2012年06月

2012年06月10日

「便利」で失うもの

CA3K0234朝、まず開店の準備だけして、五反田に向かいました。昨日の出品の結果を確認するためです。全部売れていれば問題はないのですが、もし売れ残っていると、速やかに引き取らなければなりません。

南部会館に午前9時半。事業部員さんは、早くも集まっていました。今日は、後片付け。地方へ送る荷の積み込みやら、店主のような引取りへの対応を済ませて、明日からの通常市が開催できるように、会場の復帰作業まで行います。

皆さん殆ど手弁当。本部の市会でも事情はそれほど違いませんが、こうした組合員の活動で、根幹事業である交換会が成り立っています。

その有りがたさはともかくとして、もう少し便利にならないものかと思わないでもありません。本部の市場は、出品したものがいくらで売れたか、売れなかったか、入札したものが買えたかどうか、インターネットで調べることが出来ます。

これが南部でも出来ないか。技術的な制約は様々あります。しかし、やろうとすれば不可能ではありません。実際に取り組まないのは、それを望まない空気が、案外根強くあるからです。

一言でいえば「水清ければ魚住まず」。コンピュータ化され、すべてがクリアになったことで「旨みが減った」と感じている人たちが、少なからずいるのです。

批難するつもりはありません。便利を求めることだって、自分の都合を主張している点では同じことでしょう。コンピュータなどのない時代、市場は出品にせよ、買上にせよ、お終いまでいて自分の目で確かめるのが当たり前でした。

そうした中で組合員の協同意識も、自然に培われたという側面もあります。現場で働く側からすれば、必要な時だけ顔を出せば済むという仕組みは、あまり歓迎できないという気持ちも、理解できないではありません。

で、小店は出品7点のうち、売れたのが4点。3点を車に積んで戻りました。何がいくらで売れたのかも、行って封筒を見て、初めてわかります。無駄足ではなかったということです。

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2012年06月09日

雨の南部

そういえば、去年も南部大市は雨でした。今年は南部地区会館だけを使っての開催。例年通りです。

11時頃会場へ着いて、一回りして、結局入札はせず。何しろ、物置の片づけを、来週中に敢行しなければなりません。出来る限り荷物は増やさないようにと、歯を食いしばって我慢。というほど、入札したいものがあったわけでもありませんが。

誰もが買い気を減退させている、今のような時期こそ、むしろ「売り」より「買い」に回るのが得策であるというのは、商人なら誰しも考えることです。しかし、それが簡単に出来るなら、誰もが紀伊國屋文左衛門になれるでしょう。

みすみす売り時ではないと分かっていながら、売りに回るしかない。そんな状況にある者が多いからこそ、相場が低迷するのは、株も本も理屈は同じ。小店の出品も、希望通りに売れてくれるかどうか。

市場でかつての理事会仲間でもある先輩業者お二人と会い、久しぶりにお昼をご一緒しました。そのお一人と、かつて月例のように行っていた、五反田駅前の洋食店「エフ」へ。迷わずカニコロッケ、そしてレバソテーをシェア。これが二度目という、もうお一方の希望で、オムライスもシェア。

食事を終えて表に出ても、雨は降り続いています。昼食会はここで解散。市場に戻ってお手伝いしようかとも思いましたが、開札人数は充分足りていそう。といって力仕事は辛い。出る幕はなさそうだと勝手に決めて、そのまま店に帰りました。

CA3K0271土曜の雨は、店売りに応えます。積んだままになっていたLoeb叢書のLatin Seriesの値付けをしようと、机の上に乗せたまでは良いのですが、なかなか手が進みません。不思議なもので、店に活気があって、忙しいくらいの方が、こんな仕事も捗るのです。

そんな次第で、外の雨と、机上のLoebとを、交互にぼんやり眺めながら、いたずらに時が過ぎていくのでした。

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2012年06月08日

ヨルダン戦の夜

CA3K0266神保町の交差点に近い、小さなビルの地下の、小さな居酒屋。前に何軒かの店が入っては替わりして、現在やっているこの店は、開店後まだ間がないようです。

その出来たばかりの店に、先々週に次いで、明古の仲間と再び訪れたのは、値段の安さと、売り物の腰のある「うどん」が良い印象を残していたからでした。

前回はちょうど5人分の席が空いていて、あとは満席でしたが、今日は先客が一組だけ。店の人は、「今日はサッカーですから」と、あきらめたような口ぶり。

たしかに、我々の中にも、サッカーが見られる店へ行こうという意見もありました。しかし、落ち着かないところで食べるより、どうしても見たければ一時間で切り上げようと、そこに決めたのです。

