2024年01月18日
喫茶店が消えた
対談集『すごいトシヨリ散歩』(池内紀・川本三郎、毎日新聞出版、2021年)の目次を開き、「いい町にはいい喫茶店がある」という章を拾い読みしました。
「あとがき」に書かれていましたが、池内さんが亡くなられたのは2019年夏。お二人の対談は、その直前まで続いたことになります。
で、喫茶店ですが、いくつか店名が出てくるなかに、とても懐かしい名を見つけました。「談話室 滝沢」です。新宿の店が取り上げられていましたが、池内さんが「御茶ノ水の地下にもありましたね」とフォロー。
こう聞くと、まるで駅の地下のようですが、とあるビルの地下にあった、というのが店主の記憶です。正確な場所は思い出せませんが、確か五十嵐さんに連れて行ってもらったのが最初で、そのあと数えるほどしか行っていません。
本屋さんは喫茶店好き、というよりお喋り好きですから、会館近くの喫茶店なら、大抵どこでも業者仲間の顔を見かけたものです。
そんななかで「滝沢」は「ルノアール」同様に、ゆったりした作りながら、より個室感があり値段も高めでしたので、人目を避けたいときに行くところだと聞いていました。
昔は、落札品はその日のうちに持ち帰るという決まりが今より厳しかったので、入札してから開札が終わるまで、神田以外の本屋さんは、市場近くで時間を潰すのに喫茶店を利用することが多かったわけです。
しかしいつの間にか、会館界隈の喫茶店は姿を消していきました。明大通りを渡って神保町方面に行けば、まだ多少は残っていますが、裏手にあたる小川町地区は、昨年閉店したVOICI CAFEを最後に絶滅。
いまではドトールやタリーズが、お喋りの場となっているようです。
「あとがき」に書かれていましたが、池内さんが亡くなられたのは2019年夏。お二人の対談は、その直前まで続いたことになります。
で、喫茶店ですが、いくつか店名が出てくるなかに、とても懐かしい名を見つけました。「談話室 滝沢」です。新宿の店が取り上げられていましたが、池内さんが「御茶ノ水の地下にもありましたね」とフォロー。
こう聞くと、まるで駅の地下のようですが、とあるビルの地下にあった、というのが店主の記憶です。正確な場所は思い出せませんが、確か五十嵐さんに連れて行ってもらったのが最初で、そのあと数えるほどしか行っていません。
本屋さんは喫茶店好き、というよりお喋り好きですから、会館近くの喫茶店なら、大抵どこでも業者仲間の顔を見かけたものです。
そんななかで「滝沢」は「ルノアール」同様に、ゆったりした作りながら、より個室感があり値段も高めでしたので、人目を避けたいときに行くところだと聞いていました。
昔は、落札品はその日のうちに持ち帰るという決まりが今より厳しかったので、入札してから開札が終わるまで、神田以外の本屋さんは、市場近くで時間を潰すのに喫茶店を利用することが多かったわけです。
しかしいつの間にか、会館界隈の喫茶店は姿を消していきました。明大通りを渡って神保町方面に行けば、まだ多少は残っていますが、裏手にあたる小川町地区は、昨年閉店したVOICI CAFEを最後に絶滅。
いまではドトールやタリーズが、お喋りの場となっているようです。
konoinfo at 18:30|Permalink│Comments(0)│
2024年01月17日
同業者の被災
今日また『全古書連ニュース』1月号を手に取り、石川県組合のオヨヨ書林さんが記事を書かれているのを読んで、気になることを思い出しました。
明古の初市で日月堂さんにお会いした時、「珠洲市に古本屋さんがある」とお話しされていたことです。
『日本の古本屋』の「古本屋を探す」タブを開いて、石川県の古本屋さんリストを見ていくと、確かにありました。「古本LOGOS」というのがその店名です。その店名をクリックして「書店情報」を見ると、次のようなメッセージが掲載されていました。
✳️古本LOGOS、令和6年能登半島地震の発生により、現在休業中です。
⭐️いつも当店をご利用いただきありがとうございます。
