2013年11月

2013年11月20日

最年少記録

毎朝というわけではなく、しかしいつも同じような時刻に、近くの保育所の幼児たちが散歩して通ります。

その際、時折、小店に立ち寄っては、付添いの保育士さんが絵本を買ってくださったりしておりました。

RIMG0604つい数日前にその保育士さん、思いついたように、一人の子に一冊の絵本と硬貨を握らせて、「お買いもの」をさせてみたのです。

3〜4人のなかでは一番しっかりした(と言ってもみな一、二歳児ですが)女児が、店主を見据えるようにして店の中に入ってきました。

帳場まで来ると本を差し上げ、硬貨を持ったほうの手も出して「ください」と言います。

いそいでまず本を受け取り、ゆっくりトレイを差し出すと、硬貨を握りしめた手をその上で広げ、コロンと落としました。

絵本を袋に入れて手渡すと、しっかり持って表に出て行きます。表では保育士さんが待ち構え、思いっきり褒めたたえる声が聞こえてきました。

次に今度はもっと幼い、まだ歩くのも覚束ないような子が、同じようにやってきて、こちらは黙って本を持ったまま、立ち尽くしています。

店主が手を伸ばして本とお金を受け取り、本を袋に入れて持たせると、くるりと戻っていきました。表では、やはり盛大な褒め声。

幾日か置いた今朝、再びそのご一行が「お買いもの」をしてくださいました。

一人目はこの前と同じ、一番のお姉さん。すっかり慣れた様子で店主を見つめる目にも、前回ほどの緊張はありません。続いてもう一人、これはまた新手の、よちよち歩き。

ずいぶん若い常連さんができました。

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2013年11月19日

ある訃報

昨夜、一件の訃報メールが入っておりました。崇文荘書店の佐藤毅さんが亡くなられたという報せです。

亡くなったのは11月5日。故人の遺志により親族のみで葬儀を済ませ、今後も香典、供物など一切ご遠慮したいとのこと。二週間余り、伏せておかれたことになります。

実はこの件に関して、店主は早くから情報を得ておりました。親族にあたる同業の一人が、必要あってその事情を打ち明けてくれていたのです。もちろん他言無用、誰にも話さないようにと口止めをされて。

RIMG0650今回の報せに、業者間には戸惑いが広がりました。組合の理事長を務められるなど、業界へ多大な貢献をされた大先輩です。洋書会でも長く中心的な存在として、活躍されました。

ついひと月ほど前の、一誠堂書店110周年記念パーティーでも祝賀スピーチをされ、98歳のお元気なお姿を、多くの人が目にしたばかりです。

そんな突然のご逝去であれば、諸事情が許さないため、とりあえず身内で密葬するということは、故人のような業績の方の場合、大いに考えられることです。店主なども、そのように思って、口を閉ざしておりました。

しかし、今日伝わってきた文面によれば、ただ逝去を伝え、弔問を謝辞するのみ。店主などよりはるかに交際の深かった同業は大勢おられますから、その人たちにとっては、なんとももどかしい気がしたことでしょう。

ご逝去を秘匿してきたのは、改めて追悼の場を用意するためだろうと考えておりましたから、店主にとっても、やや意外な感があります。

ご遺族には、自らそのような場を設けるお気持ちはないのでしょうか。あるいは、その準備が整わないうちに話が漏れて、ひとまず訃を明らかにせざるを得なかったのでしょうか。

このうえは仲間内だけでも、静かに大先輩を偲ぶ機会を持ちたいと思います。

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2013年11月18日

コミュニケーション・ツール

店を開けて間がない午前中、一人の女性が帳場の前に立つと、タブレット端末を差し出して、その画面の文字を指し示し、次にその手を「アリマスカ」と棚の方に向けて振りました。

見ると「茶道」の二文字、その後に中国語の簡体字らしいものが続いています。「これは何?」と日本語で尋ねると「Book」と英語の答えが返ってきました。

それからはお互い英語のやり取り。しかし店主同様、それほど得意というわけではなさそうです。

それでもどうやら茶道具類の図版に興味があると分かったので、少しばかり並んでいる棚へ、案内しました。

するとすでに一人の男性が図録を一冊抜き出していて、それがお連れさんらしい。「このあたりの本をご覧ください」と言い置いてあとはお二人の好きに任せました。

RIMG0637時折何か言い交しているようでしたが、ごく低声で、何語を話しているかも分かりません。あまり長いこと静かなので、ちょっと様子を見に行くと、男性は床に座り込んで図録を繰っておりました。

