクラブ 番組ウォッチ」に端的にまとめられていますので、そのままご紹介します。
東京郊外の古本屋で働く前原航平さん・28歳。競争の厳しい就職活動を嫌い、大学卒業後もフリーターをしていたが、古本屋に憧れ、ハローワークで今の店に出会った。古本屋の“何でもあり”の空気に居心地の良さを感じた前原さんは、ネット販売やカフェでの販売など店のアップデートに取り組んできた。20〜30代が古書業界に参入し、新感覚の古本屋の開店が相次ぐなか、前原さんも独立の道を拓くため新たな古書ビジネスに挑む。
若者応援番組という性格上、当業界も好意的に取り上げられていて、文句をつける筋合いはないのですが、いくつか気になる点がありました。
ひとつは「いくらで買った」「いくらで売った」は、とりわけ市場における売り買いは、従来、こうした番組などでは伏せられるのが習わしだったことです。
それは営業秘密を守るということ以上に、一面的に捉えられて誤解を生みやすいと懸念されてきたからです。俗に「数字が独り歩きする」ことを恐れるわけです。
しかし今回については、そうした数字が番組にリアリティーを与えていた点は認めざるをえません。店主自身、不自然に情報を隠すよりは、ある程度(関係者の了承を得たうえで)ありのままを見ていただく方が良いと考えます。
ただし、そうした場合には、業界としても、より正しい姿が伝わるように、取材側に働きかけることが大切です。もっとも、こちらが働きかけても、そのように対応していただけるかどうかは、相手方の判断に委ねられていますが。
例えば今回のことでいえば、若者が身の丈で始めて、そこで自足できるような業界としてだけでなく、奥行きの深い、社会的にも大きな意義を持つ業界であることを、さりげなくアピールできていたら満点だったのにと残念です。
折から、今朝の日経新聞に、このブログでも以前ご紹介した「ヘーゲル、自著に書評転記 東京の古書店で発見」という記事が出ました。
25分の番組に、ほんの数分でも、こうした視点を入れられなかったものでしょうか。
2014年10月20日
自家目録の可能性
Octoberとありますが、送っていただいてから、ずいぶん経っている気がします。
届いたすぐ後、ご本人に市場でお目にかかって、とりあえずお礼だけは申し上げたのですが、ゆっくり目を通したのは昨日のことでした。
組合に加入されるときに面接をしたというご縁はありますが、律儀に目録をお送りいただくに値するようなことは、何もしておりません。ただ、その専門とされている分野(音楽・芸能史)には店主も興味を持っておりますので、いつも有難く拝見しています。
今回はいつにまして分厚い、A5判446頁。そのかなりの部分が、「昨年末から一ヶ月以上にわたって」市場に出品された「教育資料の大口」によるものだそうです。
扉の裏にある「本書をN氏に捧ぐ」という献辞は、その大口の旧蔵者であった、「同業の先輩方にはよく知られた収集家」をさしています。
このN氏の蔵書については、もちろん大きな話題になりました。即売展という即売展で、まずこの方の名を知らない業者はいなかったでしょう。そればかりか、個人目録や店頭でも買い続けておられました。小店にも、かつて即売展に参加していた頃に、ご注文いただいた記録が残っております。
こうした大蒐書家の蔵書が市場に現れると、店主より上の世代が第一に感じるのは、また一人、上客がいなくなったということです。しかし、「古本屋稼業10年目」という風船舎さんは、編集後記にあるとおり、蒐書家の「思い」に突き動かされるものを感じられたのです。
そこに羨ましさとともに、新たな可能性を見るのは店主だけではないでしょう。
ネット時代においては、店売り同様、もしかしたらそれ以上に、目録販売は困難な状況にあります。それでも、ネット上では簡単に見つからないものを丹念に集めた目録には、今後も根強い需要が期待できるように思います。
目録の一番の問題は発行部数という制約でした。しかし、必要とされるところへ届けるためにこそ、ネットを活用できるのではないでしょうか。あえてここに、ご紹介させていただいた所以です。
届いたすぐ後、ご本人に市場でお目にかかって、とりあえずお礼だけは申し上げたのですが、ゆっくり目を通したのは昨日のことでした。
組合に加入されるときに面接をしたというご縁はありますが、律儀に目録をお送りいただくに値するようなことは、何もしておりません。ただ、その専門とされている分野(音楽・芸能史)には店主も興味を持っておりますので、いつも有難く拝見しています。