令和6年元旦に発生いたしました、能登半島地震のため、自宅も店舗も被災し、避難所に避難しております。郵便物の配送も止まっております。そのため、当面ネット注文は休止させていただきます。大変申し訳ございません。
トラブル回避のため、ご理解の上宜しくお願いします。
痛ましいことです。ご本人がご無事であったことだけが救いですが。
過去の大震災に組合が採った対応を、思い返してみました。阪神淡路に際しては、組合で集めた義援金を被災組合まで届けに行っております。東日本の時は、被災地があまりに広範であったため、組合の募金は日本赤十字社に託しております。
それ以後、災害時には、組合単位で被災組合へ義援金を贈ることが定式化しているようです。ほかに被災された組合員さんがどれくらいおられるのか、まずはそれを確かめなければなりません。
明古の初市で日月堂さんにお会いした時、「珠洲市に古本屋さんがある」とお話しされていたことです。
『日本の古本屋』の「古本屋を探す」タブを開いて、石川県の古本屋さんリストを見ていくと、確かにありました。「古本LOGOS」というのがその店名です。その店名をクリックして「書店情報」を見ると、次のようなメッセージが掲載されていました。
✳️古本LOGOS、令和6年能登半島地震の発生により、現在休業中です。
⭐️いつも当店をご利用いただきありがとうございます。
令和6年元旦に発生いたしました、能登半島地震のため、自宅も店舗も被災し、避難所に避難しております。郵便物の配送も止まっております。そのため、当面ネット注文は休止させていただきます。大変申し訳ございません。
トラブル回避のため、ご理解の上宜しくお願いします。
痛ましいことです。ご本人がご無事であったことだけが救いですが。
過去の大震災に組合が採った対応を、思い返してみました。阪神淡路に際しては、組合で集めた義援金を被災組合まで届けに行っております。東日本の時は、被災地があまりに広範であったため、組合の募金は日本赤十字社に託しております。
それ以後、災害時には、組合単位で被災組合へ義援金を贈ることが定式化しているようです。ほかに被災された組合員さんがどれくらいおられるのか、まずはそれを確かめなければなりません。
konoinfo at 18:30|Permalink│Comments(0)│
2024年01月16日
適格請求書
昨日届いたメールに、次のようなものがありました。
〇〇大学図書館の✕✕と申します。いつもお世話になっております。本日下記図書(略)を確かに受け取りました。早速ご手配いただきありがとうございました。/請求書を拝見したところ、税額の記載がございませんでしたので、適格請求書をお送りいただけますでしょうか。お手数をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。
昨年10月以降、旧来の請求書に、Tから始まる事業者登録番号を入れるだけで済ませてきて、不備を指摘されたのは今回が初めてでした。
あわてて色々調べてみたところ、区分税率などありえない場合でも、どうやら消費税額の表示はしなければならないようなのです。
小店では、もともと税額を表示する形の書式を作っていたのですが、ある時、やはり公的機関だった気がするのですが「税額は入れないで欲しい」と、作り直しを要請されたことがありました。
税込み価格であることと、税率が10%であることさえ表示されていればよいと言われたのです。計算方式の違いなどで、異なる数字になると困るから、といった説明だったと記憶しています。
良く分からないながらも仰せに従って、以来、請求書にも領収書にも、税額を入れるのをやめていたのです。その時の機関がどこであったか覚えておりませんが、現在はどのような経理処理をされているのでしょう。
ところで今でも、書籍代と送料とを別記せよという機関と、書籍代に送料を上乗せせよという機関とがあるため、公費購入の場合、毎度毎度お尋ねせねばなりません。これはなぜ統一できないのか、不思議に思います。
ちなみに本件の機関は、上乗せ指定でした。
