2018年03月02日

在庫品の整理

昨秋亡くなられた明治古典会の先輩会員には、後継者がおられませんでしたので、立派なお店と膨大な在庫を、一人残された奥様がどのようにされるのか、会員は等しく気遣っておりました。

ほどなくして決まったのは、お店は廃業、在庫は処分し、店舗は賃貸するということ。それに先立って、先月まで閉店セールが行われたと聞きます。

今月からは、いよいよ残った在庫を順次市場に出品することになり、その第一弾が今日の明治古典会に並びました。

大まかに言って文学書、文科系学術書というのが、このお店が扱ってこられた分野でしたから、今日はまず、その手の全集、叢書類が中心となりました。

RIMG2651月が替わってまだ2日ですので、今回持ち込まれたのは、ごく一部分に過ぎません。それでも会場の壁面や平台の上に高く積み上げられた揃い物の多さは、明古には珍しい光景でした。

やがて開札の時間となり、順次札が開いていきますと、予想はしていたものの、かなり厳しい落札値の読み上げが続きます。とりわけ文学全集の類は、悲しいほどの安値。

そのなかで、唯一会場をうならせたのは「日本書誌学大系」(青裳堂書店)174冊一括です。本日最高の落札価格であったばかりでなく、この1点だけで、これを除く約90点の落札額合計の、倍近い額になりました。

裏を返せば、その他の落札額がいかに低かったかということ。小店の在庫などは、良くてもこの「その他」の部類だと思うと、うすら寒い気分にさせられました。

在庫の整理がつくまでには、この先何回か、さらに大量の出品が続くことになる予定です。

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2018年03月01日

本を売った話

ああ、このことだったのだ――と、かつて松村書店三代目の松村栄一さんから聞かされた話を思い出しました。

『日本文壇史』第13巻、その前半は、永井荷風と石川啄木について交互に語られていきます。貧しさにあえぎながらも、小説家になる夢を捨てられない啄木。恵まれた家庭に育ちながら、放蕩を重ねて身の定まらぬ荷風。

読んでいて、こちらが焦燥感にとらわれるような、青春の日々が描かれています。

その啄木が、金田一京助の世話で、ようやく露命をつないでいるあたりのエピソードに、松村書店の名が登場してくるのです。

二人が住んでいた下宿屋で、金田一は啄木の下宿料もほとんど立て替えて払っていました。ある時、その催促の仕方が腹に据えかねることがあって、金田一は下宿を代わろうと思い立ちます。

金田一は明日全部払うと言って、神田の古本屋松村書店へ葉書を出し、文学関係の蔵書の大部分を売り払うことにした。彼はそのことについて啄木には何も言わなかった。翌日松村の主人が彼の蔵書を見に来たとき、啄木は与謝野寛と一緒に鴎外のところへ出かけていて留守であった。金田一の売ろうという本は四十円の値がつけられた。二三日して松村はそれを引き取りに来たが、それは荷車に二台もあり、尨大な量であったので、それが運び出されるのを見たとき下宿の主人は狼狽した。金田一はその中から十円を下宿に払った。

RIMG2659店主が松村さんから聞いたのは、その昔、金田一の蔵書を買い取ったということ。それが何のためであったか、先々代から聞かされていたのでしょう。

「啄木、あいつは悪いやっちゃ。金田一さんはええ人や」酒が入ったとき、なぜか妙な関西弁になる松村さんが、しきりとそう繰り返したことを思い出したのです。

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2018年02月28日

古本屋だから

今朝の朝日新聞に、ある新刊書店さんの店じまいが記事になっていました。そのご主人の年齢がたまたま店主と同じということもあって、感慨深く読みました。

RIMG2650単に同年齢だからというだけではありません。店主もまた、古本屋を目指す前の一時期、新刊書店を開く道を模索していたからです。

この方の開業は1980年とのこと。店主が五十嵐書店さんに拾っていただいたのは1977年で、物件を探して歩いたのはその1、2年前。ですから、このころの貸店舗状況については、なんとなく記憶があります。

