2009年04月

2009年04月20日

あらまほしき姿

本の値付けをしようとパラパラとめくって見ているうち、つい読みふけってしまうことがあります。

それでは捗らないので、気になるものは除けて、時間のあるときに回します。しかしそんな時間などある筈もなく、いつの間にか、面白そうな(と店主が思う)本ばかりが、滞留してしまうことになります。

本好きに本屋は向かない、というのはこのことでも分かります。

「現代の文人」は写真集で、ただ眺めるだけですから、それほど時間を取られたわけではありませんが、お終いまでページを追ってしまいました。

角川書店編集部写真室に在籍した斉藤勝久氏が、1950年代から80年代までに撮ったモノクロの写真集で、角川に縁の深い作家、歌人などが中心です。

その中に二点、古書店で撮られたものがあります。大岡昇平の高山書店(高山本店)はすぐに分かりました。中野重治の棚沢書店は、巻末のクレジットを見るまで分かりませんでした。

どちらも実にそれらしい組み合わせ。客と店主との、互いの敬意が伝わってくる、とても雰囲気のある写真です。



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2009年04月19日

世界大思想全集

昨日(腰痛を押して)買ってきた本は、ご想像の通り、殆どがシロッポイものですが、少しだけ古いものが混じっていて、世界大思想全集もその中にありました。河出書房ではなく春秋社の昭和2年から刊行された、いわゆる円本の一つとされる方です。

もちろん端本で、10冊ほどあっただけです。函入りで月報付、殆ど読まれた様子もない良い状態ですが、何しろ大量出版の走りとも言える全集ですから、大概はありふれたもので均一本にしかなりません。

とは言っても、この全集の完全な揃いを、未だ見たことはありません。正確に何巻出ていたのかも定かではなく、調べてみても第一期は124巻が最終巻数ですが、途中、刊行されなかった巻もあるようです。

巻によっては発行部数に相当違いがあるはずですし、他に訳書のない文献も含まれ、古書として貴重なものもあります。

今度手に入った10冊は早い配本のもの。つま大抵、部数の多いもの。一点だけ「スペンサー第一原理」は、第一回配本ながら案外手に入れにくい本です。

この巻には二つ折りのチラシのような付録が挟み込まれていて、そこに書かれた「第一回配本に際して/読者諸賢へ」を読むと、時代の熱気がひしひしと伝わってきました。

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2009年04月18日

ついに腰が悲鳴

宅買いに伺った先で、床に積まれた本を縛っているうちに、突然腰に鈍い痛みが走りました。

この一、二ヶ月、不安定な感じは抱きながらも、何とか無事にやり過ごしてきましたので、こんな時に、と焦りましたが、作業のペースをぐっと落とし、だましだまし縛り終え、積み終えて帰ってきました。

これまでに何度か伺っているお宅で、今回が最後の片付け。いつもライトバン満載で、これが5回目くらいになるでしょうか。

本好きというのはこういう方のことを言うのでしょう。何かを研究されていたのではなく、蔵書家というのでもなく、純粋に楽しみのために本を読まれた方で、殆どが小説、伝記、随筆といった、いわゆる一般書。

持ち主はすでに亡くなられていてご家族による処分ですが、量に比して低い評価にも、かえって申し訳ながっていただき、それだけに痛む腰を押しても引き取って来ざるを得ませんでした。

今は恐る恐る動かしていると、痛みはありません。しかし油断をするといつでも襲ってきそうな気配があります。

ともあれ小店の均一は、しばらく充実するはずですので乞御期待。



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2009年04月17日

専門店も楽じゃない

今日の明古は出品が少なめ。5時頃には市場の仕事は片付きました。現場をお手伝いいただいている皆さんとの月一回の会食を6時から。終わって店へ戻り、幾つか残務を片付けたところです。

市場では囲碁関係の一口ものが、目を惹きました。5〜600冊はあったでしょうか、もちろん何点にも仕分けされていましたが、一軒の専門書店が殆ど買い占めたようです。

そのご当人と言葉を交わしましたが、それだけの量があっても多くはすでに在庫しているもの。それでも専門店である以上は在庫補充は欠かせません。

それ以上に、自分で札を入れなければ、他店に安く買われてしまうことになります。安く売られることになれば本の相場を下げてしまうことになり、結果、自店の在庫の価値も下がる。それを防ぐ、要するに買い支えが必要になります。

専門店にはもう一つ辛いところがあります。それは、そのようにして買い集めた本を、在庫調整などで次に市場に出しても、自分以上に高い評価は望めないということです。

競合相手はあったほうが良い、というのは、こんな時には逆に頼りになるからで、それが本屋の市場の面白さでもあります。

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2009年04月16日

「日本の古本屋」講習会

古書会館の地下にある多目的室で、午後四時から100名ほどの同業を前に、約1時間半、話をしました。

このところ安定期に入った、別の言葉で言えば伸びが鈍っている「日本の古本屋」に、一つテコ入れをしようと理事会が企画して、役目柄、お鉢が回ってきた次第です。

近く行われるデザインリニューアルの説明、クレジット決済が利用できるようになるという説明、あわせて新たな利用者を募ることが目的です。

東京組合には現在約650軒が加盟していますが、「日本の古本屋」に出品している書店はそのうちのまだ270軒ほど。まだまだ増やす余地はあります。

ちなみに東京以外も含めると、参加古書店はおよそ850軒。今日の集まりが少しでも参加店増、売り上げ増(それぞれの)につながれば良いのですが。

終わって、声が少し枯れ、立ち通しで足に来ました。学校の先生というのは大変なお仕事だなと、あらためて感じました。

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2009年04月15日

誰でも始めは新入生

あるお客様「ここの本はどんな順に並んでいるのですか」
「一言で説明できませんが、何かお探しの本があるのですか」
一冊の書名が挙げられました。
「教科書類は表の棚にまとめてあります。ただしその本は今、残念ながら在庫はありません」

