2012年04月

2012年04月30日

歩いて通り過ぎる

「今日はやってますか?」というお電話があって、それから30分ほどすると、同じ方から再びお電話がありました。近くにいるが、店が分からないというのです。

「そこから何が見えますか?」などと、しばらくやり取りして、どうやら一度店の前を行き過ぎたらしいと分かりました。

「お車ですか?」と尋ねると、確かにそうだがコインパークに入れて、そこから歩いたとのこと。そのコインパークは、小店と同じ建物の敷地に、最近設けられたものです。

そこからは、建物入口、セブンイレブン、小店と、まさに目と鼻の先。そこを歩いて通り過ぎてしまわれたわけです。

ほどなく、紙袋を提げたご夫婦が、店に入ってこられました。本のご処分にお出でいただいたのでした。「いま、ようやく『河野書店』のプレートを見つけました」とおっしゃって。

本屋らしきものがあることは分かったものの、目指す古本屋かどうか確信が持てなかったというのが、奥様の話。ご主人の方は、本の重さも手伝ってか、いささか憮然とした表情でした。

申し訳ない気分も手伝って、評価額は一割ほど上乗せ。もちろんそうは申しませんが、お喜びいただけました。

CA3K0176お引取りした本は、いずれもきれいな状態で、小店としても有り難い仕入れです。

しかし、店名を表示しているのが、表のグリーンに隠れるようにして提げられた、小さな陶板だけというのは、確かに考えものかもしれません。などと今頃反省しても仕方ありませんが。

それにしても、あのお客様は、どこで小店をお知りになったのでしょう。伺ってみればよかった。

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2012年04月29日

遅すぎる悼辞

CA3K0178連休といえば、お持込みが増えると相場が決まっているのに、いつも実際にそうなってから、そうだったと気づくのです。

しかし今日あたりはまだ、多い方でも、キャリーバッグに詰めて引いてこられる程度。お部屋の片付けは、むしろこれから本格化するのではないでしょうか。

何件かのお持込本の中に、『古本でお散歩』(岡崎武志、ちくま文庫)が一冊紛れておりました。その刊年(2001年)にまず驚かされます。もう10年以上も前のことなんだと。

本書の解説は、「彷書月刊」編集長にして「なないろ文庫ふしぎ堂」店主、田村七痴庵が書いています。改めて読んで、その肉声が甦りました。

彼は、店主より少しばかり早くこの業界に潜り込んでいて、知り合った頃にはすでにしっかりと南部支部に溶け込んでいました。その当時から、憚ることなく関西弁で通していましたが、不思議な訛りがあるので気になって尋ねたことがあります。それで紀州田辺の産だと知りました。

古本屋にも「上手い文章」や、「面白いお話」を書く人は多くいますが、「面白い文章」は、彼にとどめをさします。まともな話をまじめに書く、というのは彼の美意識に合わなかったかのようです。

会って話すと、とりわけお酒が入ったりすると、かえって真剣に絡んでくることがありました。まじめな話は素面では出来ない、そんな衒いを持った男でした。

「古本屋にとって、古本を扱うっていうことは、毎日が発見の日であって、ああそうだったのかと、目からうろこがおちていく毎日なのです。この、発見のどきどき、ドキドキ、がなくなった時、古本屋は死ぬのです」(前掲書・解説)

七痴庵、まだ死ねなかったはずです。

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2012年04月28日

静かに連休スタート

車で家を出て、いつもの経路で環七に入るところで、渋滞にぶつかりました。

駒留陸橋を越え、世田谷通りを潜り抜け、世田谷線の踏み切りまで、ノロノロと10分近くかかった感じ。

もしや連休混雑だろうかと案じ始めた時、前方の若林陸橋あたりに赤いランプが回転しています。どうやら交通事故。そこで一車線に規制されているのが、渋滞の原因でした。

淡島通りへと右折するために陸橋の側道へ入る時、チラリと目をやると、タクシーが完全に裏返っています。その先は流れが良くなっているため、それ以上の脇見はできませんでした。