それでもやがて、何冊かの本を帳場にお持ちになり、お勘定を済ませると、女性が今度は道を尋ねたそうです。

目的地の発音が難しいのか、またタブレット端末を出して操作すると、読めない文字列のなかに「下北沢」という三文字が見えました。そこまで歩いて行きたいと言います。

日本人相手に説明するのだって、楽ではありません。線路伝いに行けば着くということは確かなのですが、ずっと線路が見えるわけではなく、そこを迷わずに行く目印を教えられるほど、詳しくもないのですから。

「一時間くらいかかりますか」と、どうしても歩きたい様子なので、ともかく線路に沿っていると思える道を行きなさいと、まず駅のガードを潜り左へ向かうまでを教えました。

あとはお二人の、方向感覚を信じるしかありません。もし迷ったとしても、タブレット端末で尋ねながら行けば、一時間もあれば着くだろうと、送り出したのでした。

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2013年11月17日

高価なパンフレット

昨日のお昼前、一件、宅買いに行ってきました。

9月頃に一度、お問い合わせがあり、お電話でのやり取りの上、他を当たってみるということになった、と思っていた件です。

あれから連絡がないが、どうなっているのかというお電話が留守中にあり、日程が取り決められていたのでした。

店主の父親とちょうど同い年というご高齢の某大名誉教授で、フランス演劇などがご専門。本来、小店にとっては、またとない仕入れ先ともなるべきところです。しかし先の電話で伺った限りでは、今回ご処分されるものは内容、分量とも、さほど期待できるものではなさそうでした。

はじめてお目にかかった先生は、お年の割には驚くほどお元気で、しかも電話越しよりは、ずっと気さくで親し気な対応をしてくださり、おかげでこちらも、率直にお話ができました。

というのも、今回お売りいただける本として積み上げられていたのは、ざっと200冊ほど。その殆どを占めるのはヤケもイタミもあるペーパーバックで、しかも旧蔵ラベルなどが背中に貼られた、商品とはなりそうもない本です。そこで、全部引き取るとすればこれこれですと、お値段を提示いたしました。

しばらく値段交渉になりました。もう少し何とかならないかと仰います。結果、付けた値段に見合うだけの本を選び出し、残りは置いて行ってよいということになりました。むしろ有り難いお話です。蔵書ラベルのあるものを除けると4〜50冊ほど。それを車に積んで店に戻ってまいりました。

今日になってその整理を初めて、ちょっと愕然。背にラベルこそないものの、扉に学校印や研究費印のある本が、1/3ほどあるのです。さらに印のない本の半分ほどには、太い線引きや書入れが入っておりました。

つまり無傷なのは十数冊。それも直ぐに売れそうもないフランス書です。

イメージ (149)すっかり気落ちしておりましたところ、面白そうですからぜひお分けくださいと引き取ってきた一冊のパンフレットが、ネットでは驚くほどの高い値が付けられていることが分かりました。

もちろんその価格で売れるという保証はありません。結果として、このパンフレット一枚に、相応な原価がかかる形となったわけです。

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2013年11月16日

宣伝不足

昨日、同業というより同僚と呼ぶ方がふさわしいような、業者仲間が店を訪ねてくれました。

突然の訪問は、駒場の博物館に展覧会を見に来て、その帰りに立ち寄ったというのです。

日ごろ市場では親しく言葉を交わしていても、店で改めて顔を突き合わせると、何か不思議な感じで、つい言葉づかいまで改まったりしてしまうのに、自分でもおかしく思いました。

イメージ (148)その展覧会というのが、左の『ダンヌンツィオに夢中だった頃』。先月からやっているのに、昨日聞くまで、知らずにおりました。

同僚的同業の「とても面白かった」という言葉に促されて、今日の午後、店主も一見に及んだのです。

たしかに、小ぢんまりとしたものではありますが、なかなか見ごたえがある展示でした。このパンフレットも無料。「さすがに東大はお金がある」と、妙な関心をしていたのもその同僚です。

