2010年03月

2010年03月31日

教科書が入らない

一日曇り。3月もおしまい。

そういえば今年は、教科書の持込みが殆どありません。以前は、期末の試験を終えるあたりから、ボツボツ売りにくる学生さんが出始め、多い時は日に何人も、お出でになったものでした。

確かに年々仕入れは少なくなっていて、去年は新学期にも、特設コーナーを作らなかったかも知れません。今年は特設どころか、常設にしている教科書・参考書コーナーにも、いわゆる指定教科書は見当たりません。

学内の教科書買取りグループの活動が盛んらしいことに加え、小店の積極性のなさが、この傾向を加速しています。

「スポーツ身体運動」という、あれば必ず売れた教科書が、二年ほど前に改訂され、20冊ほど残っていた在庫はツブシになりました。他にも、良く売れた教科書ほど、多くの在庫を残して、ある年からツブシとなります。

教科書販売は、その昔はいざ知らず、今では決して割りのいい商売ではありません。学生さんたちがサークル活動としてやるくらいが、適しているように思います。

一時期、そうしたサークルの一つとタイアップして店頭を貸していたときは、教科書リストを手にした新入生で賑わいました。儲けよりも、小店を知ってもらえるメリットを感じていました。

今でも、その点において、もっと積極的に教科書を仕入れる策を講じるべきだろうかと、惑わないでもないのです。

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2010年03月30日

乾いた指先

頁をめくる時に指先を舐める。本屋としては、ちょっと待ってと言いたくなる動作です。お札を数える時にやられると、どうも不衛生な気がします。

でも時々盛大にこれをなさる方がいらっしゃいます。若い頃は理解できませんでした。品のない癖だくらいに思っていました。

しかし年経るにつれ次第に我が指先も乾燥の度を強め、ことに冬場など、少し油断をするとすぐにひび割れてくるようになると、あの指舐めが、必要に迫られた行為だと理解できるようになりました。

例えばゴミの袋。親指と人差し指で挟んでずらし、袋の口を開ける、あの技が、乾ききった指先では難しい。もちろん、釣銭のお札を数える時も、新しい札だと上手くめくれない。

そんな時に指先を舐めると、簡単に解決するので、特に自制が働かなければ、ほとんど無意識にやってしまうのでしょう。

でも、本の頁をめくる時にはやめて欲しい。だから自分では、他の時にも指舐めをしないように、日頃から注意を払っています。

商売に絡む事だから自覚的になれるのであって、きっと自分も、品のない癖を沢山持っているのだろうと思っているのですが。

洋書会、無理してでも在庫に加えたいものはなく、ひと安心。早めに店に戻り、片づけを続けました。

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2010年03月29日

パリにもない

今日も冬の寒さ。照ったり、降ったり。

未整理の本が店内のそこかしこに積まれていることは、たびたび申し上げるとおりです。

時折その中から抜き出して、帳場にお持ちになるお客様がいらっしゃいます。店主がいても、すぐには値を付けられない場合も多いのですが、今回は留守中のこと。改めてご来店になるというのが昨日でした。

休日とて午後6時に店を閉めた後、扉を叩く音がします。閉店時間を知りませんでしたと、焦った様子で用件を告げられました。

お取り置きしてあった本は Henri Mondor, L'affaire du Parnasse (Paris: 1951) という一冊。留学先のパリから一時帰国中で、すぐ戻るため、当分は来店できない。ぜひ値段を付けて欲しいということでした。

この本、良い紙を使ったアンカット装で1000部限定、3000円ほどの値付ける筈のものでした。ところが扉を開くと、タイトルに大きな学校印。それで落胆し、放置していたのです。

改めて確かめると、扉の裏には個人研究費印のほかに、個人名が記入されています。著名な仏文学者。個研費購入図書の場合、本屋に売ることを表立っては「認めていない」ようですが、消耗品として適宜廃棄することは認められています。

したがって本書をお売りすること自体に違法性はありません。しかし商品価値は当然下がります。以上を説明して500円と値を告げると、若きマラルメ研究者は、喜んで買っていかれました。

「この手の古い本は今、フランスでも手に入れにくいんです」という言葉を残して。

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2010年03月28日

ただで良いのに

雨になるという予報だったので、店の前は、本が濡れないように手前に寄せて並べました。ちょっと窮屈ですが。

もう夕方、今までのところ降り出す様子はありません。寒い、という予報の方は当たっていて、昨日に比べると人通りはまばら。

店を開けて間もなく、昨日のお客様からお電話がありました。午後と言っていたが、午前中いるので、とすぐにでも来て欲しそうなご様子です。こちらも早く済ませようと、早々に伺いました。

