2009年07月

2009年07月21日

ヘルムアフロディトス

昼前から雨。気温低めながらエアコンが効きにくく、かえって店内は蒸し暑い。

『古代の臍』(児島喜久雄・岩波書店)という本が目に留まったのは、そのタイトルに惹かれてではなく、著者が、ついこの間ここで取り上げたばかりの人だったからです。

いつものように本の整理をしていてのことですが、先日とは別の口、つまり別の機会に手に入れたものです。1983年第二刷、初版が1956年となっていますから、27年後の重版。どんな需要があってのことでしょうか。

中を開いてすぐに「ヘルムアフロディトス」という見出しが目につきました。本著はいわば遺文集で、中でもこの一篇は、それまで未発表であったというものです。

冒頭の解説に、細川護立氏邸での内輪の集まりにおける口演筆記とあり、会話調で分かりやすく話が進みます。細川侯爵が外国のオークションで手に入れたという小さな立像を場において、気楽に薀蓄を傾けている様子が目に浮かぶようです。

内容についてはお読みいただくとして、感心したのはその小さな集まりに、筆記者、おそらくは速記者がいたのだろうということ。それやこれや考え合わせると、今時のセレブとの、スケールの違いが分かります。

ところでこの本、後から気がついたのですが、以前から初版本を在庫しておりました。

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2009年07月20日

ノンビリ休日営業

晴、雲多く、やや暑いとはいえ、お散歩日和。

世間がお休みの日は、店を開けていても、こちらも少しノンビリした気分になります。やるべき事は幾らでもあるのですが、今日でなくとも良いかと、手元の本にしばし読み入ったり。

たまたまそんな様子をお客様がご覧になると、羨ましい商売に映るのかも知れません。

たしかに、そのツケは全部自分に掛かってくるのだといっても、自分のペースで出来るところは、この仕事の大きな利点です。休みたい時に休める、と思うから、休まず毎日開けられるのです。

そんなノンビリした昼下がり、折からベビーカーの若いご夫婦が来かかります。ベビーはよちよち、パパの手に引かれて。

「本屋さんだあ、XXXクン、本見るう?見るんだ。座り込んじゃった。どれ見る?これ?はいっ。えっ、ないない?はい、ないないしたよ。こっち?はいっ。ないない?はい、ないない。え、これ?これさっき見たよ?はいじゃまたこれね。もういい?じゃ行こうか。ありがとって、ね?ありがと」

本好きな子に育てたいお父さんなのでしょうか。



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2009年07月19日

名物教授

晴れて風強し。日曜、三連休、夏休み。

人が来ないだの、売れないだのという話はいたしません。それを始めるとこの先数ヶ月、同じ話題の繰り返しになってしまいますから。

しばらく、神田への行き帰りに『書藪巡歴』(林望・新潮文庫)を読み継いでいました。電車に乗っている時間は片道正味20分弱です。読み終えるのに何日もかかりました。

前に親本で一度読んだ、というより眼を通したのですが、いかに覚えていないことか。なかんずく本に関する薀蓄は、初めて聞くことのように、興味深く読めました。

おぼろげに覚えていたのは人物を語った各章で、言語学者の亀井孝氏の描写が取り分け印象的だったのですが、今回再読し、それは名物教授といわれるような先生の、ある一典型が描かれているからと分かりました。

不思議なご縁で、小店に幾度も本の整理をご用命いただいているY先生も、この亀井さんに負けず劣らずエピソードの豊富な先生です。専門分野に抜きん出た業績がある点も似ています。

しかしもっと似ているのは、声を「頭の天辺から絞りだす」という部分。そういえばしばらくお電話がないなと、あの特色あるお声を思い出しました。

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2009年07月18日

M先生

M先生(元先生というべきでしょうか)は、ひと箱、時には数箱と、黙って思い出したように本を送ってこられます。

退官されて、まもなく十年、特に職を求めず悠々自適(ご本人は否定されますが)にお暮らしのようです。ご専門は西洋古典。

お辞めになるときに、研究室の本をある程度まとめてお譲りいただきました。大変な謙遜家で、たいしたものはないから、あまり高く値踏みしないように、とわざわざおっしゃってくださいました。