〇〇大学図書館の✕✕と申します。いつもお世話になっております。本日下記図書(略)を確かに受け取りました。早速ご手配いただきありがとうございました。/請求書を拝見したところ、税額の記載がございませんでしたので、適格請求書をお送りいただけますでしょうか。お手数をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。
昨年10月以降、旧来の請求書に、Tから始まる事業者登録番号を入れるだけで済ませてきて、不備を指摘されたのは今回が初めてでした。
あわてて色々調べてみたところ、区分税率などありえない場合でも、どうやら消費税額の表示はしなければならないようなのです。
小店では、もともと税額を表示する形の書式を作っていたのですが、ある時、やはり公的機関だった気がするのですが「税額は入れないで欲しい」と、作り直しを要請されたことがありました。
税込み価格であることと、税率が10%であることさえ表示されていればよいと言われたのです。計算方式の違いなどで、異なる数字になると困るから、といった説明だったと記憶しています。
良く分からないながらも仰せに従って、以来、請求書にも領収書にも、税額を入れるのをやめていたのです。その時の機関がどこであったか覚えておりませんが、現在はどのような経理処理をされているのでしょう。
ところで今でも、書籍代と送料とを別記せよという機関と、書籍代に送料を上乗せせよという機関とがあるため、公費購入の場合、毎度毎度お尋ねせねばなりません。これはなぜ統一できないのか、不思議に思います。
ちなみに本件の機関は、上乗せ指定でした。
konoinfo at 18:30|Permalink│Comments(0)│
2024年01月15日
買入ポスター
組合から一括送付される通信物は、近頃ではほぼメール便が利用されています。
そのメール便、どういうわけか小店あたりに届くのは、かなり遅れるのが常です。今日届いたのは『全古書連ニュース』1月号と、4月に予定されている全古書連大市会のための、買入促進ポスターでした。
もう何日も前に家人がSNSを見て、何人もの同業がこのポスターを店頭に掲げているのを知り「うちでももらえないの?」と店主に尋ねました。
ポスターが出来たらしいという話は市場で耳にしていましたので、そのうち送られてくるはずだと答えたのですが、ようやく今日届いたのです。
ちなみに『ニュース』の発行日は隔月の10日ですから、その日に発送したとして、届くまでに5日を要したことになります。ともあれ早速、家人が店先に貼り出しました。
あらためて見てみたのですが、全古書連大市会の文字がどこにもありません。純粋な買入ポスターとなっています。
確かに、お客様にとっては直接関係のないイベントですから、不要な情報であるとはいえるでしょう。しかしかつては、こうした全国組織があることを少しでも認知してもらうことも、ポスターの重要な目的のひとつでした。
その組織で大きなイベントがあるので、買入に力を入れている——というのは、それなりに有効なアピールであったと思います。ただし期間限定になってしまうため、イベント情報は切り離せるように工夫したこともありました。
いつまでも貼っておけるという利点はありますが、買入ポスターなら自分流がいいというお店もありそうです。皆さん、貼ってくれるでしょうか。
そのメール便、どういうわけか小店あたりに届くのは、かなり遅れるのが常です。今日届いたのは『全古書連ニュース』1月号と、4月に予定されている全古書連大市会のための、買入促進ポスターでした。
もう何日も前に家人がSNSを見て、何人もの同業がこのポスターを店頭に掲げているのを知り「うちでももらえないの?」と店主に尋ねました。
ポスターが出来たらしいという話は市場で耳にしていましたので、そのうち送られてくるはずだと答えたのですが、ようやく今日届いたのです。
ちなみに『ニュース』の発行日は隔月の10日ですから、その日に発送したとして、届くまでに5日を要したことになります。ともあれ早速、家人が店先に貼り出しました。
あらためて見てみたのですが、全古書連大市会の文字がどこにもありません。純粋な買入ポスターとなっています。
