2011年05月

2011年05月31日

戦果無きにしも非ず

RIMG3260雲は多くても日があって、しかし気温は高くもなく、過ごしやすい陽気ですが、初夏という感じではない。贅沢を言うようですが。

昼から古書会館。洋書会は荷が豊富。量よりも小店好みのものが比較的多く、何点か札を入れました。

交換会場に居た時間はわずか。後は6階の応接室で、都中央会の担当者と定款変更に関する打ち合わせ。それが終わると理事長、経理部長に事務局長を交え、職員の給与、賞与に関する打ち合わせ。

先の読めない経済情勢と、中長期の業界展望を探りながら、難しい話し合いが続きました。

経営的な側面から、人件費抑制は至上命題。一方で、職員さんに意欲を持って働いていただくことは、小規模組織にとって最重要課題。4人で労使交渉をしているようなものです。

一番難儀なのは、話している自分たちを含め、組合員の店が、どこも苦しい状況にある点です。一応の数字は出したものの、問題点は先送りせざるを得ませんでした。

とまあ、組合の仕事ばかりしていたわけですが、市場では短時間に入れた札で殆どが落札。一番欲しかった一点を逃したものの、それは逃したからそう思うのかもしれません。

スペイン文学関係、中世哲学関係の口で、合わせてカーゴ一台満載。明日届くと、この数日、営々と片づけた場所が、一瞬で埋まる事になります。それでも、これが仕事です。買えたことを素直に喜びたいと思います。

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2011年05月30日

新システム

午前中でどうやら雨も上がり、午後には時々強い日差しも。しかし台風くずれの影響か、時折強い風。雲も完全には取れず、気温も低め。

RIMG3397今日は一日店にいながら、どうにも市場の様子が気になりました。本のことではありません。交換会システムが、今日から新しいものに入れ替わるのです。

古書組合が、オンラインで落札情報を処理して、売買を集計するシステムを取り入れたのは、もう8年ほど前のことになります。もともと、将来は入札、開札まで含めて、全てデジタル化することを目指していました。

しかし実際には、身についた慣習を変えさせることの難しさもあって、その拡張は遅々として進みませんでした。

そうこうするうち、システム自体にも、改善の必要が次々に出てきます。そこでさらに先を見据え、拡張性の高い新システムを開発し、導入することにしたのです。

これによって、最近、試験的に行っているネット入札なども処理しやすくなるなど、新たなデジタル化へ向かって、歩を進めることになります。

ただ問題は実施経過。震災の影響もあって、完成が当初より一月近く遅れた上、ようやく移行が終了したという連絡が入ったのは昨夜遅く。

いわばぶっつけ本番で臨んだ今日は、出品点数、入札者数が飛び抜けて多い中央市会。システム会社より、組合の担当職員のほうがハラハラ、ドキドキの一日でした。

何度か、小さなトラブルはあったものの、どうにか「みずほ」にはならずに済んだようです。

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2011年05月29日

不思議な葉書

RIMG3404今日も一日降り込められました。

こんな折こそと、店の床に積まれた本を整理。端から思い切って見切りにし、表の棚に差そうと外に出ると、雨具をつけた老婦人が「ちょっとお尋ねしていいですか」と、一枚の葉書を差し出されました。

そこに行きたいのだというわけです。歎異抄の講和があると書かれています。しかし建物の名も、もちろん地図もなく、差出人の住所氏名があるばかり。

そこでその住所をgoogle mapで調べました。そこに示された場所をお伝えしようとして、もう一度葉書を見ると、3桁の部屋番号と「踏み切り近くのビルです」という文字があります。

googleが示している場所は、小店よりずっと線路から離れ、踏み切りのあろう筈がありません。さらに住所にある部屋番号らしい数字と、会場とされる部屋の3桁の数字とは異なっています。その他には何度見直しても、場所を示す手がかりはありません。

そこに記されていた携帯に電話をしてみても、誰も出ません。ついに「年寄りで時間がありますから、あっちの踏切まで行って見ます。お世話かけました」そうおっしゃって、雨の中を歩いて行かれました。

ややあって、今かけた携帯からかかってきました。事情を説明しついでに疑問を投げかけると、返ってきた答えは、「前にお出で頂いた方に出している葉書ですので、多分お分かりになると思います」というもの。

いずれにせよ、老婦人は既に行ってしまわれた後。どうなることやらと案ずる間もなく、再び携帯から「今、お会いできましたのでご安心ください」。無事に一件落着しました。

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2011年05月28日

「小さな旅」

先日来、何度か市場にテレビカメラが入って、何やら撮影しておりましたが、その番組が明日の朝、放送されることになりました。

NHK総合で午前8時からの「小さな旅」、30分番組だそうです。番組のタイトルは「東京 神保町」、業界が取り上げられるのは有り難く、嬉しいことですが、「やっぱり神保町か」と思わないでもありません。

神保町に興味はあっても、そこから古書の世界、ましてや古書の業界に興味が広がるような視点は、なかなか望めないからです。組合に広報部を作ったのも、本来、そのあたりを戦略的に展開することが目的であったはずですが。