ラテン語やギリシャ語の本というのは、それだけでありがたい気がしてしまいますが、確かにこの分野でも研究が進んでいて、研究書など旧版は案外値がつきません。それでも駒場では、安く置いておけば喜んで買って行かれるお客様がおいでです。

その時も、お言葉に従い、安く引き取らせていただきましたが、それ以後、お送りいただく本は、着払いの送料だけ。要らないものを片付けているのだからとおっしゃって、お代を受け取ろうとなさいません。

それでも必ず一冊二冊は、それだけで送料に見合うような本を入れて下さっています。お心遣いに感謝しつつ、どうやってお返ししようか、思案するばかりです。




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2009年07月17日

宅買いの余得

宅買いに伺うと、しばしば他のものも一緒に引き取ってくれないかと頼まれることがあります。

書画、美術類は商売の一部ですから、分かる範囲で値踏みして買い受けますが、他に例えば本を収めていた書架、本棚の引取りを頼まれることも案外多いようです。

それと思しきものが市場に現れることも、たまにあります。しばらく前にも洋書会の仲間が、大蔵書と共に何十棹という特別誂えの棚の処分を任され、それはさすがに市場には持ち込まなかったのですが、同業間で捌くことが出来たと聞きます。

店主が一番古い記憶としてあるのは、まだ五十嵐書店に勤めている時分、岩淵悦治氏の旧蔵書を引取りについて行って、その棚を一つ二つ頂いたことです。

自分で使う当てがある時ならともかく、むやみに引き取っても後の処分に困ることも多いので、次第に慎重になり、最近では機会があっても、殆どご辞退しています。

もちろんお金を出しても譲っていただきたいというものの場合は別で、いま使っている両袖机も、以前、そうしてお客様から買い取ったものでした。

考えてみれば、本も同じことかもしれません。

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2009年07月16日

真夏日の会議

こんな日に、外を出歩く人の気が知れない、と思うくらいの暑さ。

朝一番にご近所へ本の引き取り。お昼まで、先日来仕入れた本の整理。一向に片付かないうちに時間が来て、昼食を取り、古書会館へ。月例のTKI会議です。

「日本の古本屋」リニューアル後の経過検証、クレジット決済導入後の推移と問題点、次の計画、そんなことを話し合って、あっという間に午後6時。

月に一度では新しいことを始めるのは中々難しいので、チームを作って個別に進めようという提案があり、今年中にやりたい課題が二つほど上げられました。言いだしっぺ原則が今回も適用されます。

まったくメンバーの皆さんの熱意には頭が下がります。部長などという役目は、その熱意の妨げとならないよう、大人しくしているくらいのことでしょう。

大人しく4時間過ごしたあと、店へ飛んで帰りました。やることは山のようにあるからと。しかしレジを見て、力が抜けました。出歩く人の気が知れない、などと案ずるまでもなかったようです。


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2009年07月15日

頑張れ四代目

溜まった本を端から整理していると、児島喜久雄『填空随筆』(全国書房・昭24)という1冊が出てきました。

表紙を開けると、見開き両面を使って達筆な行草体の識語。あて先は「松村書店御主人」となっています。その刊年からすると二代目龍一氏に贈られたものでしょう。

しかも刊行翌年の昭和25年に亡くなっている著者が「厄介をかけた」というのは、文面から判ずるに初代音松氏。同店の歴史の厚みを感じます。

三代目の栄一氏は、小店主にとって、かつて勤めた五十嵐さんに次いで、大変お世話になった方です。その急な逝去など、さまざま不運な経緯もあって、百年を超えて続いた同店の店舗は、すでに元の地にはありません。

