2012年01月
2012年01月21日
雲山万畳
最近になく、早く読了した本があります。松岡正剛著『白川静 漢字の世界観』(平凡社新書、2008年刊)です。
以前から白川静の学問に漠然たる興味を持ちながら、時折、その著作を手にして読み始めても、そのとば口で挫折することを繰り返してきました。
要するに、こちらの教養が決定的に不足しているためです。
世に碩学といわれる人々の著作にも、一つや二つ、一般向けに書かれた本があって、そうした本なら素人でも何とか読めるものですが、白川の場合は、そういう手がかりを見つけられずにおりました。
当人が入門書を書いていない場合は、誰かの評伝が頼りになるものですが、本書のあとがきによれば「白川静についての本が、研究書だけでなく、世の中に単著も新書も一冊もないとは驚き」という状態だったらしいのです。
手に入るまで読まないところが、古本屋の読書ですが、いわばそうした積年の渇きをいやす本だったことが、短時日で読み終えることができた理由でしょう。
さてでは読み終えて、何が分かったのでしょうか。ぼんやりと大きな山だと思っていたものが、確かに巨峰であるらしいと、その程度のことに過ぎません。
ここでもやはり、当方の教養が不足しております。芸術を受容するのには、感性だけでも足りるのですが、学問を受容するためには、方法が必要です。
ガイドブックを読むためにも一定の基礎知識が不可欠。最後に引用された文中の「雲山万畳」という言葉が、胸にしみました。
雨の土曜日、読書家は店回りをやめて、ネット探書に向かった様子。
以前から白川静の学問に漠然たる興味を持ちながら、時折、その著作を手にして読み始めても、そのとば口で挫折することを繰り返してきました。
要するに、こちらの教養が決定的に不足しているためです。
世に碩学といわれる人々の著作にも、一つや二つ、一般向けに書かれた本があって、そうした本なら素人でも何とか読めるものですが、白川の場合は、そういう手がかりを見つけられずにおりました。
当人が入門書を書いていない場合は、誰かの評伝が頼りになるものですが、本書のあとがきによれば「白川静についての本が、研究書だけでなく、世の中に単著も新書も一冊もないとは驚き」という状態だったらしいのです。
手に入るまで読まないところが、古本屋の読書ですが、いわばそうした積年の渇きをいやす本だったことが、短時日で読み終えることができた理由でしょう。
さてでは読み終えて、何が分かったのでしょうか。ぼんやりと大きな山だと思っていたものが、確かに巨峰であるらしいと、その程度のことに過ぎません。
ここでもやはり、当方の教養が不足しております。芸術を受容するのには、感性だけでも足りるのですが、学問を受容するためには、方法が必要です。
ガイドブックを読むためにも一定の基礎知識が不可欠。最後に引用された文中の「雲山万畳」という言葉が、胸にしみました。
雨の土曜日、読書家は店回りをやめて、ネット探書に向かった様子。
2012年01月20日
宴果てたのち
朝の雪で、車で出勤することに決め、娘たちも一緒に乗せて店に出ました。
夜まで降り続いて、積もるようなことがあれば、車は店に置いたまま、新年会でゆっくり飲んで帰るつもりでした。
ところが夕方にはほぼ上がっていて、車の運転に支障はなさそうです。そこで本日は飲まないことにいたしました。
今夜の新年会は、12年前の理事会メンバーの同窓会です。当時の理事長を初め、下戸の人も多い。飲まないことに、さほど苦はありませんでした。
会場は小学館ビル地下の「レストラン七條」。なかなか人気の店で、お昼はいつも行列。夜も予約なしではほぼ入れない。予約も今夜のように14人という規模だと、なかなかとるのは難しい。
確かにそれだけのことはあります。売り物のエビフライはもとより全体に美味しくて、しかもボリューム充分。それでいて価格がリーズナブル。七條コースというのを頼んだのですが、一人当たり約5000円弱。
コースは前菜と主菜とデザートを、それぞれ数種類ずつの中から、各自が事前に選んであります。実際の食事では他にアミューズ、エビフライ一匹が、共通メニューとして出されます。