それにしても店主の不勉強さに比べ、彼の勉強熱心なことに、改めて感心いたしました。そういう本屋さんは他にも大勢いますが。

もひとつそれにしても、監修の先生をはじめ、小店をご存じの関係者も何人かおいでのはずで、ポスターの一枚も貼ってくれと頼みに来られても良かったのに。

などと思うのは、寒さも緩んでお出かけ日和の土曜日、駅の周りや校門付近はなかなかの人出だったのですが、いざ博物館に入ると、他に入館者は数えるほど。

もう少し宣伝すれば、もっと大勢人が来るのではないかと、余計なお節介を焼きたくなりました。

しかしそれは、たちどころに自らに返ってくる言葉です。行きと同じように賑わいを抜けて、帰り着いたわが店は、博物館並みの静けさでした。

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2013年11月15日

網にかかる

RIMG0649そんなに始終あることではないのですが、『日本の古本屋』に書籍をアップすると、まるで待っていたかのように、素早くご注文をいただくことがあります。

Amazonなどでは、売れ筋本をアップすると、殆ど即座に注文が入るといいます。それはまあ驚くべきことではありません。欲しい本が登録されたらアラートが入る仕組みも、サイトに備わっているからです。

『日本の古本屋』自身には、まだそのような仕組みはありませんが、ネット上に網を張る(畳語のようですね)方法はいくらもありますから、欲しい本が出ればいち早く察知するのは、それほど難しくないかもしれません。

ですからタイトルや著者などのキーワードがはっきりしていて、目配りをおさおさ怠らなければ、他人より先に、欲しい本を手に入れることも可能なわけです。

それでも時に、どうやってこの本を探し出したのだろうと、不思議に思うことがあります。もちろん、書名で検索したら折よくヒットしたということも考えられます。

しかし最近ご注文いただいた本、『朝鮮王朝 宮中衣裳』(東亜出版社 1985年)は韓国で出版されたもので、このタイトルを検索窓に打ち込んだとは、あまり想像できません。いくつかの単語をキーワードとして入力されたのでしょうか。

ちなみにこの本は、形状も内容も展覧会図録のような体裁で、図版を中心に日韓英の説明文が付されていますが、その著者は李方子となっています。ご本人の肖像写真も掲載され、見返しにはサインペンで署名も入っておりました。

店に並べておいても簡単には売れそうもないと考えて、『日本の古本屋』に上げてみたのですが、調べてみると、これがネット上に存在していたのは約二週間。

特別早いというわけではありませんが、いま申し上げたような理由で、それほどすぐに売れるとは思っておりませんでしたから、一体何を手掛かりに見つけられたのかと、ちょっと伺ってみたい気にもなったのでした。

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2013年11月14日

虫が好く

古い本を手元において、外国の販売サイトで検索していたら、面白い言葉に出会いました。

some insect lose to red cover というのがそれです。

日本にも虫損という言葉がありますが、和本の場合は本体に穴をあける wormhole である場合が殆どです。それに対して洋本の虫損は、まさにこの画像でも分かる通り、表面が擦り切れたように剥げていきます。

どのような虫がこの害を及ぼすのか、はっきりしたことは分かっていません。あるいは店主が知らないだけで、すっかり解明されているのか。いずれにせよ剥げ方にもいろいろあるので、一種類の虫だけの仕業ではなさそうな気がします。

虫が好くというのか、やられる本は決まっていて、本書がそうであることは、手元の一冊にも、遠い異国の在庫にも、同じ被害があることで明らかです。

まだこれなどは、僅かな虫損ですが、そのまま油断していると、いずこからともなく現れる怪虫に、さらに浸食されかねません。念のため、薄いポリ袋に入れてしまっておくことにいたしました。

ところでこの本ですが、古いplaybillや劇場の図版が多く入った、ニューヨークの興行史で、小さな本ながら資料として面白そう。

そう思ったのが調べてみたきっかけですが、驚いたことにリプリント版、オンデマンド版が無数に出ています。したがって価格も思ったほど高くありません。

しかし、持ち重りのするこの質感と、古いクロス層の雰囲気は、今時の復刻版からは得られないものでしょう。
イメージ (147)
おそらくリプリント版には、虫も食わないと思います。

Ruth Crosby Dimmick, Our theatres to-day and yesterday
H. K. Fly Co, 1913. 97, x p. ; 19 cm


