2014年08月
2014年08月21日
The Great Gatsby
TKI改めTKN――まだ正式に略称として合意が得られたわけではありませんが、色々考えた中では一番納まりが良さそうですので、店主はこれに一票――の月例会議でした。
ちなみにTKIというのは、そもそもこの組織が、十数年前、東京組合インターネット委員会という名称で始まったことに由来するのですが、やがて委員会が事業部と変わり、最近になって「日本の古本屋」事業部という名称に変わりました。
そこで頭を悩ましていたのが、その略称です。「日本の古本屋」自体が短縮しづらいことが原因でした。
東京組合の組織であることに変わりはありませんので、初めのTとKはそのまま生かし、イニシャルのNだけを持ってきたと言うわけです。逆に言えば正式名称は「東京組合『日本の古本屋』事業部」となる次第。
大方の皆様には、どうでもいい話ではありますが。
その定例会議の、目下最大の議案はリニューアル問題。今日はその中でも、トップページの構成が、主要なテーマとなりました。
ビジュアルデザインの方は先におおよそ決まっています。そこに詰め込むコンテンツ、そうです、次期の「日本の古本屋」は、検索ページに特化した現行デザインから、さまざまな情報満載のHPに変わることになります。
とはいえその中身が問題で、それこそが焦眉の急というところ。一番目立つところに特集コーナーを設け、その特集に沿った本をラインナップしようという案がありますが、一度だけならともかく、続けていくためにはしっかりした準備が必要です。
参考までにと、Abebooks をプロジェクターで映して、皆で見ました。すると丁度我々の考えている特集ページに当たるようなものとして、F. Scott Fitzgerald, Literary Legend が現れました。
もちろん、この通りのことをしようというのではありません。しかし十分参考にはなります。しばらく喧々諤々、意見が交わされました。
そのうち店主が「ちょっとそのThe Great Gatsby をクリックして、価格の高い順にソートしてみて」と言い、その画面が現れるとトップ・プライスを見て一同大騒ぎ。
アメリカ近代文学初版本のなかでも高額で有名な本ではありますが、30万ドルには、店主もちょっと驚きました。
ちなみにTKIというのは、そもそもこの組織が、十数年前、東京組合インターネット委員会という名称で始まったことに由来するのですが、やがて委員会が事業部と変わり、最近になって「日本の古本屋」事業部という名称に変わりました。
そこで頭を悩ましていたのが、その略称です。「日本の古本屋」自体が短縮しづらいことが原因でした。
東京組合の組織であることに変わりはありませんので、初めのTとKはそのまま生かし、イニシャルのNだけを持ってきたと言うわけです。逆に言えば正式名称は「東京組合『日本の古本屋』事業部」となる次第。
大方の皆様には、どうでもいい話ではありますが。
その定例会議の、目下最大の議案はリニューアル問題。今日はその中でも、トップページの構成が、主要なテーマとなりました。
ビジュアルデザインの方は先におおよそ決まっています。そこに詰め込むコンテンツ、そうです、次期の「日本の古本屋」は、検索ページに特化した現行デザインから、さまざまな情報満載のHPに変わることになります。
とはいえその中身が問題で、それこそが焦眉の急というところ。一番目立つところに特集コーナーを設け、その特集に沿った本をラインナップしようという案がありますが、一度だけならともかく、続けていくためにはしっかりした準備が必要です。
参考までにと、Abebooks をプロジェクターで映して、皆で見ました。すると丁度我々の考えている特集ページに当たるようなものとして、F. Scott Fitzgerald, Literary Legend が現れました。
もちろん、この通りのことをしようというのではありません。しかし十分参考にはなります。しばらく喧々諤々、意見が交わされました。
そのうち店主が「ちょっとそのThe Great Gatsby をクリックして、価格の高い順にソートしてみて」と言い、その画面が現れるとトップ・プライスを見て一同大騒ぎ。
アメリカ近代文学初版本のなかでも高額で有名な本ではありますが、30万ドルには、店主もちょっと驚きました。
2014年08月20日
ボーダーレス
あまりの暑さについつい、気象情報のサイトを開いてみました。