ちなみに店主は前菜に「自家製ハムのアスパラ添え」、主菜は「本日の魚料理」、デザートは「イチゴのタルト」を選びました。ハムとタルトは二重丸。魚料理(名を聞き逃しましたが黒ムツをスパイシーな油で揚げたもの)がやや不満。
といっても、他の主菜を食べ較べさせてもらった結果です。和牛ほほ肉のワイン煮やら、肩肉のシチューの方が、ずっと美味しかった。組み合わせを変えて、再挑戦して見たい気分でもあります。今度はお酒も飲める時に。
さてしかし店に戻って、レジを覗いて、厳しい現実に引き戻されました。こんなお天気だったとはいえ。
夜まで降り続いて、積もるようなことがあれば、車は店に置いたまま、新年会でゆっくり飲んで帰るつもりでした。
ところが夕方にはほぼ上がっていて、車の運転に支障はなさそうです。そこで本日は飲まないことにいたしました。
今夜の新年会は、12年前の理事会メンバーの同窓会です。当時の理事長を初め、下戸の人も多い。飲まないことに、さほど苦はありませんでした。
会場は小学館ビル地下の「レストラン七條」。なかなか人気の店で、お昼はいつも行列。夜も予約なしではほぼ入れない。予約も今夜のように14人という規模だと、なかなかとるのは難しい。
確かにそれだけのことはあります。売り物のエビフライはもとより全体に美味しくて、しかもボリューム充分。それでいて価格がリーズナブル。七條コースというのを頼んだのですが、一人当たり約5000円弱。
コースは前菜と主菜とデザートを、それぞれ数種類ずつの中から、各自が事前に選んであります。実際の食事では他にアミューズ、エビフライ一匹が、共通メニューとして出されます。
ちなみに店主は前菜に「自家製ハムのアスパラ添え」、主菜は「本日の魚料理」、デザートは「イチゴのタルト」を選びました。ハムとタルトは二重丸。魚料理(名を聞き逃しましたが黒ムツをスパイシーな油で揚げたもの)がやや不満。
といっても、他の主菜を食べ較べさせてもらった結果です。和牛ほほ肉のワイン煮やら、肩肉のシチューの方が、ずっと美味しかった。組み合わせを変えて、再挑戦して見たい気分でもあります。今度はお酒も飲める時に。
さてしかし店に戻って、レジを覗いて、厳しい現実に引き戻されました。こんなお天気だったとはいえ。
2012年01月19日
新年会連チャン
外食が続きます。今日と明日と。
今日はTKIの定例会議。年明け第一回目であり、昨年末に忘年会もしていないので、会議後、新年会ということになっておりました。
午後2時から6時まで会議を行い、終盤白熱してさらに15分ほど超過。何とか打ち切り、会場となっている「ラインガウ・四谷店」に向かいました。
3年ほど前、同じTKIの会食に一度使ったことがある店です。同店の売り文句は、「こんな町にこんな店と言われて荒木町に20年。本場ドイツで飲む感覚で手軽に楽しめる店として、また大人の隠れ家として親しまれて20年」
「ボリュームタップリのコース料理が自慢です」というとおり、食べきれずに残すほどの料理。決して美味しくないわけではありません。ビールと白ワイン飲み放題が原因でしょうか。
場所は新宿荒木町、地下鉄なら四谷三丁目。帰るにはとても不便だと思いこんでおりましたが、赤坂見附まで戻れば銀座線に乗り換えられます。
一度逆行するのがミソ。東京という街は、そういう仕組みになっていて、お開きが10時、11時には我が家にたどり着きました。一月以上続いた乾燥注意報が、ようやく途絶えたはずです。予報よりも数時間早く、店を出る時から雨が降り始めておりました。
帰り着いてからHPを調べてみたら、この店、青山にもあるようです。もしまたここを使うことがあれば、今度はこちらの店にしてもらうように働きかけましょう。
明日は明古ですが、別口の新年会。それについてはまた改めまして。
今日はTKIの定例会議。年明け第一回目であり、昨年末に忘年会もしていないので、会議後、新年会ということになっておりました。
午後2時から6時まで会議を行い、終盤白熱してさらに15分ほど超過。何とか打ち切り、会場となっている「ラインガウ・四谷店」に向かいました。
