2013年10月

2013年10月31日

70年の遍歴を思う

RIMG0641珍しい本ではないようです。
Jack Price, News Pictures.
Round Table Press, 1937.


横断検索サイトのBookfinderで調べた限りでは、35件が検索されました。

しかしよく見ると、複数サイトに重複登録している書店も多く、さらに半数以上はオンデマンドによるリプリント版。オリジナルは結局7〜8冊を数える程度です。

そうだというのに、一番安いものは380円。かなり状態は悪そうですが、小店のこの本も、決して良い状態ではありません。

ちなみに一番高いのは12000円ほど。「非常に珍しい」ジャケット付き、「ちょっと」ヤケて「僅かに」スレがある、A very nice copy of this excellent photojournalists manual. だそうです。

高い方と勝負はできそうもありませんが、安い方よりはましな感じがする、この一冊、果たしてどんな値段をつけたものでしょう。

実はこの本の見返し紙に押されている印に、ちょっと興味をそそられています。

横径6僉⊇跳4.5僂梁扮澆里覆に、「検閲済/年 月 日/渡集団報道部/検閲者印」という文字のある印で、最後のところに「田中」と読める朱の角印。年と月の間に「Dec 4」、月と日の間に「1943」と、日付印が押されています。

見返しの表紙裏側には、右下に小さな丸いシールが貼られていて、Camera Supply Co. 134-138 Escolta-Manila. P.I. という文字と、三脚に乗った大判カメラの絵。

これらから察するに、南方に展開した日本軍の報道部が、資料として、マニラの写真店で求めた本のようです。

どのような運命をたどって、今ここにあるのでしょうか。

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2013年10月30日

お悔みごと

RIMG0633久しぶりに同業の葬儀に出かけました。同業といっても、亡くなられたのは、その父上。享年88。

故人を直接知る人は、参列者のうちの半数はおろか、3割にも満たなかったかもしれません。かく申す店主も、一、二度、お見かけしたことがある程度。

しかしそのご子息である三代目とは、明治古典会の会員として、二度に亘る同期理事として、浅からぬお付き合いがあります。

同じように、業界人として、深浅さまざまな付き合いのある本屋は数多くいるわけです。さらにこの三代目には兄上がいて、そちらは美術業界で、やはりご活躍中。

というわけで、通夜、告別式の式場が落合斎場の一室だと聞いた時から、仲間内では強い懸念がありました。手狭に過ぎるのではないかと。

ご高齢で亡くなられた個人商店主の葬儀に、通常それほど大勢の会葬者は見込まれません。請け負った葬儀会社も、そんな思い込みがあったことでしょう。遺族は遺族で、控えめに見積もるのが人情。

心配した仲間が、いろいろと意見を出しましたが、時すでに遅く、手伝いの人数を増やす程度しか手はありませんでした。

そして今日の通夜。この間の事情が分かっている店主は、早めに出かけました。記帳を済ませ、焼香の列に並ぶと、前から二列目です。

「本日のお焼香は、一回でお願いします」と声をかけられて、読経もなにやら短めに切り上げ、思ったより早く焼香が始まりました。

お清めの席は遠慮させていただき、そのまま外に出たところ、そこには、ずいぶん長く伸びた会葬者の列。

まっすぐ店に戻ると、午後7時前。お焼香は、まだ続いていることでしょう。お手伝いもせずに帰ってきて、何やら申し訳ないような気もいたします。

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2013年10月29日

洋書会で仕入れ

あおてん(青展)と言っただけでは、今やグーグルにも引っかかりませんが、やっぱり業者同士だと、この言葉の方が通りが良い。「神田古本まつり」というのが現在の正式呼称で、こちらはさすがに沢山、検索に出てきます。

その青展、今日は朝からの雨のため中止。日曜日は大変なにぎわいだったようですが、昨日の月曜日は、普段の平日と変わりない程度の人出しかなかった、というのが、洋書会会員の中で神田支部に属する数名の、一致した感想でした。

そして今日の雨。気温もぐっと下がって、これだけは今時分らしい気候になりました。秋が一気に深まる時期ではあります。

RIMG0639さて10月も5回目の火曜日で、ようやく最終回。ウナギに至るまでの道のりが遠い、当番月でした。なんだかんだと言いながら、やはり月末のお昼は、うな重ということに落ち着きます。

本日の出品は少なめでしたが、先日来ポツポツと出品されているファッション資料の口があって、19世紀末から20世紀初頭の、彩色石版やポショワールが挟み込まれた、本や雑誌が人気を呼んでいました。

