2010年08月

2010年08月21日

価格は価値ではない

思い入れだけで値段が付けられた時代がありました。

一般には流通していない本、つまり刊年の古い本や、洋書ならほぼ全般。それらについては古書店主がそれぞれの経験と価値判断で値をつけ、それがまた古書としての相場を形成することが出来た時代。つい昨日までそうだったような気もします。

インターネットの普及が、そうした時代に幕を引きました。いくら良い本だと力んでみても、ネット上に安価で溢れていては、独自な値をつけたところで売れるはずがありません。

また驚くほど多くの本が、実際に溢れ、安価に売られています。

本屋にとっては厳しい状況でも、お客様にとっては良いことではないか。そう考えることも出来るでしょう。しかしお客様も買うばかりとは限りません。いざ売る立場になった時、同じ厳しさを感じられることになるはずです。

今日、段ボール三箱の本が送られてきました。着払いで約4000円の送料。開けてみて値踏みをすると、約80冊ほどもありましたが全部で6000円。すぐにお電話して、ご了解を得ました。

正直に申し上げれば、仮にこのまま市場に出したとして、6000円以上の札は入らないと思います。この値をつけたのは、いわばお客様への敬意から。RIMG0576

いや、それでは不遜になります。むしろ一度は選ばれ、買われ、読まれた本たちへの敬意だと申し上げるべきですね。

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2010年08月20日

うれしいメッセージ

ネットからのご注文メールなどに「昔、店にうかがいました」というメッセージをいただくのは、うれしいことです。

記憶に残っているというだけでも有り難いのですが、その方が今でも本を必要とする生活をされていること、その入り口、少なくとも通り道に小店があったということに、とても誇らしいものを感じるからです。

昔は小学校の近くには、必ず小さな文房具屋さんがありました。もちろん今も残っているお店はあるのでしょうが。

小店はあの文房具屋さんのようなものではないかと、ふと思ったりしました。あんなお店があったなあ、しかし結構まともなものが置いてあったなあと、ずっと後になっても思い出していただけるような店でありたいものです。

今日は明治古典会の会食をお断りし、早めに店に戻りました。家族揃ってルヴェ・ソン・ヴェールで食事をするためです。今日が家人の誕生日、30日は娘その1の。

RIMG0577折から今夜は駒場町内の盆踊り、店の前を何時になく多くの人たちが行き交いますが、本にご興味はなさそう。時間ですので店を閉め、ゆっくり食事に行ってまいります。

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2010年08月19日

我は昨日の我ならず

目下売り出し中の生物学者、福岡伸一さんの言葉によれば、生命の本質は動的平衡にあるらしい。

行く川の流れのように、絶えずしてしかも元の水に非ず。そこだけ見ていると同じように見えるのに、細胞レベルで見れば、一ヶ月(ここの知識は不確か)もすれば総入れ替え。まるで違うものになっている。

そんな話を思い出したのは、ふと写真立てに挟まっている我が子の写真が眼に留まったからです。

どうやら小学校低学年時分ですが、小柄なこともあってようやく幼児から小児になったくらいにしか見えません。もう10年以上も前の写真です。

それを見た瞬間、不思議なリアリティを感じ、その頃の声や動きを思い出していました。そして次の瞬間には、しかしもうその子は居ない、と思ったのです。

ここに写っているこの子はどこに行ってしまったのだろう、という思いに捉われたとき、福岡さんを思い出したという次第です。

RIMG0574もちろん当の娘は、今やますます元気に「青春」をしているようです。何時だって人は、今日只今を生きていることに変りはありません。

今朝はバス通勤、路地裏に芙蓉、百日紅など夏の花々がきれいでした。

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2010年08月18日

ついつい拾い読み

斎藤兆史さんの『英語襲来と日本人』(講談社メチエ、2001)を拾い読みしていて、「日本語の方が英語よりも大きな変質を遂げている」という箇所に遭遇しました。

500年前のシェイクスピアの英語は、現代英国人にも、さほど苦労なく読める。一方、西鶴はそれより100年ほど後ですが、現代日本人が読むのは大いに苦労だと、例をあげています。

