2013年01月25日
淋しい中にも救い
夜になって冷え込みが厳しくなってきました。明治古典会終了後、いつもの仲間と、近頃定番の「うどん屋」へ。一杯飲るのにウーロン茶で付き合って、「力うどんハーフサイズ」で締めて、戻ってきたところです。
今日の明古は特選市。量より質、が狙いではありますが、ちょっと寂しい出品量でした。市会が終ってから、来年の七夕大入札会へのスタートともいえる会議。
厳しい経済、業界環境の中、背水の陣で臨むことを確認。今出来る努力はすべて行った上で、その結果次第では、来期以降、全く新しいイベントに取り組む。それくらいの気構えが必要、ということ。
今日の明古に較べ、昨日の一新会は、大量出品で賑わったようです。噂が先行して、一時はその話で持ちきりでした。何しろダンボール2000箱の出品というのです。
直前になって、実際に詰めたところ1000箱で納まったと分かり、さらにそれを500箱ずつ、二回に分けて出品することとなり、その一回目が昨日の木曜日だったのです。
それでも大変な量です。延べ60人を動員して、何とか市会を開催、片づけまでを通常の市会で済ませたのですから、関係者はお疲れになったことでしょう。
この出品は、数年前にご店主の逝去に伴い廃業された、ある地方の古書店の在庫だとのことでした。嬉しい話ではありません。
しかし、10坪程度の小さなお店だったということですが、そこにそれだけの本が詰まっていたというのは、同業の目から見ても、ちょっと驚きです。
一般書が中心の、いわゆる「町の古本屋」さんだったらしいのですが、その在庫処分は、案外良い出来高になりました。
小店主は不熱心で、一新会に足を運びませんでしたから、この目でその出品物を見たわけではありませんが、その金額を聞いて、おそらくは、しっかりした見識を持った、良いお店だったのだろうと、ひそかに敬意を感じた次第です。
今日の明古は特選市。量より質、が狙いではありますが、ちょっと寂しい出品量でした。市会が終ってから、来年の七夕大入札会へのスタートともいえる会議。
厳しい経済、業界環境の中、背水の陣で臨むことを確認。今出来る努力はすべて行った上で、その結果次第では、来期以降、全く新しいイベントに取り組む。それくらいの気構えが必要、ということ。
今日の明古に較べ、昨日の一新会は、大量出品で賑わったようです。噂が先行して、一時はその話で持ちきりでした。何しろダンボール2000箱の出品というのです。
直前になって、実際に詰めたところ1000箱で納まったと分かり、さらにそれを500箱ずつ、二回に分けて出品することとなり、その一回目が昨日の木曜日だったのです。
それでも大変な量です。延べ60人を動員して、何とか市会を開催、片づけまでを通常の市会で済ませたのですから、関係者はお疲れになったことでしょう。
この出品は、数年前にご店主の逝去に伴い廃業された、ある地方の古書店の在庫だとのことでした。嬉しい話ではありません。
しかし、10坪程度の小さなお店だったということですが、そこにそれだけの本が詰まっていたというのは、同業の目から見ても、ちょっと驚きです。
一般書が中心の、いわゆる「町の古本屋」さんだったらしいのですが、その在庫処分は、案外良い出来高になりました。
小店主は不熱心で、一新会に足を運びませんでしたから、この目でその出品物を見たわけではありませんが、その金額を聞いて、おそらくは、しっかりした見識を持った、良いお店だったのだろうと、ひそかに敬意を感じた次第です。
2013年01月24日
本という表現
昨日に続いて、19世紀に出されたゲーテ文献をネットで検索して調べています。
本当は専門の書誌に当たるべきでしょうが、ある程度はWEB上の情報で間に合います。というより、本屋が一番知りたいのは本の相場ですから、世界中の販売サイトをクロス検索するのが、もっとも手っ取り早い方法です。
今更のようにわかったことは、ドイツ語の本でさえ、オンデマンドや、デジタル出版の波に、あらかた覆いつくされようとしているということです。
書名を入れて検索をかけると、殆どの本に「新刊あり」の表示が出ます。それは「ご注文があればいつでも作ります」という意味なのでした。
新刊しかないという例もあります。オリジナルが見つからないということで、だから貴重なのかと思うと、研究書などの場合は、それほど高い値がつくわけでもなさそうです。そうそう「化け」ません。