日本気象協会の tenki.jp によると、目黒区の本日の最高気温は34.1℃。そんなもん?と、ちょっと驚きました。昨日も暑かったけど、今日はそれに輪をかけた暑さ。
いったいどこで測っているのかと、不信感すら覚えて世田谷区を見てみますと、こちらは35.6℃。まだこちらの方が頷けます。しかしこの違いは、どこから来るのでしょう。
ちなみに小店の位置は、地図で調べていただければお分かりだと思いますが、世田谷区にも、渋谷区にも、数百メートルと離れていない、辺境の地です。
ついでに渋谷区も見てみると、目黒区と同じ34.1℃。こと今日の気温に関する限り、駒場は世田谷区に属するようです。これは東京古書組合南部支部における小店の位置づけと同じ。
と申しますのは、南部支部はさらに地域ごとに班で分けられておりまして、小店は目黒区にありながら、世田谷区の北沢班に属しているからです。
小店が開業して組合に加入した31年前は、恵比寿班の一員でした。目黒区の北半分をエリアとする班です。
班長を仰せつかると、班員の店を訪ね集金やら配り物やらをしなければなりません。小店ができたおかげで、恵比寿班の班長さんは、かなり大変なことになりました。
他人事ではなく、店主も開業数年にして班長の役目が回ってきましたので、はるばる目黒駅、恵比寿駅、中目黒駅、祐天寺駅周辺の古書店を、月に一度、回ったものです。
これは、古物商が、警察署の監督下に置かれている、という事情からくるものでした。今でも小店の所轄署は、目黒警察署であることに変わりありません。
しかし組合の行政単位は、組合の事情で決めればよいのではという、極めてまっとうな意見から、現在の班編成となって、20年以上が経ちました。
境界は、事情に合わせて柔軟に変えればよいと思います。
日本気象協会の tenki.jp によると、目黒区の本日の最高気温は34.1℃。そんなもん?と、ちょっと驚きました。昨日も暑かったけど、今日はそれに輪をかけた暑さ。
いったいどこで測っているのかと、不信感すら覚えて世田谷区を見てみますと、こちらは35.6℃。まだこちらの方が頷けます。しかしこの違いは、どこから来るのでしょう。
ちなみに小店の位置は、地図で調べていただければお分かりだと思いますが、世田谷区にも、渋谷区にも、数百メートルと離れていない、辺境の地です。
ついでに渋谷区も見てみると、目黒区と同じ34.1℃。こと今日の気温に関する限り、駒場は世田谷区に属するようです。これは東京古書組合南部支部における小店の位置づけと同じ。
と申しますのは、南部支部はさらに地域ごとに班で分けられておりまして、小店は目黒区にありながら、世田谷区の北沢班に属しているからです。
小店が開業して組合に加入した31年前は、恵比寿班の一員でした。目黒区の北半分をエリアとする班です。
班長を仰せつかると、班員の店を訪ね集金やら配り物やらをしなければなりません。小店ができたおかげで、恵比寿班の班長さんは、かなり大変なことになりました。
他人事ではなく、店主も開業数年にして班長の役目が回ってきましたので、はるばる目黒駅、恵比寿駅、中目黒駅、祐天寺駅周辺の古書店を、月に一度、回ったものです。
これは、古物商が、警察署の監督下に置かれている、という事情からくるものでした。今でも小店の所轄署は、目黒警察署であることに変わりありません。
しかし組合の行政単位は、組合の事情で決めればよいのではという、極めてまっとうな意見から、現在の班編成となって、20年以上が経ちました。
境界は、事情に合わせて柔軟に変えればよいと思います。
2014年08月19日
ソフトカバーを売る
久しぶりの暑さで、この夏一番ではないかと思ったほどですが、お天気サイトなどで見る限り、今日の東京、猛暑日ではなかったのですね。
この二日ほどの宅買い、およびその下準備で体力が消耗しているのでしょうか。神保町の駅から古書会館までの道が、いつもよりずいぶん遠く感じました。
市場を終えてから店に戻る時も、まだ日が高いこともあり、真正面から浴びる日差しを避けるように、僅かな木陰を求めて歩いたのでした。
休み明けの洋書会、それほど出品は多くないだろうと予想したのが、昨日引き取りに伺い、今日出品することにした理由です。
事実、朝市場についてみると、小店のカーゴ一台のほかには、ほぼそれと同量の出品しかありませんでした。
その後、さらにカーゴ一台ほどの量が持ち込まれて、少ないながらも、何とか恰好はついたのでしたが。
小店出品のカーゴ一台は、結局5点に仕分けをして、売れたのが2点。量で見ると全体の半分ほどです。