店主は別の口、医学思想、身体論から美学までという、段ボール10箱の研究書に関心を集中して、12点に仕分けたうちの5点を買い込みました。量からすれば7割方を買い占めた恰好になるでしょうか。

ソフトカバーの本が多かったので、比較的安く落札できました。内容的にはイマドキのものが多く、来週末に迫ってきた「洋書まつり」に、格安の値をつけて並べるつもりです。

すでに仕入れてある別口も、思想、歴史関係の、まだイキの良いところが中心です。比較的似た部分もある、この二つの口を合わせると、かなりボリューム感が出るはず。これが売れないようなら「洋書まつり」に未来はない、くらいの意気込みで値付けを始めました。

洋書にご関心のある方は、ぜひ来週末、東京古書会館へ足をお運びください。

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2013年10月28日

絵本を推理する

ずっと以前に、市場でアフリカ言語の口を買ったことがあります。殆どがフランス語や英語による学習書でした。

書入れがあったり、状態が悪かったりして、売り物にできそうなものはわずかで、大半は処分してしまったはずです。

イメージ (143)その時の残りが、出てきました。現地で出版された、教科書と児童書です。全部で30冊ほど。その内の8冊は、独特の文字で、すぐにエチオピアのものだと分かりました。

残りの20冊ばかりは、アルファベットが用いられているため、どこの言語かなかなか分かりません。ずっと見ていくうち、ソマリアという文字が読み取れました。どうやらソマリ語らしい。

ちなみにこの絵本で使われているのは、エチオピア語ではなくアムハラ語といい、使われているのはゲエズ文字というのだと、Wikipediaで学びました。

ソマリ語もアムハラ語も母語話者人口は1000万人以上で、世界の言語のなかでは、それほどマイナーな存在とは言えません。しかし、いくら眺めていても、理解する手掛かりすら見つからず、まさに It's Greek ならぬ It's Amharic to me です。

ところが、二冊ご紹介したうちの左側、ウサギの絵本は、32頁のお話に各頁一枚ずつ、つまり32枚の絵があって、これを眺めていくうち、どんなお話かが分かりました。

お母さんウサギが買い物に出かけ、留守番の子ウサギたちは、めいめい家事に取り組みます。ところが主人公ウサギだけは遊びに出て、なかまと川遊び。

帰ると熱を出して病院に運ばれます。心配げに、じっと付き添うお母さん。やがて元気を回復し、一家で喜び合うところで大団円。

右の「花と蝶」は、25頁に25枚。しかしこちらは表情がないせいか、読み解けませんでした。

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2013年10月27日

老人と若者

RIMG0636今年もそんな季節になったらしい。植木屋さんが、朝から表のハナミズキを刈り込んでいます。

男性の職人さんが高い脚立を組んで昇り、ハサミで枝を切り落とすと、女性が下で掃き集める。その作業を一本ずつ手際よく繰り返し、手早く店の前を終えて、他に移っていきました。

このペア、男性はまだ若手という年恰好なのですが、女性はかなり腰の曲がったご老人。一見すると親子どころか、お祖母ちゃんとお孫さんとも見えます。

しかし思い出しました。去年か、その前か、やはりこの女性が一緒で、その時の男性(たぶん今回とは違う人)とのやり取りが、身内同士の会話ではなく、まるで使われている人のようでした。

それが何とも不思議で、記憶に残っていたのです。確かに、見かけより体は良く動いて、今回も充分仕事の手助けにはなっていました。それにしても、おいくつなのでしょう。

午後、やはりお孫さんとお祖母ちゃんといった感じの、女性二人連れが、店に入ってこられました。初めて来られたようで、物珍しげに店内を見回しておられます。

やがてご高齢の方の婦人が、「『旧新約聖書』はありますか?」とはっきりした声でお尋ねになりました。

普通は単に『聖書』とお尋ねになります。そこでさらに伺うと、やはりお目当ての版があったようで、「あいにく」とお答えするしかありませんでした。

その後のお二人の会話などから察するに、日曜学校からの帰り道。さらにお二人はアカの他人。初対面ではないにせよ、連れ立って歩いたのは初めてのことのようです。

「私は先に帰りますから。またお会いしましょう」と老婦人は、まだ学生さんのような若い女性に告げて、杖を着きながらゆっくりと去って行かれました。

「来月には93歳」になられるそうです。

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2013年10月26日

行き止まり

RIMG0633「古書組合に尋ねたら、北沢書店さんを紹介してくださったので、お電話したところ、そちらのお店を紹介いただきました」

という電話をいただいたのは、もう二週間以上前のことです。お話の用件は、ある本を探していて、何とか手に入れたいのだということでした。

お探しの本はSidney Kingsleyの戯曲でDead Endというタイトル。なぜそれを探しているかという理由を、思い出話を交え、実に丁寧に、時間をかけてご説明くださいました。

