2011年06月

2011年06月30日

金持ち喧嘩せず

先だっての、南部地区大市会のお話です。荷物が増えたため、別会場を手配しました。五反田駅から程近いビルの8階、40坪ほどの貸し会議室です。

明日が本番という夜、激しい雨が降りました。たまたま窓際に立てかけておいた本が、窓枠からと思われる雨漏りによって、濡れてしまいました。

翌朝、入札しようとした業者が、それを発見して、ひと騒ぎになりました。最低でも50万円から入れようとしていたという、高価な本だったからです。既に何枚か札が入っていて、それは昨日のうちつまり濡れる前に入札されたものです。

運営者により、この出品はひとまず取り下げられることになりました。濡れて価値が変わり、公正な入札が出来なくなると判断したからです。さらに、これについて施設の貸主に対し、何らかの対応を求めました。何もできないという返答だったといいます。

治まらないのは市場の運営者たる南部支部事業部です。組合の顧問弁護士さんに相談しました。弁護士さんは、非は先方にあると明快です。説明書にも契約書にも「雨漏りがする」とは書いてないでしょ、というわけです。

被害額の弁償を請求するなら、お手伝いしましょうとまで言ってくださいました。請求額から考えて、殆どお金にならない仕事だというのに。

さて、実際に被害を受けたのは、その本の持ち主です。事の経緯を報告に行ったところ、もう他の本で充分儲けさせてもらったからこれはこの状態で再出品していただければ充分とのお返事。

RIMG3552そう言われてしまうと事業部も、勝手に動くことは出来ません。拳の上げどころを失って、困惑しているところでしょう。

今日で6月も終わり。今月の小店の低調を思うと、まるで別世界の出来事を聞くようです。

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2011年06月29日

高級すき焼き

RIMG3539洋書会は昨日で、役員の任期が終了。7月からは新役員体制で始まります。その区切りとして、市会が終ってから、会員全員で打ち上げの食事会をいたしました。

場所は人形町の「日山」、高級すき焼き割烹です。仲居さんが手際よく焼いてくれて、それをいただくだけ。だから飲みながら、食べながら、話も弾みます。量も充分でした。

随分と贅沢なようですが、これがいわば一年間のお駄賃。わが洋書会は本部交換会の中では現在もっとも規模が小さく、組合から支給される業務費の額も僅かですから、日頃は遣り繰り算段。色々な支出を切り詰め、ようやく捻出した晩餐なのです。

なにしろ、会の運営は会員が三班に分かれて当番制で当たり、実際に肉体労働を行っています。他の会なら、お手当てを出して若い経営員を雇うところ。

つまり洋書会は、会員が交替で経営員の仕事をこなしているわけで、年に一度や二度、少し豪勢な食事をするくらいの事は、誰にも咎められないでしょう。

役員の任期は終ったと申しましたが、この経営員代わりの当番は、会員である限り三月に一度ずつ巡ってきます。7月からはまた、店主は当番月。朝から出かけて市場の準備をすることになります。

それぞれ一国一城の主が、朝から手弁当(実際は弁当だけは出ます)、お手当てもなしに働くのは、洋書の市場を続けることに強い使命感を持っているから。そして時々は、掘り出し物に出会えるから。

年に一度のすき焼きで、充分満足しております。

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2011年06月28日

海賊の子孫

最近の読書は、一日のうち5分、10分という短い時間で読み継いでいくことが多くなっています。

色々目移りしていくうち、読みさして忘れてしまう本も沢山ありますが、これは多分、読み始めてから一月ほどもかかったのではないでしょうか、それでも読みとおすことができました。

『日本史の旅2・謎の日本海賊』(祥伝社NON BOOK、昭47)という一冊。奥付に「『ノン・ブック』とは」という刊行趣旨(昭45)が書かれています。「既成の価値に対する不安と疑い」「まさに”否定(ノン)”の時代」など、確かに時代色濃厚。

