2017年01月17日

遺された蔵書

因果な商売だと思うこともあります。

カーゴ5台半、哲学関係の仕分けあり。そんなメールが事前に届いておりました。当番長として2週目の洋書会。

朝、会場に着くと、すでに荷主である書店さんが来られていて、カーゴを移動中でした。同じ洋書会員、同じ役員メンバーです。

カーゴから本をおろし、平台に並べると、会場の半分ほどがそれで埋まりました。ひとまずそこまででコーヒーブレイクとし、この先の作業手順などを打ち合わせ。

手分けして他の比較的小さな口を片付けて、その後に当番全員で、その大口に取り掛かることにしました。

ギリシャ・ローマ哲学からフランス現代思想まで、普段あまり出てこない、比較的状態の良い哲学・思想関係の学術書が大量に含まれています。

出品者に尋ねてみると、まだ60代そこそこで急逝された学者さんの研究室から引き取ってきたのだそうです。

因果と言うのはこの点です。現役の先生が、これからも使うつもりで持っておられた本ですから、古書としても需要の高い本である場合が多いのです。
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市場に出すのは、故人のご遺志であったようです。競って求めることが、ご供養にもなると、そう考えることにして、いつも以上に札を入れたのでした。

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2017年01月16日

贋作シンジケート?

ネットオークションなどで、ニセの署名本が出回っているという話が、昨年秋くらいから、業界の一部で噂になっておりました。

古書組合の交換会でも、自筆本として出品される中に、偽物が見つかるのは、決して珍しいことではありません。署名本に限らず、色紙や原稿、書簡など、過去にさかのぼれば枚挙にいとまのない状態です。

交換会の場合は、お互いプロ同士ですから、真贋についてはそれぞれの判断に任されます。落札してから、これは偽物だったからという返品は、基本的に認められません。

しかし市場で買ったものが偽物であっても返せないが、お客様に売ったものが偽物であれば引き取らなければならない。それがプロの掟です。

そもそも真贋を判定するのは、決して簡単なことではありません。専門家どころか、本人でさえ間違えたという、笑い話のようなこともあります。

ならば疑わしいものには手を出さなければよいのですが、高い付加価値が付くこともある自筆本には、それなりのリスク覚悟で手を出す業者もいるわけです。

RIMG1607そんな交換会に、最近、似たような贋物の出品が目につくようになりました。あちこちの古書店に売り歩いているグループがあるようです。同じようなモノが、異なる人物によって、各地の本屋に持ち込まれている実態が分かってきました。

警察に相談しても、詐欺行為として扱ってもらうのはハードルが高いとか。業界のなかで、充分に注意喚起していくしかなさそうです。

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2017年01月15日

年賀状解答編

ボロ市日和。寒いのは当たり前、昔の寒さはこんなものではなかった――といっても、体感にはある程度相対的なものがありますので、このところ暖かかった分、寒さが身に応えます。

年齢的なものもあるでしょう。表でジャンクおもちゃを選び、プラモの箱を一つ持って店に入ってきた小学生は、半袖Tシャツ姿。「寒くないの?」と聞くと「寒くない!」。少し得意そうな顔で帰っていきました。

さて正月も15日。年賀状の解答を公開いたします。まだ考えておられる方は、本日分はどうか読み飛ばしていただきますように。

nenga-ans毎年作っていて、苦労するのはタテヨコの「かぎ」です。易しすぎないように、といって誰にもわからないような「かぎ」では意味がない。

たとえば同音異義語がある場合(日本語にはそれが多いのですが)、そのどれを選ぶかは、どんな「かぎ」を思いつくかで決まります。

今回、いささか頭をひねったのは16のヨコ。ザウと言う文字列は、座右という単語以外、店主は存じません。しかもこの単語、通常はザユウと読むことの方が一般的。ではこれを捨てるか。しかしここを他の文字に変えるとなると、8、10、14、19と考え直さねばなりません。

