2012年11月

2012年11月30日

不思議な出品

明治古典会、最終週で特選市。事情があって、いつもは2フロア使うところを、1フロア半に収めたため、荷物が混みあって、しかしその分賑やかにも感じられました。

自分の入札を済ませてからは、来月21日に開催するクリスマス特選市の目録編集で6階に上がり、原稿をコンピュータに打ち込む作業を手伝いました。

ですから、今日の市場の雰囲気をお伝えすることはできません。あの面白い出品物が、どんな風に受け止められたかという反応についても。

それは今日特に異彩を放っていた、「梅原、藤田、東山の絵」と称する7、8点の口です。梅原や藤田は鉛筆あるいはクレヨンの線描、まあそれらしく書こうとした様子は見られます。「魁夷」のサインの入った水彩画は、山の木々を描いた風景画で、こちらは似ても似つかない。

だからでしょうか古い封書が添えられていて、「東山魁夷という23歳の画家」の絵を差し上げるなどと書かれています。つまり若書きだといいたいのでしょう。封書には日付印も押されていて、その年号は昭和参年。

誰かが調べたところでは東山魁夷は1908年生まれ、年が合いません。もちろん、そんなことを真贋を判定する証拠にしようとしたわけではありません。どの程度、念が入っているか、それを知りたかったのでした。

要するに、ほとんど騙そうという意図のあるものではなかったかもしれません。面白がって作ってみたというレベルでしょうか。

何より、これを出品した荷主さんでさえ、明らかに偽物であるということに疑いを持っていません。でなければ、本物なら1点で何百万円もするよう大作家の作品を、こんな風にまとめて出品するなどということは考えられませんから。

RIMG1495しかし、世の中には専門家を欺く贋物も多くあります。お笑い種で済む、この程度のものなら、まあご愛嬌というべきでしょうか。

夜は、最近行きつけとなった「うどん屋」で、いつもの仲間と食事をしました。

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2012年11月29日

年賀状有ります

午後4時頃にはもう薄暗くなります。秋も深まって、まさに夜長、読書にはうってつけの季節のはず。しかし読むべき本は、すでに家に充ちているのでしょう。求めに来られる方は、増える気配がありません。

すでにとっぷりと暮れたころ、「きれいな版画ね」といってご婦人が、表に並べた木版年賀状を3枚、お持ちになりました。

CA3K0472懇意にしていただいている版画家の伊藤卓美さんが、毎年、手刷り木版の年賀状を何点か作られます。その一部を小店でも置かせてもらっているのです。

刷りの多い少ないで一枚200円のもの、150円のもの、100円のものがありますが、どれもなかなか人気です。

「電車が止まってしまって、まだ動きそうもないから本屋さんに寄ったの」と、ご婦人。井の頭線で人身事故があったと言います。

もう大丈夫かと駅の方に向かわれましたが、しばらくすると年賀状もう一枚と、今度は本も一冊持って、帳場に来られました。「切手も売ってるといいのにね」

なるほど、切手販売は無理としても、お年玉つき年賀ハガキに刷ってしまうという手もありそうです。しかし売れ残ってムダになることより、木版の風合いが引き立たないことのほうに、作家さんとしては抵抗があるでしょう。

同じ頃、岩波文庫を1冊買われた店主世代の男性、「東洋文庫はありますか」とのお尋ね。「いまご覧になった棚の上の方です」とお答えすると、しばらくご覧になっておられましたが、どうやらお目当てはなかったご様子。

「ここから渋谷まで、この道を行くと歩いて行けますか」と訊かれますので、「ほぼ道なりで行かれるはずです」。

電車が止まって、店にお寄りいただいたお客様がお二人、ということでしょうか。

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2012年11月28日

掘り出された話

「掘り出し物」という言葉には、光と影があります。掘り出した人の手柄に光が当たるとすれば、掘り出された側はその影に置かれることになるわけです。

RIMG1493かく言う店主も、かつて掘り出された(変な言葉ですが)経験を持ちます。もちろん、何度もあったのかもしれませんが、ただ一度、掘り出した方がその嬉しさを文章にされたことがあり、それで、そのことだけは確かな事実として残っているのです。

今日偶然に、その文が載っているご本人の随筆集を手に入れました。以前、直々に一本いただいて、すでに持ってはおります。しかし肝心のその文章は読まずにおりました。

今回改めて読んでみますと、随分昔の話ですから、こちらの記憶も不確かになっていますが、明らかに事実とは違う点があります。まあ文学的表現でしょう、ご当人に悪気がないことは、同書を下さったことでも分かりますので。