店主がこの本に目を留めたのは、その題材が瀬戸内海の海賊を扱ったもの、即ち我が姓に所縁のある話だからという事がありました。さらにその著者の一人が、奈良本辰也さんであったことも、興味を引かれた理由です。

今ではあまり見かけることがなくなった名ですが、当時は京にあって史学者としての知名度は全国区。著者略歴から辿ると本書刊行時59歳、改めて筋金入りのリベラリストであったのだと、あの頃の学生への接し方を思い出して感じます。

奈良本さんはまた、中学生の山田風太郎を教えた先生としても知られています。歴史から奇想を得る術は、このRIMG3551本にも随所に見られ、忍法帖の原点がそこにこそあるように伺われるのは、穿ち過ぎでしょうか。

わが祖先が、果たして栄光(?)の河野水軍と繋がるかどうかは、まったく定かではありません。しかし想像するのは勝手。そこにこの読書の、一番の楽しみがあったのでした。

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2011年06月27日

明古七夕目録

meiko明治古典会七夕古書大入札会の目録が刷り上ってきました。

今年は大正の元号で数えるとちょうど100年。というわけで、入札会としては珍しい試みをしています。

大正にまつわる書籍、資料を特集として目録編集、さらに下見展観においては、特別コーナーを設けて展示しようというものです。

どんなものが集まったかは、実際にご覧いただくのが一番、と勿体を付けておきます。ともかく企画を実現するまでには、なかなか苦労もありました。

谷間の時代と思われ、地味な印象をもたれがちな大正ですが、西欧では新しい文芸・美術運動の興隆期に当たり、いち早くそれを取り入れようとする動きなども見られます。

しかしその辺りの関連文献は、もともと稀少性も高く、めったに市場にも現れません。

通常の展覧会とは異なり、商品として取引されるものを出さなければならないという制約上、そうした稀覯品は、よほどめぐり合わせが良くなければ集まりません。

それでも全体の四分の一近く、約500点が大正特集の中に納まりました。偏りや、欠落があるとしても、これもまた一つの大正世界です。

さて早速、ご興味を持ちそうなお客様に、この目録をお送りしようと思います。といっても小店がお送りするのは、いつもごく僅か。さらに僅かが、手元に残ります。

ご希望の方にお分けしていますので、ご来店、あるいはメールででもご請求ください。ただし品切れの場合は、ご容赦を。

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2011年06月26日

おねだりしたよう

ebinaどこから情報を得たのだったか、本人と市場で顔を合わせたときつい「本、出したんだって?」と声を掛けてしまいました。催促したような形になって、今日、その本が届きました。

『えびな書店店主の記』(蝦名則、四月と十月文庫、2011年6月)、文庫判を一回り大きくした、173頁の瀟洒な本です。

生まれ年も同じ、組合に入ったのもほぼ同時期。一緒に理事会で機関誌を担当したこともあります。つい親しげな口を利いてしまうのも、そんなところからです。

しかし同じ年月を古本屋として過ごしてきて、彼我には随分と大きな差が出来てしまいました。

片や年四回、美術専門書目録を発行し、貴書珍本、時には美術品まで扱い、合間にご夫人と国内外に旅行する優雅な暮らし。同年代に限らず、創業組の成功事例の一つです。

一方小店はといえば、未だ自家目録の一冊も出せず、人に誇れる専門分野も持てず、かといって店を繁盛させることも出来ないまま、今日に至っています。

しかし、ただ羨んでいるわけではありません。彼には彼なりの多くの苦労があるはずで、それも含めて、敬意を抱いているのです。翻って、自らの来し方についても、決して悔やんでいるわけではありません。