別のお客様「本を探していただくことはできますか」
小店の在庫についてのお尋ねです。著者と書名を聞きました。コンピュータで検索すると思ったかもしれません。
「それは新書ですね。新書はこの辺りに出版社別にまとめてあります。大体、刊行順にしてありますから、ここになければ、いま在庫はないということです」

しばらくすると二人連れの学生さん。一人がフランス語の辞書をとっかえひっかえ函から出しては入れて、三冊の候補から、選びあぐねている様子です。

お連れは電子辞書を持っているらしく、その説明をしています。結局決めかねてお帰りになるかと思っていたら、やがて一冊を選んで、レジへお持ちになりました。

入学式もすみ、いよいよ新入生の新学期です。



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2009年04月14日

ちょっと負け惜しみ

洋書会。一口ものがあって盛り上がりました。その一口の大部分は日本書。

洋学、蘭学、科学史という、人気の高い分野が中心で、他に校史、社史の割り合い珍しいものもあり、結構な高値となりました。

洋書の市に和書が出るというのはイレギュラーな現象ですが、和本の市にだって洋書が出ることもあり、荷主さんの希望次第で、どこの市に出すことも自由です。結果的にも遜色のない落札価でした。

そういえば先日の五反田、南部市にも洋書がかなり出ており、何点か札を入れたのですが、店主、恥ずかしながらほとんど落札できませんでした。

言い訳をするつもりはありませんが、他の入札者を侮って「げそる」(安めの札を入れる)心理がどこかで働いたのでしょう。

専門の市に出さなくとも、良い本は、良い値になるというのは当然といえば当然です。それでも目のきく業者が集まる専門市で、きちんと仕分けされた本は、札を入れる側を本気にさせることも確かです。

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2009年04月13日

今日も会議

午前中、服部まき子さんの版画が続けて二点売れました。どちらも小店に飾っているもののなかでは比較的値の張る作品。うれしいことです。

一人は女性。おいでになるなり「これください」と指差して「ああ良かった、もう売れてしまったかと思った」。

もう一人は男性。「明るい店になりましたね」と声を掛けられました。なじみのお顔なので思わず「そんなにおいでになっていませんでしたか」と返すと、10年ぶりくらいかもしれないとの答え。

言われてみれば確かに、記憶にあるのは学生の顔。いま改めて見直すと、すっかり落ち着いた感じです。名前も伺ったことはないはずですが、おそらく院生の時分でしょう、毎日のように顔を出してくれていました。本二冊とあわせてのお買い上げ。

午後からは古書会館へ。出掛けに居合わせた某教授から「会議ですか」と声を掛けられ苦笑。

2時から5時までTKI会議。6時から7時まで合同役員会議。でも今日はどちらも、比較的短めに終えることができました。これから店を閉めます。

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2009年04月12日

Tolkienの一冊

EETSをようやく棚に並べました。55冊、セットものもあるので点数はこれより少なくなりますが、半分以上は一冊千円。

専門においては基本図書といえるものなので、今でも新刊在庫のあるものも少なくありません。他社からリプリントとして出ていたり、ソフトカバーで出ていたり。値付けの参考のためにネットで調べていて、タイトルによっては本ではなく、データとして売っている店もあることが分かりました。

10年以上前、デジタル社会の到来を予測して、組合で珍しい古書を集め、データ化して売ったらどうかと「古書月報」に書いていた組合員がいたことを思い出しました。考えることは誰も同じ、というべきか、思いつくだけなら誰にも出来る、というべきか。

そんな味気ない話より、Tolkienの名が編者として表記された一冊を見つけました。あの指輪物語の作者が名のある英語学者であったことは聞いておりましたが、その仕事の一つです。

Ancrene Wisseというのがそのタイトル。13世紀前半のこのテキストの定本とされています。ちなみに3000円をつけました。調べられる限りではどこよりも安い価格です。

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2009年04月11日

赤い花、白い花

暑いですね、が今日の挨拶。表のハナミズキの若葉がこの数日でぐんと大きくなりました。

毎年気を揉んでいるのですが、店の入り口左右に一本ずつ植えられたこの木、なかなか花を着けてくれません。冬、枯れた枝の先に花芽を探し、ようやく一つ二つ見つけると、ほっとするくらいです。

日のあたる時間が短すぎるのかもしれません。その僅かな着花も、年によって異なり、まったく花の見られない年もあります。

それに気を揉むのは、この木に店の命運を重ね合わせてみるような気分になるからです。

辛抱して見守っていれば、いつかは沢山の花を咲かせてくれる日が来るのでしょうか。ただ見ているだけではダメで、手を入れて育てなければいけないのでしょうか。

赤い花を着ける木と、白い花を着ける木。今年は今のところ、赤い花が一つ見られるだけです。

今日は午前中、五反田の南部会館へ入札に。

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12月31日から1月3日まで
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