問題の掘り出し物は、Winston Churchill, My African Journey. 1909. 初版本でした。事実でないのは、「(店主が)決めかねていた金額に若干上乗せして」引き取ったというところ。

市場で仕入れてきたばかり、しかもある若い研究者にお売りしようと仕入れた本です。ようやく初版本であると確かめたところ。思いがけず安く落札できましたので、その方に、できるだけ安くお譲りしようと考えておりました。

そこへ当時の上客であるKさんがたまたまご来店になり、ご覧に入れたのが運のつき、なかば強引に召し上げられた、というのが実際のところです。

後日、その本に署名があることを発見され、その顛末を「古書通信」に寄稿されたと聞きました。

店主としては、もう少し手元に置いて調べたかったという気持ちと、それであれば尚更、当初納めるつもりのところにお納めしたかったという気持ちになったものです。

その後もKさんからは、何度か蔵書をご処分いただくなど、お世話になってきました。ご高齢で、お目にかかるのも間遠になっていますが、お元気でいらっしゃるでしょうか。

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2012年11月27日

仕分けは大切

洋書会は、久々に荷の多い、賑やかな市でした。

RIMG1496定期的に入る、W大学図書館からの口。同大学に次々寄贈される本のうち、重複などで必要とされないものを処分する先として利用していただいています。学術書が多いのですが、今日は百科事典などのいわゆる飾り本もかなり混じっておりました。

ここで言う飾り本とは、いまどきのディスプレイ本と言う意味ではなく、半ば部屋の飾りのようにして買われた本のことです。もちろん、ディスプレイ用には最適。きれいであれば、案外良い値になったりします。

他には英文学の一口。ワーズワース、キーツ、ブレイクといった詩人の研究書が多く、ロマン派と言うのは日本でかくも人気があったのか、と思いながら仕分けをいたしました。実際、この辺りの研究書は、沢山出てきますので。

しかし今日の口に限っては、どうやらしばらく前に明治古典会に出た口の、残りらしいことが分かりました。目ぼしいものは、前回にほぼ出たあとですから、量の割には、値にならなかったかもしれません。

さらにここしばらく同じ業者さんから続いて出てくる、読み物系の洋書。推理小説などを中心に毎回かなりの量ですので、ひとつところから出ているとすると、相当の蔵書量だったはずです。

今日はポケットブックが主でしたが、40cmほどの束にして、100本は優に超える量。それが4口に分けられ、入札されました。同じような分量なのに、1点だけ、他の何倍もの落札価格のものがあり、落札者はミステリーの専門店。洋書会の会員です。

訊ねると、自身で4つに分け、その一つに特に欲しい物をまとめたとのこと。もちろん不正でも何でもありません。油断していると(油断していなくともしばしば)人に浚われることがあり、そのためにも強い札を入れるので、結果的に高値となって、荷主さんにとっても利益となるからです。

その他に、スペイン語、フランス語の口がありましたが、時間が足りずに店主は仕分けに廻ることが出来ず、あとで見ると大きな山に面白い本がいろいろ見つかり、手を掛けなかったことが悔やまれたのでした。

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2012年11月26日

水の滴るご老人

祭りの後の雨の一日。開店休業とほとんど同義語ですね。

午後、降りも次第に強くなってきた頃、傘も差さずにご老人が一人、外を歩いておられます。黒いコートはいくらか水をはじいていますが、完全なレインコートというわけではなさそう。白い髪は頭にはりつくようです。

驚いて見ていると、やがて小店の方にゆっくりと向かってこられるではありませんか。近づくと、杖を突いておられることがわかりました。もう一方の手にはズックのトートバッグ。

表の本をしばらくご覧になったあと、自動ドアのスイッチを押しておもむろに店内に入ってこられました。「大丈夫ですか、濡れてますよ」いささか慌てて、意味のない言葉を発しましたところ、「まあ、溶けやしませんよ」と悠然たるものです。

どうやら店内をご覧になりたい様子です、ひとまず乾いたタオルで、水の滴るコートを拭わせていただきました。

RIMG1499小店は、店内に段差があります。手提げバッグをこちらにお預けになり、杖を頼りに、もう一方の手を支えになりそうなところについて、低いほうへと降りられる。そのお姿を見て、初めてのお客様でないことに気がつきました。

しばらくすると、4冊を帳場に。洋書のペーパーバックなど、比較的目方の軽い本ばかりですが、ビニール袋に入れ、お持ちになったバッグにお入れすると、先に入っていたコピー用紙の束と合わさり、重さを増しました。