ともあれこの本は、そんな彼の自家目録「書架」に書いた編集後記を中心にまとめられたもので、還暦の記念でもあるとか。

日頃、挨拶と冗談くらいしか交わさなくなった旧知の同業の話に今夜は静かに耳を傾けてみようと思います。

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2011年06月25日

演劇百科大事典

昨日の夜は、久しぶりに明古の仲間と食事をしたのですが、低価格で人気急上昇中の中華料理店。

とても愛想の良い中国人女店員オススメの「もち米シュウマイ」というのが、なかなか面白い味でした。肉ではなくチマキのようなもち米が入っていて「上海ではシュウマイといえばこれ」とか。

4人で飲んで食べて(といっても店主はお茶のみ)、合計1万円でお釣りが来たのには、驚かされると同時に、競争の厳しさを感じました。値下げ競争は、他人事ではありません。満腹、満足の一方で、なにやら身につまされた次第です。

RIMG3499この間の洋書会で手に入れた一つに
Enciclopedia dello Spettacolo.
Roma: 1954- 11 v. があります。演劇百科事典としては、今でも最大のものです。

20年ほど前、フランスの古書店から当時の1万フランで購入し、何年もかかって、それでも38万円で某大学に納めたことがあります。それに比べると、多少痛んではいますが、驚くほど安い値段で落札できました。

店に戻ってからネットで調べてみると、現在の海外最安値は6万円台になっています。幸いその値段につけても儲けは出ますが、果たして売れるかどうか、心もとなくなりました。

この事典自体の価値が、それだけ下がったとは思いません。現に国内のあるイタリア古書専門店では、現在でも数十万円の価格が付いているのです。

しかし中華の値下げに比べると、なんだか元気の感じられない、こちらは「値下がり」でしょうか。

konoinfo at 18:12|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2011年06月24日

エイゼンシュテイン(Эйзенштейн)画集

RIMG349345cmx34cmという大きな台紙に、A4版ほどのカラー図版が貼り付けてあり、それが1巻あたり25枚から30枚、たとうに納められて全3巻。タブロイド紙のような6〜12ページの解説がそれぞれについて、刊行年が1968年から1971年、刊行地はモスクワ。

表紙の文字から、これがエイゼンシュテインの本だと分かります。戦艦ポチョムキンで映画史に名を残すあの監督です。中を開けて見ると、彼のスケッチ集でした。

遥か昔に、山口昌男さんから「エイゼンシュテインの画集はありませんか」と尋ねられたことがあり、つい札を入れると落ちてきてしまいました。この間の南部地区大市会でのことです。

これがそのお尋ねの本だったかどうか分かりません。仮にそうだとしても、現在は、お勧めする状況ではなさそうです。

何しろ、生涯に書いたスケッチが、2000枚ほど残っているとも言われます。色々調べてみると、その後展覧会なども開かれ、もう少し網羅的な画集も出ているようです。

それでもこの本についての情報は、インターネットで調べても、日本のwebcatくらいでしかお目にかかれません。買値もそこそこ張りましたので、セットで3万円付けてみました。

付けたは良いが、「日本の古本屋」に上げようにも、ロシア語が入力できません。日本語で適当に邦題をつけ、とりあえずアップするつもりです。

ふと、ここに切り貼りして文字を入れるとどうなるだろう。それが、今日、この本(画集)を取り上げた動機です。

Рисунки разных лет / Театральные рисунки /
Мексиканские мотивы. Эйзенштейн.