今回はいつにまして分厚い、A5判446頁。そのかなりの部分が、「昨年末から一ヶ月以上にわたって」市場に出品された「教育資料の大口」によるものだそうです。
扉の裏にある「本書をN氏に捧ぐ」という献辞は、その大口の旧蔵者であった、「同業の先輩方にはよく知られた収集家」をさしています。
このN氏の蔵書については、もちろん大きな話題になりました。即売展という即売展で、まずこの方の名を知らない業者はいなかったでしょう。そればかりか、個人目録や店頭でも買い続けておられました。小店にも、かつて即売展に参加していた頃に、ご注文いただいた記録が残っております。
こうした大蒐書家の蔵書が市場に現れると、店主より上の世代が第一に感じるのは、また一人、上客がいなくなったということです。しかし、「古本屋稼業10年目」という風船舎さんは、編集後記にあるとおり、蒐書家の「思い」に突き動かされるものを感じられたのです。
そこに羨ましさとともに、新たな可能性を見るのは店主だけではないでしょう。
ネット時代においては、店売り同様、もしかしたらそれ以上に、目録販売は困難な状況にあります。それでも、ネット上では簡単に見つからないものを丹念に集めた目録には、今後も根強い需要が期待できるように思います。
目録の一番の問題は発行部数という制約でした。しかし、必要とされるところへ届けるためにこそ、ネットを活用できるのではないでしょうか。あえてここに、ご紹介させていただいた所以です。
2014年10月19日
「神話学入門」
長いこと手元にあったのに、迂闊にも気がつかないでおりましたが、写真の二冊、右がドイツ語原著で左がその翻訳書(ひどい写真ですがご勘弁を)。
長いことと申しますのは、データに登録されている日付こそ2004年ですが、それよりずっと前に入手していたはずだからです。
一方、翻訳書の方はその間、何冊か手に入れもし、売りもしておりますから、この本が何代目かになるわけです。
翻訳書にある「訳者あとがき」により、これが右の原著の「全訳」であるばかりか、「書肆の希望に従って」原著にない「文献一覧」や「索引」も付けられた労作だと知りました。
晶文社というのは、古本屋にとっては毀誉相半、と言っては大げさですが、いささか厄介な出版社です。
というのは、良心的な出版物が多いのに、古書価がそれほどつかないものが多いからです。ネット時代になって、その傾向はますます顕著になっているのではないでしょうか。
その理由は、垢抜けた装丁につられ、ファッション感覚で買ってしまってから、いざ読んでみると本書のように高度な内容のものであったりして、歯が立たずに投げ出してしまう読者も多いからではないかと思います。
ちなみにAbeBooksで原著を検索すると24件(復刊含む)、「日本の古本屋」で翻訳書を検索すると19件ヒットしました。原著の最低価格は19ドルであったのに対し、翻訳書の最低価格は800円(小店は1000円です)。
これらの事実が何を意味するのかは、改めて考えてみることにいたします。しかし良い本が安く買えるのであれば、読者にとっては決して悪いことではありません。日本の読者は恵まれていると言えるでしょう。
折しも東京大学新聞Onlineに「小林康夫先生退官記念インタビュー」を見つけました。「情報ではなく本を読め」「一年間300冊を10年間読んで初めて見えてくる世界がある」
先生、もっと押してください。
長いことと申しますのは、データに登録されている日付こそ2004年ですが、それよりずっと前に入手していたはずだからです。
一方、翻訳書の方はその間、何冊か手に入れもし、売りもしておりますから、この本が何代目かになるわけです。
翻訳書にある「訳者あとがき」により、これが右の原著の「全訳」であるばかりか、「書肆の希望に従って」原著にない「文献一覧」や「索引」も付けられた労作だと知りました。
晶文社というのは、古本屋にとっては毀誉相半、と言っては大げさですが、いささか厄介な出版社です。
というのは、良心的な出版物が多いのに、古書価がそれほどつかないものが多いからです。ネット時代になって、その傾向はますます顕著になっているのではないでしょうか。
その理由は、垢抜けた装丁につられ、ファッション感覚で買ってしまってから、いざ読んでみると本書のように高度な内容のものであったりして、歯が立たずに投げ出してしまう読者も多いからではないかと思います。