そこで志賀直哉の編集した豪華写真集『座右寶』を持ち出すことにしました。古書業界では知られた本ですが、この読みは「ザウホウ」。出版社で座右宝刊行会というのも、同様の読み。

ある程度文字が埋まっていくと、入れられる文字は限定されます。だから「かぎ」はヒントではなく、まさに鍵。ピタリと鍵穴に入るかどうかを確かめるものなのでした。

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2017年01月14日

五反田で文庫の仕入れ

RIMG1594今日と明日と、センター試験。東京は寒いだけですが、各地大雪で大変なようです。なぜこんな時期にと、毎年思います。

寒い中、五反田の南部地区会館へ入札に。午前10時は回っていましたが、来場者が何時もより少ない感じ。

ここでしか会えない同業に、新年のご挨拶。しかし、その相手も多くありませんでした。お昼近くになれば、もう少し大勢に会えるのでしょうが、小店にも事情というものがありますので。

出品点数も、毎月の入札会に比べればやや少な目に見受けられました。本の並び方も、普段よりはおとなしい。

そのなかを店主は、ひたすら店頭用の文庫本を求めて探し回り、何点かに絞って入札してまいりました。先月の反省から、さらにメリハリをつけ、欲しい口には、かなり強めの札を入れたのです。

ただ今月は、質の良い口が数少なかったので、その強めの札でも落とせる自信はありませんでしたが、採算を度外視はできません。まあ小店にとっては限度いっぱいの札。

夕方エクストラネットで調べると、2点が、どちらも下札で落札できたようです。狙った口ですから、まあ満足。全部で250冊ほどでしょうか。

明日引き取りに行き、早速家人に、値付けと並べをしてもらうことになります。

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2017年01月13日

今夜も新年会

明治古典会は新年2回目にして、いくらか出品量が戻って来たようです。今日はいつも通り、3階4階、2フロアーでの開催でした。

しかしまだ完全に復調とはいえず、その証拠に午後4時過ぎには最終発声まで終わってしまいました。これで出来高が良ければ問題ないのですが、そこのところは確かめておりません。

ともあれ、おかげで総会を早くから始めることができました。

本日の主要な議題は上半期の事業報告。その他にも組合、交換会の今後について真剣な議論がありましたか、大方にはご関心のないところでしょうから、省略。

中で、皆さまにもご興味を持っていただけそうな話題がありました。近頃、偽物(ギブツ)の横行が目に余るというお話。それがどんなことかは、改めてお伝えいたします。

RIMG1590今日のところは、その総会後、旧理事会の新年会に出席したというご報告をいたします。西暦2000年を挟む2年間をともに務めた仲間、つまり今から15〜17年前の同期会です。

総勢16名のうち、一人は早くに業界を離れ、一人は数年前に逝去。残る14名が、毎年、ほぼ欠けることなく顔を揃えます。歴代理事会の中でもかなり珍しいことですが、これは格別結束が強いというより、熱心な肝煎り役の存在が大きな要因でしょう。

会場はこの10年近くは同じ店。店の方が途中で移転しましたが、それでも変わらずレストラン「七条」。毎年事前にメニューが送られてきて、各自が好きなコース料理を選びます。

いつもながら一通りいただくとお腹いっぱい。しかも偏食、小食の仲間からお皿が回ってきます。ついそれにも手を出して、最後は苦しいほど。消化に良い会話ばかりなのが救いです。

楽しい食事を終え、解散するときには、「よいお年を」と言い合って別れたのですが、これが冗談にならない仲間もいるのです。

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2017年01月12日

読ませる記事

RIMG1588「全古書連ニュース」第456号が店に届きました。全国古書籍商組合連合会の機関紙です。

こんなことをいっても、業界関係者以外にはチンプンカンプンでしょう。要するに全国の組合加盟古書店約2千軒に対して隔月に届けられる、小判(B5サイズ)の新聞であるとご理解ください。