なんとも便利になりました。


konoinfo at 22:08|PermalinkComments(0)TrackBack(0)本の話 

2011年06月23日

古本屋体験

中学生(だと思います)の三人組が店に入ってきて、しばらくもじもじしたあとで一人が「あの、デカメロンはありませんか?」と尋ねました。

店主、間、髪をいれず「残念ながらありません、ついこの前にも聞かれたから確かだよ」と答えました。

三人、賑やかに「あーそうなんだ」「他にも来てるんだ」「やっぱり」などと言い交わしたあとで「先生の紹介も、変だよな」と結論して帰って行きました。

思うに生徒たちに「古典を読みなさい。ついては『デカメロン』なんかが手頃だろう」とでも話された後、小店のことをご紹介くださったのではないでしょうか。

確かに生徒さんのいうことにも一理あります。古本屋の在庫は、一点につき一冊以上あることの方が稀。誰かが来て買ってしまえば、その他の人の手には入りません。

しかし先生には先生なりに、この機会に古本屋というものを覗いて来いという、有り難いご配慮があったのかもしれません。

まあ、古本屋の親父と話したという経験が、これから先、少しでも敷居を低くすることになれば、将来の顧客へと繋がるかもしれません。期待しましょう。

RIMG3488


夕方、通夜に上野寛永寺まで。世話になっている業界の先輩がお連れ合いを亡くされて。お辛さは痛いほど伝わってきます。往復二時間半かけて一瞬のお焼香、それがせめてもの弔意です。


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2011年06月22日

版表示

理想社の『ハイデッガー選集』が何冊かあって、データに取ろうとして、その版表示がマチマチなのに気づきました。

例えば、第4巻『アナクシマンドロスの言葉』の昭和43年刊は「4版」、それに対し第9巻『形而上学入門』の昭和41年刊は「第1版第3刷」。

書誌学の本などを見ると、しかつめらしく「版と刷」の違いなどを説明していることがありますが、所詮、呼称などは後から付いたものですから、それを版と呼ぶか、刷と呼ぶか、各々の流儀があっても構わないと思います。

しかし流儀は流儀で通していただかないと。その場の思いつきで「版」としたり「刷」としたりでは困ります。古い話ですから、現在は統一されているでしょうか。

この「版と刷」、外国の例を見ても、各国、各出版社で用法はかなりマチマチです。それだからこそ、書誌学的には厳格に定めておきたいという、いわば希望が述べられているのでしょう。

実際にフランスのeditionは、多くの場合「刷」の意味で使われていますし、スペインやイタリアの本も内容に変わりのない第2版、第3版を良く見受けます。

一方で、版権取得年の表記だけで、実際の刊行年が表記されていない本も、欧米には数多くあります。この辺りの彼我の事情の違いについては、不勉強で分かりません。

RIMG3496そもそも「初版」や「第一版」という表記も、考えてみれば不要なはずです。重刷、改版の場合さえしっかり表記すれば済むのですから。みすず書房や新潮社などは、そんな考えが伺えます。フランス書の多くもそうですね。

晴れて、暑い日でした。

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2011年06月21日

大物学者の蔵書

RIMG3494梅雨の晴れ間。今朝まで降っていた雨が上がり、雲の合間から時々日が差し、蒸し暑い中を古書会館へ。洋書会です。

ほどほどの出品量ですが、二口ほど面白い出品がありました。一件は日本関係洋書。古いものもあって、封筒の膨らみ具合を見てもなかなかの人気です。

店主は初めから入札もせず、不戦敗。人気の高さに怯んだともいえますが、一口に日本関係といっても色々な分野があります。今日のところは、多少、小店の欲しいものと筋が違ったということです。

もう一口はイタリア関係。文学、語学、美術など。聞くところでは、イタリア語を学ぶ人なら、知らなければモグリというほどの大家の旧蔵書。

店主も気を入れて見ました。しかし、その大家にしては質量とも物足りません。おそらく目ぼしいところは、図書館やお弟子さんが既に抜き取られた、その残りだったのでしょう。

揃えば高額な辞典類が、一冊、二冊と欠けていたことからも察しられます。

それでも、そういう中からも珍しいものを見つけ出すのがプロ。ファシズム関係の雑誌などがまとめられ、それだけで他の本、何百冊をあわせたほどの金額で落札されていました。

こちらの口には二点ほど、店主も札を入れました。くだんの、揃っていれば高価な辞典類です。上手く落札出来ました。揃わないこともなさそうですので何とか揃えるか、このまま格安で売るかが、迷いどころ。

ただ大きなもので、場所塞ぎなのが厄介です。

konoinfo at 19:42|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
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