飲み食いお喋りしているうち、気がつくとあっという間に7時半を回っています。店の人が、1対0で日本リードと、経過を教えてくれました。しばらくして誰かが携帯で調べると、3対0。その時点で、テレビ観戦の熱意は消えたようです。

そうこうしているうちに、お店も少しずつ混んできました。試合経過とは関係なさそうですが。やがていつの間にか店は満席、適当なところで「うどん」にして解散といたしました。

今日は朝から理事会。午前10時に始まって、終ったのが午後1時半。昼食後、理事長とともに、職員さん一人ずつに、夏季の賞与を手渡し。もちろん明細だけですが。

各人と短い懇談をして、14人に渡し終えると午後5時。定例の総務部ミーテイングを、それから1時間。

結局、今日の明古、市会会場には都合10分ほど顔を出しただけで、買上ナシ、売りが7点。厳しい値段でした。

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2012年06月07日

真贋問題

ここしばらく、電車の中で読んでいるのは『にせもの美術史:メトロポリタン美術館長と贋作者たちの頭脳戦』(トマス・ホーヴィング著、雨沢泰訳、朝日文庫、2002年)という一冊。

CA3K0269466頁の厚い文庫ですが、少しずつ読んでいて読み終わるのが惜しいよう。世界に冠たる美術館、博物館に並んでいるものが、必ずしもすべて真物とは限らないという、改めて聞けば至極もっともな、しかし驚くべき事実を教えてくれます。

今朝もこの本を読みながら、向かったのは古書会館、明古七夕目録の校正です。

印刷された本の世界は、元来、真贋とは無縁のはずです。それでも、高価なものになると様々な細工が施されたりもします。よく知られている例では、初版本の帯を作ってしまったり、痛んだ初版の奥付だけを付け替えたり。

厄介なのは署名本です。著者に真似て書いたりする。書くという世界になると、そこには贋作者の活躍の場がいくらもあります。例えば、書簡、草稿、色紙。いわゆるAutographの類は、真贋問題から無縁ではありません。

こと本の世界に関するものであれば、明古の場合でも、ベテラン会員が何人も目を通し、ある程度は査定をしてきました。とはいえ自筆物の範囲は広く、手に負えないものも多くあります。

以前、坂本竜馬の手紙が七夕に出品されたことがあります。真贋というのとは少し異なりますが、それが本物かどうかは、結局のところ入札者の判断に待ちました。

藤田嗣治や棟方志功といった人気作家には、鑑定料をとって鑑定シールを発行する機関があり、明古でも、その手の作品を出品する際は、それを取ることを勧めています。しかし鑑定家も所詮は人間ですから、確実ではありえません。

真贋のあるものについては、自分の目で、その価値を判断するしかないということでしょう。そういえば鑑定シールにも贋物があるという話です。

帰りの車中でも、引き続き贋作との闘いを追いました。

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2012年06月06日

機中の読書

店について、開ける前に一仕事。ルート便のカーゴに積んだままになっている本を降ろして、市場に出品する本の積み込み。

それだけの積み替え仕事のために、さらにあちこちの場所を片付け、本を動かすことになります。何とか片付けてから、開店準備に取り掛かりました。

雨で、棚を出すスペースが限られて、どうにも窮屈。それもあって、まずはカーゴの積み替えを優先したのでした。

お昼頃、南部地区大市会の集荷の車がやってきます。こちらに出品するための準備もしておかなければなりません。本は昨日のうちに、店の中に用意してあります。お客様が来られないのを幸い、店内で本を縛ったり、封筒を付けたりの作業。

ちょうど12時、集荷の車が到着。昨日の電話で、「だいたい12時頃」と聞いていたので、あまりの正確さに驚いて、乗ってきた支部事業部の2人にそう言うと、「たまたまめぐり合わせです」。確かにそうでしょう、予定して出来ることではありません。

CA3K0254この間、雨は降ったりやんだり。積み込み中に、一瞬サーッときて、店主の日頃の心掛けを疑われました。

それから一時間ほどあと、今度はルート便の到着です。この時は、幸い雨間。昨日の洋書会で買った荷物を受け取り、出品のカーゴを引き渡しました。

昨日の収穫はプレイヤード叢書、約20冊。雨も上がった午後、早速値付けして、データ入力。棚に入れるばかりにいたしました。

夕刻、Rossiter先生がご来店。「来年まで、日本から消えます」と、そんな風におっしゃった筈。しばらく棚をめぐって、Kazuo Ishiguro など二冊お買上げ。明日ロンドンへ出発とのこと。