世の中がバブルに沸くのはまだ10年ほど後のことですが、その当時でもなかなか物件はなく、あっても手が出ないような金額ばかり。

しかも、書店開業には、想像していた以上の資金が必要だと分かり、その程度の知識すらなかった店主はあえなく挫折。古本屋なら、小資本で始められそうだと目を向けたのが、この稼業へのスタートでした。

それでも万一、この方のように好物件にめぐり合っていたら、資金援助も得られたかもしれず、まかり間違えば新刊書店の親父さんになっていた可能性が、なかったわけではないのです。

しかし記事を読む限り、この方は、店主には及びもつかぬ努力家であったことがうかがえます。そんな方でさえ廃業のやむなきにいたったことを思うと、例え運よく新刊書店が開けたとしても、とても長続きはできなかったろうと、今にして思います。

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2018年02月27日

寿司とイタリアン

二晩続けての外食となりました。昨夜は「寿司の会」、今夜は「同窓会」。といっただけでは訳が分かりませんね。

「寿司の会」というのはTKI=「日本の古本屋」事業部の有志で、予約を取るのが難しい、安くておいしいお寿司屋さんに行こうという企画。昨年10月頃に持ち上がったのが、ようやく実現したもの。

KIMG0430同窓会のほうは店主の京都時代、つまり学生時代の友人が、久々に東京で顔を合わせようという、これも去年の暮れ頃に持ち上がった話。

どちらも店主にとっては楽しい一夜でしたが、それぞれの集まりの一部始終をお話したところで、大方にとっては退屈なだけでしょう。興味を持っていただけるとしたら、どんな店だったかということくらいだと思います。そこで、それぞれのお店について簡単にご説明。

「寿司の会」は昨夏、店主が行く機会を得た、IT関連健康保険組合の福利厚生施設にあるお鮨屋さん「鮨一新」。組合員なら格安、その同伴者でも割安で美味しいお寿司を食べさせてくれるのですが、なにしろ予約が取れない。

その話をしたところ、TKIのコンサルタントをしていただいている方もその組合員だと分かり、では一度、皆で行こうという話になって、何か月も先となる予約を取ってくれたというわけです。

今夜の同窓会は表参道のイタリアン「Napule」。こちらは友人に紹介してもらった店ですが、その友人というのも学生時代からの付き合い。リーズナブルな店をという条件に十分叶い、料理も満足できるものでした。

こちらは誰でも行ける店ですから、機会があればまた行ってみたいと思っております。

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2018年02月26日

授業料

何冊か頼まれ本があり、ネットを通して注文し、その引き取りに神保町まで行ってきました。

たまたま神保町の書店さんが3軒あったため、その方が早いと考えてです。納期が迫っているという事情もありました。

KIMG0428首尾よく入手でき、そればかりか、ついでに古書会館に立ち寄ると、別の書店さんの本も届いていて都合4点、持ち帰るのに重いほどでした。

古書会館では中央市会が、例によって大量の出品物と大勢の業者で賑わっていて、せっかくなので店主も会場を一回り。目についた数点に入札もしてまいりました。

その折、ふだんあまり会わない何人もの同業とあいさつを交わし、なかでも久しぶりに会った旧知の同業からは、店主のブログに関する意見をいただきました。

例の「古い本や書いたものがある」という詐欺師(そう呼んでもいいでしょう)の件。「実は」といって、彼もまた被害にあったことを告白してくれたのです。

「これから先、どれだけ被害が出るかわからないし、ぜひ広く警告してほしい」というのが、彼の意見でした。

しかしこうも言っておりました「欲と二人連れ。また騙されるかもしれないな」と。「欲」というとあまりにあけすけですが、良いものを仕入れたいという意欲は失うべきではありません。

とりわけ若い業者さんには、あまりに消極的にならないようにとも申し上げておきたいところです。騙す者を許すことはできませんが、時に騙されるくらいの人の方が伸びることも確か。授業料という言葉もあります。