3年ほど前、同じTKIの会食に一度使ったことがある店です。同店の売り文句は、「こんな町にこんな店と言われて荒木町に20年。本場ドイツで飲む感覚で手軽に楽しめる店として、また大人の隠れ家として親しまれて20年」
「ボリュームタップリのコース料理が自慢です」というとおり、食べきれずに残すほどの料理。決して美味しくないわけではありません。ビールと白ワイン飲み放題が原因でしょうか。
場所は新宿荒木町、地下鉄なら四谷三丁目。帰るにはとても不便だと思いこんでおりましたが、赤坂見附まで戻れば銀座線に乗り換えられます。
一度逆行するのがミソ。東京という街は、そういう仕組みになっていて、お開きが10時、11時には我が家にたどり着きました。一月以上続いた乾燥注意報が、ようやく途絶えたはずです。予報よりも数時間早く、店を出る時から雨が降り始めておりました。
帰り着いてからHPを調べてみたら、この店、青山にもあるようです。もしまたここを使うことがあれば、今度はこちらの店にしてもらうように働きかけましょう。
明日は明古ですが、別口の新年会。それについてはまた改めまして。
2012年01月18日
新サービス
いつも書籍検索に使わせてもらっているwebcatが、平成24年度末でサービス終了となるそうです。
「後継サービスとして,検索機能をより拡張したCiNii Booksを提供しています」とかで、現在はいわば移行期間。
最近ようやく気がついて、先日初めて新しいサイトを試してみました。確かに色々と新しい機能がついて、便利になった部分はあります。
リンク先のニュースレターを見ると、これからは
1.CiNii 図書・雑誌検索(Books) ― 図書館の資料にアクセスする近道
対象: 本を借りたい,資料を取り寄せたい図書館利用者向けのウェブ検索サービス
2.Webcat Plus ―「連想×書棚」で広がる本の世界
対象: あらゆる書籍を網羅的に探したい一般利用者向けのウェブ検索サービス
の二本立てになるようです。
これはこれで結構なことなのですが、高野先生が尽力されたWebcat Plusなどは以前から存在を知りながら、ずっとwebcatを愛用してきたのは、洋書のデータ数が全然違うことの他に、小店のデータベースに取り込みやすい形だからでした。
今回のCiNiiは、洋書の登録点数こそwebcatと同じようですが、データの形が、やはり取り込みにくくなっています。
せっかく苦心して自己流にデータ取り込み法を編み出してきたのに、この先どうなることやら、ちょっと途方にくれています。
平成24年度末というのは、来年の3月のことでしょうか。それまでに『日本の古本屋』で、新しいデータ登録システムが開発できるといいのですけれど。
「後継サービスとして,検索機能をより拡張したCiNii Booksを提供しています」とかで、現在はいわば移行期間。
最近ようやく気がついて、先日初めて新しいサイトを試してみました。確かに色々と新しい機能がついて、便利になった部分はあります。
リンク先のニュースレターを見ると、これからは
1.CiNii 図書・雑誌検索(Books) ― 図書館の資料にアクセスする近道
対象: 本を借りたい,資料を取り寄せたい図書館利用者向けのウェブ検索サービス
2.Webcat Plus ―「連想×書棚」で広がる本の世界
対象: あらゆる書籍を網羅的に探したい一般利用者向けのウェブ検索サービス
の二本立てになるようです。
これはこれで結構なことなのですが、高野先生が尽力されたWebcat Plusなどは以前から存在を知りながら、ずっとwebcatを愛用してきたのは、洋書のデータ数が全然違うことの他に、小店のデータベースに取り込みやすい形だからでした。
今回のCiNiiは、洋書の登録点数こそwebcatと同じようですが、データの形が、やはり取り込みにくくなっています。
せっかく苦心して自己流にデータ取り込み法を編み出してきたのに、この先どうなることやら、ちょっと途方にくれています。
平成24年度末というのは、来年の3月のことでしょうか。それまでに『日本の古本屋』で、新しいデータ登録システムが開発できるといいのですけれど。
2012年01月17日
洋書会で日本書