ふむふむと勝手な親しみを持って(駒場の先生ですから)読みながら、ふと頭をよぎるものがありました。英語が、いかに大きく変化した言語であるかを説いた文を、最近何かで読んだ覚えがあります。

しばらく考えて、思い出しました。『世界の言葉・何を学ぶべきか』(慶應出版社、1943)という、第二次大戦も末期の、学生向け語学入門書です。

30に及ぶ言語が紹介され、その一つとしての「英語」を紹介しているのは西脇順三郎。その論の中に「英語は世界の言語中最大に変化した言語といふことが出来る」とありました。

RIMG0575揚げ足を取ろうというのではありません。ちょっと面白いなと、感じただけのことです。

面白いといえば、この『世界の言葉』という本にあらためて目を通してみると、色々と興味深い点があります。いずれ詳しく読み込んでみたいものです。


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2010年08月17日

見えない難点

いわゆるアラサー、お一人暮らしの女性。お休みに部屋を片付けて、出た本を引き取って欲しいと手提げ袋二つお持込み。文庫、新書、精神医学関係書その他。

イタミや線引きのないのを選んできたとのこと。確かに状態はそれほど悪くはありません。しかし、重大な難点が。手にとってページを開くと立ち上るタバコ臭。

今や線引き以上の嫌われモノかも知れません。ネット販売などでは、状態説明にこれを落としたため、クレーム、返品というケースが増えていると聞きます。

しかし線引きならはっきりしていますが、臭いというのは曖昧なもの。感じ方に個人差もあり、判断は難しい。

とはいえ、まとめてお持込になると、かなりはっきりと臭います。評価は低くせざるをえませんでした。もし、ご不満があればご説明するつもりでしたが、ご納得の様子でしたので、何も申し上げずじまいです。

RIMG0570かつては背や小口が茶色く変色した本を持ち込むのは、読書家の男性と相場が決まっておりました。

近年の喫煙率は、男性が下げ続けているのに対し、女性は横ばいか微増。全体では24%をきったとか。古本の世界にも、喫煙をめぐる状況の変化が反映されているということでしょう。

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2010年08月16日

adieu good-bye お元気で

RIMG0431お盆休みは終わっても、夏休みは続いています。しかも、今日もロシアに負けない暑さ。

外で本を選んでから入って来られるお客様は、一様に火照ったようなお顔。腕には汗が噴き出して。もちろん、そんな奇特な方の数が多かろう筈はありませんが。

さて今朝は、例の双子家族が、お別れの挨拶に立ち寄ってくださいました。「駒場には今日の5時まで」とおっしゃっていたので、もう出発されたことでしょう。

4年間のごひいきのお礼として、オリジナル木版画セット「駒場みやげ」を差し上げました。ママについて来た下の双子さんにも、それぞれ絵本を。

まあこの二歳児たちは、明日から変る生活環境にも、それほどストレスなく適応していくことでしょう。四歳の双子姉妹ですら、日本での暮らしが記憶に残るかどうか。

しかし幼年を抜け出そうという年頃のお兄ちゃんは、少しは淋しく思うかも。それでも今ならまだ大丈夫、一刻も早く新しい友達を作って、元気に溶け込んで欲しい。

ただ、折角覚えた日本語だけは、何とか忘れずに、trilingualとして育ってもらいたいなあと、他所ごとながら願うものです。

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2010年08月15日

ブルーベリーとフォーゲラー

家を出て店まで15分弱、普段の半分ほどの所要時間。年に一、二度は、こういう日があります。玉川通りは、こんなに広かったのかと、あらためて気付くような。

何時に増して静かな日曜日の朝、まだ店を開けているうちに、父子連れが通りかかり「もういいですか?」と棚へ。坊やは3歳くらい、涼しいうちに公園で遊んで、その帰りとか。

元気よさそうなお子さん。先手必勝、家人がその子をブルーベリー摘みに誘いました。表の鉢植えに生ったもの。昨日の写真の、あれです。

その間にお父さんが絵本を選び、坊やは収穫をお土産に。喜んでお帰りになりました。

ところで昨日の写真で、篭の下に敷いているのは売り物のパンフレットです。木版調でちょっとアールヌーヴォーな表紙だと思われませんか。

中身はフォーゲラー(Heinrich Vogeler)展のカタログです。地元ヴォルプスヴェーデで1962年に開かれた際の。

RIMG0562表紙にはタイトルも何もないので、外から見ただけではなんだか分かりません。28頁に折込が一葉という薄い作りで、本文二色刷り。中も素敵なので、併せてご紹介しておきます。