伸びなかった店主が言うのだから、間違いありません。

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2018年02月25日

拾い読む愉しみ

市場でのこと。何冊か、あるいは何十冊か束になって出品されている中に、ちょっと自分で読んでみたい本が見つかり、それが入札する動機になることがあります。

もっとも、ほかに値踏みすべき良い本がたくさん混じっていれば、なまじな札では落ちてきませんし、逆に目ぼしい本がなければ、その一冊だけどこかで手に入れて読む方が安上がりです。

obiですから、いい按配で束になっていて、うまい具合に落札できるというお得なケースは、そうそう多くあることではありません。

先日、そんな一束に出会い、首尾よく落札できました。読んでみたかった一冊というのはこの『本は生まれる。そして、それから』(小尾俊人、幻戯書房、2003年)です。

小尾さんとは生前、ひと言ふた言、お話させていただく機会がありましたが、どの程度こちらを認識なさっていたかは、定かではありません。古本屋であるくらいは、承知してくださっていたでしょうか。

それはともかく、尊敬する出版人の書かれた本です。後日、店に届いた落札品の中から抜き出して、さっそく拾い読みをいたしました。

短いエッセイや談話がほとんどで、拾い読みにはうってつけ。お昼の食休みの時などに目次を開き、興味をひかれたものから、少しずつ読んでおります。

外国の出版社についての話が、店主にはとりわけ「面白くてためになる」。プレイヤード版の現在の初版部数は最低1万2千部、いままでの最高はサン=テグジュペリで30万部などと知りました。

なるほど小店でも、彼の巻は何度か入荷しましたが、いずれもすぐに売れております。

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2018年02月24日

不時の災難

今朝、出かけようとして、いつものようにガレージのシャッターボタンを押すと、大きな異音がするだけで、一向にシャッターが上がる気配がありません。

何度か繰り返すうちに、一瞬、巻き上げ音が聞こえたかと思うと、次の瞬間、全く音がしなくなりました。素人見にもモーターが完全にダウンしたようです。

RIMG2643とうに寿命は過ぎていて、いつ壊れても不思議はないと覚悟はしておりましたが、いざ壊れてみると困った事態が生じました。手動では、まるで開けることができないのです。シャッターが降りたまま出口に蓋をされた状態で、車を出すことができません。

よりによって今朝は一件、宅買いの予定が入っておりました。とりあえず先様にお電話を入れて、本日は伺えない旨をお伝えし、「何が起きるか分からないものですね」と、ご了承いただきました。

さてそれから、まず家人に店に向かってもらい、こちらはネット検索。24時間受付というシャッター修理110番を見つけ、そこに電話。いつ手配がつくかもわからないので、ひとまずバスで店に向かいました。

店に着いて棚の整理などをしているうちに、業者さんから連絡が入り、今から我が家に向かうので30分ほどで着くとのこと。店主もすぐ取って返しました。

到着するとすでに業者さんは着いておられ、見ていただいた結果、やはり修理不能。ともかくシャッターを切り裂いて、出口を開けていただいたのですが、ではこの先どうするのか。

亡き義母が30年も前に、張り込んで作ってくれた電動シャッターでしたが、もう電動は要りません。手動で十分。それでも結構な出費となりそうです。

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2018年02月23日

カミングアウト

明治古典会は2月の特選市。しかし今日は会の雑務に追われて、市会場にいる時間より、6階の事務フロアにいる時間の方が長かったような一日でした。

その6階で作業をしていた時のこと、若手の同業から「河野さん」と声をかけられました。

RIMG2602「先日、おかしな客が店に来まして」とスマホを差し出します。そこには一人の老人が映っていて「この写真ですが…」

今日にも取り壊すことになっている古い旅館があり、そこに絵とか本とかが残っていて、引き取り手を探している、というような話しだったそうです。「岸田劉生の絵」なるものを見せられたとか。

それは買わなかったのですが、残っているという蔵書につい色気を出し、翌々日なら行けると話したところ、解体作業の車を抑えておくために1日当たり幾ら幾らかかるので、その金を出してほしいと言われたそうです。