その理由はともかく、手に入れたいお気持ちは切実のようです。しかしこの手の古い戯曲(1936年作)の本が、そう都合よく国内で見つかるとも思えません。

Bookfinderで調べ、AbeBooksで数冊出ていることが分かりましたので、そのことをお伝えしましたところ、ぜひ取り寄せて欲しいとのことです。

本代2000円、送料2000円、それが見つけた中で一番安いものでした。AbeBooksの送料は一般に驚くほど高いのですが、ここに手数料が含まれているのかもしれません。

小店も無料奉仕ではありません、1000円の手数料を加算して、合計5000円になる旨を申し上げたところ、内金として半額入れると仰って、すぐにご送金いただきました。

早速注文の手続きを始めると、送料2000円というのは船便料金だと分かり、もう一度驚きました。10日ほどで届く便の料金は、更に800円上乗せが必要です。早くカタをつけたいので、そちらを頼みました。

ここしばらくAbeBooksで頼んだことがなかったので、Ebayと同じように考えて、もう注文が済んだような気になっていたところ、10日過ぎても、送ったとも、送れないとも音沙汰がありません。

ようやく、来るはずの、書店からの確認メールが届いていないことに気が付きました。改めて書店に連絡しても、やはり返事がない。AbeBooksのトラブル担当に連絡したところ、今日になって、先方でも何度かメールを送ったらしいと告げられました。

お互いのメールはどこに消えてしまったのか。まさにDead end状態です。

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2013年10月25日

あと一声

市場で最大の関心事は、通常の場合「何がいくらで落札された」ということです。しかし今日の明古に限って言えば、最も関心を集めたのは、「何がいくらで落札できなかった」ということだったでしょう。

何故そういうことになったのかと申しますと、今日は月末の特選市で、入札市を終えてから恒例のフリ市(口競り)が行われました。その最後に、今日一番の目玉商品が、競りにかけられたのです。

朝、商品陳列の段階で、幹事の誰もが驚いたその商品というのは、「滝口修造ドローイング」と封筒に記された、A5判ほどのサイズの一冊のルーズリーフノート。

各葉には、水彩と思しい実験的な絵画が描かれています。44枚あるらしい。冒頭の紙には、本人の署名と短い識語、それに年号を表すと思われる1961という数字。

もし売買が成立すれば、それだけで今日の出来高が何割増しかになるような、珍しい商品であることは、店主の目にさえ明らかでした。

結果から言えば成立しなかったわけですが、これがもし入札であれば、止め高であったということしか、参加者にはわかりません。誰がいくら入札したかということも、いくらなら落札できたのかということも。

フリの場合は違います。競り上げて、それでも届かなかったということ、つまり止め値はそれより高かったということは、会場にいる誰にも分かります。

実はこの商品をフリの最後に持ってくることに、当初は不安視する声がありました。出来なかったとき、場が白けてしまうのではないかと恐れたからです。

RIMG0634しかし杞憂でした。案じたとおり出来なかった(成立しなかった)のですが、競り声は、かなりの金額まで達し、それだけで会場は沸きました。あと最後の一声があれば、というところまで行ったのです。

この一点の不成立が告げられ、市場が終わった時には、健闘をたたえるような拍手が起きたのでした。

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2013年10月24日

お天気頼み

RIMG0632この一週間ばかり、古書会館で一番の話題は、台風の行方でした。

でした、と過去形ではありません。今も繰り返し予報を確かめながら成り行きを案じている人が大勢いるはずです。

今週土曜日からの「神田古本まつり」の成否は、参加する書店ばかりでなく、業界全体にとっても、大きな影響を及ぼします。

この催しのために、各店が早くから準備して仕込んだ商品が、どれほど捌けるかによって、その後の市場の相場も変わってくるはずだからです。

沢山売れて、また沢山仕入れようという本屋さんが増えることが業界の活性化につながることは、言うまでもありません。

そのためにも、古本まつりの期間中、お天気に恵まれて、人出が増えることが何より望まれます。

しかし、今のところ予想は芳しくありません。コースこそ、当初の予想より遠のいてくれそうですが、降られれば同じことです。

今回、直撃の恐れもあったことから、毎年掲げている大看板を、今年は取りやめにしたそうです。

数年前、やはり台風の接近が予報されて、直前になって看板を下ろしたことがありますが、その費用が馬鹿にならなかったと聞きます。その時の反省から、今回は事前に、掲げないと決断したのだとか。