車ならほんの数分の距離、マンションの駐車場に乗り入れると、すぐにお出迎えに来られました。お部屋に伺い、拝見。30冊ほどの本が玄関に積まれています。一瞥、きれいな状態ですが、明らかに旧版と分かりました。

「昨日も申し上げたとおり、参考書類の旧版は売りようがないのでお引取りできません」と申し上げると、「いや構いませんから」とおっしゃいます。

ただでも構わないという意味のようです。揃っているから持って行って欲しいと。このまま処分することになります、と申し上げてもやはり「それで結構です」。

やむを得ず、捨てるのにも費用がかかるということをお話して、どうにかご了解いただきました。しかし得心されたわけではなさそうです。わざわざ車まで同行いただき、不思議そうな顔でお見送り下さいました。

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2010年03月27日

通り抜け

晴れたり曇ったり。しかし冷え込みが残り、春らしさは余り感じられません。

それでも心は春なのでしょうか、花を求めて散歩に出たという様子の方々が、次々にご来店になり、なんとなく店は賑やかです。

午後から、今日で三度目となる研究室への引き取り。またしても車に一杯、しかしこれでほぼ整理がついたとの先生のお話。

持ち帰って降ろそうとすると、店でお待ちになっていたらしいお客様が、ぜひ司法試験の参考書を引き取りにきて欲しいとのご要望。色々ご説明しても、ご意向は変りません。根負けして、明日にもお伺いすることにいたしました。

その間に近くにお住まいの古いお得意様が店にお出でになり、しばらく本をご覧になってから、おもむろに、近くまた本を引き取りに来て欲しいのだがとの仰せ。改めてお時間を打ち合わせてということに。

お帰りになるのを待っていたかのように、こちらもお馴染みからのお電話。これは例によって、ある本を探して欲しいとのご依頼。見つかり次第お知らせしますとお返事。

閉店間際まで、お客様が途切れません。本日は6時までです、申し訳ありませんと店を閉めて、車一台の本を運び込み、さて賑わいの一日の成果をレジで確かめました。

客数はふだんの休日に比べても、むしろ少ないくらい。もちろん売り上げも。ちょうどお花見のように、大方は眺めて行かれただけのようでした。


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2010年03月26日

春の古本まつり

花冷え、というよりまだ一段、寒い感じ。予報に反して夕方からは雨も降り出し、いっそう冷え込んできました。

そんな中、神保町は今日から三日間「さくらみちフェスティバル」。数年前から始まった「もう一つの古本まつり」です。

区から《千代田さくら祭り》に合わせた町おこしのイベントを持ちかけられた古書組合神田支部の人たちが、どうせやるなら秋に並ぶ催事にしようと、力を入れてきました。

今朝、明治古典会に向かう途中、すでに靖国通りにワゴンを出して本を並べていた本屋さんに「お天気になってよかったですね」と声を掛けたのですが、この寒さと夕方からの急な降り出しで、思うに任せない初日だったかもしれません。

明治古典会の会員、経営員でこの催しに参加している者も多く、その声を聞くとやはり秋の「青空古本まつり」のようには売り上げが伸びないようです。

もともとお花見の人出を何とか引っ張って来ようという狙いですから、初めから本を目当てに人の集まる「青空」とはわけが違います。それでも回を重ねることで認知度を上げ、やがてはビッグイベントにと、若手を中心に努力が続きます。

それにしてもこのイベントには難しい点が一つあって、それは花の時期とうまく重なるとは限らないということ。現に今年も、見ごろはまだ一週間は先。本で人を集められるまでは、気まぐれな花頼み。つまり当日のお天気だけでなく、その年の気候にも左右されるわけです。

でも、若手が中心となった神保町のがんばりに期待しています。夜は、すずらん通りのお手ごろ中華料理店でした。

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2010年03月25日

読みさす

一日冷たい雨。冬に戻ったよう。

確か中学生の頃だったと思います。ある先生が大切な秘伝でも授けるように「本は同時に何冊も読んでいいのです」と言われたのを思い出しました。

今なら当たり前のように、複数の本を並行して読んでいますが、当時は読み始めたらともかく読み終えるという、素朴で熱のある読書の形が普通だったように思います。

大概は小説の類でしたから、自然とそういう直線的な読み方になっていたのでしょう。先生の秘伝も、すぐに生かされることはありませんでした。

逆に最近は、小説を殆ど読まなくなりました。まとまった時間を取れなくなったことと相俟って、今や読みさしている本の山です。次々と新しい本を手にするにつれ、読み終えずに忘れ去られていく本も数知れず。