残りは2点を買い引き、1点がボー。買い引きというのは、自分の荷に自分も札を入れて、落札すること。ボーというのは、誰の札も入らないこと。
つまりこの3点については、店主のもとに戻ってくるわけです。
買い引いた2点は、自分で気になる本を抜き出して仕分けたのですから、文句ありません。むしろうれしいくらい。しかしボーについては、やはりがっかりです。
ソフトカバーだけまとめた口でした。300冊ほどもあるでしょうか。確かに、これが他人の出品物だとしたら、店主も札を入れないかもしれません。
しかし、これを別にしたおかげで、ハードカバー約300冊は、それなりの値で売れたのです。
一冊ずつ見て行くと、名著、良書が沢山あります。お客様からお引き取りしたのも何かの縁、小店で手間をかけ、売ってみることにいたします。
この二日ほどの宅買い、およびその下準備で体力が消耗しているのでしょうか。神保町の駅から古書会館までの道が、いつもよりずいぶん遠く感じました。
市場を終えてから店に戻る時も、まだ日が高いこともあり、真正面から浴びる日差しを避けるように、僅かな木陰を求めて歩いたのでした。
休み明けの洋書会、それほど出品は多くないだろうと予想したのが、昨日引き取りに伺い、今日出品することにした理由です。
事実、朝市場についてみると、小店のカーゴ一台のほかには、ほぼそれと同量の出品しかありませんでした。
その後、さらにカーゴ一台ほどの量が持ち込まれて、少ないながらも、何とか恰好はついたのでしたが。
小店出品のカーゴ一台は、結局5点に仕分けをして、売れたのが2点。量で見ると全体の半分ほどです。
残りは2点を買い引き、1点がボー。買い引きというのは、自分の荷に自分も札を入れて、落札すること。ボーというのは、誰の札も入らないこと。
つまりこの3点については、店主のもとに戻ってくるわけです。
買い引いた2点は、自分で気になる本を抜き出して仕分けたのですから、文句ありません。むしろうれしいくらい。しかしボーについては、やはりがっかりです。
ソフトカバーだけまとめた口でした。300冊ほどもあるでしょうか。確かに、これが他人の出品物だとしたら、店主も札を入れないかもしれません。
しかし、これを別にしたおかげで、ハードカバー約300冊は、それなりの値で売れたのです。
一冊ずつ見て行くと、名著、良書が沢山あります。お客様からお引き取りしたのも何かの縁、小店で手間をかけ、売ってみることにいたします。
2014年08月18日
休んでもいないのに
休みが終わってしまった…
というのが、今の気分です。ちょっと説明が難しいのですが。
東京古書組合は昨日まで一週間の夏季休暇でした。古書会館は閉まっていて、市場もお休み。組合の事務職員さんたちも、もちろんお休み。
一方、古書店はといえば、こちらはさまざま。神保町あたりでも、数日休むところから、普段通り、定休日しか休まないところまで。
小店のように、まるで休まずに営業を続けたというところだって、他にないわけではありません。
その、休みなしで連日店に出ていた店主が、なぜ「今日からまた仕事か」という、休暇明けの勤め人のような気分に捉われるのでしょうか。
つらつら考えてみるに、定められた予定がない、ということが何より大きな解放感をもたらしてくれていたのだと思います。
つまり、市場が休みというだけで、休暇をもらったような気になっていたわけです。
というと、まるでいやいや市場に出かけているように聞こえるかもしれませんが、そうでないことは、日頃お伝えしている通り。むしろ楽しみでさえあるのですから、やはり自分で自分の気持ちの説明がつきません。
休み明けの小学生でもあるまいに、と考えて、ようやく少し思い当たることがありました。宿題をやり残して新学期を迎える気分に近いかもしれません。
市場が休みのあいだに、もう少し店を片付けておきたかった。しかし現状はまるで逆。かえって未整理の山が増えております。
そこに、いささかの焦りと悔いを感じている、というのが実際のところでしょうか。
というのが、今の気分です。ちょっと説明が難しいのですが。
東京古書組合は昨日まで一週間の夏季休暇でした。古書会館は閉まっていて、市場もお休み。組合の事務職員さんたちも、もちろんお休み。
一方、古書店はといえば、こちらはさまざま。神保町あたりでも、数日休むところから、普段通り、定休日しか休まないところまで。
小店のように、まるで休まずに営業を続けたというところだって、他にないわけではありません。
