2009年03月

2009年03月31日

EETS叢書

今日の洋書会は量もまずまず、内容も一口物が何件かあり、なかなか面白いものでした。目立ったものとしては数学書の一口、ジャンルはさまざまながら1900年前後に刊行された本の一口、そして中世文学関係の一口。

小店の本日の収穫は、中世文学の口の中の一点、
Early English Text Society 叢書、約50冊です。

同業で、しかも洋書を扱っているからと言って、誰もが知っているわけではありません、これはどんな本なのかと尋ねられました。英文学を専門にしている仲間が、日本でいえば古典文学大系のようなものだよと、替って答えてくれました。

本屋にはそれで大体分かるのですが、本当はもう少しマイナーなものを丹念に集めたシリーズなので、むしろ古典文庫の方が近いかもしれません。

発行者がグループか個人かという違いはありますが、学者がほぼ無報酬で校訂、編集し、会員制で頒布(一部は市販)というところなど、よく似ています。

ただEETSのほうは上製クロース装、古典文庫は新書判の軽装。前者は1864年に始まり現在475巻(http://users.ox.ac.uk/~eets/)でなお刊行中、後者は1946年に始まり平成14年の第670冊で一旦、完結となっているようです。

なおEETSが店頭に出るのは来週以降になります、ご了承ください。

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2009年03月30日

店売りにこだわる

用有って目黒区役所まで自転車で出かけました。昨日までに比べて朝からずいぶん日差しが暖かく、山手通りは緩い下りで、目的地まで気持ち良く走って15分。帰りは当然上りとなって、よい運動になりました。

桜はまだつぼみが多く、所どころで咲いている程度。景色やら、お店やらを眺めながら改めて思ったのは、東京の人の多さ。車上から少し遠くを眺めると、歩道が人で埋まっているように見えます。

中目黒の駅があるとはいえ、月曜朝10時、どこへ向かう人達なのでしょう、途切れることなく双方向へ歩いています。

何年か前、同業仲間と旅行した折り、山陰の主要都市の駅前で昼食を取りました。その店の窓から眺める駅前の大通りとそれに続く商店街に、ほとんど人影が見えなかったことを思い出します。

こんな人に溢れた東京でさえ、小売業は成り立ちにくくなっています。駒場西口商店会も活動を休止して10年になるでしょうか。本を、店で、売る、もう少しその挑戦を続けようというのが、今日出かけた目的でした。

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2009年03月29日

人さまざま

外国のオークションサイトに出ている古刊本を「代わりに入札していただけませんか」という電話を受けました。

声を聞いているうちに、思い出しました。以前店に来て古い洋書に関心を示し、あれこれ見ているのでこちらから声を掛けた青年です。

神保町の洋書店を覗いているうち西洋古刊本に出会い、その美しさにとらわれてしまったのだと言っていました。語学に堪能なわけでもなく、純粋にものとして惹かれるそうです。「こんな美しいものがあるのか」と思ったと。

話していると素直な良い青年で、介護の勉強中と言っていましたが、今は福祉関係で勤めているそうです。その彼が、クレジットカードを持たないので、お金を預けるから代わりに、という頼みです。

今日来店し、そのサイトを一緒に見ました。希羅対訳ホーマーの小型本、刊年表記はなく16世紀後半の年代を推定表記。5万円ほどの指値で、現在、応札者一名。締め切りまであと丸一日。

この値段で買えれば高いとは思わないが、それは飽くまでその本が欲しい場合のこと。もっと値打ちのものをじっくり待つほうがよいのではと諭し、今回は見送りとなりました。

17世紀以前刊の古典関係がお好みのようなので、テオフラストスでも探してあげようかと思うのです。



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2009年03月28日

他山の石

お客様からご依頼を受けて「日本の古本屋」で本を注文することがあります。ご自身ではネットを利用できない、する気もないという方も、まだ大勢いらっしゃいます。

今日も一点届いて、開けてみて少しがっかりしました。こちらが説明表示から判断していたより状態が悪かったこともありますが、はたけば落ちる程度のヨゴレも落としてありません。