洋書会は当番月。先週、理事会などのため、お休みさせてもらいましたので、今年の初当番。
午前10時を少し回って市場に着くと、すでに荷が拡げられ、仕分けが始まっていました。
今日一番の一口は、その大部分が日本書。洋書会会員が仕入れてきた口ですが、本人も買い入れに行くまで、日本書だとは思わなかったそうです。
内容は医学書と西洋古典。洋書がないのが、かえって不思議なほど。一冊ずつ丁寧にカバーが掛けられていて、これを剥がすのが一仕事でした。
当番総出で剥がし終わってから、医学書の方は専門店に任せ、店主は西洋古典関係を仕分け。
学者さんの蔵書ではないので、いわゆる研究書は少なく、テキストと読み物が中心でした。
なかで京都大学学術出版会の西洋古典叢書が88冊と、ほぼ既刊分揃っていて、これがまあ一番欲しい本ではありましたが、落札価格には遥かに届かず惨敗。
他も、その手のしっかりした本には良い値がつき、惜しいものもありましたが、あらかた人の手に渡ってしまいました。
店主が買えたのは、いわゆる中トロ。売値で言えば500円から2000円くらいつけられるような本。それが多分150冊ほど。
いわば店売り向きの本。性懲りもなくというべきでしょうか。こういう本が売れる店であることを、もうしばらく期待して見たい気がします。
午前10時を少し回って市場に着くと、すでに荷が拡げられ、仕分けが始まっていました。
今日一番の一口は、その大部分が日本書。洋書会会員が仕入れてきた口ですが、本人も買い入れに行くまで、日本書だとは思わなかったそうです。
内容は医学書と西洋古典。洋書がないのが、かえって不思議なほど。一冊ずつ丁寧にカバーが掛けられていて、これを剥がすのが一仕事でした。
当番総出で剥がし終わってから、医学書の方は専門店に任せ、店主は西洋古典関係を仕分け。
学者さんの蔵書ではないので、いわゆる研究書は少なく、テキストと読み物が中心でした。
なかで京都大学学術出版会の西洋古典叢書が88冊と、ほぼ既刊分揃っていて、これがまあ一番欲しい本ではありましたが、落札価格には遥かに届かず惨敗。
他も、その手のしっかりした本には良い値がつき、惜しいものもありましたが、あらかた人の手に渡ってしまいました。
店主が買えたのは、いわゆる中トロ。売値で言えば500円から2000円くらいつけられるような本。それが多分150冊ほど。
いわば店売り向きの本。性懲りもなくというべきでしょうか。こういう本が売れる店であることを、もうしばらく期待して見たい気がします。
2012年01月16日
モオパッサン短篇集『他人の春』
短い「あとがき」が眼に留まりました。
「訳者秋田滋は仏蘭西文学の研究に身を委ぬること十数年、(中略)著書は既に十冊を超えている。しかも尚ほ未発表のものが多数残されているのである」
そのわけは陸軍教授をしていた昭和十七年、命ぜられて南方勤務に就き、昭和十八年、「或る突然的事故のために、三十六歳を一期として公務執行中に斃れた」から。
これを書いているのは「訳者の父」。昭和二十一年初秋とあるところから、この本の前に出された『晩い初恋』(建設社)に付けられたものだと思われます。
本書は昭和22年10月5日印刷、同20日発行。ちなみに国会図書館にも、webcatにも、もちろん『日本の古本屋』でも見つかりませんでした。
それはともかく、この短文、淡々とした筆致は、意図的に感傷を排しているようでもあります。しかしそれだけに、かえってその心中が察しられるように思うのは、この時の父の年齢が、今の店主とほぼ同じだからでしょうか。
父も、フランス語の実用書を何冊か出した人であることが分かりました。おそらくは英才教育のもと、若くして著訳書を刊行し、期待の息子であったことでしょう。
隣に並べた『結婚の夜の悪戯』には、「あとがき」はありません。冒頭には共に「解説」があって、後者は前著を多少アレンジしたたけの内容。しかし、どちらにも誰によって書かれたものかという説明はありません。
戦後間もない頃の、出版事情の複雑怪奇さについては、また別のお話です。こちらの本は、国会図書館ほか1館に架蔵されていました。
「訳者秋田滋は仏蘭西文学の研究に身を委ぬること十数年、(中略)著書は既に十冊を超えている。しかも尚ほ未発表のものが多数残されているのである」