今四代目の剛さんが、すべてを整理して再起にかけているところで、その整理の過程で、この一冊が紛れてこちらの手に入ったのでしょう。

様々な思いが去来する一冊ですが、これを縁として、当分架蔵しておくつもりです。いつか再建が軌道に乗り、その祝いとしてお返しできる日の来ることを待ち望んで。


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2009年07月14日

洋書会の格言

朝から洋書会、終わって総会、そのあと役員のお疲れ様会。それで店に戻ると10時過ぎ。連続記録を途切れさせないために、今日の市会の様子を少しばかり書いておきます。

医学書を中心とした洋書、その医師が蔵していた一般書中心の日本書、これが今日の会場の三分の二は占めました。

特徴的だったのは多くの本のカバーを裏返し、自製ラベルを貼っていたこと。本の量のハンパでない多さもあって、一体、本を読む暇があったのだろうかと訝しくなるほど。その上、文庫や新書には手製と思われる木箱まで、十数函は誂えてありました。

さて日本書に関しては、洋書会では扱う人間が少なく、とりわけ当番自体の人数が限られているので、店主は専らそちらを担当しました。

表紙の裏返っているものは諦めて、全体の一割ほど、もとのまま残されているものを中心に仕分けたのですが、いざ札をあけてみると、その多くを自分で買うことになってしまいました。

仕分けたものへの思い入れが強すぎたかと少し反省。しかし洋書会ではこういう時、決まり文句があって「買わなきゃ損も出来ないよ」と励ましあったりするのです。


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2009年07月13日

閑日閑語

日差しが強く、風も強い。お中元の時節でもあり、届け物を運んで来る宅配の人も汗まみれ。

それより気の毒なのは外回りの銀行員さんです。この暑いのにきちんと上着を着て、しかも小店の取引先の信金では、駐車場法の改正以来、バイクを廃止して全て自転車。

今朝も「日差しは痛いし、上り坂に向かい風を受けると、もう折れそうです」と嘆いていました。

それに較べれば、控えめとはいえ冷房完備の店番は天国、と言いたいところですが、店内に入って来るのはそんな汗して働く人々ばかりで、通りを歩く人影もまばら。表の白い光は、もう完全に夏休みのものです。

東京は今がお盆。30年以上住みついていても、これには一向に慣れません。お昼前、近くの聖徳寺さんに墓参りに来るたびに寄っているというご夫婦客があり、その言葉で、あらためて気付く始末です。

聖徳寺といえば、生家近くに同名の寺があったことを思い出します。古い土地で、他にも小寺や末社が沢山ありました。それらを経巡って遊んだ半世紀も昔の夏の日々が、何やらおぼろに浮かんでくるようです。


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2009年07月12日

木下大兄へ

昨夜は『美を生きるための26章』出版記念パーティーにお招きいただきありがとうございました。

何年か前、土曜の午後のABCを始めると伺った時点では、こんなに立派な書物に仕上がるとは、失礼ながら予測できませんでした。出来上がったものを手にして、兄の最大の武器である「行動力」と「持続力」に改めて敬服しています。

それにしても、港近くのオープンカフェは、いかにも兄好みの素敵な店でしたし、集まった人々(60名ほども居られたでしょうか)の年齢層も幅広く、とりわけ若い世代を大切にされ、また慕われてもいる様子が分かったのは嬉しいことでした。

兄自ら参加者全員を紹介するという離れ業のおかげで、お互い新たな知遇を得、自分も調子に乗って二次会まで付き合わせて貰い、港湾倉庫を改造した美術館に併設されたカフェで、午後11時の閉店までお喋りは尽きませんでした。

肝心の本については、これからゆっくり読ませて貰うことになりますが、四方田犬彦氏が書評で取り上げるとか、木田元さんから励みになる手紙をいただいたとか、前評判は上々のようですね。

ABCは二期目に入ってなお継続中。ご自愛の上いっそうのご活躍をお祈り申し上げます。

取り急ぎお礼まで

konoinfo at 11:48|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
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