See you next year! と手を振って、去っていかれました。

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2012年06月05日

年度末の忙しさ

CA3K0265昨日は一日店で仕事をしながら、フト、こんなことをしていていいのだろうかという、軽い強迫観念にとらわれました。何かを忘れているのではないかと。役員の任期が終わりかけると、いつもこんな気分になります。

自分の店のことだけに集中していては、いけないような気分。一種のワーカホリックでしょうか。

しかし昨日、一番気にかかっていたのは、明古の七夕目録の校正日程です。今週初めだったような記憶がありました。だからといって確かめることもせず、今日になって、今週木曜日だと分かりました。

飛ばしたわけではないと分かって、一安心しましたが、今週の予定が立て込んできました。明日は、南部地区大市会の集荷がお昼に来ます。明後日、朝から七夕目録の初校に会館へ。金曜日は定例理事会と明古。土曜日は南部大市の本番。

今日は今日とて、洋書会に午前中から出かけ、夕方から会議もあって、帰ると閉店間際。その会議というのが、来期からの役員体制についてです。

組合の理事は、まだ三ヶ月近く任期を残していますが、各交換会は6月一杯で任期満了。7月からは、新たに選出された役員が会の運営に当たります。

洋書会は会員数が16名という小所帯ですから、二つに分けてA班、B班、交替で担当します。どちらが「A」班かというのは、意見が分かれるところですが、いずれにせよ店主の属する班は来年が担当。その中での役割分担をめぐって、市会の終了後、「放心亭」で軽い酒食を取りながら、打ち合わせたのでした。

その結果につきましては、会の定時総会が終ってから、お知らせできると思います。お知りになりたいかどうかは別として。

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2012年06月04日

資源ゴミ

9年前、今の店に引っ越した頃のことです。それまでと同じように一般ゴミを集積所に出していたら、ある時、収集係の人が「こちらのゴミですよね」と、提げてきたゴミ袋を差し出しました。

何か不都合でもあったのかと訊ねると、「事業所から出るゴミは、券を買って貼って出してください」とのこと。

その当時、仕事に関するゴミでなければ事業ゴミではないと思っていましたから、本やダンボールを資源ゴミに出したり、包装紙など関連するゴミを出す時以外は、普通の家庭ゴミのつもりで出しておりました。

20年もそれで通ってきたので、その時は意外で、いささか不服でもありましたが、世の中も法律も変ったのだろうと、自らを宥めたものです。

一方で、我が家から出す場合は、現在、家庭ゴミはもちろん、資源ゴミでも、有料にはなりません。倉庫代わりの物置から、この数年、毎週のように整理しては出していて、収集係のお兄さん達と顔なじみになったほどです。

彼らは、量の多さを訝しむどころか、とても喜んで引き取っていってくれます。

ところが、ある頃から、毎週月曜日の朝、集積所に本を積んでおくと、決められた収集時刻の午前8時より前に、きれいになくなっていることが続きました。回収業者が一足先に、持ち去っていってしまうのです。古紙の相場が、ひと頃に比べて下がったとはいえ、まだお金になるのでしょう。

それで、区の収集係も、30分早い時間に一度、回るようになりました。定時にはもう一度回ってきます。すると今度は、その時間よりさらに早く回収業者が現れるようになりました。完全なイタチごっこです。

CA3K0262それなら何も区でやらなくとも、民間業者に任せれば良いではないかという意見もあるでしょう。

しかし古紙の相場は水物です。一旦下がれば、見向きもしなくなることは明らか。今後ますます廃棄せざるを得ない本は増えるはずで、その時になって引き取り手を探し回るのは、ご免被りたいものです。

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2012年06月03日

ここにも蔵書一代

CA3K02604月の全古書連デジタル入札会で落札した中に、「トーマス・マン関係約830冊」という口があります。

その名の通り、トーマス・マンの著作、研究書を集めたもので、ドイツ語を中心とする洋書がおよそ7割、残りが日本書。

あまりにも大量でしたから、日本書は、別の市場に出品して売りました。洋書も何口かに分けて、誰かが引き受けてくれることを期待しましたが、殆ど買い手はつかず、結局500冊ばかりのトーマス・マン関係書を抱えることとなりました。