確かに、お客様にとっては直接関係のないイベントですから、不要な情報であるとはいえるでしょう。しかしかつては、こうした全国組織があることを少しでも認知してもらうことも、ポスターの重要な目的のひとつでした。
その組織で大きなイベントがあるので、買入に力を入れている——というのは、それなりに有効なアピールであったと思います。ただし期間限定になってしまうため、イベント情報は切り離せるように工夫したこともありました。
いつまでも貼っておけるという利点はありますが、買入ポスターなら自分流がいいというお店もありそうです。皆さん、貼ってくれるでしょうか。
konoinfo at 18:30|Permalink│Comments(0)│
2024年01月14日
スパム扱い
相変わらず大量のスパムメールに、うんざりさせられる毎日です。ただしもっぱら、古書組合がレンタル契約しているサーバーをドメインとする、メールアドレスに限られるのですが。
もうひとつの、自分で契約しているプロバイダーのメールには、多少の防御機能と学習機能があるようで、それほど多くのスパムは入ってきません。
2つのアドレスは、概ね次のように使い分けてきました。前者は「日本の古本屋」およびHPカタログからの受返信といった商売用。後者はクレジット会社、銀行、その他サイトなどへの登録用として。
そのおかげで、例えば盛んに舞い込んでくる「決済がされていません」といったたぐいのメールは、前者に入った限り迷わずスパムとして消すことができます。
この点で一番ガードが堅いのはGmailらしく、ここでも両方のメールを受信できるようにしているのですが、スパムはほとんど弾かれています。ときおり必要なメールすら迷惑扱いされるため、注意が必要なほどです。
最近、さらにそのハードルが高くなったかもしれません。というのは、小店の送信メールがMailer-Daemonから返送されることが続いたのです。よくよく見ると、いずれも先方のアドレスがGmailでした。
どうやら組合のレンタルサーバーでは、Gmailの安全基準をパスできなくなったようです。いずれも別のアドレスから再送して無事連絡が取れたのですが、この先が思いやられます。
弾かれたことが分かるだけ、まだましでしょうか。先方のメーラーで、勝手にスパム扱いされてしまっているケースだって、少なくないかもしれません。
もうひとつの、自分で契約しているプロバイダーのメールには、多少の防御機能と学習機能があるようで、それほど多くのスパムは入ってきません。
2つのアドレスは、概ね次のように使い分けてきました。前者は「日本の古本屋」およびHPカタログからの受返信といった商売用。後者はクレジット会社、銀行、その他サイトなどへの登録用として。
そのおかげで、例えば盛んに舞い込んでくる「決済がされていません」といったたぐいのメールは、前者に入った限り迷わずスパムとして消すことができます。
この点で一番ガードが堅いのはGmailらしく、ここでも両方のメールを受信できるようにしているのですが、スパムはほとんど弾かれています。ときおり必要なメールすら迷惑扱いされるため、注意が必要なほどです。
最近、さらにそのハードルが高くなったかもしれません。というのは、小店の送信メールがMailer-Daemonから返送されることが続いたのです。よくよく見ると、いずれも先方のアドレスがGmailでした。
どうやら組合のレンタルサーバーでは、Gmailの安全基準をパスできなくなったようです。いずれも別のアドレスから再送して無事連絡が取れたのですが、この先が思いやられます。
弾かれたことが分かるだけ、まだましでしょうか。先方のメーラーで、勝手にスパム扱いされてしまっているケースだって、少なくないかもしれません。
konoinfo at 18:30|Permalink│Comments(0)│
2024年01月13日
呼び方について
読みさしてそこいらに置いた本を、いざ探そうとすると一向に見つからない——そんなことは、あまりに始終なので今さら嘆いたりはしませんが、もどかしい気分になることだけは確かです。
