2010年11月

2010年11月30日

お気をつけて福次郎さん

早くも宵闇迫る午後四時半、古書会館を出て、ふと目の前の御茶ノ水駅から降りてくる道路を見ると、白髪のご老人が杖を突いて、今しも横断中。

片側二車線の道の向こう側にあるバス停へ向かっているのは誰あろう、古書通信社顧問の八木福次郎さん。

左50mで駿河台下の交差点、右に50mで明治大学角の横断歩道、しかしバス停は正面です。突っ切りたくなるのは人情、ましてご高齢の身であれば。

交差点の信号が青になって、駆け上ってくる車の運転手は、今、前方を横切ろうとしているご老人の、実際のお年を知れば驚くことでしょう。大正四年生まれの95歳。店主のハラハラをよそに、急ぐ様子もなく渡り終えられました。

明日が毎週水曜日に市を開く東京資料会の大市で、今日はその下見日となり洋書会はお休み。しかし会議があって会館に顔を出し、その帰りがけの目撃譚でした。

会議は、新たに構築中のWEBを利用した交換会システムに関わるもの。プログラムの製作者に、色々な要件を伝えるのが目的です。地味で面倒な作業ですが、ある意味では最も重要な部分。

RIMG2035途中で用が出来て、中座することになりましたが、その進みぶりだけは確認できました。

しばらく大市やら祝日やらで市会の開催が不規則。おかげで今日が何曜日か、まごつくことも。そういえば今日は月末、明日からは師走です。


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2010年11月29日

言語を学ぶ

相変わらず倉庫の本の整理。言語学関係の口に行き当たりました。それも古典語とか、アフリカ諸語とか、変ったところ。いつ頃手に入れたのか、もう覚えていません。でも市場で買ったのは間違いなさそう。

イメージ (14)その中に、とりわけ不思議な本を一冊見つけました。タイトルにLATINとあるのだけ見て、ラテン語に関する本だと見当は付きましたが、あとの言葉が読めません。

著者と、最初の数文字から、まずドイツ語の本かと思ったのですが、それならLATEINとなっているはず。第一、TATABAHASAはあまりに不可思議。

出版社名らしいDJAMBATANを見て、ようやく、どこの国の出版物か分かりました。さて皆さんはいかがですか。

正解はインドネシア語によるラテン語学習書。初版が1954年、本書は1959年の第三刷。NACSIS Webcatで調べても収蔵している図書館はありません。

Googleで検索してみると、さすがに数件ヒット。インドネシアの図書館と、オランダの古書店の情報が見つかりました。ちなみに古書店のつけているお値段は40ユーロ、なかなかのものです。

しかし仮に小店が半額で出したところで、売れそうな気がしません。パラパラと見た限りでは、一般的な文法書。ラテン語を学ぼうというインドネシア人学生(別に学生でなくとも構いませんが)にも、もっと適当な本が幾らもあるはずです。

この本が意味を持つとしたら、出版史、語学研究史という観点からでしょうか。

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2010年11月28日

記憶にない

ひと時、仕事の手を休め、坪内祐三さんの『本日記』(本の雑誌社・2006年)を拾い読みいたしました。

その名の通り、本とそれにまつわる人や店の話が中心で、とりわけ古本、古本屋が頻繁に登場します。そこでつい知った名を探して、頁を繰ってしまうことになります。

そうしているうち、2004年7月5日という日付の箇所が目に入りました。古書会館の落成祝賀会に、山口昌男さんと一緒に出かけたと書かれています。

確かに、お招きした筈だと、頭では承知しているのですが、その日のお二人の記憶がありません。というより祝賀会の様子そのものを、まるで思い出せないのです。

当日、店主は落成式の司会役をおおせつかっていて、そちらに頭が一杯だったと言い訳も出来ます。しかしその式典の次第も、今では殆ど覚えておりません。またしても、記憶力の弱さが証明されてしまいました。

ところでこの本によれば、坪内さんはご自宅に近い三軒茶屋から三宿、池尻、渋谷、下北沢、豪徳寺、経堂と実にこまめに古本屋通いをされています。

しかし駒場東大前の名は、ついに一度も出てきません。まるで避けて歩いてでもいRIMG2033るように。

昔、七色文庫を通じて南部の市場に出品された、彼の旧蔵洋書を買ったことだってあるのです。近くその七色が関わり、先ごろ終刊した『彷書月刊』の「謝恩会」があるので、そこで会ったら一度、了見を質してみますか。