昔から同業同士が本を融通しあう時、お互い様ということで一割程度の値引きをする慣習がありました。これが今も残り、同業からの注文には小店もその程度の値引きをしています。もちろんこれは各店の裁量で、値引きはしない、どころか中には逆に、同業には売りたくない、というお店もあります。

かつて神田などの専門店は、品揃えのために全国を回って同業の店からセドリしました。しかし中にはセドリを専門にする業者もいて、彼らにめぼしいものを根こそぎ抜かれて悔しい思いをした、という話もよく耳にしたものです。そんなトラウマを持ったお店も少なくないでしょう。

今回頼んだお店は、値引きなし。書店からの注文であることをことさら無視するかのように、やりとりのメールから小店の屋号は除外されていました。

値引きがなかったことではありません。事務的なやり取りの中にも血の通ったものを感じれば、届く本についての評価も、いくらか緩くなるのではと、他人事ではなく思った次第です。

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2009年03月27日

みみずく偏書記

先週が祝日でお休みだったため、今日の明治古典会は久々に大量の出品物で溢れ、準備に手間取って開始が遅れるほど。月に一度の特選市でもあり、北海道や関西方面の同業の顔も見受けました。

特別陳列台といって、その日の出品の中でも特に珍しいものや、高額の落札が予想されるものを並べる台があります。ここは最後に開札されるのですが、今日目立ったのは細江英公、森山大道などの写真集。

最後に落札価格を読み上げられた、つまり本日の最高落札価格品は、富本憲吉『製陶余録』限定A版。富本の陶芸作品でも高価な部類のものが買えそうな価格でした。終了は午後6時半。これほど遅くなったのも久々のことです。

店主が今日の明治古典会で気になった一点は、そのような高額品ではなく、由良先生の著作まとめて8冊。冷静な札を入れておいたので、案の定、落札できませんでした。

その中の『みみずく偏書記』あとがきに小店が紹介されています。発行は昭和58年4月30日、小店の開業は同年3月1日。いかにすばやく見つけ、紹介していただいたか、思い返して感慨を新たにしました。

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2009年03月26日

棚を入れ替える

小店の店頭には可動式の棚が15台あります。

改めて数えて、ちょっと驚いています。毎日出し入れしているのですが、そのこと自体はそれほど大変な作業ではありません。しかし棚の手入れは結構手間です。

何しろ戸外ですので埃が付きやすい。今のような春先、風の強い日など、すぐにざらついた感じになってしまいます。こまめに掃除が欠かせません。

これだけの数の棚も、おのずからどんな本を入れるか固定してきます。すると今度は追加補充に不自由を感じるようになります。そうなると店内の棚と変わりません。実は棚の配置まで、このところずっと固定していました。

せっかくの可動棚です、今朝は思い切ってその配置を入れ替えてみました。それだけでずい分新鮮な感じがします。ただ、作業には多少不便な点があります。補充しようと本を持って出て、思わず以前の場所へ向かってしまうからです。

慣れるまでの辛抱でしょうが、慣れたらお客様の目もまた慣れてしまいます。お隣のセブンイレブンでは、店内の棚をしじゅう入れ替えているので、この点についてどんなマニュアルがあるのか、今度聞いてみることにします。

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2009年03月25日

レクラム文庫

店頭の均一棚、洋書ペーパーバックの棚がずい分空いてきたので、補充を入れようと在庫を見回すと、レクラム文庫の一縛りが目に付きました。

紐を解いて早速ラベルで値段付けです。星の数(最近のものは四角いマークの数ですが)に関係なく一冊百円。現在の版はやや軽くて厚めの紙ですが、その前に出ていた版は上質紙で100ページあっても4mmにみたない薄さ。そんな小さな本でも持ち重りがするのは古今東西の古典を中心とした内容のせいでしょうか。

