2011年11月

2011年11月20日

お受けとめ

RIMG0625TPPというのがどんなものであるのか、今ひとつ良く分からないのですが、賛成、反対が大きく対立していることだけは伝わってきます。

自分なりの意見を持ちたいものだと、先日、NHKの討論番組を、つい見てしまいました。見終わっても依然として、良く分からないことに変わりないのですが。

大雑把に言えば農水省が反対、経産省が賛成という構図。それくらいは、新聞記事などからでも知ることが出来ます。

ただ双方、農業や保険医療が潰れて良いとは思っていないし、不況を克服できなくとも良いとは思っていません。しかし賛成派は反対派の懸念を払拭できない、反対派も賛成派の危機感を解消できない。深刻なジレンマです。

元官僚二人、学者一人、政治家二人という討論会でしたが、政治家の言葉がどうしても軽く聞こえてしまうのは、店主の偏見でしょうか。あるいは単に若そうだから。それもまた偏見ですが。

自由化で日本の農業が壊滅するという反対派の主張に対し、一番極端な状態を想定した試算でも、15%は残るから壊滅などありえない、と一人の政治家が反論したのは、さすがにご本人も後で反省したでしょうから、咎め立てしません。

けれども最後に話をまとめるように「ご意見を、しっかりお受け止めさせていただいて、慎重に進めてまいりたい」と話すのを聞いて、やはり不安が拭えませんでした。

「全ては交渉に掛かっている」というのが推進派の論拠なのに、その交渉力(のもとになる表現力)こそが、一番の弱点に見えるのですから。

今朝一件の宅買があり、それが交渉術をご専門とされた方のお宅。そこからつい、柄にもない話になりました。

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2011年11月19日

羨むなかれ

RIMG0631こんな雨の日にも、傘を差して行列を作っていました。つけ麺、恐るべし。

夜は売切れ次第終了らしく、連日、早い時間に閉店しているようですが、一度で良いからそんなことをして見たい。

戦後間もない頃からしばらく、古本屋の世界にも、それに近い状況はあったようです。といってももちろん完売というわけではなく、棚が空いて本が倒れるという程度。

市場に行って仕入れるのも間に合わないほど売れた、という話が昔の『古書月報』(東京古書組合の機関誌)に載っていたのを、読んだ覚えがあります。

この『月報』は、創刊から現在まで全て揃ったものが製本されて組合に備えてあります。貴重な業界の資料であると同時に、組合の財産です。

もうひとつ、全国版の機関紙もあり、『月報』と合併した時期もあったり、名称も変ったりしながら、やはり長く続いています。現在の名称は『全古書連ニュース』、こちらは東京組合に保存されている分にも欠号があり、完全には揃っていません。

これらを見ると、大づかみではあっても業界の歴史を辿ることができます。歴史といえばもうひとつ『東京古書組合五十年史』も忘れてはなりません。

『五十年史』発行は昭和49年。しかし組合創立は大正9年、つまり1920年ですから、100周年までは、あと9年。今年の組合総会で、『百年史』の準備を始めたらという、先輩組合員の提言がありました。

  *     *     *     *

夕方から雨風が強まり、表の棚が濡れるので、中へ仕舞い込むと、まるで閉店したよう。つけ麺屋さんを羨んだ報いでしょうか。

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2011年11月18日

市場にいたのに

一昨日のブログに、珍しく反応がありました。それも二件。

一つは、お客様からコメントに。もう一つは同業からハガキで。どちらも林達夫の文章が書かれた時期を、お知らせいただいたものです。

迂闊にも、もっとずっと後の時代に書かれたものと思い込んでいました。まさか円本批判であったとは。今思えば、確かに血気盛んな書きよう。

いずれにせよ、まともに読んでいない証拠です。と同時に、現在に当てはめてさえ通用してしまうところに、哀しさを感じます。

それにしても身近に読者がいると知ることは、嬉しいことではありますが、とても面映くもあります。コメントをいただいたのは、著作集をお買上げいただいたご当人。

また同業の方は、今日も市場で顔を会わせ、挨拶だけ交わしました。ハガキを目にしたのは夜、店に戻ってから。また読んでくれることを頼りに、この場でお礼を言っておきます。

今日は明治古典会で、大量の出品がありました。しかし午後から長い会議に入り(その間に別の用件が二つほどあり)、まともに入札も出来ませんでした。

冷やかし半分で札を入れ、落札した洋書を、RIMG0624後から調べてみたら随分と高額で売られているものだったと、嬉しさより、戸惑いの勝った口調で話してくれた業者がいました。

市場には、そんなこともあります。

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2011年11月17日

いらんかね

RIMG0629「あのねえ」と大きな声。

どすどすと音を立てるように入ってこられた、かなりご高齢の男性。片耳に補聴器が嵌められ、大声はそのためでしょう。

「吉川英治の」、間を置いて「平家物語」、そう言うと大きさを示すように手を広げられました。

「どうかね、買うかね」
「ちょっと難しいですね」
「難しいというのは、買わんということかね。文庫なら買うのかね」
「そうですね、今時お読みになる方は皆さん文庫ですから」
「そうか、じゃあ持ってきても無駄ということか」
「残念ですが」