同乗していた娘が、店に着いてからネットを見たところ、「運転手も乗客も無事」というtwitter情報が出ていたそうです。

さて、朝のうちは雲が残っていましたが、やがて晴れて、連休初日は好天スタート。気持ちのいいお天気です。用事があって渋谷に出た家人が、まるで初詣のような人混みであったと、報告してくれました。

吸い寄せられるように人が集まる場所があると、その周囲は、そのためにかえって閑散とするのでしょうか。いつもその落差には驚かされます。

でもこの静かさは、嫌いではありません。商売を離れて申し上げればですが。

CA3K0174おかげで、久しぶりに店の仕事がはかどりました。「日本の古本屋」登録書籍を200点ほど入れ替え。HPにも同点数ほどアップ。反応やいかに。

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2012年04月27日

ハナミズキの咲く頃

CA3K0172店の前の紅白一対のハナミズキが、9度目の花を咲かせています。

建物に遮られ、陽射しに恵まれないのがその理由でしょうが、どちらの木にも花は数えるほど。それでも、この9年の間に、僅かずつ増えてきたような気はします。過去には、まったく花を見つけられない年もありましたから。

この時期、あちこちでこのハナミズキが花をつけているのを目にします。日当たりの良い場所では、葉が見えないほどに咲き誇っていて、とても同じ木だとは思えません。

それらに引き比べると、店の前の木の咲きっぷりが、いかにささやかであることか。つい我が店のありようになぞらえてしまい、その健気なさまに、不憫すら感じるのでした。

この一週間ほど、先に恐れたとおり、すでにGWが始まっているかのような売上の日が続いています。しかしGWは、ようやく明日から本番。この調子で行くと、7月、8月の夏休みの時期には、どうなることやら。

ハナミズキは来年だって、僅かながらも花をつけるはずですが、小店が10度目の開花を見届けることができるかどうか。はなはだ心もとない気分になってきました。

明古の仲間と食事をして、店に戻ったのが午後9時半。ついに一日降り止まなかったとはいえ、今日もまたレジが、何らかの対策の必要を訴えかけています。

どうすれば充分の陽射しをあて、爛漫の花を咲かせることが出来るのでしょうか。

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2012年04月26日

反省会と食事会

午後から会議。デジタル入札会の反省会。

出席者はシステム会社から三名、組合職員が二名、お手伝いいただいた組合員が三名、理事会メンバーのうち六名。午後2時から5時までの予定が一時間以上延びて、午後6時半近くにようやく終了。

おかげで午後6時から予約してあった会食が始まったのは、7時近くになってからでした。しかも打ち上げということにはならず、まだ何回か、この反省会は持たれそう。何とかして次につなげたいという、強い使命感のなせる業です。

そんな次第で、解放気分に浸ることは出来ませんでしたが、料理とワインの味がそれで損なわれたわけではありません。

会場はルヴェソンヴェール本郷。駒場の同名店の兄貴分。フォーレスト本郷というプチホテルの一階にあります。

この店に行くのは二度目、と思っていたのですが、よく調べてみると以前行ったのは18年くらい前ですから、まだレストランはホテルの直営だったかもしれません。

駒場の店で言うと一階のカジュアルな感じではなく、二階の「橄欖」の方に近い。今夜のメニューもかなり本格的なコース料理でした。

ここは我らが理事長の会社と、まさに目と鼻の先。小店と駒場店との距離より近く、普段から贔屓にされているとCA3K0169聞いていました。そして理事長はワインにも一家言ある方。

ですから今日は満を持して、車は家に置いたまま。ゆっくりとワインを楽しんで参りました。いっときの息抜きです。

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2012年04月25日

楽しい学問

「トンデモ本」と呼ばれる本たちがあります。定義などがあるのかどうか知りませんが…、と書いてから一応Googleで検索してみました。

ウィキペディアが答えてくれました。「著者の意図とは異なる視点から楽しむことができる本」という意味だと。藤倉珊という人が提唱した概念とか。

いや存じませんでした。しかし、知らないままに日頃何となく使っています。大抵は、何かトンデモナイことが書いてある本という程度の意味で。

この本は、かなり正しい意味で「トンデモ本」かも知れません。
Sumerian and Japanese : a comparative language study. というのがそのタイトル。