隔月という点にご注目いただけるでしょうか。そして通巻第456号です。いったい何時ごろから発行されているのか。当初より隔月刊行が定められていたわけではありませんから、ただ6で割るのとは少し違いが出ます。

創刊は終戦の翌年、全古書連が発足するのと同時。つまり今年で72年目になります。東京組合の機関誌『古書月報』といい、この『ニュース』といい、古本屋の継続力は大したものだと、改めて思います。

その伝統ある機関紙、本号のメイン記事は、東京組合が「古書の日」に企画した「古本屋の〈これから〉について話そう」というトークイベントの紙上再録。

話しているのは司会者を含め4人で、いずれも業界歴10年前後、年齢は30代40代という、わが業界においては若手の面々。

このイベントは、もともと古書の世界に興味を持ち、できれば古書店を開きたいと考える方たちのために開いたものです。ですから、若手が中心となるのは当然。人選もトークの内容も適切なものでした。

しかし、それを全国の同業、しかもその多くが自分より遥かに業界歴の長い人たちに読まれることになるとは、ご当人たち、あまり意図していなかったと思います。店主が同じ立場なら、大慌てするところ。よく再録を承知されました。

急いで申し上げますが、難癖をつけているわけではありません。実際、店主自身も大変興味深く読ませてもらいました。若い人たちの考えを聞く機会は、それほどないのですから。

ただこうした再録もの、ページを埋めるのには重宝ですが、大変なのは文字に起こす作業です。読ませる記事になるかどうかは、ほとんどその技量にかかっています。黒子に感謝です。

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2017年01月11日

みつぎ?みつぐ?

人名は難しい。特にその読み方。かくいう店主自身の名も難読の極みで、まあ一種の勝手読みだと思っております。

難読の場合に限らず、幾通りも読み方があれば、どれが正しいのか、他人にはなかなかわかりません。

RIMG1598もうずいぶん前に手に入れた洋書に、アルファベットで記名がありました。Uchida Mitsugi と書かれています。

その経緯は忘れてしまいましたが、店主にはこれが内田魯庵の旧蔵書ではないかと推測する、充分な理由がありました。本自体も、その刊行年や内容から、魯庵が持っていて不思議のないものです。

RIMG1599日本語訳も出ている「ワグナー伝」。もともとはドイツ語で書かれ、それを別人が英訳し、原著者がそれに増補を加えたという複雑な成立ですが、天金の立派な装丁。

しかし、どうしても腑に落ちない点がありました。魯庵の本名は、ご存じの通り内田貢。この「貢」の読みが、調べた限りではいずれも「みつぐ」とされているのです。これが長年の疑問でした。

ところが暮れから読み始めた『日本文壇史』の第一巻で、ついに「みつぎ」とルビがふってあるのを発見したのです。思わず親指を立てました(というのは嘘ですが)。

さてしかし、「みつぎ」とあったのはその一箇所のみ。第二巻以降では、「みつぐ」とルビがふられています。

謎はさらに深まってしまいました。この表記の揺れは、単なる誤植なのでしょうか。『文壇史』を読み進めていけば、ふたたび「みつぎ」に遭遇するのでしょうか。

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2017年01月10日

洋書会初市

RIMG1591洋書会は今日が初市。今年は先週木曜日から市が始まっていますから、すでに新年のあいさつを済ませた同業も多く、お互い確かめながら「おめでとう」を交わしておりました。

さて1月は店主の班が当番。しかもわが班は、持ち回りで班長を務めることになっており、今月は店主がその班長。

遅れるわけには参りません。店に着いたのが8時40分、最低限の開店準備を済ませ、9時15分過ぎに店を出て、10時より少し前に会館に着くことが出来ました。

4階の会場に着いてみると、予測はしていたことながら、極端に少ない出品量です。いつも年明けはこんな調子ですが、それにしても淋しすぎます。小さな仕分けの口が1件。ご自身で仕分けして封筒をつけてこられた口が1件(あとからもう少し増えましたが)。