今回は、特に二人の若者に焦点を絞って話が進むとか。そのどちらも明治古典会で働く、店主もごく親しい仲間です。それぞれの店とその商売、そして市場(明古)の様子などが映し出されるようです。

また、市会が終ると、店主らが食事に行くのと同様、若者は若者同士で良く一緒に飲みに出かけますが、何時の夜だったか、その様子も撮りに行ったと聞きました。

明治古典会の経営員と呼ばれる若い連中とは、色々な機会に飲食を共にしますので、彼らの酒席での様子は分かっています。そこで、どこまで普段通りの顔で撮られているか、あるいはよそ行きの顔なのか、そのあたりはちょっと見てみたい気がします。

ところが我が家のテレビでは現在、地上波を見ることが出来ません。同業の誰かが必ず録画しているはずですから、いずれ見せてもらうことにしましょう。RIMG3402

さて、本当に梅雨らしいお天気になってしまいました。この先、何時まで続くことやら。

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2011年05月27日

力道山生写真

RIMG3316しばらくお天気がぐずつくと聞いて、梅雨の走りかと思っていたらあっさり梅雨入りが発表されました。

でも今日は、昼に傘を持って出て、夜傘を持って帰り、結局一度も、さすことはありませんでした。場所によっては、降ってもいたようですが。

明治古典会は月末の特選市。一口物もあって量も多く、賑やかな市でした。その中で、異色の出品が最終台に。

封筒の説明によれば「力道山、東富士、豊登、ルーテーズ他 生写真および色紙ポスター一括」。写真はキャビネ判まで合わせ、100枚以上あったでしょうか。

文学初版本や和本、作家草稿などが麗々しく並ぶなかに、異彩を放っています。確かにこれほどの分量がまとまって出るのは珍しい。それでも、その落札価格には驚かされました。

落札したのは、このためにわざわざやって来たと思しい、地方の同業者。なおさらに、この落札価格は一番の下札で、そこに書かれていた最高値は、その倍以上。

それを目にしてしまった荷主さんは、みすみすその差額を損したような気分になって、それまでの喜びが半減、複雑な表情をされていました。

入札は合理的な面が多々ありますが、このように落札者の札が全て見えてしまうことは、良い面ばかりとはいえません。買う側にとっては手の内を明かすことになるわけですし、売る側にとってもこの例のように、知らなければしなくても良い落胆をすることになります。

何か改良の方法は、ないでしょうか。

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2011年05月26日

出直り

RIMG3390ebayを時々利用します。ご存じない方のために申し上げれば、ヤフオクのような、世界的なオークションサイトです。

英米、独、仏などそれぞれの国別にサイトがあり、各々自国語で表示されているのですが、仕組みが良く出来ていて、入札から入手まで、さほど苦労はありません。

先日、ある入札で、最後の最後に上値を付けられ、買い損ねたことがありました。ところがその本が、最近また同じ出品者から、最終価格の半額ほどで出品されました。

どういうことだろうかと、入札経過を調べてみました。ウォッチリストに登録した本については、そうした情報が得られます。

はじめは、出品者の価格操作を疑いました。吊り上げきれずに手元に残り、もう一度出したのではと。しかし、そうした商行為を認めては、オークションの信頼が低下するはずです。

ここは素直に、落札者がキャンセルしたと取ることにしました。確かにそう思って見ると、再出品の価格は、店主と落札者の札が嚙み合い始めた時点の価格より少し下。その意味では、公正なスタート価格と言えなくもありません。

「振り市」と呼ぶ口競りの市場が、まだ組合にも一部残っています。ここでは「出直り」といって、競り落とした本を一度は無条件で戻せる仕組みがあります。

欠陥がある場合は無論ですが、その場合はそれを告げなければなりません。そしていずれの場合でも、一声は値をつけることが許され、そこから再スタートします。

彼我のやり方の違いは、風習もあるでしょうが、なにより現場かネットかという違いも大きいでしょう。しかし、このケースが実際に「出直り」なら、それを明記するほうが、無用な誤解を避けるのに役立つと思いますが。

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2011年05月25日

編集、帰って店番

今朝、明古七夕の目録作り二日目で会館へ。一人で作業を続けていると、見かねて仲間が手伝ってくれました。少しだけ年下のこの同僚、毎月のように自家目録を発行していて、割付などはお手の物。

もともと点数自体は、他の分野に比べて少ないので、瞬く間に片付きました。これで担当作業は終了。難航する他の分野では、明日また出て来なくて済むよう、残業覚悟で作業を続けています。それを尻目に、お先に帰ってきました。

ただし宿題付き。今年のテーマ企画「大正100年」のための、リード文を考えなければなりません。それでも、明日がオフになったので大助かり、甘んじてHome Workを引き受けます。

RIMG3318


「蚊がいる、蚊がいる」

元気そうなお子さんを連れたお母さん。表の絵本を見ようとしていましたが、そう言って早々に退散されました。お子様連れではゆっくりご覧になれないと、気づかれたこともあるかも知れません。