しかし100年を超えて生き延びてきた本です。何とかして、新たな受け入れ先を見つけてやりたい。
一方で文学作品、とりわけ詩集などの場合は、本の形も味わいの重要な一部分ですから、まだ古書の生き残る余地はありそうです。
例えばこの小さな詩集。横9.2cm、縦12.8cm、本文袋綴じ12葉、中には短詩が16篇。これをデジタル化したところで、何の意味もありません。Cid Corman 自身の手による、Origin Pressの1962年刊。
日本とアメリカとを何度も行き来して、最後(2004年)は京都で亡くなったこの詩人、その名前に懐かしい響きを感じる人には、この片々たる冊子も、それ自体が詩人の表現として貴重である筈です。であって欲しい。
本当は専門の書誌に当たるべきでしょうが、ある程度はWEB上の情報で間に合います。というより、本屋が一番知りたいのは本の相場ですから、世界中の販売サイトをクロス検索するのが、もっとも手っ取り早い方法です。
今更のようにわかったことは、ドイツ語の本でさえ、オンデマンドや、デジタル出版の波に、あらかた覆いつくされようとしているということです。
書名を入れて検索をかけると、殆どの本に「新刊あり」の表示が出ます。それは「ご注文があればいつでも作ります」という意味なのでした。
新刊しかないという例もあります。オリジナルが見つからないということで、だから貴重なのかと思うと、研究書などの場合は、それほど高い値がつくわけでもなさそうです。そうそう「化け」ません。
しかし100年を超えて生き延びてきた本です。何とかして、新たな受け入れ先を見つけてやりたい。
一方で文学作品、とりわけ詩集などの場合は、本の形も味わいの重要な一部分ですから、まだ古書の生き残る余地はありそうです。
例えばこの小さな詩集。横9.2cm、縦12.8cm、本文袋綴じ12葉、中には短詩が16篇。これをデジタル化したところで、何の意味もありません。Cid Corman 自身の手による、Origin Pressの1962年刊。
日本とアメリカとを何度も行き来して、最後(2004年)は京都で亡くなったこの詩人、その名前に懐かしい響きを感じる人には、この片々たる冊子も、それ自体が詩人の表現として貴重である筈です。であって欲しい。
2013年01月23日
「化ける」
昨日の洋書会で買った本が、ルート便で運ばれてきました。
正確に言うと、「コショタン」が描かれた、いつものルート便のトラックではなく、ピンチヒッターとかで、別の運転手さんが通常のトラックで運んでくれました。
運送日時を決めて、割安料金で運ぶというルート便は、古書組合の流通サービスとして、少しずつ定着してきています。しかし依然、専用に使える車両は一台だけ。
その一台に「コショタン」、並びに「日本の古本屋」の宣伝文句が貼り付けられているのです。
どこやらの黄色いトラックとは違って、殆ど目にされる機会はないでしょうが、何しろ古書業界のこと、「レアもの」は貴重なのだと言っておきましょう。
減らず口は措いて、今日届いた昨日の成果は、面白いものですが手間のかかりそうなものばかり。
ゲーテ研究者の一口から、仕分けの一つの切り口として、19世紀に刊行されたものばかりを集めたら、20冊ほどになりました。自分で仕分けた責任上、適当な札を入れておいたら、一番上札で落ちてしまったのです。
同じく、比較的最近の研究書をまとめて、やはり20冊ほどになったものにも札を入れておいたのですが、こちらは手に入れることが出来ませんでした。
売り安さで言えば、後者でしょう。値付けも簡単ですし、本がきれいですから、そのままネットにあげるなり、棚に差すなりしておけます。
片や、小店が仕入れた古い本は、まずその価値を調べるのに時間がかかる。さらにネットにあげるにしても、状態の説明に苦労する。店に並べるとなると、壊れそうなところを保護しておく必要がある、などなど簡単ではありません。
しかし、新しいほうを買った業者に「そっちが欲しかった」と悔しがると、「化けるのはそっちでしょう」と返されました。
正確に言うと、「コショタン」が描かれた、いつものルート便のトラックではなく、ピンチヒッターとかで、別の運転手さんが通常のトラックで運んでくれました。