少し憮然としたご様子で、体を真っ直ぐにされると、くるりと踵を返し、また一足ずつ踏みしめるように、しっかりした足取りでお帰りになりました。

ちなみに吉川英治の『新・平家物語』は、実に多くの版が出ています。webcatで検索しただけでも、文庫本や全集版まで含めると10種類以上が見つかりました。

「難しい」とお返事申し上げたのは、その点です。何年頃に、どこの出版社から出たものかをお尋ねして、すぐにお答えが帰ってくるとも思えません。

しかも、豪華限定版か、著者の署名でもあるかしない限り、殆ど評価の対象になりません。気を持たせるようなことを申し上げて、わざわざお持ちいただいたうえで、やっぱり値がつきませんというのは申し訳ない。

敢えて、ご説明しなかった所以です。

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2011年11月16日

石鹸に驚く

この数日、石鹸によるアレルギーで健康被害が出たというニュースが新聞を賑わしておりました。

驚いたのは、その販売数。延べ約470万人に対し、約4600万個を売ったといいます。一人が繰り返し、何個も購入する場合も多く、一概に本とは比較できませんが、相当な数であることには違いありません。

しかも、店主などは聞いたこともない名の石鹸です。それが驚かされた理由でした。

話は少し違いますが、林達夫は「書籍の周囲」(著作集第6巻所載)のなかで、本の粗製濫造ぶりを、堕落として嘆いています。大量生産品と比べるなど、もっての外のことでしょう。

何時ごろ書かれた文章だったのか、確かめたかったのですが、ちょうど昨日、林達夫著作集が売れてしまいました。ヤケがあったので、格安で表の棚に並べておいたものです。

一期分6冊揃、一冊は函も欠けていましたが、お買い上げのお客様には大層お喜びいただけたようです。

その林達夫自身、学殖に比して少ない著作しか残さなかったと思われるのは、書物への畏敬があったからでしょうか。

RIMG0622午後から神田へ向かうため井の頭線に乗ろうと駅の階段を上がると、混雑するホームに、蓮実さんの姿をお見かけしました。

下校時刻の高校生たちが多かったとはいえ、大学生らしい姿も見かけたのですが、誰一人気づく様子もなく、先生、一人静かに改札口へ下りていかれました。

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2011年11月15日

All my trials

RIMG0597朝一番にパソコンを開くと、注文メールが何通か入っておりました。その一つに12000円の洋書。

小店にとっては高額注文です。やれ嬉しやと、早速在庫を確かめに保管場所へ行きました。どの棚の何段目と登録されている、その段を端から見ていきます。

一度で見つからず、もう一度。さらに二度三度。繰り返し本の背を追うのですが、何度見ても有りません。

登録時(2010年4月)、場所を間違えて入力した可能性についても考えてみましたが、同時にまとめて収納した他の本は、そこにちゃんと並んでいます。

いやな予感がしてきました。売れてしまったのに、在庫データを消し忘れたのでしょうか。無いことではない、どころか、恥を申せばしばしばあることです。

昨日も、店で売れたと思ったら、すぐそのあとメールでご注文いただいたというケースがあったばかり。

売り上げが幻と消えかかり、悄然となって販売データを調べました。しかし該当する事例は見当たりません。最後に念のため、過去のメールを書名で検索してみました。

すると、2010年8月に届いていたメールが一通、見つかったのです。本の状態を問い合わせる内容です。

確かな記憶はないのですが、このメールに応じるため本を抜き出して調べたかもしれません。そのあと、どこか別の場所へ差したかも。悲壮な決意で棚を端から探し始めました。

試練はここまででした。幸いなことに程なく見つかったのです。気が付くと、一年前のメールの主が、今回のご注文者でした。

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2011年11月14日

今夜のおかず

今年もカレンダーをお配りする季節になりました。

RIMG0621今回は中世装飾写本『ケルズの書』が用いられています。いつものごとく、店頭でのお買上げ3000円以上の方と、ご常連の方(自認で結構です、お申し出を)に差し上げております。

これも例年のことですが、数に限りがございます、どうぞお早めにご来店ください。

お昼前、母子に付き添ってきた若いお祖母さんが、絵本などをまとめてお買上げ下さいました。

丁度、手元に置いた分が切れてしまっていて、たまたま立て込んで裏へ取りにもいけず、カレンダーお渡しできずじまい。残部のあるうちに、またお越しいただけると良いのですが。