仕分けの口は店主が4点に分けました。ホワイトヘッド関連が約100冊、カント研究書がざっと60冊といった具合に、面白い口ではありましたが、本の状態がいま一つ。旧蔵印の入っている本も混じっておりました。

それを終えてから5階のロッカーフロアへ上がり、店主自身のロッカーをかき回して、出品できそうな本を選び出しました。

封筒をつけてみると全部で11点。目をつぶって売ったものもありますが、7点に札が入りました。まあロッカー代にはなったかと。

これ、昨年も同じようなことを書いた気がしてきました。

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2017年01月09日

映画を観ながら

RIMG1596昨晩、暮れに録画してあった『ナイル殺人事件』を観ました。意図して録画したものではなく、ポアロのTVドラマをシリーズ録画していた中に、紛れ込んでいたのでした。

同じ原作のTVドラマ版も、比較的最近に観ており、まだ記憶に新しかったので、二作の違いをとても興味深く感じながら観ました。

映画版は豪華キャストの競演が売りものですが、作品の出来としては、TV版の方がずっと良いように思います。脚本の差でしょうか。ポアロの造形も、ピーター・ユスティノフの演技は少しはしゃぎ過ぎ。

映画は1978年制作とか。TVは2004年だそうです。あと出しの有利さはあったとしても、作劇術の点から、店主はこちらに軍配を上げます。

豪華出演陣の中で、特に関心を持って見たのは富豪夫人の付添人を演じたマギー・スミス。正月に「ミス・シェパードをお手本に」を観たばかりでしたから。彼女にとっては、現在が一番の旬なのかもしれません。

今朝、表の棚を整理していて、洋書の均一棚にアラン・ベネットの戯曲が何冊も並んでいるのに気がつきました。おなじみのFaber社のペーパーバックです。

思わずThe Lady in the Vanがないかと探しましたが、最も新しいものでも1980年刊で、1999年初演のこの戯曲は、もちろんそこにはありませんでした。

そう言えば映画の中で、劇作家のもとに著書が届くシーンがありました。段ボールを開けると出てくるのは、今棚に並んでいるような薄い戯曲。一箱に50冊は入っていそう。全部で何部刷られているのだろうと、そんなことが気になったのを思い出しました。

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2017年01月08日

残念な本棚

お正月、ふだんほとんど見ることがない民放TVを、名古屋で見ておりましたところ、壁一面に洋書が並ぶ本棚、その前で言葉を交わす男女――という、ある銀行系のCMが目に飛び込んできました。

名の通った金融機関のCMです。男性が、天井まで届きそうに積み上げた本を、軽々と抱えるシーンがあります。

RIMG1589大きな重そうな本ばかりで、現実にはありえない姿ですが、もちろんそれは映像のお遊び。そんなことに異を唱えるつもりはありません。

しかし問題はその本です。男性が抱えている本には目をつぶるにしても、壁面の書棚を埋め尽くしている本のセンスのなさ。

特に揃いものに関しては、洋古書業者ならひと目でどんな種類のものか見分けがつきます。殆んどが、メーター幾らで揃えたとしか思われない本ばかり。

並んでいる本に脈絡もなければ、雰囲気もありません。なぜこうまでして、本の実物にこだわるのでしょうか。これなら写真や作り物を並べておいた方が、まだましだと思うのです。

大勢の人の目に触れるCMで、これほど無節操な本棚を映し出す神経が理解できません。洋古書業者などより、はるかに眼識のある方たちは大勢おられます。まあそういう方々は、TVCMなどご覧にならないかもしれませんが。

同じCMを、2、3度目にしたはずですが、その度に本棚が気になって、CMの内容はまるで記憶にありません。辛うじてメガバンク系のスポンサー名が頭に残っただけでした。

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