運送日時を決めて、割安料金で運ぶというルート便は、古書組合の流通サービスとして、少しずつ定着してきています。しかし依然、専用に使える車両は一台だけ。
その一台に「コショタン」、並びに「日本の古本屋」の宣伝文句が貼り付けられているのです。
どこやらの黄色いトラックとは違って、殆ど目にされる機会はないでしょうが、何しろ古書業界のこと、「レアもの」は貴重なのだと言っておきましょう。
減らず口は措いて、今日届いた昨日の成果は、面白いものですが手間のかかりそうなものばかり。
ゲーテ研究者の一口から、仕分けの一つの切り口として、19世紀に刊行されたものばかりを集めたら、20冊ほどになりました。自分で仕分けた責任上、適当な札を入れておいたら、一番上札で落ちてしまったのです。
同じく、比較的最近の研究書をまとめて、やはり20冊ほどになったものにも札を入れておいたのですが、こちらは手に入れることが出来ませんでした。
売り安さで言えば、後者でしょう。値付けも簡単ですし、本がきれいですから、そのままネットにあげるなり、棚に差すなりしておけます。
片や、小店が仕入れた古い本は、まずその価値を調べるのに時間がかかる。さらにネットにあげるにしても、状態の説明に苦労する。店に並べるとなると、壊れそうなところを保護しておく必要がある、などなど簡単ではありません。
しかし、新しいほうを買った業者に「そっちが欲しかった」と悔しがると、「化けるのはそっちでしょう」と返されました。
2013年01月22日
さすがはゲーテ
朝まだ暗いうちに目が覚め、思わず外から聞こえる音に耳を澄ましました。雨が夜のうちに雪に変わっているのではないかと。
そんなときに限って、なかなか車が通りません。もしや大雪ではと、一瞬不安になりましたが、やがて濡れた路面を走るタイヤの音。どうやら、チェーンをつけて走っている車はいないようです。
ほっと安心して、もう一度目をつむり、布団の中でぐずぐずしておりました。
いつも通りの時間に車で店に。雨で濡れないよう、ぐっとコンパクトに表の棚を並べて、古書会館に向かったのは午前9時半過ぎ。
もう少し早く出ないと、午前10時までには着きません。分かっていても、いつも出がけに何やかやと細かい用事が見つかって、今朝も若干の遅刻となってしまいました。
洋書会は、久しぶりにカーゴ複数台の出品がありました。それも二口、フランス語の口とドイツ語の口。お昼まで仕分け作業に追われたのは、今年初めてです。
フランス語の口はBernanos、Julien Green、Saint-Exupery、といったあたりの文学研究書が中心で、どちらかといえば地味な作家たちですから、仕分けが難しい。幸い田村書店さんが来てくださいましたので、当番でもないのに、お任せしてしまいました。
ドイツ語のほうは、これはほぼGoethe一辺倒。全集が何種類かと、数百冊の研究書。僅かに辞書、語学書が混じるほかは、同時代の文学者の本さえ、殆ど見当たりません。
これはこれで仕分けが難しいのですが、ともかく入札しやすい程度の山に仕分けて、何とか札を入れてもらいました。小店も、数点落札。
このドイツ語の口は、来週また続きが出ることになっています。今回と同じ程度の分量とか。やはりゲーテなのでしょうか。シェイクスピア同様、専門店が一軒作れそうです。売れるかどうかは別として。
そんなときに限って、なかなか車が通りません。もしや大雪ではと、一瞬不安になりましたが、やがて濡れた路面を走るタイヤの音。どうやら、チェーンをつけて走っている車はいないようです。
ほっと安心して、もう一度目をつむり、布団の中でぐずぐずしておりました。
いつも通りの時間に車で店に。雨で濡れないよう、ぐっとコンパクトに表の棚を並べて、古書会館に向かったのは午前9時半過ぎ。
もう少し早く出ないと、午前10時までには着きません。分かっていても、いつも出がけに何やかやと細かい用事が見つかって、今朝も若干の遅刻となってしまいました。
洋書会は、久しぶりにカーゴ複数台の出品がありました。それも二口、フランス語の口とドイツ語の口。お昼まで仕分け作業に追われたのは、今年初めてです。
フランス語の口はBernanos、Julien Green、Saint-Exupery、といったあたりの文学研究書が中心で、どちらかといえば地味な作家たちですから、仕分けが難しい。幸い田村書店さんが来てくださいましたので、当番でもないのに、お任せしてしまいました。