そのわけは陸軍教授をしていた昭和十七年、命ぜられて南方勤務に就き、昭和十八年、「或る突然的事故のために、三十六歳を一期として公務執行中に斃れた」から。
これを書いているのは「訳者の父」。昭和二十一年初秋とあるところから、この本の前に出された『晩い初恋』(建設社)に付けられたものだと思われます。
本書は昭和22年10月5日印刷、同20日発行。ちなみに国会図書館にも、webcatにも、もちろん『日本の古本屋』でも見つかりませんでした。
それはともかく、この短文、淡々とした筆致は、意図的に感傷を排しているようでもあります。しかしそれだけに、かえってその心中が察しられるように思うのは、この時の父の年齢が、今の店主とほぼ同じだからでしょうか。
父も、フランス語の実用書を何冊か出した人であることが分かりました。おそらくは英才教育のもと、若くして著訳書を刊行し、期待の息子であったことでしょう。
隣に並べた『結婚の夜の悪戯』には、「あとがき」はありません。冒頭には共に「解説」があって、後者は前著を多少アレンジしたたけの内容。しかし、どちらにも誰によって書かれたものかという説明はありません。
戦後間もない頃の、出版事情の複雑怪奇さについては、また別のお話です。こちらの本は、国会図書館ほか1館に架蔵されていました。
2012年01月15日
これも相互扶助
午前中に車で五反田の南部古書会館へ、本の引き取りに。
昨日、4点出品いたしまして、1点入札しました。結果を問い合わせたわけではありませんが、行ってみると予想通りの首尾。
というのは、4点のうち1点がボー。つまり入札者がおらず売れなかったということです。そして入札した1点は落札。
この入札した1点も、おそらく他に入札者がいなかったということでしょう。何しろ重たい9本口。こう言っては何ですが、特に手に入れたい本が含まれていたわけではない。
昨日の入札会場で、荷主さんに捕まって、どうでも入れておいてくれと頼まれなければ、店主も入札しませんでした。
といって、こちらも商売、買えない値段は入れません。もし仮に店に同じ本が持ち込まれたとして、この値段を申し上げたら、お客様が納得されないおそれ充分。
市場の良いところは、欲しい本だけ買えるという点にあります。欲しくない本は入札しなければ良い。もちろん買えるとは限りませんが。
しかし、そこが浮世の義理。頼まれれば、損はしないだろうという範囲で入札することになり、そういう本は大抵落札します。
ところがそうして買った本が、思わぬ速さで売れて儲けが出ることもあり、だからこそ相身互い。逆にこちらから、無理を言って入札してもらうことだってあるのですから。
そんな仲間がいるからこそ、市場は面白いのです。
昨日、4点出品いたしまして、1点入札しました。結果を問い合わせたわけではありませんが、行ってみると予想通りの首尾。
というのは、4点のうち1点がボー。つまり入札者がおらず売れなかったということです。そして入札した1点は落札。
この入札した1点も、おそらく他に入札者がいなかったということでしょう。何しろ重たい9本口。こう言っては何ですが、特に手に入れたい本が含まれていたわけではない。
昨日の入札会場で、荷主さんに捕まって、どうでも入れておいてくれと頼まれなければ、店主も入札しませんでした。
といって、こちらも商売、買えない値段は入れません。もし仮に店に同じ本が持ち込まれたとして、この値段を申し上げたら、お客様が納得されないおそれ充分。
市場の良いところは、欲しい本だけ買えるという点にあります。欲しくない本は入札しなければ良い。もちろん買えるとは限りませんが。
しかし、そこが浮世の義理。頼まれれば、損はしないだろうという範囲で入札することになり、そういう本は大抵落札します。
ところがそうして買った本が、思わぬ速さで売れて儲けが出ることもあり、だからこそ相身互い。逆にこちらから、無理を言って入札してもらうことだってあるのですから。
そんな仲間がいるからこそ、市場は面白いのです。
2012年01月14日
求む、景気良い話
センター試験、にしては良いお天気の一日でした。寒さは厳しかったですが。