この旧蔵者、Thomas Mann と名がつけば、何でも集めたようにさえ見えます。せっかくのコレクションですから、まず一括納入先を探すのが、本屋の常道だったかもしれません。

確かに、これだけの本を、今から集めるとしたら、時間も費用も嵩みます。そこに着目して、そうしたコレクションセット販売を主力にしている本屋が、今も外国には少なくないような気がします。

しかし、まとめて買っていただくには、一から集めようという機関か、研究者の存在が必要です。今時、そんな奇特な話は期待できません。必要な本だけ探して買うことが、昔より遥かに簡単になっていることですし。

セットで売るにせよ、まずはリストを作る必要があります。それなら、ある程度の価格を付けられる本だけデータにとって、ネットに上げていくのが、一番の早道でしょう。

それ以外は、均一本として店で格安に販売する。かくして、旧蔵者が営々と集められたトーマス・マン・コレクションは、腑分けして売り捌かれることになりました。

いささか寂しい思いもいたしますが、これもまた古書が再編集されていく、一つの過程には違いありません。

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2012年06月02日

つい弱音

中学生らしい一団がやってきました。その数、およそ6、7名。

表の岩波少年文庫の棚を、しばらく押し合うようにして覗き込んでいましたが、やがて一人離れ、二人離れ、絵本の棚などに眼をやりながら移動し、次第に二手に別れて立ち話になりました。

片方の二人組はそれでも、目だけは本棚を向いておりましたが、残りの集団は入口のまん前に屯して、なにやら楽しそうに語り合っています。まるで日差しを避けて、涼んでいるような風情。

お客様の邪魔になる――というほど、人がおられるわけではありませんでしたが、一向に動く気配のない様子に、腰を上げて、一声かけに行きました。

近づいて、まず黙って見つめたところ、目が合った二、三人が一瞬怪訝な顔をするだけで、さらに会話は続きます。

やむを得ず、「用がないのだったら、ここを退いてもらえないだろうか」と穏やかに切り出しました。すると、何を言われたかにではなく、声をかけられたこと自体に驚いたように、まさに目を丸くしてそれでも大人しく立ち去っていきました。
CA3K0264
大きななりの子どもたちがいなくなると、静かな土曜日の午後が戻ってきました。

そういえば、もう六月。「季節はずれの上空の寒気」のおかげで、相変わらず不安定な空模様が続いています。社会や経済の先行きが不透明なのは常のこととはいえ、小店の先行きは、かつてなく不透明です。

この店でお客様をお迎えし、お客様にお喜びいただいて、たつきを立てていきたい。その思いに変りはありませんが、いつまで情勢が許してくれるやら。

こんなことを言っていたのでは、宣伝にもなりませんが。

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2012年06月01日

食べはぐれる

CA3K0255店を開けて、明治古典会へ。

会の仕事は午前中だけ。お昼をいただいてから入札。今は整理モードなので、もうひとつ買い気が出ない。珍しいことではありませんが。

午後2時から、組合新規加入希望者の面接二件。一件目は、店主の洋書会の同僚、T書店に勤めていて、今度独立しようという青年。話の中で「奥さんが赤ちゃんを産みまして」と言い出して、一瞬戸惑いましたが、ご本人の奥さんのことでした。

二件目はご夫婦でお出でになりました。50代男性は良くお見かけする顔。神田の即売展などにも、頻繁に足を運んでおられた方。女性は、神保町の古本屋で、現在アルバイト店員をされている方。そのアルバイト先に近い場所に事務所を構え、ネット販売中心で営業を始めたいとか。

午後4時から、組合職員のボーナス、給与査定。現今の厳しい社会情勢に沿う形で、6月の賞与を決め、定期昇給について検討いたしました。

それが終わると定例の総務部ミーティング。全古書連が発行する、最後の「紙の名簿」となるはずの、会員名簿作成についてなどを打ち合わせました。

午後7時前、明古に新しく入った二人の経営員を歓迎する飲み会に、遅れて参加。三崎町の刀削麺の店で、午後6時過ぎから始めていた筈で、既にかなり盛り上がっておりました。

随分前に一度来たことがある店で、その時の印象は決して悪くなかったのですが、今回は飲み放題コースであったせいもあってか、今ひとつ。押し込められた小部屋が狭苦しいこと、音が反射してうるさいこと。何より料理を出すのに時間がかかり、午後9時までに店に戻らなければならない店主は、肝心の刀削麺にありつけなかったことが、評価を下げました。

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12月31日から1月3日まで
休業いたします
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河野書店

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