ドイツ語のほうは、これはほぼGoethe一辺倒。全集が何種類かと、数百冊の研究書。僅かに辞書、語学書が混じるほかは、同時代の文学者の本さえ、殆ど見当たりません。
これはこれで仕分けが難しいのですが、ともかく入札しやすい程度の山に仕分けて、何とか札を入れてもらいました。小店も、数点落札。
このドイツ語の口は、来週また続きが出ることになっています。今回と同じ程度の分量とか。やはりゲーテなのでしょうか。シェイクスピア同様、専門店が一軒作れそうです。売れるかどうかは別として。
2013年01月21日
虎を譲り渡す
店内の模様替えをして、ご常連さんからは、もっとご批判を受けるかと思ったのですが、皆様、案外穏やかに受け止めてくださっています。
こちらが先回りして、弁解やら、これからの計画(いつになるとも知れませんが)などをお話しているからでもあるでしょう。
逆に「すっきりしましたね」(これは皮肉かもしれません)とか「素敵な雰囲気ですね」などと仰っていただくこともあり、そんなときは、かえって面映い気分になります。
中には、全く気づいておられないのではないかと思うほど、いつも通りに淡々と本を選び、お会計を済ましてお帰りの方もいらっしゃいます。
しかし今日はお一方、店内に入るなり「ハッ」と言って立ちすくまれ、辺りを見回し、もう一度「ハッ」といって、そのままお帰りになられたお客様がおいででした。
不思議なのは、別段、取り払ってしまった棚の本にご用がありそうには、お見受けできなかったことです。
取り払ったといえば、表の絵本棚も移しました。絵本そのものは別の棚に並んでいますが、なくなったものもあります。
「あの虎はどうしましたか?」――二人連れのドイツ人から、尋ねられました。以前に「これは売り物ですか?」と訊かれ「違います」と答えたところ「残念」と、未練たっぷりに棚に戻された方たちです。
時々お見かけしていますが、月に一度、駒場に来られるのだとか。店先の様子が変わって、いの一番に「虎」の不在に気づかれたらしい。
家に仕舞ってあると話すと、できれば譲って欲しいと、依然、ご執心の様子。もともと安く手に入れたものですから、同様に安くお譲りすることにいたしました。
お引渡しは次回ご来店、つまり来月の予定です。
こちらが先回りして、弁解やら、これからの計画(いつになるとも知れませんが)などをお話しているからでもあるでしょう。
逆に「すっきりしましたね」(これは皮肉かもしれません)とか「素敵な雰囲気ですね」などと仰っていただくこともあり、そんなときは、かえって面映い気分になります。
中には、全く気づいておられないのではないかと思うほど、いつも通りに淡々と本を選び、お会計を済ましてお帰りの方もいらっしゃいます。
しかし今日はお一方、店内に入るなり「ハッ」と言って立ちすくまれ、辺りを見回し、もう一度「ハッ」といって、そのままお帰りになられたお客様がおいででした。
不思議なのは、別段、取り払ってしまった棚の本にご用がありそうには、お見受けできなかったことです。
取り払ったといえば、表の絵本棚も移しました。絵本そのものは別の棚に並んでいますが、なくなったものもあります。
「あの虎はどうしましたか?」――二人連れのドイツ人から、尋ねられました。以前に「これは売り物ですか?」と訊かれ「違います」と答えたところ「残念」と、未練たっぷりに棚に戻された方たちです。
時々お見かけしていますが、月に一度、駒場に来られるのだとか。店先の様子が変わって、いの一番に「虎」の不在に気づかれたらしい。
家に仕舞ってあると話すと、できれば譲って欲しいと、依然、ご執心の様子。もともと安く手に入れたものですから、同様に安くお譲りすることにいたしました。
お引渡しは次回ご来店、つまり来月の予定です。
2013年01月20日
ご縁
お昼に一軒宅買い。
数日前にお電話があり、洋書の音楽、演劇、それもクラシックではなくジャズ、ミュージカルといった類をご処分されたいとのこと。何軒か断られた末、小店に辿りつかれたようです。
洋書ということで、神保町あたりの洋古書店に電話をされたらしい。そこでは専門が違うということで、引き受けてもらえませんでした。音楽の専門店に掛けたところ、こちらでは洋書は扱わないとでも言われたのでしょうか。