今回見つけられなかったのは佐藤春夫『小説永井荷風伝』(岩波文庫)。名古屋に帰るとき持って行ったうちの1冊で、まだ3分の1ほど読み残していました。
急に探し始めたわけは、今月の『日本古書通信』で川島幸希さんの文を読んだことがきっかけです。
その内容は神代種亮旧蔵資料をめぐるものですが、川島さんは初めに資料の持ち主であるお孫さんに「種亮」の読み方をお尋ねになり「たねすけ」であることを確認されています。一般に「たねあき」とも呼ばれていたからだそうです。
佐藤の『荷風伝』にも当然のように神代帚葉の名は現れますが、その本名に「たねすけ」とルビが振られていた気がします。それを確かめたかったのでした。Webcatなどにも二様の読みが紹介されていますが、「校正の神様」の名であるだけに、正確を期したいところです。
読みといえば前にも話題にしたことがありますが、著名な英語対訳古典叢書であるLoeb Classical Library。Googleで検索しても「ローブ・クラシカル・ライブラリー」と表記されますが、なぜか我が業界では昔から「ロエブ」で通ってきました。
誰がそう呼びだしたものか、今でもその方が通りが良いので、あえて「ローブ」であると主張するのも口幅ったく、つい店主も「ロエブ」といってしまいます。
ちなみにこの叢書、置けば着実に売れていく基本図書ながら、一時期、紙や製本がかなり粗悪になったり、またある時代のものは表紙のクロスが極めて紙魚の害に遭いやすいなど、状態の良い本は、なかなか入手できません。
ただ買われる側では、あまり状態を気にされない方が多いようですが。
今回見つけられなかったのは佐藤春夫『小説永井荷風伝』(岩波文庫)。名古屋に帰るとき持って行ったうちの1冊で、まだ3分の1ほど読み残していました。
急に探し始めたわけは、今月の『日本古書通信』で川島幸希さんの文を読んだことがきっかけです。
その内容は神代種亮旧蔵資料をめぐるものですが、川島さんは初めに資料の持ち主であるお孫さんに「種亮」の読み方をお尋ねになり「たねすけ」であることを確認されています。一般に「たねあき」とも呼ばれていたからだそうです。
佐藤の『荷風伝』にも当然のように神代帚葉の名は現れますが、その本名に「たねすけ」とルビが振られていた気がします。それを確かめたかったのでした。Webcatなどにも二様の読みが紹介されていますが、「校正の神様」の名であるだけに、正確を期したいところです。
読みといえば前にも話題にしたことがありますが、著名な英語対訳古典叢書であるLoeb Classical Library。Googleで検索しても「ローブ・クラシカル・ライブラリー」と表記されますが、なぜか我が業界では昔から「ロエブ」で通ってきました。
誰がそう呼びだしたものか、今でもその方が通りが良いので、あえて「ローブ」であると主張するのも口幅ったく、つい店主も「ロエブ」といってしまいます。
ちなみにこの叢書、置けば着実に売れていく基本図書ながら、一時期、紙や製本がかなり粗悪になったり、またある時代のものは表紙のクロスが極めて紙魚の害に遭いやすいなど、状態の良い本は、なかなか入手できません。
ただ買われる側では、あまり状態を気にされない方が多いようですが。
konoinfo at 18:30|Permalink│Comments(0)│
2024年01月12日
『猫の墓』
抱腹絶倒という読書体験をしました。
一応、古本屋のオヤジですから、こういう本があることは知っていましたし、もしかしたら何度か過去に扱っているかもしれませんが、読んだのはこれが初めて。
どなたから買い入れた中にあったか、もう覚えておりませんけれど、売り物とするには状態が悪すぎ、かといってすぐツブスのもためらわれ、しばらく店の隅で他の本と一緒に積まれていたのです。
手に取って読み始めたのは、ほんの数日前。ワンオペの店番で、やるべき作業に手がつかず、つい漫然と本を開いてみました。冒頭の「猫の墓」を読み終えると、次が「岩波茂雄さんと私」。