何万円かを払い、約束の日に知らされていた場所を尋ねたところ、目指す建物は影も形もなく、そもそも住所すら存在しないことが分かったとか。

この話を彼の仲間にしたところ、前に店主が似た話をブログで書いていたと知らされ、それで今日、会ったのを幸いに、スマホの写真を見せてくれたというわけでした。防犯カメラにでも撮られていたのでしょうか。

顔はもうひとつはっきりしませんが、全体の醸し出す雰囲気は、まぎれもなく小店に来たのと同一人物です。

彼が言うには、新たな被害者が出ないように、あえて自分の恥をさらしてでも組合員に注意喚起したいと考えているそうです。

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2018年02月22日

単品スピード注文

TKI定例会議。例によって、終了したのは午後7時。

RIMG2607今日は、こまごまとした改修についてシステム会社から説明を受け、それに対してまた意見を出して、ということで時間を取られました。

中で、まもなく実現しそうなのが「単品スピード注文」の仕組み。仕組み自体はすでに備わっていて、これまでは「即決注文」という名で、ボタン表示されていました。

分かりやすく言えばワンクリック注文。もっともワンクリックとはいきませんが、欲しい本の注文ボタンを押せば、次にクレジット決済のボタンを押すだけで注文完了となる、便利な仕組みです。

ただしそのためには、出品者が商品ごとに、そのように設定しなければなりません。そして「スピード注文」が可能な商品は、現状ではあまり多くありません。それには出品者側の事情があります。

出品登録の時点ですべての状態説明を書ききれない、ということがひとつ。さらに大きな問題は、必ず在庫しているとは限らない、ということ。

多くの「日本の古本屋」参加店が店舗を持っていて店頭でも販売しており、店で売り切れたものをデータベースから消す作業が遅れる場合も少なくないからです。

現に小店でも、月に1度や2度は、お詫びのメールを出しております。これでも以前に比べて、そうしたケースが少なくなりはしたのですが。

しかしお客様の利便性を考えれば、選べる注文方法が多いに越したことはありません。そう考えて、状態に問題のない本で、確実に在庫管理ができるものについて、少しずつ「即決注文」もできるようにしてまいりました。

まだ数えるほどの点数ですので、これまでのところ受注実績はゼロ。小店だけではなく、他店でも思ったほど受注がないらしく、「分かりにくいからじゃないか」という意見があって、今度の名称およびデザインなどの変更に至ったというわけです。

近々リリースされるはずですが、果たしてこれで「スピード注文」が増えるでしょうか。

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2018年02月21日

参考になる本

「シェイクスピアの本はありますか?」

ストレートなご質問。学生さんより少し年かさ、30歳前後といった男性です。

RIMG2640なんとお答えすべきか、思わず返事に詰まっておりますと「ありませんか?」、重ねてのお尋ね。ハムレットのセリフが浮かびます。アリマス、アリマセン、アレワナンデスカ

冗談はさておき、逆にお尋ねしました。「シェイクスピアのどんな本をお探しでしょう?」「なんでも。研究書を探してます。小津(次郎)さんなんかを読んでますが」

少し的が絞られてきました。まず戯曲ではなく、論じたもの、それも日本語で。店の棚に少しばかり、まとめて並べてありますので、その場所へご案内いたしました。

「実は今度『ベニスの商人』を演出することになってるんで」とおっしゃりながら、目を走らせておられます。なるほど、その参考になる本をお求めのようです。

さて一体、どんな本が参考になるのだろう、と沈思黙考しているうちに、お客様は演劇書の棚の方に移られ(小店では、場所の都合でシェイクスピア関連は文学書の棚にあります)、しばらくご覧になったあと「また時間のある時に来ます」と言い残して、さっさと出て行かれました。

お帰りになったあとも、店主の頭の中では本探しが続いておりました。料理のレシピ本のように、調理法ならぬ演出法が載った本があるでしょうか。英語版ならあったような気もします。

しかし仮にあったとして、それが役にたつでしょうか。古典を再現するのか、現代風に演出するのか、それによっても事情はまったく異なります。

またおいでになったらお尋ねしてみたいところですが、もう来られることはないような気がします。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)
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