どちらが先で後だったかは存じませんが、そんな具合でお困りになった末、どこからか洋書の、しかも演劇、音楽関係を扱う店として、小店を紹介していただいたようです。
今回処分をお考えの本について、お電話口でいろいろとご説明くださいました。しかしそれらは、伺っただけでも、あまり値がつかないと判断できるようなものです。
正直にそう申し上げたところ、とにかく片付けてもらえればよいとのこと。お名前を伺うと、その分野では何冊かの著作もあり、名を知られた方です。これもご縁と、今日のお昼前の時間を約束してあったのでした。
ちょうど店主の父親ほどの年齢の方ですが、夜型なので、午前中は避けて欲しいと言われたのを、こちらの都合も汲んでいただき、そんな時間になったのです。
お会いしてお話しするうち、洋書だけでなく、戦前から戦後にかけての大衆芸能の資料をお持ちであり、それも追々処分して行きたいというお考えを伺いました。
こちらは願ってもないお話です。膝を乗り出すようにして、是非にと申し上げると、それでは手始めにと仰って、一部の資料をお預けくださいました。
洋書のほうは、お話になっていたよりずっと量は多かったのですが、想像していたとおりのもので、あまり良い値はつきそうもありません。それでもともかく、まとめてお引取りしてまいりました。
それぞれ来週の明治古典会と、再来週の洋書会とに出品するつもりでおります。
数日前にお電話があり、洋書の音楽、演劇、それもクラシックではなくジャズ、ミュージカルといった類をご処分されたいとのこと。何軒か断られた末、小店に辿りつかれたようです。
洋書ということで、神保町あたりの洋古書店に電話をされたらしい。そこでは専門が違うということで、引き受けてもらえませんでした。音楽の専門店に掛けたところ、こちらでは洋書は扱わないとでも言われたのでしょうか。
どちらが先で後だったかは存じませんが、そんな具合でお困りになった末、どこからか洋書の、しかも演劇、音楽関係を扱う店として、小店を紹介していただいたようです。
今回処分をお考えの本について、お電話口でいろいろとご説明くださいました。しかしそれらは、伺っただけでも、あまり値がつかないと判断できるようなものです。
正直にそう申し上げたところ、とにかく片付けてもらえればよいとのこと。お名前を伺うと、その分野では何冊かの著作もあり、名を知られた方です。これもご縁と、今日のお昼前の時間を約束してあったのでした。
ちょうど店主の父親ほどの年齢の方ですが、夜型なので、午前中は避けて欲しいと言われたのを、こちらの都合も汲んでいただき、そんな時間になったのです。
お会いしてお話しするうち、洋書だけでなく、戦前から戦後にかけての大衆芸能の資料をお持ちであり、それも追々処分して行きたいというお考えを伺いました。
こちらは願ってもないお話です。膝を乗り出すようにして、是非にと申し上げると、それでは手始めにと仰って、一部の資料をお預けくださいました。
洋書のほうは、お話になっていたよりずっと量は多かったのですが、想像していたとおりのもので、あまり良い値はつきそうもありません。それでもともかく、まとめてお引取りしてまいりました。
それぞれ来週の明治古典会と、再来週の洋書会とに出品するつもりでおります。
2013年01月19日
時には振り返る
今朝家を出るとき、車の温度計が示す外気温が0℃。過去に一、二度、そんな数値を見たでしょうか。我が家の辺りでは、めったにない寒さです。
それでも日差しがありましたから、日中は10℃くらいまで上がったようで、風も穏やかでしたから、昨日よりずっと暖かい一日になりました。
今日と、明日と、センター試験の受験生は、良い天気に恵まれそうです。ただし、全国どこでもというわけには行きません。冬の北日本は、厳しい天候に見舞われるのが定めですから。
血液型で性格が異なるなどと信ずることはできませんが、育った風土、とりわけ気候によって、独特な気質が育てられるということは、充分想像できます。
北国の受験生が乗り越えなければならない雪と寒さの日々は、必ず自身に良い実りをもたらしてくれるはず。ついそんなエールを送りたい気分になるのは、先日の雪が、まだそこかしこで不便を残しているからかもしれません。