過去に安部能成『岩波茂雄伝』は初めのほうを少し読んだだけ。小林勇『惜檪荘主人 一つの岩波茂雄伝』は、一応通して読みましたが、もうほとんど忘れています。しかしそれら2著に比しても、ずっと「キャラの立った」人物として描かれていると思いました。
主には子供の目から見た岩波さんが取り上げられていますが、その観察眼の鋭さはさすが大作家の血筋というべきでしょうか。ご当人にとっては不名誉なエピソードも、遠慮会釈なく暴いています。
漱石亡き後の夏目家と岩波の間には、複雑な問題もあったようです。しかし著者の筆致はどこまでもフラットで、偉人を描くのとは真逆に、ことさら道化のような振る舞いを取り上げてもいますが、そこに悪意のようなものはみじんも感じられません。
さらに「マンノ家の人々」は実話かと思って読んだところ、最後にどんでん返しのオチがあり、これには思わずひっくり返りそうになりました。
ほかにもユーモア短編として読んでも面白いもの揃い。まさに拾い物をした気分です。
一応、古本屋のオヤジですから、こういう本があることは知っていましたし、もしかしたら何度か過去に扱っているかもしれませんが、読んだのはこれが初めて。
どなたから買い入れた中にあったか、もう覚えておりませんけれど、売り物とするには状態が悪すぎ、かといってすぐツブスのもためらわれ、しばらく店の隅で他の本と一緒に積まれていたのです。
手に取って読み始めたのは、ほんの数日前。ワンオペの店番で、やるべき作業に手がつかず、つい漫然と本を開いてみました。冒頭の「猫の墓」を読み終えると、次が「岩波茂雄さんと私」。
過去に安部能成『岩波茂雄伝』は初めのほうを少し読んだだけ。小林勇『惜檪荘主人 一つの岩波茂雄伝』は、一応通して読みましたが、もうほとんど忘れています。しかしそれら2著に比しても、ずっと「キャラの立った」人物として描かれていると思いました。
主には子供の目から見た岩波さんが取り上げられていますが、その観察眼の鋭さはさすが大作家の血筋というべきでしょうか。ご当人にとっては不名誉なエピソードも、遠慮会釈なく暴いています。
漱石亡き後の夏目家と岩波の間には、複雑な問題もあったようです。しかし著者の筆致はどこまでもフラットで、偉人を描くのとは真逆に、ことさら道化のような振る舞いを取り上げてもいますが、そこに悪意のようなものはみじんも感じられません。
さらに「マンノ家の人々」は実話かと思って読んだところ、最後にどんでん返しのオチがあり、これには思わずひっくり返りそうになりました。
ほかにもユーモア短編として読んでも面白いもの揃い。まさに拾い物をした気分です。
konoinfo at 18:32|Permalink│Comments(0)│
2024年01月11日
「市場のマナー」
昨年末最後の洋書会で、今期役員の一人から「これお願いできませんか」と、1枚の紙を手渡されました。
組合機関誌部からの、原稿依頼の書面です。それによると古書月報次号の特集として「市場のマナー」なるものを掲げ、ついては各交換会から原稿を寄せてほしいとの依頼があったようです。
受け取った洋書会役員さんが会長らと諮った結果、河野に頼もうとなったらしい。
締め切りは1月15日。依頼書面が手元にないので記憶でいえば、確か原稿用紙3〜4枚。「400字詰めで?」と確認すると「そうです」。もちろん固辞しましたが、ほかに書き手がいないからと、無理やりに押し付けられてしまいました。
月報の原稿を集める苦労は店主自身でも経験していますから、なんとかご協力したいとは思うのですが、このテーマには正直、不服があります。テーマ自体はともかく、それを各交換会に書かせようという点には納得できません。
第一、交換会によって独自に要求されるマナーなどというものが、あるのでしょうか。廻し入札を行っている東京古典会さんならあるかもしれません。月に一回フリを行う明古でも、その点についてなら多少は書けるでしょう。
しかしいずれにしても、千字を超えるような文章になるとは思えません。
通常の入札についても「札に書く名前は読みやすく」とか「封筒を覗いてはいけない」とか「陳列品を見たあとは元通りに戻す」とか、そんな当たり前のことを各会の寄稿者が書き連ねたところで、読む側は一つも面白くないでしょう。