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2010年11月27日

スイスからの注文

RIMG2014二日ほどパタリとネット注文が止まってしまって、ハテどうしたのかと思っていたら、ようやく着信。昨日の朝のことです。

勇んで開くと小店のHPカタログからドイツ書のご注文で、送り先はと見るとスイスはバーゼル。

外国語のページを用意しているわけではありませんので、適当に見当をつけてアイコンを押し、登録から注文画面までたどり着いたようです。

あるいはブラウザの翻訳ソフトでも駆使したのでしょうか。過去には、ウェブ検索でヒットしたといって、メールで注文をいただくケースばかりでしたが。

すぐに送料を調べ、合計金額を書いて、送金はPayPalでお願いしますと返すと、PayPalではなく別の方法にして欲しいと、またすぐに返信がきました。

さて一頓挫。自店のクレジット入金口座は持っていません。銀行送金でも良いと言って来られていますが、6000円+送料の回収に使う方法としては手数料が高額に過ぎます。

ひとまず、郵便為替でお送りいただけないか、再度返信し、今そのお返事待ちの状態。

さて、こう書いていてふと思いつきました。『日本の古本屋』経由でご注文いただこうかと。こちらならクレジット決済も可能です。

『日本の古本屋』は今のところ日本語のみですが、考えてみれば小店のHPも同じこと。やれば出来るかもしれない。

ほんと、今思いついたのです。これから追伸を送ることにします。

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2010年11月26日

久々、明古の夜

RIMG2020昼から古書会館。明治古典会は月末の特選市。近現代作家初版本の多くが署名入りという一口、約1500冊。豆本、限定本、挿絵本など賑やか。

最終発声(つまり一番の高値品)は、芳年の錦絵集『月百姿』。版画も昔から古本屋の守備範囲です。

全体に、昔のことを思えばずいぶんと相場が下がっていますが、今日はそれなりに活発に入札されていたような気がします。

電子書籍の時代になっても、いやむしろそうなるほどに、こうした明古らしい本が、再び見直されることになるだろうというのは、身贔屓な予測でしょうか。

以前、古書組合で開いたセミナーで、ある先生の述べられた「将来、図書館から書籍がなくなる」というご託宣も、それほど突飛なものと感じないほど、大きく状況は変遷しています。近い将来、本を集めるのは、博物館の仕事になるかもしれません。

そう考えたとき、古書業界の置くべき軸足は、経済ではなく文化であることを、改めて思い定める必要がありそうです。経済に貢献できる業界ではありません。しかし文化に資することは、これからも自分たちの努力次第です。

久しぶりに明古の仲間と夕食。神保町のうなぎ屋さん。一階の土間と二階の座敷、あわせても二十人入れば一杯という小さなお店へ六人で。時に書籍電子化の話もしながら、大方は他愛無い話で疲れを払いました。


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2010年11月25日

在庫の値打ち

倉庫から古い在庫を引っ張り出してきて、整理を始めています。小店の場合、古いと言っても、せいぜい10年〜20年モノ。開業して27年ですから、それ以前の在庫はありません。

もちろん、それは小店で寝ていた期間であって、刊行年はずっと古い本もあります。いずれにせよ、久しぶりに見る本に、懐かしささえ覚えるほど。

初めから倉庫行きの本は少なく、しばらく店に並べたり、即売展などに出して売れ残ったもののうち、見切るには惜しいと思って仕舞いこんだものが大抵です。

整理を始めてまず気がつくのは、殆どの場合、本に付いている値段が、現在の感覚からすると倍以上であること。昔が高かったと言うより、価格崩壊がそれほど進んだということでしょう。

だんだん暗い気分になってきます。寝かしておくうちに価値が出て、市場に出して大儲け、などという話は、遠い昔の夢物語に過ぎません。

と思っていたら、先日の東京古典会の大市会で、その夢のようなお話が実際にありました。中国バブルの賜物です。幾らで入手したものかは分かりませんが、その何倍、もしかしたら何十倍、あるいはもっと…。

RIMG2017一万円のものが何十万円になったというレベルの話ではありません(それでも充分羨ましいですが)。ゼロが二つ三つ余計に付く話。業界に新伝説が誕生したのでした。

ハナから違う世界の話です。古在庫をひっくり返しながら、現実を噛みしめました。

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2010年11月24日

翻訳大国

「失われた時を求めて」は、読まれない名作の一つでしょう。何しろあの分量、翻訳原稿にして一万枚とか。

この春、古い友人の一人が「ついに読みきった」と興奮気味に話していました。確かにそれは大いなる達成かもしれません。

しかしその読むだに難事業の作品を、個人で全訳した人が二人もいる日本という国は、まことに翻訳文化の超大国です。

お二人は、言わずと知れた井上究一郎、鈴木道彦の両先生。今朝の車中のラジオで、井上訳の開始が1984年、鈴木訳が1996年(いずれも完訳版の)と聞いて、その間隔の短さに驚きました。

店主らの世代にとって「失われた…」と言えば、新潮社の共同訳の分冊版(1953年〜)。合本7冊で出たのは1974年、高くてとても手が出なかった記憶があります。古本でも長いこと高かった。

一方で世界文学大系(筑摩書房)に「プルースト」(1960年)の巻があり、あの三段組で井上訳を読み始めてすぐに挫折した身としては、両訳の間にはもっと長い隔たりがあったような気がしていたのです。