ちなみにAbeBooksで原著を検索すると24件(復刊含む)、「日本の古本屋」で翻訳書を検索すると19件ヒットしました。原著の最低価格は19ドルであったのに対し、翻訳書の最低価格は800円(小店は1000円です)。
これらの事実が何を意味するのかは、改めて考えてみることにいたします。しかし良い本が安く買えるのであれば、読者にとっては決して悪いことではありません。日本の読者は恵まれていると言えるでしょう。
折しも東京大学新聞Onlineに「小林康夫先生退官記念インタビュー」を見つけました。「情報ではなく本を読め」「一年間300冊を10年間読んで初めて見えてくる世界がある」
先生、もっと押してください。
2014年10月18日
第47回洋書まつり
東京古書会館の一階には立派な受付設備がありますが、諸般の事情により、常に受付係が座っているというわけではありません。
その近くにいて他の仕事をしていたり、あるいは近くにいなかったりもしますが、担当の職員さんはとても有能な方で、訪れる一癖も二癖もある古本ファンにも適切に応対され、良い評判をいただいています。
その職員さんから洩れ聞いたところでは、即売展についてのお尋ねでは「洋書まつり」に関するものが他を圧して多いとか。
と言っても自慢になることではありません。古書会館で年に一度の開催は、同時期の「神田古本まつり」と「洋書まつり」の二つだけで、他は年に2〜6回開いています。
ご質問は大抵「今年もありますか?」「何時ありますか?」でしょうから、要するに告知力が低いことを意味しているにすぎません。他の即売展のように販売目録を発行するでもなく、ポスターも手作り少部数。
小さなチラシと、参加店それぞれのメールなどによる案内、それと「日本の古本屋」メールマガジンが、宣伝のすべてです。
本当に今年もあるのだろうかと、危ぶまれる気持ちも、問い合わせを多くしているのでしょう。
それでも、そのように楽しみにしていただいている方が、確かにお出でになるということは、出展者にとって何よりの励みです。
今年は11月7日、8日の二日間。ブログも一年ぶりに更新しました。好天と、大勢のご来場を期待しております。
ただ一つ残念なのは、今年が第47回という、歴史を誇るこの催しに初回から参加されてきた「ゲーテ書房」さんが、今回不参加となったことです。
これで参加メンバーは中国書籍の内山書店さん以外、全員が古書店ということになりました。時代の趨勢というべきでしょうか。
参加店数は前回より一店少ない11店ですが、展示書籍の数量は前回以上に多くなるはずです。どうぞお楽しみに。
その近くにいて他の仕事をしていたり、あるいは近くにいなかったりもしますが、担当の職員さんはとても有能な方で、訪れる一癖も二癖もある古本ファンにも適切に応対され、良い評判をいただいています。
その職員さんから洩れ聞いたところでは、即売展についてのお尋ねでは「洋書まつり」に関するものが他を圧して多いとか。
と言っても自慢になることではありません。古書会館で年に一度の開催は、同時期の「神田古本まつり」と「洋書まつり」の二つだけで、他は年に2〜6回開いています。
ご質問は大抵「今年もありますか?」「何時ありますか?」でしょうから、要するに告知力が低いことを意味しているにすぎません。他の即売展のように販売目録を発行するでもなく、ポスターも手作り少部数。
小さなチラシと、参加店それぞれのメールなどによる案内、それと「日本の古本屋」メールマガジンが、宣伝のすべてです。
本当に今年もあるのだろうかと、危ぶまれる気持ちも、問い合わせを多くしているのでしょう。
それでも、そのように楽しみにしていただいている方が、確かにお出でになるということは、出展者にとって何よりの励みです。
今年は11月7日、8日の二日間。ブログも一年ぶりに更新しました。好天と、大勢のご来場を期待しております。
ただ一つ残念なのは、今年が第47回という、歴史を誇るこの催しに初回から参加されてきた「ゲーテ書房」さんが、今回不参加となったことです。
これで参加メンバーは中国書籍の内山書店さん以外、全員が古書店ということになりました。時代の趨勢というべきでしょうか。
参加店数は前回より一店少ない11店ですが、展示書籍の数量は前回以上に多くなるはずです。どうぞお楽しみに。