CA3K0173A4判142頁、角背赤クロス装で、ビニールカバーつき。帯もあって、表に「日本語の語源を探る!シュメール語と日本語 比較言語学での研究」とあります。

裏側には「シュメール語は、B.C.3000年〜2000年頃のメソポタミア地方で話された言葉であり、日本語と同じ膠着語に属する。本書はこのシュメール語と日本語の間に関係があるかどうかについての研究調査であり、2つの言語における、音と文法の類似点が指摘されている。日本語の語源を探る、非常に興味深い一冊といえる」

正確な紹介です。確かに関係があると結論しているわけではなさそう。こんなところが似ていると、例を列挙しているのです。極めて学究的。

しかし、第一章でいきなりシュメール→スメラ(皇)が出てきて、ここからもう「著者の意図とは異なる」楽しみ方が出来そうな予感がプンプン。

著者は R. Yoshiwara (Roger Ahlberg) とあり、帯には吉原良譲という漢字表記があります。一体どんな人か。ちなみに出版元は千葉県山武郡の Japan English Service という会社。でもなぜ英文で書かれたのでしょう。

昨日の洋書会で落札した、語学研究書の中に混じっていた一冊でした。

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2012年04月24日

洋書会のうなぎ

洋書会、四月最後の当番で、昼食は「うなぎ」。出前を取るたびに小さく、高くなっていくさまは、すでに驚きや嘆きを超えて、冗談の域に達しています。

何もそこまでうなぎに拘ることもないと思うのですが、こうなるとこちらも伝統の意地というわけ。

今日は、出品が先週に増して多く、仕分けも大変でした。先月より100円高くなったそうだが、まあいいじゃないか――そう衆議一決して取ってみると、サイズの方も一回り以上小ぢんまり。これには一同、さすがに事態の深刻さを思い知らされました。

うなぎはさておいて、大量出品をどうにか仕分け、それぞれに入札。どうなることかと思った口も、かなり捌けました。もちろん引き荷(出品者へ戻される荷)の山も残りましたが。

買えば買ったで、その整理が大変。そう考えて、大山には手を出さなかった本日の店主です。それでも落札品は、カーゴに半分ほどの量。西洋古典関係が少しばかり。エジプト語などの語学関係が若干、その他、その他。

市場で親しい同業から、先日のデジタル市の規模が、これまでの大市などに比べて小さかったことについて、不満の声を聞きました。「大市を一回損した気分だ」と。

CA3K0162交換会が、運営する当事者と、利用だけする「お客」とに分かれてしまっている。その状況を端的に表した言葉です。客として参加するならば、大きな賑やかな市が良い。あまりに素直な意見でしょう。

問題意識の共有を図るための、道のりは遠いようです。

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2012年04月23日

コレクター

イメージ (55)洒落た表紙の薄い冊子が、本の間に挟まっていました。

開いてみると「旧福島コレクション展覧会目録」とあります。1955年にブリジストン美術館、大原美術館と巡回展示されたものの図録。

「コレクションになるまで」と題した文章が3頁。書き手はこのコレクションを集めたご当人、福島繁太郎。『印象派時代』や『エコール・ド・パリ』の著作で知られる美術評論家ですが、収集家、画廊経営者としても知られた人。

しかし何と言っても、『うちの宿六』でしょう。慶子夫人によってユーモラスに描かれた日常の姿に、当時、多くの人が親しみを感じたはず。雑誌連載が単行本になって出版されたのは、この展覧会の年でした。

図版はカラー4点、単色15点、しかし巻末の総目録では80点が収集品として列記されています。

この展覧会の図録としては、別に『旧福島コレクション』として美術出版社から、同年に図版・解説74pで出版されているらしい。また同名の展覧会が、1966年にもブリジストン美術館で開かれその時もカタログが出ています。

