2011年03月

2011年03月31日

明日は四月

長い長い(と感じられた)三月が終わりました。

新入生らしい若者が、大きなチラシのような紙を持って店内を見回っています。声をかけると、やはりそう、教科書を探しに来られたのでした。

いつの間にかそんな時期になっていたのかという感慨と同時に、そういえば例年に増して、教科書の持込が少なかったと、今更のように気付きました。

それでも新一年生が必ず買うべきとされる数冊のうち二点だけ、それも辛うじて一冊ずつ在庫しておりました。喜んで買っていかれましたが、これで今シーズンの教科書販売は終了したも同然です。

しかし念のため探してみると、また一冊出てきました。さらに探せば、まだ何冊かはあるかも知れません。

この手の「指定」(そう呼びます)教科書は、普段並べておいても誰も買って行きません。学期始めか、試験前だけ。それで、買い入れても、そこいらにしまい込んでおくので、時期が過ぎてから見つけ、臍をかむ、ということを、毎年のように繰り返しています。

今日も少しは探してみましたが、結局他には見つからず、諦めました。そんなことを繰り返しているうちに、改訂版が出たり、先生が代って教科書そのものが変わったりして、ある日、忽然と現れたときには、賞味期限切れと成り果てているのです。

しかし、無事に新学期が始まるだけでも、有り難いことだと思わねばなりません。まだ当分は、色々な不便や、不安を抱えたままの徐行運転が続くのでしょうが。

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2011年03月30日

年年歳歳

当初の予定からズルズルと遅れて、一向に事態が進展する気配が見られません。

原発のことでなく、小店の店頭スペース中央を占拠したままの、臨時排水設備のことです。

二日三日という話で、パイプやら電気コードやらを足元に這わせることに同意しました。しかしその後、一週間近く経つのに、設置していった業者から、何の音沙汰もありません。

棚の出し入れの際の不便はともかく、お客様が足を取られたりしたら困ります。しかしおそらく発注している新しい排水ポンプが、なかなか届かないのでしょう。今は全て震災のせいにすれば、承知せざるを得ません。

それにしても、遅れていることを、知らせに来るくらいは出来るはずです。誠実さを疑います。このあたりも、原発の話と似通っているかもしれません。

しかし、世の中の全てが滞ってしまっているかのような、こんな時でさえ、季節は着実に移ろっています。今朝、庭に落ちた花弁から、ふと気付いて上を見上げると、枝垂桜がいつの間にか、多くの花を開かせていました。RIMG3048

寒さが続いているのに、桜の開花予想は平年並みとのこと。天変地異などというのは、人間の勝手な感想に過ぎないのかもしれません。

同じように、想定内も、想定外も、自然の営みからすれば、知ったことではないのでしょう。相手が自然なら、そんな風に観念もせざるを得ませんが、こと人間となると、つい苛立ちも湧いてくるのでした。


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2011年03月29日

死んではいけない

福島県の有機栽培農家が自死したという、痛ましい記事が今朝の新聞に出ていました。

農作物の育成に際し、人間の作り出した様々な害毒を、出来る限り排除することが、有機農家の仕事。それを十年以上、地道に続けてこられた方のようです。心中察するに余りあります。

それでも、本来、有機農家は「タフでなければ生きていけない」人々ではなかったでしょうか。様々な苦難を乗り越えて、たくましくやってこられた方々のはずです。

これまでの丹精が、放射能汚染の風評で、塵芥に帰すると絶望されたのでしょうか。店主自身は、有機農法に無条件で賛同するものではありませんが、残念至極なニュースでした。

それにしても、人工物による自然界の汚染は、放射線に限ったものではないことは言うまでもありません。世の中は「ただちに健康に影響しない」農薬、化学肥料、食品添加物、排気ガスなどで満ち溢れています。

そうしたものに無感覚な方に限って、例えば水の買いだめに、走られているのではないかと、つい勘ぐってしまいます。

ただちに影響のないものなら、還暦を過ぎた店主にとって、さほど怖いものではありません。摂取制限などという言葉を聞いて、お隣のコンビニの前にある喫煙コーナーを眺めると、なぜ喫煙制限が発令できないのか不思議な気がしてくるのです。

今日は洋書会。退官されるM先生の本をカーゴ3台出品。その内1台分ほどは自分で買い戻しました。

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2011年03月28日

31文字vs.17文字

月曜日の今朝、新聞を広げて、朝日歌壇/俳壇に目が行きました。先週、この欄はあったでしょうか。記憶にありませんが、見る余裕すらなかったのかも。

そこに選ばれた歌や句を見て、すぐ、あることに気付きました。短歌の方は、各選者とも、上席に震災関連の歌が並んでいたのに対し、一方の俳句には、どう見ても、震災を詠んだものが選ばれていないことです。