その、休みなしで連日店に出ていた店主が、なぜ「今日からまた仕事か」という、休暇明けの勤め人のような気分に捉われるのでしょうか。
つらつら考えてみるに、定められた予定がない、ということが何より大きな解放感をもたらしてくれていたのだと思います。
つまり、市場が休みというだけで、休暇をもらったような気になっていたわけです。
というと、まるでいやいや市場に出かけているように聞こえるかもしれませんが、そうでないことは、日頃お伝えしている通り。むしろ楽しみでさえあるのですから、やはり自分で自分の気持ちの説明がつきません。
休み明けの小学生でもあるまいに、と考えて、ようやく少し思い当たることがありました。宿題をやり残して新学期を迎える気分に近いかもしれません。
市場が休みのあいだに、もう少し店を片付けておきたかった。しかし現状はまるで逆。かえって未整理の山が増えております。
そこに、いささかの焦りと悔いを感じている、というのが実際のところでしょうか。
2014年08月17日
いつもの姿
今朝は、一件宅買い。正確には、明日、運び出すための下準備。歩いて数分のご町内で、引っ越しか建て替えか、本を整理したいという大学教員らしい方のご依頼。
お宅の前の通りが狭いので、積み込みを手早く済ませたいのですが、蔵書の多くは二階書斎の本棚に入ったままでした。
そこで今日、二階の本を縛って下まで降ろしておくことにしたのです。手伝っていただける方がいて、二人がかりでお昼までに作業を終えました。
店主がもっぱら縛り、降ろすのはお手伝いの方。ずいぶん助かりました。
店に戻ると、お持込が二軒。どちらもちょっとした量。例年の如くこの暑い夏休みの間に、家の中を片付けたくなった方々は、少なからずおられるようです。
その分、小店の方は片付かない様子になりました。また見慣れた光景に逆戻りです。
とこうするうち、午後になってさらに一件、お持込がありました。大きなバッグ二つにぎっしりと本を詰めて。
夕方になると、お出かけ帰りか、これから出かけるのか、何となく人の流れが多くなってきたようです。
捕虫網と、プラスチックの虫カゴをそれぞれ手にした男性が、数人の子を連れて通りがかり、表の雑貨に目をとめると「おーっ」と声を上げて立ち止りました。
そのまま、子たちと一緒にウルトラマンのフィギュアやら、箱に入ったオモチャやらを、とっかえひっかえ手にしては、歓声を上げること約10分。
「行こうか」という一言で、あっさり引上げました。どうやらこれから駒場の公園に向かうらしい。
その間にも、つられて足を止める若者の団体などがあって、ほんの一瞬ながら、妙な賑わいを感じたのですが、過ぎ去ってしまうと、またいつもの静けさが戻りました。
お宅の前の通りが狭いので、積み込みを手早く済ませたいのですが、蔵書の多くは二階書斎の本棚に入ったままでした。
そこで今日、二階の本を縛って下まで降ろしておくことにしたのです。手伝っていただける方がいて、二人がかりでお昼までに作業を終えました。
店主がもっぱら縛り、降ろすのはお手伝いの方。ずいぶん助かりました。
店に戻ると、お持込が二軒。どちらもちょっとした量。例年の如くこの暑い夏休みの間に、家の中を片付けたくなった方々は、少なからずおられるようです。
その分、小店の方は片付かない様子になりました。また見慣れた光景に逆戻りです。
とこうするうち、午後になってさらに一件、お持込がありました。大きなバッグ二つにぎっしりと本を詰めて。
夕方になると、お出かけ帰りか、これから出かけるのか、何となく人の流れが多くなってきたようです。
捕虫網と、プラスチックの虫カゴをそれぞれ手にした男性が、数人の子を連れて通りがかり、表の雑貨に目をとめると「おーっ」と声を上げて立ち止りました。
そのまま、子たちと一緒にウルトラマンのフィギュアやら、箱に入ったオモチャやらを、とっかえひっかえ手にしては、歓声を上げること約10分。
「行こうか」という一言で、あっさり引上げました。どうやらこれから駒場の公園に向かうらしい。
その間にも、つられて足を止める若者の団体などがあって、ほんの一瞬ながら、妙な賑わいを感じたのですが、過ぎ去ってしまうと、またいつもの静けさが戻りました。
2014年08月16日
スマホデビュー
長く迷った末の決断でした。
何しろ手元は良く見えません。近頃は裸眼では、新聞など、見出しが読めるくらいのものです。若い頃の視力自慢が嘘のよう。
そんなわけで、昔ならすぐに飛びついたであろうスマートフォンなるものに、乗りかえる気が、なかなか起きませんでした。