午前中、五反田の南部会館へ入札に。一階、二階と本が積み上げられ、なかなかの盛況。やや大口の、一口物が入ったからのようでした。
その口には洋書も結構あって、何点かに仕分けられていたのですが、それぞれが大きな山で、しかもその中に欲しい本が一、二冊ずつ。札を入れる元気はありませんでした。
取り壊す家から全部運び出したような口でしたが、労力に見合った売上となることを、荷主さんのために祈ります。もちろん心配には及ばないでしょうが。
同じような一口でも、昨日、明治古典会に出ていたのは、収集家向きのもので、業界用語で言えば「化けそう」な口。
大正から昭和にかけて、文学を趣味とした地方の名家の主人が集めた本、美術品、および個人的な資料。その中には著名作家からの書簡なども含まれます。
一昔、いや二昔前なら一財産。それがどんな結果であったか、昨日は会議漬けで、情報が得られませんでした。今度の明古で聞いてみようと思います。
でもきっと、それほど「化け」なかっただろうと、想像はつきます。外れてくれればむしろ喜ばしい。
昨年の小店の売上を集計して、がっくり気落ちしたため、たとえ他人のことでも景気のいい話を聞きたい気分です。
午前中、五反田の南部会館へ入札に。一階、二階と本が積み上げられ、なかなかの盛況。やや大口の、一口物が入ったからのようでした。
その口には洋書も結構あって、何点かに仕分けられていたのですが、それぞれが大きな山で、しかもその中に欲しい本が一、二冊ずつ。札を入れる元気はありませんでした。
取り壊す家から全部運び出したような口でしたが、労力に見合った売上となることを、荷主さんのために祈ります。もちろん心配には及ばないでしょうが。
同じような一口でも、昨日、明治古典会に出ていたのは、収集家向きのもので、業界用語で言えば「化けそう」な口。
大正から昭和にかけて、文学を趣味とした地方の名家の主人が集めた本、美術品、および個人的な資料。その中には著名作家からの書簡なども含まれます。
一昔、いや二昔前なら一財産。それがどんな結果であったか、昨日は会議漬けで、情報が得られませんでした。今度の明古で聞いてみようと思います。
でもきっと、それほど「化け」なかっただろうと、想像はつきます。外れてくれればむしろ喜ばしい。
昨年の小店の売上を集計して、がっくり気落ちしたため、たとえ他人のことでも景気のいい話を聞きたい気分です。
2012年01月13日
デジタル入札会
そろそろ、ここで取り上げても構わないと思います。
来る4月、全古書連総会歓迎イベントとして開催する市会を、全点デジタル入札市とすることになりました。
つまり、これまで紙と鉛筆で行ってきた入札を、モバイル端末、もしくはパソコンから行おうというものです。
現在、なおシステムを構築中で、最終的な姿は明らかになっていませんが、組合員への周知も早急に始めなくてはなりません。
噂が先行する形で、疑心暗鬼がはびこりつつありますので、早めに誤解を解き、真意を説明することが必要だと思われます。
これまで正面切って告知できなかったのは、実現性に不安を残していたからですが、少なくともハード面、システム面では問題をクリアできる見通しがつきました。
この先は、理解と協力を広く求めていくことになります。しかしそこが、一番の難関なのですが。
何しろ、業界の実力者には、店主などより先輩の方が多い。もちろんデジタル技術に理解のある方もいらっしゃいますが、拒否感を示されるのが多数派であることは、想像に難くありません。
若い人たちだって、実際に市場に関わっている人ほど保守的です。現場というものはそういうものですから、理解できます。
そこで、いかにして、実現へ、成功へと進めていくか。先日来の会議、今日も午後の殆どを費やした会議は、そんな内容でした。
終ってから明古のメンバーの夕食会に、遅れて参加。また割勘を、オマケしてもらいました。
来る4月、全古書連総会歓迎イベントとして開催する市会を、全点デジタル入札市とすることになりました。
つまり、これまで紙と鉛筆で行ってきた入札を、モバイル端末、もしくはパソコンから行おうというものです。