土曜日、日曜日はQuaint Design さん(の若い女性)が店番をしていただけることになっていますが、インフルエンザに罹られたとかで、本日は、店主が一日店番。
週に一度、近くのフランス語学校に講師としてやってくる某先生、時々その帰りに小店に寄られ、車中で読む文庫本などを買っていかれます。
今日も今日とて、一冊持って帳場まで来られ、お勘定を済まされて、さてお帰りになろうという段になって、「あれ?」。
「ここにあった本棚はどこに行ったの?」――振り向いてようやく店内の様子が変わっていることに気づかれたようです。
それからしばし店内を見回し、踵を返すと「人生、時に振り返ることが大切、ということか」と、シャンソンの一節にでもありそうな独り言をつぶやきながら、退場されたのでした。
それでも日差しがありましたから、日中は10℃くらいまで上がったようで、風も穏やかでしたから、昨日よりずっと暖かい一日になりました。
今日と、明日と、センター試験の受験生は、良い天気に恵まれそうです。ただし、全国どこでもというわけには行きません。冬の北日本は、厳しい天候に見舞われるのが定めですから。
血液型で性格が異なるなどと信ずることはできませんが、育った風土、とりわけ気候によって、独特な気質が育てられるということは、充分想像できます。
北国の受験生が乗り越えなければならない雪と寒さの日々は、必ず自身に良い実りをもたらしてくれるはず。ついそんなエールを送りたい気分になるのは、先日の雪が、まだそこかしこで不便を残しているからかもしれません。
土曜日、日曜日はQuaint Design さん(の若い女性)が店番をしていただけることになっていますが、インフルエンザに罹られたとかで、本日は、店主が一日店番。
週に一度、近くのフランス語学校に講師としてやってくる某先生、時々その帰りに小店に寄られ、車中で読む文庫本などを買っていかれます。
今日も今日とて、一冊持って帳場まで来られ、お勘定を済まされて、さてお帰りになろうという段になって、「あれ?」。
「ここにあった本棚はどこに行ったの?」――振り向いてようやく店内の様子が変わっていることに気づかれたようです。
それからしばし店内を見回し、踵を返すと「人生、時に振り返ることが大切、ということか」と、シャンソンの一節にでもありそうな独り言をつぶやきながら、退場されたのでした。
2013年01月18日
「七條」で新年会
二週続けて、連夜の新年会となりました。
今日は、店主にとって二期目の理事会仲間との同窓会。この理事会がもたれたのは、今から14、5年前のことになります。当時のことは、すでに遠い昔のことになりつつありますが、年に一度、こうして会って話していると、つい昨日のことのよう。
「日本の古本屋」の揺籃期でした。現在の姿は夢想だに出来ませんでしたが、ネット社会への対応が必要だという意識だけは芽生えていました。全国の同業に、その必要を説いて回った時代でした。
また古書会館の再建築が、大きな課題として控えていました。結局この理事会のメンバーが中心となり、建築実行委員会が組織されたのでした。
その新会館が建ってから、すでに10年になろうとしています。ここまで古書をめぐる状況が厳しくなるとは、誰に予測が出来たでしょう。それぞれが古書店主として、それぞれの苦悩を抱えているはずです。
しかしこの一夜は、そうしたことはひとまず措いて、楽しい語らいに費やされました。そのためには「レストラン七條」の美味しいフレンチとワインが、大きな援けとなりました。思えば昨年に続いての、会場です。
出席者は12名。風邪で急遽欠席の元理事長のほか、事情で欠席されたのが3名。しかし何より淋しいのは、二度と出席の叶わぬ仲間が一名生じたことです。天誠書林・和久田誠男さん。昨年の新年会には欠席で、様子を案じていた矢先、ほどなく訃を聞かされたのでした。
この仲間の新年会は、出来る限り長く続けようと、出席中の最年長となった元副理事長が、次回もこの「七條」での開催を告げました。
ただし、ビルの建替えに伴い、現在地での営業は今月限り。3月からは仮店舗で営業を始めるといいます。再建築後に店舗がどうなるかまでは確かめておりませんが、来年は、その移転先での新年会となりそうです。
今日は、店主にとって二期目の理事会仲間との同窓会。この理事会がもたれたのは、今から14、5年前のことになります。当時のことは、すでに遠い昔のことになりつつありますが、年に一度、こうして会って話していると、つい昨日のことのよう。