そんな具合で、年を越しても想がまとまりません。明日にでも機関誌部さんに直接、企画の真意を確かめてみようと思っています。
組合機関誌部からの、原稿依頼の書面です。それによると古書月報次号の特集として「市場のマナー」なるものを掲げ、ついては各交換会から原稿を寄せてほしいとの依頼があったようです。
受け取った洋書会役員さんが会長らと諮った結果、河野に頼もうとなったらしい。
締め切りは1月15日。依頼書面が手元にないので記憶でいえば、確か原稿用紙3〜4枚。「400字詰めで?」と確認すると「そうです」。もちろん固辞しましたが、ほかに書き手がいないからと、無理やりに押し付けられてしまいました。
月報の原稿を集める苦労は店主自身でも経験していますから、なんとかご協力したいとは思うのですが、このテーマには正直、不服があります。テーマ自体はともかく、それを各交換会に書かせようという点には納得できません。
第一、交換会によって独自に要求されるマナーなどというものが、あるのでしょうか。廻し入札を行っている東京古典会さんならあるかもしれません。月に一回フリを行う明古でも、その点についてなら多少は書けるでしょう。
しかしいずれにしても、千字を超えるような文章になるとは思えません。
通常の入札についても「札に書く名前は読みやすく」とか「封筒を覗いてはいけない」とか「陳列品を見たあとは元通りに戻す」とか、そんな当たり前のことを各会の寄稿者が書き連ねたところで、読む側は一つも面白くないでしょう。
そんな具合で、年を越しても想がまとまりません。明日にでも機関誌部さんに直接、企画の真意を確かめてみようと思っています。
konoinfo at 18:30|Permalink│Comments(0)│
2024年01月10日
外食の日々
今朝まで5泊の避難所生活を、今夜から解除することにいたしました。家人の職場復帰は明日からとなる予定です。
つまり今日、水曜日は朝から晩まで、フルバージョンのワンオペ。土曜日、日曜日に続き3回目です。朝のうちにしっかり準備を済ませました。
最近聞いたのですが、大山堂書店の石橋さんは、誰も使わず一人で仕事をされているといいます。ですから宅買いなどで出かけるときは、店を閉める。若いとはいえ、あのペースで売買されて、良く体力が続くものです。
そういえば古書現世の向井透史くんも、現在はワンオペのはず。それとも以前のように、母上が店番をされることもあるのでしょうか。
さてこの5泊、辛いことばかりではありませんでした。ふだんまず行くチャンスのない、近所の店で食事をすることができたからです。
とくに一度は行ってみたかったTOKYO PASTA WORKS。5年前に始めたと聞きましたが、コロナ禍もあり、続くのだろうかと案じていたら、無事復活。こだわりの自家製パスタが売り物です。
日曜日の夜に行きました。あとで聞くと、本来は定休日。お正月休み明けで、たまたま営業したらしいのです。チーズとワイン、パスタはボロネーゼ。店主の晩飯代としてはいささか高めでしたが、美味しくいただけました。
昨日火曜日は、40年駒場にいて初めての菱田屋体験。昼間は、いつ通りかかっても行列ができていますが、夜だって席が空いているとは限りません。昨夜は間が良く、すぐ入れました。
量が多いため1品頼んで食事するのがやっと。芋焼酎は1杯いただきましたが。結局リーズナブルなのが人気の秘訣のようです。
つまり今日、水曜日は朝から晩まで、フルバージョンのワンオペ。土曜日、日曜日に続き3回目です。朝のうちにしっかり準備を済ませました。
最近聞いたのですが、大山堂書店の石橋さんは、誰も使わず一人で仕事をされているといいます。ですから宅買いなどで出かけるときは、店を閉める。若いとはいえ、あのペースで売買されて、良く体力が続くものです。
そういえば古書現世の向井透史くんも、現在はワンオペのはず。それとも以前のように、母上が店番をされることもあるのでしょうか。
さてこの5泊、辛いことばかりではありませんでした。ふだんまず行くチャンスのない、近所の店で食事をすることができたからです。