ゲーテやらシラーやらといった定番の中に、更級日記のドイツ語訳が混じっていました。1966年の刊行、87ページで星は一つ。100円のラベルを貼ろうとして思いとどまり、しばし手元に置いておくことにしました。読めるわけではありませんが。

もっと古い亀甲文字のレクラムもたまに入ってきます。この頃のものは良く読み込まれ、書入れなどもある場合が多く、さらにクロスの上製本もありますが、その表紙が擦り切れたようなものもあり、そんな時、昔の人の勉強振りが偲ばれるとともに、小さな叢書の果たしてきた大きな役割を思わずにはいられません。


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2009年03月24日

教科書入荷最新状況

学位授与式も終わって、いよいよ卒業生は部屋の片づけも本格化。小店への教科書類の持ち込みも、このところ連日、何人かずついらっしゃいます。

チリも積もればの喩え通り、お一人お一人は格別多い量ではなくとも、いつの間にか置き場がないほど溜まってきました。これから新学期に向けて、教科書、参考書の売り場を拡張していく予定です。という事は他の何かを片付けなければならず、これが悩みどころ。

今年の特徴は理系参考書が多いこと。理系・文系を通じて、必ず買わなければならないとされる「指定」教科書は、年々入荷が減っています。学生間の譲渡、交換が盛んになっているのでしょうか。

値段のつけ方も、大雑把に二割で買って五割で売る事を目安にしてきましたが、ネットでもたくさん出品されている今日、学生さんは当然情報を持っています。きめ細かに対応する必要がありそうです。

毎年ベストセラーの「指定」教科書、少ないとはいえ10冊以上は在庫しており、今年もこれが使われるかどうか、目下最大の不安です。

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2009年03月23日

本日の収穫

以前にもご処分いただいた、I先生。研究室の整理で少し本が出たので、また取りに来ていただけますか、と直々のお出ましです。二つ返事で了承すると、つまらないものばかりで怒らないで下さいね、と念を押して帰られました。

今日がその日。学内へは車だとぐるり遠回りすることになるので、量を確認して大丈夫そうなときは手押し台車で直接出かけます。

空の台車は大きな音を立てるし、時々見知った先生に出会ったりするし、いい年をしてと思うこともありますが、何事も商売。

お出しいただいたのは店に入れてすぐに売れそうな本ばかり。量は思いのほか多くて台車に載せて帰るのに多少苦労しましたが、良い本を得られた喜びが勝り、昨日ひねった手首の痛みもものかわ、意気揚揚と店に戻りました。

他の仕事は後回し、とりあえずこれを棚に入れることにします。

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2009年03月22日

積もる話

懐かしいお客様が訪ねて来られました。

開業時分に大学院生で、何人かのお仲間と共に、良く利用していただいた方です。やがて博士論文をまとめる頃まで、小店も資料集めに幾許かのお手伝いをしました。その後、職を得て東京を離れられてからは、お会いするのも間遠になり、今日の訪問はかれこれ7、8年ぶりでしょうか。

あいにくと店主一人で、ゆっくりと応対も出来ず、店番をしながら30分ほど立ち話し。学会の始まる前に、昼食を済ませなければと、棚を眺める間もなく引き上げられました。

あの頃は、若い常連さんが専門を定めると、その関連の本を心して集めようとしたものです。一人ひとり専門が異なるのは当然ですし、次第に専門性の高いものを求めることになり、一軒の店でカバーできるはずもありません。店自体が行方定まらず、店主も若く身が軽かった、思えば初々しい時代の無謀な試みでした。

今に比べ、常連さんとは仕事を離れたお付き合いもあったそんな時代でも、結婚披露のパーティーにまで呼んでいただいたのは、あとにも先にもこの方だけ。

そのお子様が、今年から大学生だといいます。

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12月31日から1月3日まで
休業いたします
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河野書店

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