「日本の古本屋」の揺籃期でした。現在の姿は夢想だに出来ませんでしたが、ネット社会への対応が必要だという意識だけは芽生えていました。全国の同業に、その必要を説いて回った時代でした。
また古書会館の再建築が、大きな課題として控えていました。結局この理事会のメンバーが中心となり、建築実行委員会が組織されたのでした。
その新会館が建ってから、すでに10年になろうとしています。ここまで古書をめぐる状況が厳しくなるとは、誰に予測が出来たでしょう。それぞれが古書店主として、それぞれの苦悩を抱えているはずです。
しかしこの一夜は、そうしたことはひとまず措いて、楽しい語らいに費やされました。そのためには「レストラン七條」の美味しいフレンチとワインが、大きな援けとなりました。思えば昨年に続いての、会場です。
出席者は12名。風邪で急遽欠席の元理事長のほか、事情で欠席されたのが3名。しかし何より淋しいのは、二度と出席の叶わぬ仲間が一名生じたことです。天誠書林・和久田誠男さん。昨年の新年会には欠席で、様子を案じていた矢先、ほどなく訃を聞かされたのでした。
この仲間の新年会は、出来る限り長く続けようと、出席中の最年長となった元副理事長が、次回もこの「七條」での開催を告げました。
ただし、ビルの建替えに伴い、現在地での営業は今月限り。3月からは仮店舗で営業を始めるといいます。再建築後に店舗がどうなるかまでは確かめておりませんが、来年は、その移転先での新年会となりそうです。
2013年01月17日
おわりよければ
水道橋から都営三田線で大岡山経由、自由が丘から東急コーチに乗って家に帰ってまいりました。
それがどんなに間の良いことであったかを知ったのは、自由が丘駅について、東横線との乗り換えの階段まで、隙間なく人で埋め尽くされているのを見たときです。
桜新町駅で人身事故があり、田園都市線が不通になっていることは、車内アナウンスで知らされてはおりましたが。
今夜はTKI改め「『日本の古本屋』事業部」の新年会。会場が、都営地下鉄水道橋駅を上がってすぐの「能登美」だったのです。
売り物は「ぶりしゃぶ」、近頃人気とのこと。お店のほうもなかなかの人気で、二時間飲み放題コースの時間が迫ると、「次のお客様がお待ちですので」と、切り上げを示唆されました。
会場を取ってくれた組合職員のKさんは、しきりと皆の評価を気にしておられましたが、料理も分量も、まずまずでした。お値段の方は、ちょっと確認できませんでしたけれど。そう、今日もまた会費は会もち。
タダ酒ばかり飲んでいるようですが、今日は朝から一日、古書会館でセミナーと会議。まず午前10時半からWEBマーケティングの講習第一回目。マーケティングとは何かといういわば概論を、2時間に亘って聴講いたしました。
ついで午後2時から午後6時までは、定例のNH事業部会議を一部、二部に分けて。それが終わって、ようやく新年会の席へ向かったというわけでした。
実は明日の金曜日も新年会が入っていて、今日はよほど車で店に行き、飲まずに食事だけして店に帰ろうかと考えたのですが、事業部メンバーとは日頃殆ど飲む機会がありません。年に一度の新年会くらいは、ゆっくり飲みながら話をしようと、家に車を置いて出たのです。
それだけに、帰りに事故に巻き込まれずに済んだというのは、幸いなことでした。影響を蒙った方々には申し訳ないことですが、おかげで良い酒となりました。
それがどんなに間の良いことであったかを知ったのは、自由が丘駅について、東横線との乗り換えの階段まで、隙間なく人で埋め尽くされているのを見たときです。
桜新町駅で人身事故があり、田園都市線が不通になっていることは、車内アナウンスで知らされてはおりましたが。
今夜はTKI改め「『日本の古本屋』事業部」の新年会。会場が、都営地下鉄水道橋駅を上がってすぐの「能登美」だったのです。
売り物は「ぶりしゃぶ」、近頃人気とのこと。お店のほうもなかなかの人気で、二時間飲み放題コースの時間が迫ると、「次のお客様がお待ちですので」と、切り上げを示唆されました。
会場を取ってくれた組合職員のKさんは、しきりと皆の評価を気にしておられましたが、料理も分量も、まずまずでした。お値段の方は、ちょっと確認できませんでしたけれど。そう、今日もまた会費は会もち。