そのまま提げてお帰りになろうとするので、「濡れますよ」とまたしても意味のないお声掛けに、「いや駅までだから」と仰います。

「それなら傘を持ってご一緒しましょう」と申し出ると、「いや結構です」と固辞されます。無理強いできない雰囲気があって、結局そのまま、雨の中へ出て行かれる姿をお見送りしました。

この方を含め、本日のお買い上げは5名様。それでも最低売上ではないところが不思議です。

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2012年11月25日

うれしくない連想

朝起きて、お天気を知るためにTVをつけると、「今年の冬は寒いです、充分覚悟してお支度を」と言っておりました。

今朝はまた、各地で今シーズン一番の冷え込みだったとか。東京は寒いといってもそこまでではなく、日中は昨日に続いて学校祭日和。昨日と違って、店の前の人通りはありました。

そのおこぼれで、小店に立ち寄る方も昨日よりは多く、レジを打った回数も多い。しかし、いざ締めてみると、幾らも変わらない数字です。

日が落ちると、その人気もすっかり消え、ドアを閉めたこともあって、いつもの静かな店内に戻りました。たまに入ってくるのは配達業者と、選挙に向けてのチラシ配りの人。

そういえば選挙があるのだと気づかされて、すっかり気が重くなりました。何時にもまして疎外感は深刻です。

イメージ (98)ちょうど手元に四ツ橋「文楽座」の番組帖が3冊。この劇場は昭和5年に洋風建築として建てられ、昭和20年に戦災で消失したとか。すでにこの時期でさえ、興行的には楽でなかったでしょう。

ちなみに3冊は昭和7、8年のもの。例によって裏表紙の広告が面白く、季節外れですがご覧ください。

で、これを見ているうちに、この文化遺産への支援打ち切り発言で物議を醸した、ご当地の首長を思い浮かべてしまいました。

いまや大張り切りで全国を飛び回っているはずの、この人の危うさは、どうやら理念とか、思想とかいうものとは無縁らしいところで、かの「退廃芸術」を敵視した異国の独裁者を髣髴とさせるという人もいます。

そんな大物ではなかろうという意見には、あちらも登場時は取るに足りない人物だったという反論が。

いずれにせよ、嘆いているだけでは一歩も進まないということは、よく分かっているのですけれど。

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2012年11月24日

30回目の駒場祭

RIMG1498駅の方から、一日中、乗降客に呼びかけるマイクの音声が聞こえておりました。どうやらお天気も回復して、今日は駒場祭日和だったことでしょう。

そのアナウンスの声さえ、店の中にいると静かさを際立てるばかり。「駒下(こました)」は、別世界の森閑の中にありました。

毎年指を折って数えていても仕方ないのですが、今年は、小店が開業してから30回目になる駒場祭です。

そういえば、新聞やら、パンフレットやらに広告をといって、二三人連れ立って学生さんが勧誘に訪れるのは、毎年の決まりのようでしたが、何時頃からか、そうしたこともなくなりました。

頼まれれば些少のお付き合いはしてきましたから、そんな必要がなくなったのかもしれません。

良いスポンサーがつくようになり、面倒な小口を集めなくても済むようになった、と考えるのは僻目かもしれませんが、充分考えられるところです。なにより、パンフレットなどの作成にかかる費用も、以前に比べ格段に安く済むようになっていますし。

30年前だって、学生さんと地元商店街との結びつきは、すでにかなり細くなっておりました。それから今日に至るまでに、そもそも商店街というものが、力を失ってきています。「広告取り」などという風習は、もはや過去の遺風なのかもしれません。

誤解のないよう、いそいで申し上げて置きますが、小店は個別の団体やグループの広告勧誘には、一回を除いて応じたことはありません。今後も、これをご覧になって勧誘に来られても、お受けできませんので悪しからずご了承ください。

その一回が何であったかについては、またあらためて。

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2012年11月23日

祝日の明治古典会

朝から雨で、そのうえ祝日で、さらに今日から駒場祭で。小店にとっては良くない条件が重なった日になりました。

普通なら明治古典会はお休みですが、今日は特別に開催。先週が、東京古典会の大市で休会となったため、二週連続で休むことは好ましくないとして。

そのため店主は、朝から市場に出かけなければなりません。店の方をお休みにしてしまうという手も考えられましたが、すでにアルバイトのχ君には出勤のお願いもしてありました。そうそう勝手ばかりは言えません。