確かに、先日、急に暑くなってから、帳場にも蚊の襲撃を受けるようになりました。今日など、好天でもさほど気温は上がりませんでしたが、それでも飛んできます。

そういえば、去年購入した「蚊のブラックホール」。あれは全くの役立たずでした。蚊柱が立っているようなところでなくては、効果がないのでしょう。

結局、例年通り、除虫菊の蚊取り線香を炊くしかなさそうです。そろそろ準備しなくては。


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2011年05月24日

また日は昇るか

午前中は昨日からの雨が続き、気温も低い。まだ終わずにあった厚手のジャケットを着て、古書会館に。

洋書会は、4階会場八分目の分量。しかし医学書、経済書など小店の得意としない分野が多く、入札には至りませんでした。

RIMG3304毎週一緒に開催している東京古典会が、今日は「皐月祭り」と称して、大市に準じるような市。3階会場に加え、特別に地階も使用して、大がかりに催していました。

一通り見学させていただきましたが、縁なき衆生の悲しさ。赤い毛氈を敷いて陳列されている古典籍類の、高価そうなことは感じられても、あれとこれと、どこがどう違い、どちらがどう貴重なのか、皆目判断がつきません。

折から今夕、古典会の主催による講演会があり、その演題も「江戸の書誌学」。熱心な本屋なら、機会を逃さず参加するのでしょうが、ぐずぐずしているうちに予約で満席。立ち見で覗くくらいは出来るのですが、冷やかし半分では失礼な気もして、結局、早々に店にもどりました。

古典会の講演会は、今年百周年を迎える記念行事の一環。11月の記念大入札会へ向けて、色々と企画されているようです。洋書会の方は既に2年前、ささやかに100年を祝っています。祝いの規模の大小は、まさに現在の両市会の規模の差。

現状の扱い高では格段に差がある二つの会ですが、同じように長い歴史の間には、洋書会が他のどの会をも圧して、大きな出来高を作っていた時期もあります。

有為転変は世の習い。我が会が、いつかまた隆盛を迎えないとは、誰にも断言できません。

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2011年05月23日

頼りない地図担当

RIMG3302今週は、古書会館へ日参することになりそうです。

今日は、明治古典会七夕大入札会の目録編集初日。といっても既に、目録編集を統括する会員によって、集まった原稿は整理され、分野別に分けられています。

その各分野を担当する会員が、それぞれの持分を点検して、原稿の書き方、その内容などをチェックします。ここで、入札会に相応しくないもの、または設定価格が高すぎるもの、安すぎるものについても検討します。

店主の担当は、昨年までと同じく「地図」分野。今日その席について、改めて先輩の不在に気づかされました。

地図専門店として知られた今井忠敬堂、その人あってこその七夕の地図分野でしたが、昨年の入札会を終えると、燃え尽きるように他界されてしまったのです。

氏の指図のまま、全く専門外の分野を十年以上担当してきて、今回初めて、その導きなしに編集に携わることになります。

辛うじて習得したのは、順番の付け方。和製世界図、日本図から始まり、北から南へ各地の地図。それぞれは、広範囲なものから局部的なものへ。同じ地域のものであれば古いものから、新しいものへ。

もう一つの軸は普遍的な地図から特殊図へ。こうした基準をもとに、数多ある地図を目録に並べて行きます。しかし本当に肝心なのは、それぞれの地図の持つ価値の見極め。

反町さんから道を示され、忠敬堂という名も与えられ、一筋に専門を貫いた今井さん。その先輩を偲びつつ、遂にそこから何も学ばなかったという後悔と共に、初日の仕事を片付けたのでした。

曇り時々雨、また足元用のヒーターを出しました。

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2011年05月22日

gaya scienza

予報を律儀に守って、午後三時頃から雨。気温もすっと下がりました。

ちょうど降りの強くなった頃「駅に着いたのですが」と言う電話。昨日、在庫のお問い合わせがあり、今日、取りにお出でになるという女性。声やお話の様子から、学生さんのようです。

道案内をして二、三分後、ご来店になりました。折り畳み傘を小さく畳まれているので、「濡れなかったですか」と聞くと「足元がびしょびしょです」。

早速取り置いた本をお出しすると、「古本屋さん、初めなので、少し見ていいですか?」。それからしばらく熱心にご覧になり、「何時間でも居られますね」と、安価なものながら6冊ばかり追加されました。

古本屋に関心をお持ちいただいたようで、この本はどこから仕入れるか、各店それぞれ専門が違うのか、次々とご質問。授業で指定された本が版元品切れで、偶然『日本の古本屋』を見つけ、小店にあることが分かったと、ご来店までの経緯もご説明くださいました。

更に、いろいろな授業が面白く、あれこれ興味が広がって学校が楽しいと、衒いなくお話になります。最近受けた「ジャズ社会学」と言う講義では、アメリカ人の講師がブルースについて語り、聞きたくなって、すぐTSUTAYAに行って探した。そんなことまで。

好奇心に満ちた時期には、きっと多くのものを吸収できることでしょう。ちなみに駒場の学生さんではありません。
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お取り置きした本は『空虚な楽園 : 戦後日本の再検討』(ガバン・マコーマック、みすず書房、1998年)でした。

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