機器無料と引き換えに、月々払わされる高い固定利用料も、二の足を踏ませるのに十分でした。なにしろ、月々の携帯料金は、ほとんど最低レベルで済んでいましたから。
それでもこの期に及んで、おっかなびっくり始めることにしたのは「日本の古本屋」リニューアルと無関係ではありません。
新しい「日本の古本屋」では、出品登録や、画像の取り込みに、携帯端末を利用できる範囲が、大幅に増えそうだからです。
まだはっきりした姿は見えてきませんが、手元の本をカメラに収め、管理画面を開いてISBNを打ち込めば、基本情報が入力された画面が現れ、状態と価格を入れて一丁上がり――。そんな形を、目指しているようです。
在庫管理ソフトの開発が、大きな課題の一つというわけです。
その流れに乗り遅れまい、というのではありません。開発の過程で、さまざまなテストを重ねることになるわけですが、そこで少しでもお手伝いできればというのが、店主の偽らざる気持ちです。
もちろん、その成果が小店にも恩恵として帰ってくることを期待しますが、どうやら洋書については、和書と同じような仕組みで登録できるようになるのは、まだ先のことになるらしいので。
その前に、このスマホというものを、多少とも使いこなせるようになるのが先決です。メガネを拭き拭き、スマホ画面に見入る日が続きそうです。
何しろ手元は良く見えません。近頃は裸眼では、新聞など、見出しが読めるくらいのものです。若い頃の視力自慢が嘘のよう。
そんなわけで、昔ならすぐに飛びついたであろうスマートフォンなるものに、乗りかえる気が、なかなか起きませんでした。
機器無料と引き換えに、月々払わされる高い固定利用料も、二の足を踏ませるのに十分でした。なにしろ、月々の携帯料金は、ほとんど最低レベルで済んでいましたから。
それでもこの期に及んで、おっかなびっくり始めることにしたのは「日本の古本屋」リニューアルと無関係ではありません。
新しい「日本の古本屋」では、出品登録や、画像の取り込みに、携帯端末を利用できる範囲が、大幅に増えそうだからです。
まだはっきりした姿は見えてきませんが、手元の本をカメラに収め、管理画面を開いてISBNを打ち込めば、基本情報が入力された画面が現れ、状態と価格を入れて一丁上がり――。そんな形を、目指しているようです。
在庫管理ソフトの開発が、大きな課題の一つというわけです。
その流れに乗り遅れまい、というのではありません。開発の過程で、さまざまなテストを重ねることになるわけですが、そこで少しでもお手伝いできればというのが、店主の偽らざる気持ちです。
もちろん、その成果が小店にも恩恵として帰ってくることを期待しますが、どうやら洋書については、和書と同じような仕組みで登録できるようになるのは、まだ先のことになるらしいので。
その前に、このスマホというものを、多少とも使いこなせるようになるのが先決です。メガネを拭き拭き、スマホ画面に見入る日が続きそうです。
2014年08月15日
『絵画の彼岸』
「これはどういうもんですかね」と、ビニール袋からお出しになったのは、黒い角背の薄いハードカバーの本。
大きさは週刊誌ほどで、もう少し幅広、厚さも週刊誌ほどでしょうか。ただしハードカバーが厚みをとっていますから、本体はその半分ほど。
いつも美術史、美術思想関連の洋書をお買い上げいただくご常連さんですが、お名前を存じ上げません。あまりお話が得意ではなさそうで、数年来、お通いいただいて、言葉を交わすようになったのは、最近のことです。
その言葉も、いつも短いご質問で、二言三言。世間話などになることは、まずありません。
さて、その方のお出しになった本ですが、手に取って開いて見ますと、ページ毎に撮られた写真を印画紙に焼き付けたものが、そのまま綴じられています。
写っていたのは、Max Ernst の Au-dela de la peinture.
表紙も、奥付もなく、頁付もありませんから、完全なものかどうかも良く分かりません。数えてみると35枚。
『絵画の彼岸』というタイトルは、河出書房新社から1975年に出ているものと同じですが、こちらは頁数173頁とありますから、そのまま原本というわけではなさそうです。
色々調べてみると worldcat にようやく一点だけ Paris ; London : Ed. "Cahiers d'Art", 1936.という刊記のものを見つけました。
注記に Aus: Cahiers d'art ; Jg. 11, H. 6-7, 1936. 物理形態に [17] Bl : Ill ; 32 cm.