とくに一度は行ってみたかったTOKYO PASTA WORKS。5年前に始めたと聞きましたが、コロナ禍もあり、続くのだろうかと案じていたら、無事復活。こだわりの自家製パスタが売り物です。
日曜日の夜に行きました。あとで聞くと、本来は定休日。お正月休み明けで、たまたま営業したらしいのです。チーズとワイン、パスタはボロネーゼ。店主の晩飯代としてはいささか高めでしたが、美味しくいただけました。
昨日火曜日は、40年駒場にいて初めての菱田屋体験。昼間は、いつ通りかかっても行列ができていますが、夜だって席が空いているとは限りません。昨夜は間が良く、すぐ入れました。
量が多いため1品頼んで食事するのがやっと。芋焼酎は1杯いただきましたが。結局リーズナブルなのが人気の秘訣のようです。
konoinfo at 18:30|Permalink│Comments(0)│
2024年01月09日
東京洋書会の初市
まだ家人は自宅療養中ですので、バイトのχ君がやってくる午後1時半過ぎまで店を出られません。
先日の明古も同様でしたから、市場に着いた午後2時半には、8割方開札が済んでおりました。済んでいようがいまいが、いずれにせよ店主の入札するものはなかったようでしたが。ともあれ新年会に出席できただけで、所期の目的は果たせたわけです。
今日の洋書会は開札が午後3時。ですから入札する時間は充分あります。しかし事前に入っていた情報では、あまり店主の入札するものはなさそう。
いっそお休みしようかとも思いましたが、何といっても初市、新年最初の顔合わせです。それにもうひとつ、4週間前に落札した買上代金の支払い日が今日でした。
これは金券制度というもので、会員の特権です。通常は、取引から1週間以内に、清算を済ませなければならないのですが、会が立て替え払いをし、残り3週間の猶予が与えられるのです。
かつてはほとんどの交換会にこの制度がありましたが、現在では洋書会と明古、それに東京古典会くらいしか残っていないと思います。
昔は即日清算が市場の基本で、売り買いともその日のうちに清算していました。そうした場での金券というのは、随分とメリットが大きかったでしょう。手持ちを気にせず買うことができたからです。
しかし誰にでも1週間の猶予はあるとなると、それと4週間という違いは、よほど高額なものでも買わない限り、さほど有難味を感じないかもしれません。一方で会の手間は大きいため、廃止が進んだのでしょう。
今日は市場に行って、会員とあいさつを交わし、金券を払っただけで帰ってまいりました。
先日の明古も同様でしたから、市場に着いた午後2時半には、8割方開札が済んでおりました。済んでいようがいまいが、いずれにせよ店主の入札するものはなかったようでしたが。ともあれ新年会に出席できただけで、所期の目的は果たせたわけです。
今日の洋書会は開札が午後3時。ですから入札する時間は充分あります。しかし事前に入っていた情報では、あまり店主の入札するものはなさそう。
いっそお休みしようかとも思いましたが、何といっても初市、新年最初の顔合わせです。それにもうひとつ、4週間前に落札した買上代金の支払い日が今日でした。
これは金券制度というもので、会員の特権です。通常は、取引から1週間以内に、清算を済ませなければならないのですが、会が立て替え払いをし、残り3週間の猶予が与えられるのです。
かつてはほとんどの交換会にこの制度がありましたが、現在では洋書会と明古、それに東京古典会くらいしか残っていないと思います。
昔は即日清算が市場の基本で、売り買いともその日のうちに清算していました。そうした場での金券というのは、随分とメリットが大きかったでしょう。手持ちを気にせず買うことができたからです。
しかし誰にでも1週間の猶予はあるとなると、それと4週間という違いは、よほど高額なものでも買わない限り、さほど有難味を感じないかもしれません。一方で会の手間は大きいため、廃止が進んだのでしょう。
今日は市場に行って、会員とあいさつを交わし、金券を払っただけで帰ってまいりました。
konoinfo at 18:30|Permalink│Comments(0)│