あまりにもくっきりとした対比に、それぞれの持つ表現形式の違いが、そこに現れたのかと、そのときまずそう思いました。

しかし一枚めくってみると、その裏面で、震災を詠んだ句を特集していました。要するに、投稿句の締め切り、あるいは選句の時期が震災前だったというのが、実際のところかもしれません。

さらにしかし、そこに選ばれた震災関連句を一読してみると、やはりピンときません。もとより句の出来、不出来を言う資格はありませんが、圧倒的な現実に対峙するには、直截的な表現でなくては難しいのかもしれないと、改めて感じたのでした。

ふと桑原武夫の『第二藝術論』と、それをめぐる論争を思い起こしました。あれはすでに俳壇においては、解決済みの問題なのでしょうか。

さて、今日は夕刻6時に店を閉めていると、お二方ほどに「もうおしまいですか?」と訊かれました。「大変申し訳ありません」とお答えしながら、少しずつ日常が戻りつつあるのかと、思ったりもしたのでした。

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2011年03月27日

探す方、探さない方

昨日はお二人、今日またお一人。

「日本の古本屋」あるいは、小店のHPをごらんになって、お目当ての本を見つけ、直接ご来店いただいた方々です。

みなさん、しばらくは店内をご覧になり、ご自分で探そうとされます。やがてあきらめたようにして帳場まで来られ、おずおずとお尋ねになります。

中には、いつまでもご熱心に探される方も。今日のお一方もそうで、たまりかねてこちらから声をおかけしました。

結局このお三方がお探しの本は、いずれも店の裏の棚に保管してあった本でした。どなたの時も、たまたま店主がいて、他に店番も居て、という状況でしたので、慌てず騒がず本を探して、お渡しすることが出来ました。

前もってメールでもいただければ、ご用意しておくことが出来るのですが、皆さん色々とご事情があるのでしょう、こうしたケースが案外多いのです。

まずご自分で探そうとされるのは、気が引けてのことでしょうか。事前にご連絡いただくのが一番ありがたいことは確かですが、直接お出でになったからには、ご遠慮には及びません、すぐにお尋ねください。

一方、やはり今日のお客様、ご婦人です。ご来店になるなり「菊と刀」と一言。ややあって「ありますか?」。やりかけの仕事の手を止め、文庫の棚へ行き、ひとしきり探しました。最近入れた覚えがありましたので。

しかし結局見つかりません。その旨申し上げると「すいませんね近頃目が悪くなって。お手間取らせました」そういってお帰りになりました。

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2011年03月26日

じっと我慢の日々

いつまでも寒い。いつまでも解決しない原発。海外では「日本」=「汚染」という受け止めが定着しつつあります。何ともやりきれない思いです。

汚染といえば、昨日、店番のミセスAが若い男性から「ここの本はアルコールで拭いているんですか?」と尋ねられたとのこと。

「いいえ、拭くには拭きますが、別にアルコールなどは使っていません」と答えると、エッというような表情をして出て行ったとか。

「東京辺りに、うろうろしていて大丈夫なのですか」とでも言ってやりたいところです。あるいは、「あなたも外国へ行くとアルコールで拭かれるかもしれませんよ」とでも。(怒ってるわけじゃありません、為念)

倒れた本棚を取り払った後に、新たに入れる本棚が、なかなか調達できません。一旦決めて代金まで払った本棚は、結局メーカーが営業を停止していて入荷できず、返金を受けました。

そのメーカーというのはIKEAで、確かにホームページを見ると、関東の営業所はしばらく閉鎖、と出ていました。このエネルギー不足に店を開けていては申し訳ない、というようなメッセージでしたが、災害復旧支援を優先すると書いてあり、実際はそちらの仕事が入って忙しいのでしょう。

別の本棚を探すか、自作するか、しばらく迷った末、今日、これならという棚を見つけ、発注しました。まだいつ届くのかも分りませんが、まずは待つしかありません。

このところ、待つことばかりですね。



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2011年03月25日

二週間

二週間ぶりに明治古典会。あの揺れが来た日の市場が、随分前のことのように思えます。

あれ以来、初めて顔を合わせる同業も多く、互いの様子を、ひとしきり尋ねあう挨拶が続きました。

こうして市場に来ているくらいだから、格別の被害はなかった、ということでしょうが、それには、あまりにも悲惨な被災地の状況をニュースなどを通じて見聞きして、自らの被害など取るに足りないと、それぞれが言い聞かせている部分もあるのでしょう。

震災そのものより、それに起因すると思われる、商売の不調を嘆く声が専らでした。店売りも、ネット販売も。

こんなときこそ市場が必要なのだと、今日、改めて感じました。多様な書店のなかには、元気のある人、余力のある人もいます。そうした人たちが札を入れることで、本が動き、富ならぬエネルギーの再分配が行われるのが、市場ではないでしょうか。