さて、お盆休みは終わったのでしょうか。

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2010年08月14日

遠慮がアダ

「すみません近所のものですが」と若い女性。「余っているダンボールがあったら、譲っていただけませんでしょうか」

「何にお使いになるのですか」とお尋ねすると「宅急便を送りたいんです」

最近M先生からお送りいただいた本が入っていたみかん箱がありましたので、中に残っていた詰め物を除けて、付いていたラベルを剥がし、差し上げました。

ただ間がよかっただけ、なければお断りするばかりです。それをとても喜んでいただき、しばらくするとコンビニのレジ袋に、冷たい水やお茶を何本か提げて「先ほどは」と戻ってこられました。

お礼だとおっしゃいます。こんなことは初めて。ご辞退したのですが是非と勧められ、折角ですから一本だけいただきました。店には小型の冷蔵庫しかなく、入れておく空きがないからです。

そのときは聞き過ごしてしまったのですが、後から思い出してみると、どうも「こRIMG0558のまま出かけますので」とおっしゃっていたような気がします。だとすると遠慮して、却ってお気の毒なことをしたかもしれません。

500mlのボトルが少なくともあと2本は袋にあって、これからどこへ出かけられるにせよ、邪魔な荷物になってしまうでしょう。厚意を示すのも難しいものです。

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2010年08月13日

静かな金曜日

RIMG043511日から17日まで、古書会館は休館、市場もお休み。それで今日は、金曜日ですが朝から店番。

お昼を過ぎても、誰一人、店に入ってくる方とておられません。12時半、ようやく男性がお一人。しかし店内を一回りすると、あっさりお帰りになりました。

それからまた一時間、学生らしい男女連れがご来店。女性の方は留学生でしょうか、手には表で選んだらしい洋書が二冊。これで何とか、売り上げゼロは免れそう。ちょっと安堵。

男性の方も店内で文庫三冊お選びになり、目出度くレジが初稼働いたしました。しかしその後も、店内無人の時間が殆どで、時折思い出したように人影があるくらい。

昨日から渋谷では東急大古本市が始まっています。働き者の同業たちは、今頃、頑張って接客していることでしょう。

思い切って休むわけでもなく、人の来ない店でいつもながらの片づけ仕事をのんびり続けている店主は、結局ただの怠け者なのかもしれません。

バブルの神田。東洋キネマにとどまらず、地上げの嵐に巻き込まれた古本屋さんを何人も知っています。そうだったなあ、へえそうだったの、という昨日の読書でした。


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2010年08月12日

今夜の読書

朝から時折、台風の影響らしい強い風が吹き、午後からは雨が混じり始めました。

人の少なさは昨日と大差ありませんが、違うのはネット顧客も一段と減っていること。午後四時近くまで、一点も受注が入りませんでした。ジャンクメールの多さが一際目に付きます。

さて、長くしていないことが二つあります。一つは映画館で映画を見ること。もう一つは新刊を買って読むこと。どちらも確信的に忌避しているわけでないのは、言うまでもありません。

映画の話はさておき、本については商売柄、周りを見回すと読みたい本が幾らでも眼に入ります。それらを差し置いてまで、新刊で読もうという本が、なかなかないのだと、ひとまず申し上げておきましょう。

もっとも、結局は店主の不精に拠る所が大きいことは承知しております。現にわが家人は、映画も見に行けば新刊も時折買っておりますから。

宮崎学『地上げ屋』(幻冬舎アウトロー文庫)を手にして、読んでみようと思った時、ふと以上のようなことを感じました。なんとも旬から縁遠い読書を重ねているものだと。

RIMG0423刊行が10年前、お話は更に10年以上前。しかし舞台は神田神保町(第一章)。前に読んだ気がしないでもないのですが、まあ今夜はしばし、当時を思い出させてもらうことにします。

konoinfo at 18:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
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