つまりこの最初の展覧会パンフレットは、内容的には格別意味のあるものではなさそう。でもなかなか趣味の良い作りです。しばらくはどこかに飾っておくことにしましょう。

ところで『うちの宿六』は、テレビドラマにもなっていたことをWEBで見つけて、ぼんやりと古い記憶が甦りました。尾上(中村)九朗右衛門、藤間紫で1963年、ほぼ一年間続いたらしい。

毎回見ていたというわけではない筈で、ストーリー(があったとして)もまるで覚えていませんが、他愛ないホームドラマだったような気がします。

こんなことを思い出すほどに、暇な雨の一日でした。

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2012年04月22日

30年来の疑問

今朝、ラジオのニュースで、ゴールデンウィークに海外へ出かける人の数が増えそうだと伝えていました。小店にはまったく縁のない話ですが。

しかし気がつけば、来週はもうGWです。縁はないけど影響は大きい。また駒場から人気が消え、明けても戻らない、そんな時期が迫っているというわけです。

今日は、まるでその予行演習のよう。昨日から続いて寒い曇り空で、昼過ぎからは小雨も。天候の方は逆戻りなのに、世間の気分はすでにGWに突入かもしれません。

午後、約束どおり駒場の研究室へ本の引き取りに。キャンパスの中は、しかし思ったより賑やかでした。

ラグビー場では試合が行われていて、審判の笛が大きく響いています。見ると7人制ラグビー。グラウンドが広々と感じられました。他にも色々と催しがあったようです。
CA3K0165
八重桜が見ごろで、もう少し暖かければ、お花見の散歩にもっと大勢人が出ていたことでしょう。

ところで今日訪ねた研究室の主である先生は、小店の開業当時新入生。

そのことを店主は知っておりましたが、先生の方は、自分が入学した年に小店が開業したということを、今までご存知でなかったらしい。そして「ようやく腑に落ちた」と言われました。

先生、実は筑駒出身で、中高生の時分から「渡辺書店」や「駒場書店」(そのどちらも今はありません)は知っていて出入りもしたのに、「河野書店」には行った記憶がなかった。今ようやくその訳が分かったと。

近頃の学生はどうですか、という話から始まって、そこへ行き着いたのでした。

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2012年04月21日

装飾哲学

CA3K0157曇って寒い土曜日。

先日の洋書会で中世演劇の口を仕入れたというご報告はいたしましたが、実はこの日、他にも一口、落札しています。

100冊ばかりの口で、その半分以上が Wittgenstein の著作や研究書。売れ筋(だと思う)でもあり、恩義ある店の出品でもあり、気張って入札したら、一番下札で落ちたのでした。

落札後、整理していて気がついたのですが、本の状態があまり良くありません。天の埃がついたままなのはともかく、ヤケやシミが結構あって、売り物にするには少々手間がかかりそうです。

入札前にしっかり見ておけば、もっと安く札を入れて、それでも買えたかもしれません。しかし後の祭り。水曜日に運ばれてきたそれらの本の汚れ落しを、店番のミセスAに頼んでおきました。

さて今日、おもむろに値付けを始めたのですが、およそ60冊ほどのうち、1000円以上の値を付けられたのは約半数。やはり、ヤケシミが気になって、弱気の値を付けざるを得ません。

多少イタミがあったり、書入れが見つかったりした本は、迷わず表の見切りコーナーへ。ともかくこの口すべて、一気に値付けを終えてしまいました。

さてまだその作業をしている最中、今出したばかりの見切り本を何冊か抱えている女性がいます。しばらくすると、どうやらディスプレイ用だと分かりました。

こちらの付けた値でお買上げいただくのですから、その使途に文句を言う筋合いはありません。むしろ早く片付いて有り難い。

とは言うものの、手提げ袋に本を詰めながら、一抹の寂しさも感じざるを得ませんでした。

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