絵本や料理本は、出る日出ない日、不思議に波があります。今日は絵本・児童書が割合好調。といってもポツリ、ポツリですが。

小学校低学年の女の子とお母さんは、二人で別々に本選び。お子さんの方はさっさと児童文庫を二冊選びました。お母さんは時間がかかっています。

やがて焦れたように「ねえまだ買わないの?」と女の子が言うと、お母さん「ちょっと待って、今このレシピ覚えてしまうから。今夜これにしよ」関西訛りに、憚る様子はありません。

やがて頭に入ったのか、文庫一冊とお子さんの二冊、帳場に持ってこられました。

「おいしい肉じゃがを作ってくださいね」などとはもちろん、口に出して申し上げたりはしませんでした。

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2011年11月13日

ふけさめ

男では書けない文章がある。何の気紛れからか幸田文『父・そんなこと』(新潮文庫)を読み、改めてそう感じました。

語られている内容はともかく、使われている語彙の豊富さ。その一つ一つに、まるで祖母の話を聞いているような、不思議な懐かしさがあります。

「せんから」「間がな暇がな」「膝が踏み立たない」「ひぞりごと」、聞き覚えのある言葉も、聞いたこともない言葉もありますが、いずれも平仮名で響いてくる。

つまり目で知った言葉ではなく、耳から覚えた言葉のよう。そんな印象から、文字を知らなかった我が祖母を思い出したのかもしれません。ちなみに「ひぞりごと」は拗ねて言う無理、といった意味らしい。

このあたりまでは広辞苑でも引けますが、「この人の訪問にはふけさめということが無く続いた」というところの「ふけさめ」は引いても出て来ません。

日本国語大辞典(小学館)に辛うじて載っていて、しかもまさにこの部分が文例として取られている、とネットの情報で知りました。やはり気になって調べた人がいたわけです。その意味は「蒸冷−気分にむらのあること」とか。

しかし、もうひとつ気になった言葉「せしめの利いたバランス」と使われる、その「せしめ」。これは未だ調べがつきません。

意味なぞ分からなくとも、伝わってくるものはあります。そのような伝わり方に、あるいは懐かしさを感じたのでしょうか。

RIMG0618若者の、家族の、グループが多い日でした。数人で表を通りかかり、誰かが店に目を留め、「古本屋だ」といって通り過ぎる。昼間はそれで賑やかでした。

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2011年11月12日

普通では手に入らない

店の裏で仕事をしていると、「こういう本をお探しだそうです」と、ミセスCがメモを持ってきました。

表に顔を出すと、店主より少しばかり年嵩のご婦人がお待ちで、「ホームページを見てきました」と仰います。

確かに在庫している本ですが、在庫場所が少しばかり奥まっています。少しだけお待ちいただいて、裏の移動棚の一番奥から取り出してきました。

本をお渡しする時になって、ふと気になったのはそのメモ。小店にはいくらもある用紙ですが、今、この場で書いたとは思われません。「これはお客様がご持参されたものですか?」「はい」「この紙はどこで手に入れられたのですか?」

RIMG0595そのメモが書かれていたのは、古書組合でふだん使っている入札用紙だったのです。

ようやく先様も質問の意味に気づかれた様子で、「実は息子が古本屋をやっておりまして」。話を聞いてみれば、ごく懇意の同業者のお母様でした。

いつの間にか店を手伝われるようになり、今回も、お客様から頼まれた本を、別のご家族がインターネットで探したところ、小店にあることがわかって、足をお運びいただいたそうです。

息子さんである同業者は、店主より二回り近く年若い同僚で、市場では毎週顔を合わせています。そういえば、実家が小店に近いと聞いておりました。

仕事のし過ぎではないかと案じられるほどの頑張り屋ですから、お母さん、きっと見かねてお手助けを始められたのでしょう。

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2011年11月11日

古典会下見展観

RIMG0598朝から雨。気温も上がらず、12月上旬並みとか。

店を開けても、お客様の気配すらありません。ミセスAに店番を託して、雨の中を古書会館へ出かけることにしました。

古典会大入札会の下見展観初日です。100年記念の謳い文句が効いたのか、会館に着くと中々の賑わいよう。傘を預かるためクロークが混雑し、てんてこ舞いの様子です。

会場内も、雨天をものともしない、熱心な来場者で混み合っていました。

店主のような冷やかしはあまり見当たらず、大抵は目当てのものがあるようで、一つところに留まって、じっくりと書物を検分する姿が目に付きました。

それでも約2500点という展示品は、一回りざっと見るだけでも小一時間。途中、地階に設えられた休憩室で、同業とコーヒーなど飲みながらお喋りをしたこともあって、店に戻ると午後2時を過ぎていました。

これまでも、おそらくこれからも、まず小店には縁のない古典籍を見に、わざわざ出かけるのは、益の無いことだったかもしれません。

しかし、最低入札価格10万円の書物が所狭しと並ぶ様、それを真剣に品定めする顧客の姿に、この業界の一つの極が示されていたことは確かです。

店に戻って、予期したとおりの閑かさの中で、古本屋という商売について、今さらのように考えさせられました。

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