タダ酒ばかり飲んでいるようですが、今日は朝から一日、古書会館でセミナーと会議。まず午前10時半からWEBマーケティングの講習第一回目。マーケティングとは何かといういわば概論を、2時間に亘って聴講いたしました。
ついで午後2時から午後6時までは、定例のNH事業部会議を一部、二部に分けて。それが終わって、ようやく新年会の席へ向かったというわけでした。
実は明日の金曜日も新年会が入っていて、今日はよほど車で店に行き、飲まずに食事だけして店に帰ろうかと考えたのですが、事業部メンバーとは日頃殆ど飲む機会がありません。年に一度の新年会くらいは、ゆっくり飲みながら話をしようと、家に車を置いて出たのです。
それだけに、帰りに事故に巻き込まれずに済んだというのは、幸いなことでした。影響を蒙った方々には申し訳ないことですが、おかげで良い酒となりました。
2013年01月16日
報われぬ雪かき
道具というものは、よく出来ているものだと、つくづく感心いたしました。
今朝、店についてから、まず第一番に手をつけたのが、店の前の雪かき。道路の雪が道端に寄せられた結果、雪が土手のごとくに連なって、人の出入りを阻んでいるからです。
今日はルート便の配達もあって、カーゴ台車を出し入れしますから、その通路も確保しなくてはなりません。
お隣のセブンイレブンさんから、スコップをお借りすることができました。そのおかげで、20分ばかりの作業で、除くべき雪を、邪魔にならないところへ、のけることができたのです。
このスコップがなかったら、同じ作業が、どれほど大変なことだったでしょう。
ところで、店主は何となく、土を掘る先のとがったものがシャベルで、雪などをすくう四角い形のものがスコップだと、思っておりました。調べてみるとそうではないようです。
刃先の形状で名が異なるのではなく、JIS規格では、足を掛ける部分があるものがシャベル、ないものがスコップ、と分けられているのだそうです。
となると店主が借りたのはシャベルでしょうか。しかし、この名称はあまり厳密に使い分けられている様子はありません。大小で呼び分けられたり、それも地域によって逆になっていたりすると言います。
何にせよ、比較的軽くて先が四角い、この雪かきシャベルだか、スコップだかは、少し溶けかかった雪をザクザクと掬い取って運ぶのには、うってつけの道具でした。
そんな具合で、張り切って朝のうちに雪を掻いたわけですが、通りやすくなったはずの店内へお入りになるお客様の数は、昨日までと、まるで変わりない少なさです。
ほとんどの時間人気のない店で、ひたすら店番を続けておりますと、明日は腰に来そうな予感がしてまいりました。
今朝、店についてから、まず第一番に手をつけたのが、店の前の雪かき。道路の雪が道端に寄せられた結果、雪が土手のごとくに連なって、人の出入りを阻んでいるからです。
今日はルート便の配達もあって、カーゴ台車を出し入れしますから、その通路も確保しなくてはなりません。
お隣のセブンイレブンさんから、スコップをお借りすることができました。そのおかげで、20分ばかりの作業で、除くべき雪を、邪魔にならないところへ、のけることができたのです。
このスコップがなかったら、同じ作業が、どれほど大変なことだったでしょう。
ところで、店主は何となく、土を掘る先のとがったものがシャベルで、雪などをすくう四角い形のものがスコップだと、思っておりました。調べてみるとそうではないようです。
刃先の形状で名が異なるのではなく、JIS規格では、足を掛ける部分があるものがシャベル、ないものがスコップ、と分けられているのだそうです。
となると店主が借りたのはシャベルでしょうか。しかし、この名称はあまり厳密に使い分けられている様子はありません。大小で呼び分けられたり、それも地域によって逆になっていたりすると言います。
何にせよ、比較的軽くて先が四角い、この雪かきシャベルだか、スコップだかは、少し溶けかかった雪をザクザクと掬い取って運ぶのには、うってつけの道具でした。
そんな具合で、張り切って朝のうちに雪を掻いたわけですが、通りやすくなったはずの店内へお入りになるお客様の数は、昨日までと、まるで変わりない少なさです。
ほとんどの時間人気のない店で、ひたすら店番を続けておりますと、明日は腰に来そうな予感がしてまいりました。