結果から申せば、アルバイト代くらいは何とか売り上げることができたようです。

恐れていたよりは良かったのですが、もちろん喜ぶわけには参りません。店を休んだよりはマシであった、というばかりのことで、プラスが生み出されたわけではありませんから。

市場に出品をいたしましたので、まあそれも、今日の売上であると考えることにいたしましょう。しかし思うような値にはならず、売れたのは半分にとどまりました。

その市場ですが、思ったより出品点数は多かった。しかし一点単価が伸びず、通常の開催日ほどには出来高が上がらなかった、というのが実際のところです。

来場者数は、普段よりやや少ないかと感じられる程度でした。こちらの休日開催についても、マイナスとは言わないが、さしたるプラスにはならなかったというところでしょうか。

CA3K0468ある来場者は店主に向かい「休みの日は休んでもらいたい」と、冗談めかしつつ本音を洩らしました。開かれていれば、来ないではいられないという、古本屋の心性をそこに見ることができます。

もっとも、それがなくなったら、市場も危ういのですが。


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2012年11月22日

ドラマ化が話題に

TKIの会議で午後から古書会館へ。

ところで、皆様にはどうでも良いことでしょうが、このTKIというのは「東京組合インターネット委員会」として発足した時からの略称です。その後「委員会」は「事業部」と改称されて続いてきました。

最近になって、もっと分かり易い名称にしようということで、組織名を「『日本の古本屋』事業部」と改めました。確かに実態に即した名前ではありますが、新たな悩みが生まれました。略称をどうするかということです。

今日の会議でも、その話題が出ましたが、決定的な案は出ず、もう少し様子を見ることになりました。

さて第1部2時間、第2部2時間、計4時間の定例会議が終わろうという頃、理事会側として出席していた広報部長が、一つのニュースを知らせてくれました。

『ビブリア古書堂の事件手帖』がドラマ化されるというのです。昨日記者発表されたので、もうオフレコではないと断りながら。事前に市場や業界のディテールについての取材など、接触があったらしい。

「いろいろな感想はあるでしょうが、どうか暖かいコメントを寄せて欲しい」というのは、組合広報として当然の要請。

本が売れない時代に、本の話(を書いた本)が売れるのは、本屋としては納得がいかない部分もありますが、ともかくもベストセラー。すでにコミックにもなり、さらにドラマ化ということであれば、古本、古本屋というものに対する認知度が、大きく上がることが期待できます。

CA3K0467店主も前に一冊読む機会がありました。売れている秘密は掴めませんでしたが、本と本屋に対する愛情は感じられました。その点が、ドラマを通しても上手く表現されることを、切に望む次第です。

もちろん4時間の会議の大部分は、略称問題や、ドラマ化の話題より、もっと重要な問題を幾つも話し合ったのですよ。

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2012年11月21日

よみがえる記憶

たびたびお伝えしていますように、健忘症の店主は、自らの過去について、すこぶる怪しい記憶しかもっておりません。しかし昭和51年6月16日には大阪にいたということは、歴史に照らして確かです。

もっと詳しく言えば、北区のどこかにある喫茶店におりました。そこでアリと猪木の「世紀の茶番」というのを、仕事をサボって見ていたのです。それがその日だったというのは、WEBで検索して調べました。

CA3K0461なぜ突然そんなことを思い出したかという理由は、ここにご紹介する写真集のおかげ。Muhammad
Ali / by Magnum Photographer.
Abrams, 2004.

アリの名は、むろん当時から鳴り響いておりましたが、それがアメリカにおいてどれほど偉大な名であったかを知ったのは、ずっと後のことです。

この写真集のジャケットの袖にある紹介文には、「オリンピック金メダリストにして、世界ヘビー級チャンピオン、そして20世紀のイコン」とあります。

「蝶のように舞い、蜂のように刺す」が "float like a buttefly, sting like a bee." だというのも、改めて知りました。なるほど float だったのですね。

もう一つ記憶に残っているアリは、病に冒された体で聖火ランナーを務めた姿ですが、それがアトランタ・オリンピックで、1996年のことだったというのも、同じ紹介文から確かめられました。

あれが、もう16年も前のことだとは!さらに今年の春、偶然つけていたTVのBS放送で、大リーグの始球式にカートに乗って現れたアリを見ました。なんとも哀しい姿でした。様々なことを考えさせられました。

ところで猪木戦は、最後まで見ていたわけではありません。もともとそれを見るために立ち寄ったのではなく、たまたま入った店で放送されていたのです。36年前の言い訳をしても仕方ありませんが。

konoinfo at 19:32|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
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