昨日あった嬉しいニュースを一つ。小店で書籍発送に使っているダンボールケースの発注先から、先週末に注文していた商品が届いたのです。

その会社の工場は福島県郡山市。お見舞いのメッセージを添えて、あとはいつも通り、ファックスで発注書を送りました。もしかして、それどころでなかったら、申し訳ないと思いつつ。

いつもならすぐ戻ってくる返信がなく、やはり厳しい状況かと案じていたのです。いつもより時間はかかったものの、何事もなかったように届いた商品に、胸を一つ、なでおろしたのでした。

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2011年03月24日

注水ならぬ排水

地震以来、店の入っているマンションビルの排水設備に不具合が起きているらしく、この数日、管理会社の人がいくつか下水溝の蓋を開けて調べていました。

ようやく原因が分かり、今日から修復作業だというので、上階に住む大家さんも顔を見せ、小店の入り口近くにある一番大きな蓋を開けて、中を覗いています。

やがてもう一つ別の小さな蓋を開け、その二つの間にパイプをつなぎ、ポンプで水を吸い出し始めました。大きいほうから小さいほうへ。

大きいほうの口は地下水などの湧水を溜めて排水する装置で、小さいほうの口は雨水などの排水枡だとか。管理会社の話ではこの排水装置の故障、きっかけは地震かもしれないが、機械自体の寿命でもあるだろうといいます。

とりあえずは溜まっている湧水を雨水枡に移して排水する。その作業が丸二日はかかるといわれました。二つの半開きの蓋の上に脚立を置き、一応の危険防止策をしていきましたが、それでも小さな子が姿を見せると気になります。

排水ポンプと排水の音が結構高く、これも落ち着いて本を見ていただく上ではマイナス。などと、はなから少ないことは分かっているのに、客足が伸びない理由を、ついそこに求めたくもなるのでした。

明日と明後日、店先がゴチャゴチャしておりますが、ご了承ください。いつもそうだと言われそうですが。

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2011年03月23日

危険な任務

個人全集の注文が入り、自宅の物置倉庫へ入らざるを得なくなりました。震災から12日、惨状を確かめるのが恐ろしくて、放ってあったところです。

さて扉を開けてみると、やはり相当な崩落。本の山が傾き、崩れた本が散乱しています。肝心な注文書籍は見当たりません。思い違いで他の場所においてあるのか、あるいは売れてしまったのを忘れているのか、しばし悩みました。

しかし一足踏み込んで、まずは足元から、落ちている本を拾い集め、積み直しはじめると、しばらくして、除けた本の下から目当ての本が現れてきたではありませんか。

やれやれ良かった、と片付ける手に力が入り、瞬く間にそこいらが整理されていきます。あれほど手のつけられない状態に見えたものの、被害の程度は案外軽いことが分かりました。

ようやく目的の全集を掘り出し、引っ張り出そうとした時、部屋が揺れだしました。ぎしぎしと不気味な音。今朝はいつもより余震が多めだった気がしますが、そのうちの一つ。後で聞けば震度3とのことでした。

それも、一度揺れ、治まったと思ったら、すぐまた同じ程度に揺れがきたやつ。新たな崩落は起きませんでしたが、さすがに繰り返し揺れたときは、穏かではありませんでした。

しかし今日の余震、いずれも図ったように「震源は福島浜通り」と報じられています。そちらの方が、よほど不気味。ヒチコックか、スティーヴン・キングか。文字通りサスペンスの只中に、我々は置かれているようです。

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2011年03月22日

止まない雨

昼前には上がると予報された雨が、夜になってもぐずぐずと細かく降っています。

まるで遅々として進まない被災者救援、一向に進展しない原発修復を象徴するかのようで、やるせない気分にさせられます。もちろんそれぞれの現場で、懸命に働く方たちが大勢いらっしゃることは承知していても。

市場が再開した組合では、二つの意見が、せめぎ合いを始めています。一つは、本の流入を制御しながら、バランスを取って運営していこうという意見。もう一つは、こんな時期だからこそ、マンパワーで積極的に処理していくべきだという意見。

どちらも共通理解として、従来より早く、市場を切り上げなくてはならないという点、この先、相当大量の出品が予想されるという点を前提にしています。

双方に一理あり、共に業界のためを思っての意見であることに、違いはありません。話し合いのうえで、納得のいく解決が出来るといいのですが。

今日の洋書会は、すでにその大量出品で溢れました。但し出来高は、量に比して伸びません。かくいう店主も、大きな山を、随分と安い値で落札しました。

中に何点か欲しい本が入っていたので、つい札を入れたのですが、結果として、4点でカーゴ一台ほどの分量。それも、同じくらいの量をツブシした上でです。

明日これが店に届いたら、どこへ片付けようかと考えながら、延々と本を縛ったのでした。

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