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2013年11月13日

『日本の古本屋』広告

昨日午前、古書会館で洋書会の作業をしている最中、J印刷のTさんがやってきました。

再来週開かれる、明治古典会特選市のための宣伝ハガキを校正して欲しいというのがその要件です。仕分けの手を休めて、その場で印刷されている文字を追いました。

そのなかに、ある画家の油彩画が出品されるとあり、解説にSMサイズと書かれています。

「これはサムホールサイズということでしょうか」とTさん。それに対し、店主は「サムホールならThumholeで、Sはつかないんじゃないの」

知らない者同士で悩んでいても仕方ありませんから、同業に携帯を入れて、確認したところ、SMサイズというのは、確かにサムホールサイズのことだといいます。

分かる人には分かるのだから、その表記のままで行くことで、その件はケリとなりました。

しかしなぜサムホールがSMサイズなのだろうかと、いささかの疑念が残り、市場に置いてあるパソコンから検索してみました。

その結果、キャンバスのサイズを示す言葉としてのサムホールは、なるほどSMと表記されることまでは確認できましたが、ついにその理由は分かりませんでした。

まあそんなことに拘る人もいないのでしょう。

RIMG0646ところで、この検索の途中、画面に『日本の古本屋』の広告が表示されているのに気が付きました。

今月から試行的に、GoogleとYahooでリスティング広告を始めています。それは承知していたのですが、一体、どんな言葉によって現れたのか。検索窓に入れたのは、「サムホール」だったはずです。

今一つ仕組みの理解できないリスティング広告ですが、ますます不思議が募りました。

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2013年11月12日

残り物の捌き方

明日から東京古典会の大市(大入札会)期間に入るため、一週間、ほかの交換会はお休みとなります。つまり今週の明治古典会、来週の東京洋書会は休会。

例年、この時に開かれる洋書会は、荷物が少なく、閑散とした状態となるのですが、今回はちょっと事情が違いました。カーゴ十数台の出品で、会場狭しと本が並べられたのです。

種明かしをいたしますと、先週末の「洋書まつり」がその原因。この即売展に出すのは、もともと売り切るつもりのバーゲン商品が中心ですので、残ってもあまり持ち帰りたくないというのが、偽らざる心情。

そこで、明くる週の洋書会に出品することになります。例年より開催が遅れたおかげで、今年の場合は今日が、その残品整理の市となったわけです。

そんなものを出品して売れるのか、と疑問を持たれるかもしれません。しかしもともと交換会というのは、そういう部分が含まれているもの。さらに昨今では、ディスプレイ需要という強い味方があります。少なくともハードカバーの本であれば、まず売れ残ることはありません。

出品する側にとっても、売るための手段を尽くした後のことで、半ばあきらめがついておりますし、買う側にとっては心置きなく札が入れられ、おおむね普段より安く落札できるので、どちらにとってもありがたい機会ではあるのです。

小店もカーゴ3台の売れ残り品を一応は出品いたしましたが、小店の場合は、すでにお伝えしたように、今回はソフトカバーが中心。残った本も、当然ながら8割方がそれです。

ですから仕分けをしながら、まず殆どは札が入らず、自分で持ち帰ることになるのだろうと観念しておりました。

ところが思いもかけぬことに、ある新手の業者さんが、殆どの小店出品に札を入れくださいました。おかげで、当初予測していた半分の、カーゴ一台を持ち帰るだけで済むことになったのです。

RIMG0648もちろん、捨て値に近い落札価格ですが、それを持ち帰り、保管し、売れるまでの手間と費用を考えると、満足すべき結果であったというべきでしょう。

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2013年11月11日

来年のカレンダー

今年も「みすずのカレンダー」が店に届きました。

RIMG0654先日、片づけ物をしているときに、古いカレンダーが出てまいりまして、それが1984年用のもの。つまり開業初年から、これを配りものとしていたことになります。

最初のうちは注文部数も少ないので名入れも頼めず、店の判を一部ずつに押しておりました。店名を印刷してもらうようになったのは、何年経ってからだったでしょう。

とにかくこのカレンダーが、小店で発注する30回目のものというわけです。

よくまあ毎年続けてきたものだと思いますが、結局は、これに代わるものを思いつかず、つい安易に前年を踏襲してきたという面もあります。

しかし、楽しみにしていただいている方もおいでですので、近頃では、敢えて変える必要もないだろうと思うに至りました。

さて例年通り、ご来店のお客様で3000円以上お買い上げの方にこの「みすずカレンダー」を差し上げます。

今年は卸値が上がったため、発注数を昨年より減らさざるを得ませんでした。万一、品切れとなりました際はご容赦ください。

例年のペースを考えても、11月中になくなるということは、まず考えられませんが、とはいえ油断大敵。お早めのご来店を、お勧めいたします。

そう言われて折角店に来たのに、買うものがないじゃないか、という場合は、ひと声お掛けください。謹んで一部、進呈させていただきます。

毎年、これが最後かもしれないと思いながらお配りしているカレンダーですから、貴重なsouvenirとなる可能性だってあるのです。

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