現在、なおシステムを構築中で、最終的な姿は明らかになっていませんが、組合員への周知も早急に始めなくてはなりません。
噂が先行する形で、疑心暗鬼がはびこりつつありますので、早めに誤解を解き、真意を説明することが必要だと思われます。
これまで正面切って告知できなかったのは、実現性に不安を残していたからですが、少なくともハード面、システム面では問題をクリアできる見通しがつきました。
この先は、理解と協力を広く求めていくことになります。しかしそこが、一番の難関なのですが。
何しろ、業界の実力者には、店主などより先輩の方が多い。もちろんデジタル技術に理解のある方もいらっしゃいますが、拒否感を示されるのが多数派であることは、想像に難くありません。
若い人たちだって、実際に市場に関わっている人ほど保守的です。現場というものはそういうものですから、理解できます。
そこで、いかにして、実現へ、成功へと進めていくか。先日来の会議、今日も午後の殆どを費やした会議は、そんな内容でした。
終ってから明古のメンバーの夕食会に、遅れて参加。また割勘を、オマケしてもらいました。
2012年01月12日
驚かされる客人
今朝は庭の金魚槽に、しっかりと氷が張っておりました。この冬一番の冷え込みとか。でも霜柱が見当たりません。乾燥続きで、地表に水分がないのでしょうか。
午前中に荷造り一件。昨夕、お買上げいただいたもの。これがなかったら、昨日の売上は、かなり淋しかった。
ところが今日は、昨日に増して淋しい上に、もちろん昨日のお客様はいらっしゃいません。その代わり珍しいお客様。
20年以上前、明治古典会では経営員の仕事の補助として、女子学生をアルバイトに雇っていた時期があります。何年か続いたのですが、その比較的初期、店主自身まだ経営員だった頃、一緒に働いた一人が、突然、訪ねてくれたのです。
大学卒業後、研究者の道を選び勉強を続けているうち、トルコへ留学すると報告に来て、驚かせたのが10数年前のことでした。
その次に店を訪ねてくれた時は、トルコでイタリア人の男性と家庭を持ったといい、またしても驚かされました。今日の話では、お2人の間には7歳になるお嬢さんがいらっしゃるとか。
今回の来日にはいくつかの目的があったのでしょうが、その一つが今日、駒場で行う講演。テーマは「トルコにおける伊東忠太の事績」に関するものだと話してくれました。その話しぶりの熱心さは、学生の頃のまま。
忙しいスケジュールの合間を縫って顔を出してくれたことに、嬉しさを覚えたのはもちろんですが、いつも突然なのに、いつでも居合わせる、そのことに不思議な縁も感じました。
余談ながら、お嬢さんはママと日本語、パパとイタリア語、三人の時はトルコ語、学校などでは英語と、自然に使い分けておられるそうです。
午前中に荷造り一件。昨夕、お買上げいただいたもの。これがなかったら、昨日の売上は、かなり淋しかった。
ところが今日は、昨日に増して淋しい上に、もちろん昨日のお客様はいらっしゃいません。その代わり珍しいお客様。
20年以上前、明治古典会では経営員の仕事の補助として、女子学生をアルバイトに雇っていた時期があります。何年か続いたのですが、その比較的初期、店主自身まだ経営員だった頃、一緒に働いた一人が、突然、訪ねてくれたのです。
大学卒業後、研究者の道を選び勉強を続けているうち、トルコへ留学すると報告に来て、驚かせたのが10数年前のことでした。
その次に店を訪ねてくれた時は、トルコでイタリア人の男性と家庭を持ったといい、またしても驚かされました。今日の話では、お2人の間には7歳になるお嬢さんがいらっしゃるとか。
今回の来日にはいくつかの目的があったのでしょうが、その一つが今日、駒場で行う講演。テーマは「トルコにおける伊東忠太の事績」に関するものだと話してくれました。その話しぶりの熱心さは、学生の頃のまま。
忙しいスケジュールの合間を縫って顔を出してくれたことに、嬉しさを覚えたのはもちろんですが、いつも突然なのに、いつでも居合わせる、そのことに不思議な縁も感じました。
余談ながら、お嬢さんはママと日本語、パパとイタリア語、三人の時はトルコ語、学校などでは英語と、自然に使い分けておられるそうです。