これが空騒ぎに終わってくれることを、参加店のためにも、業界のためにも心から願っております。

この期間、野天で開く即売展は、神田だけではありません。「池袋西口公園古本まつり」は昨日から開催中。ここもかき入れ時は週末でしょうから、お天気頼みは同じこと。

今年を異常気象というべきかどうかは、専門的には議論のあるところでしょうが、本屋にとっては十分異常な天候続きです。

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2013年10月23日

嬉しい返品

古本屋の市場(入札会)には、値引き、返品の申し出ができる期限が設けられています。

通常は落札後一週間、大きな市会などでは二週間という場合もあります。もちろんクーリングオフとは違いますから、明確な理由がなければなりません。

かなり特殊な制度だと思いますが、もともとは、落丁などの欠陥商品を、故意にせよ、知らずにせよ、流通させることがないようにと、設けられたルールだったと思います。

落丁本というのは、ほとんど見かけなくなりましたが、値引きや返品を申し出るケースは増加する一方です。

昔に比べて、出品量が増え、その場で十全には調べきれないということもあるでしょう。しかしまた、僅かな欠点をクレーム対象とする例も、増えてきているようです。

それは、お客様の要求が高くなっていることの反映だとも言われます。ネットなどでは、新本並みの状態を求める方も多いとか。

先日小店が出品した大量の日本書は、熱心に勉強された方の蔵書でしたから、線引きなどで返品、値引きが多いことを覚悟していました。

しかし結果的には値引き一件、返品一件。思ったよりも僅かでした。他にも線引き本はあったに違いありませんが、織り込み済みの入札で、想定内に留まったのでしょう。

今日、その返品された4本口がルート便で戻ってきました。確かに、何割かの本に線が引かれていて、落札された方は、僅かな値引きでは合わないとお考えになったのでしょう。

RIMG0630小店にとっては、大変ありがたい返品になりました。元々自分の店で売りたいような本が多かったのですから、良い仕入れができたようなものです。

線引きのあるものは格安に、そうでないものも少し安めに値をつけて、棚に入れてみようと思います。必ずキャンセルされた落札額以上には、売り上がるはずです。

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2013年10月22日

在庫のお尋ね

昨日店番をしている時のことです。表にスポーツタイプの自転車が止まり、黄色いジャージにショーツというサイクリング服の若者が、ゆっくり店内に入ってきました。

RIMG0628まっすぐ帳場の前に来ると、腰を落とし、座っている店主の顔を同じ高さで見据えながら、ゆっくり一音ずつ、こう尋ねました。

「すいませんコーテーダイキョーという本はありますか」

この音が、頭の中で「黄帝内経」と表示されるまでに、若干の時間を要しました。突然でもありましたし、そのいでたち、および物腰との落差もありましたので。

「ああ、漢方の」「そうそう、そうです」「残念ながら、うちにはありません」「そういう関係の本は置いてありませんか」「置いておりません」「そうですか」

あっさりとお帰りになりました。

初めは何か、素っ頓狂なお尋ねかと思ってしまったのは、見た目に惑わされたからでしょう。本屋に来て、本を尋ねるという、極めて真っ当なお客様だったのでした。

さて今日の洋書会、先日来整理を続けてきた口の最後として、中国書を出品いたしました。カーゴ1台半。それを大きく7点ほどに分け、札を入れてくれそうな同業に声をかけまくり、その結果、札の数だけは、ほかの出品に負けないほど入りました。

しかし開札の結果は、かなりシビアなもの。本の値段は量ではない、とは、日ごろから充分理解している筈ですが、自分の知らない分野に関しては、つい素人と同じ感覚を持ってしまいます。

その意味では、仕分けも素人仕事だったかもしれません。しかし入札された専門店からも「こんなところですよ」と言っていただいたので、持って瞑すべしでしょう。

ところでこの大量の中国書の中には、医学書らしきものもありましたが、「黄帝内経」の文字は見つけられませんでした。

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