しかしもっと驚くのは、鈴木訳が完結してから今日までに、すでに10年近い月日が過ぎていると言うこと。時の流れの不思議さ、ちょっとプルースト的な主題ですね。

午後、ボオドレエルの研究書を6冊ほどリストしておいでの客様が、ご来店。ありますかと尋ねられて、慌てて裏の在庫をひっくり返し、苦労の末、どうにか全点揃えてご覧いただき、4冊をお買い上げいただきました。

本があって良かった。店番がいて良かった。でも出来れば次からは事前にお知らせくださいと、お願いいたしました。

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2010年11月23日

やってるやってる

今日は朝から時折、賑やかな音が聞こえてきます。屋外イベント系は最終日にまとめたのでしょうか。

お天気の方は回復が遅れ、雨の心配がなくなったのは昼を過ぎてから。それでも大勢の方が来られているのでしょう、小店も人の出入りは普段より多目。

昨日の静かさに比べると、あたり一体が、どこかざわついた感じです。うちでそう感じるのですから、学内の混雑は察しが付きます。ともあれ、明日からはまた静かな駒場に戻ることでしょう。

500円の本をお買い上げのお客様が、「5000円でも大丈夫ですか?」とお気遣い。

釣銭というのは不思議なもので、随分と溜まるときもあれば、急になくなってしまうこともあります。小店のようにお客様の少ない店でそうなのですから、忙しい店は大変だと思います。もちろん充分準備はしておくのでしょうが、見込み違いは付き物。

小店では、今日は百円玉が少なくなってきました。そうなると妙なもので、一度に4枚ずつ出て行くケースが続いたりします。

千円札、500円玉はまったく不足していませんから、くだんのお客様に、大丈夫ですとお答えすると、「お休みの日は気が引けるのですよね」。ご商売でもされている方かもしれません。

RIMG1836一方で、100円の本に黙って5千円、1万円札を差し出すお客様も時にはいらして、釣銭不足のときだと、ついムッと来かねません。気持ちよくお客様に接するためには、備えが大切ということですね。

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2010年11月22日

昨日と明日の狭間

駒場祭は昔から三日間やっていただろうか、と店主が疑問を述べると、家人も娘も、自分たちの知る限り三日間開催だったと口を揃えます。

ということは、10年、20年という単位では、そうだったらしいということになります。もの覚えの悪いのは自他共に認めるところですから、そうなのだろうと思うしかありません。

日曜と祝日に挟まれた月曜日、井の頭線のホームから流れてくるアナウンスがなければ、ひっそり閑としたものです。

お天気の方もはっきりしない。雨の予報が、何とか持ちこたえているといったところ。

そういえば、ひところは正門付近で学生ロックバンドが延々と演奏し、近隣から苦情が出たようなこともありました。

寮がなくなったこともあるでしょうが、学生が繰り出して迷惑をかけるということも、最近では殆ど耳にしません。

整然と囲われた中での祝祭ということなのでしょうか。もしかするとお祭りでさえないのかもしれないと思ってしまうほど、大人しい印象を受けます。

今日の店主は、午後から古書会館でIT会議。この先10年くらいは使えるシステムRIMG1689構築を目指しているのですが、10年先にこの業界がどうなっているかなど、誰にも予測は付きません。

過ぎた10年など、つい昨日ですのにね。

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2010年11月21日

駒場祭でした

今日は駒場祭ということに、今日になって気がつきました。つまり昨日もそうだったわけで、すっかり忘れておりました。

そういえば確かに、普段見かけないような人々が連れ立って通りかかります。しかし店に寄る人は稀。寄ったとして、売り上げにつながるかどうかは、更に見込みの薄い話です。

以前は、駒場祭に随分お世話になりました。といっても学校や学生さんとは無関係。学内にあった保育所のバザーがこの時期に合わせて開かれ、子どもの衣料を沢山買わせて貰ったのです。

学生さんの古本セールは今も続いているようですが、近年は、見に行くこともありません。

かつて朝一番で乗り込んで、日本近代文学大事典(講談社・全6冊)を1冊千円で買ったこともあります。当時は随分得した気分。実際、ずっと高い値で売れました。

今もし同じ値段で出ていても、手は出しません。多くの基本図書と同じく、値崩れの様子が「日本の古本屋」で一目瞭然。見に行かないのはそんな訳だからです。

昼食時、お向かいのアラブ人が、金物屋が近所にあるかと尋ねに来ました。場所を教え、食事に取りRIMG1506かかろうとすると、化粧品のような強い匂い。手を差し出され慣れない握手をした、その時に移ったらしい。いわゆる香油なんですねきっと。

午後中、本を拭くのに何度か雑巾を絞って、ようやく匂いが気にならなくなった頃には、もうすっかり日も暮れていました。

追記:今年の駒場祭は11月21日〜23日の開催であることを、夜家に帰ってから知りました。

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