結果として単につまみ食いしただけの場合も多いのですが、本が本としてそこにある限りは、いつでもその総体へのアプローチが可能のような気がしています。

ふと思っただけで根拠はありませんが、これがデジタルブックとなると、そうは行かないのじゃないでしょうか。直線的な読書、あるいはピンポイントの読書、そうした点では遜色なかったり、便利だったりするでしょう。しかしつまみ食いは、ついにつまみ食いで終わるしかないのではないでしょうか。

本とデジタルブック、二つは全く違うものだと考えたほうが良いのかもしれません。

ちなみに現在読み継いでいる本は『書物史のために』(宮下史朗)『悪党芭蕉』(嵐山光三郎)『芸術の森の中で』(ケネス・クラーク)の三冊。何冊最後まで読めるでしょうか。

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2010年03月24日

見なければ分からない

所沢まで行ってきました。

大量の本を片付けたいというお客様。伺うと8畳間一杯に腰までの高さとのこと。かなりの量です。本の内容も含め、お話だけではどう手配したものか、段取りがつかめません。ここは自分の目で確かめようと、出かけたのです。

お昼前に出て、戻ってきたのは4時過ぎ。滞在時間は僅かでしたから、片道ほぼ2時間。遠かった。雨のせいもあるのか、道中いたるところで渋滞。ナビの到着予定時刻は、ずれ込むばかり。

そのナビで、往路は距離優先のコースを選択し、それが失敗だったかと復路では推奨コースというのを選びました。すると首都高速へ誘い込まれ、そこが大渋滞。結局同じくらいの時間がかかってしまったのでした。

ところで肝心の大量蔵書、一目見てまず運送屋さんを頼むのはあきらめました。確かに腰までの高さの山はいくつかあるのですが、壁を埋めていた本棚から出して積んだという程度。市場に運んでもらって売ったとして、諸経費を差し引くとお客様にお渡しできるものが残らないと見ました。

欲しい本だけ分けて頂くということも考えましたが、もともと全部片付けたいというのがご希望。そこで近くの同業を紹介することにいたしました。となると、ますます良いものだけ抜いてくるわけにはいきません。結局、身一つで帰ってきたというわけです。

帰りの首都高速で、初体験の中央道をここだけは快調に走行。店主が知る限り延々と工事中の、あの山手通りの下を今走っているのだと思うと、感慨深いものがありました。

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2010年03月23日

ちょっとした余禄

古本には、いろいろなものが挟まっています。

もちろん大抵は紙類で、特に差し障りのないものならそのままにしておきます。押し花、押し葉も良く挟まっていますが、これはページを変色させる困りものです。

現金が挟まっていたという話は前にいたしましたので繰り返しませんが、そうそうあることではありません。

マッチの軸も時々見かけます。小さな定規などもありました。鉛筆さえ時々挟まっていることもあります。要するに何が挟まっていても不思議はないのですが、今回はちょっと驚きました。

挟まっていたのはペーパーナイフ。それだけなら格別の話でもありませんが、以前に失くして、失くしたあと重宝さに気がついた、その全く同じ形のものだったのです。

挟まっていたのは W.-A. Mozart : sa vie musicale et son œuvre de l'enfance à la pleine maturité という本、3冊(揃いは5冊)あるうちの一冊。やや大きめのアンカット装の本で、頁を開くのに使っていたもののようです。

しばらく前に洋書会で手に入れた音楽書の口です。調べれば、持ち主に辿り着くことも不可能ではないでしょうが、特別高価なものでもないはずですので、このまま有り難く使わせて頂こうと思います。

正当な持ち主にはいつでもお返しするつもりで、ここに記しておきます。



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2010年03月22日

ひたすら本を積む

風も収まって、三連休でも一番穏やかな一日。我が家の枝垂桜は三分咲きといったところ。

昨日の補足。どうして別の日に引き取りたかったか。それは昨日も今日も休日で、市場がお休みだからです。

すでに喫水線を超えている状況の我が店に運び込むより、そのまま市場へ持ち込んで、一気に売り捌いてしまう方が楽だと思ったからでした。

もちろん店で売るのに比べれば利益は小さい。ただしそれは総額として見ればということで、市場ならば一度にけりがつきますから、また次の仕事に取りかかれます。そう考えると、果たしてどちらが店の得になるか。

そうは言っても一度運び込んでしまうと、今度はこれをまた市場へ運ぶのは一仕事。もともと自分の店に並べたいような本が大半ですから、結局、無理算段してでもひとまずどこかに押し込むことにいたしました。

心配した腰の方は、今日のところはまだ大丈夫。しかし油断できません、近頃は生理反応が鈍くなっていて、疲れが出るまでに数日かかることも良くあります。

「日のあるうちに草を干せ」の教えに従い、体が動いているうちに、せっせと本を積み上げ続けました。まだ何とか、船は浮かんでいるようです。

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