正確に読み解けたわけではありませんが、どうやらこれが、この写真本の原型であることは間違いなさそうで、幾らか縮小されているようです。詳しいことは、あるいは『絵画の彼岸』の中で触れられているかもしれません。
いずれにせよ、誰かが写真を撮って綴じたものであることは間違いなく、本自体には参考資料としての意味以上のものはないと思われます。
そのように申し上げますと、「本屋さんの均一で見つけましたので」と、笑ってお帰りになりました。
大きさは週刊誌ほどで、もう少し幅広、厚さも週刊誌ほどでしょうか。ただしハードカバーが厚みをとっていますから、本体はその半分ほど。
いつも美術史、美術思想関連の洋書をお買い上げいただくご常連さんですが、お名前を存じ上げません。あまりお話が得意ではなさそうで、数年来、お通いいただいて、言葉を交わすようになったのは、最近のことです。
その言葉も、いつも短いご質問で、二言三言。世間話などになることは、まずありません。
さて、その方のお出しになった本ですが、手に取って開いて見ますと、ページ毎に撮られた写真を印画紙に焼き付けたものが、そのまま綴じられています。
写っていたのは、Max Ernst の Au-dela de la peinture.
表紙も、奥付もなく、頁付もありませんから、完全なものかどうかも良く分かりません。数えてみると35枚。
『絵画の彼岸』というタイトルは、河出書房新社から1975年に出ているものと同じですが、こちらは頁数173頁とありますから、そのまま原本というわけではなさそうです。
色々調べてみると worldcat にようやく一点だけ Paris ; London : Ed. "Cahiers d'Art", 1936.という刊記のものを見つけました。
注記に Aus: Cahiers d'art ; Jg. 11, H. 6-7, 1936. 物理形態に [17] Bl : Ill ; 32 cm.
正確に読み解けたわけではありませんが、どうやらこれが、この写真本の原型であることは間違いなさそうで、幾らか縮小されているようです。詳しいことは、あるいは『絵画の彼岸』の中で触れられているかもしれません。
いずれにせよ、誰かが写真を撮って綴じたものであることは間違いなく、本自体には参考資料としての意味以上のものはないと思われます。
そのように申し上げますと、「本屋さんの均一で見つけましたので」と、笑ってお帰りになりました。
2014年08月14日
戦争を知らない
『NHKスペシャル 狂気の戦場 ベリリュー〜“忘れられた島”の記録〜』を、昨夜見てしまいました。
見ようとして見たのではなく、たまたま見たという点では、いつもと変わりありませんが、受けた衝撃は、近年にないものでした。
その強い衝撃をもたらした最大のものは、米国国立公文書館などで発見されたという、膨大な記録フィルムの、鮮明な映像にあったと思います。
日米双方の、現存者へのインタビューも、語られた言葉以上のものを伝えていました。
店主などは、この年になって、まさに「戦争を知らない子供たち」であったことを、今さらのように知らされた思いです。
今日になって、ネットで検索してみるとWikipediaには、かなり詳細な記事があることから、これが決して「知られざる戦い」ではないことも知りました。
驚いたのは、こうした激戦の記録が、多くは顕彰の色合いを持って語られていることです。戦死者を被害者ととらえることは、死者を貶めることになるというような、良く語られる心情によるものでしょうか。
店主が一番印象に残ったのは、ある米兵が頭を抱えてうずくまる写真と共に語られたエピソードです。
壮絶な白兵戦が日常化した中で、遭遇した日本兵を射殺したあと、その兵が持っていた一枚の写真が目に入ると、そこに兵士が母と幼い妹と一緒に写っていたと言います。
それを見た途端の、その米兵の懊悩と激しい悔恨。それを語った手記が残されているそうです。
戦死者を顕彰すれば、事足りるものではありません。死地に向かわせたものが何か、それを明らかにすることこそが、最大の慰霊となるはずです。
それにしても「玉砕戦」から「持久戦」へと戦略を転換した「大本営」というものの、不気味さを思いました。今の世に、「大本営」が現れませんように。
見ようとして見たのではなく、たまたま見たという点では、いつもと変わりありませんが、受けた衝撃は、近年にないものでした。
その強い衝撃をもたらした最大のものは、米国国立公文書館などで発見されたという、膨大な記録フィルムの、鮮明な映像にあったと思います。
日米双方の、現存者へのインタビューも、語られた言葉以上のものを伝えていました。
店主などは、この年になって、まさに「戦争を知らない子供たち」であったことを、今さらのように知らされた思いです。
今日になって、ネットで検索してみるとWikipediaには、かなり詳細な記事があることから、これが決して「知られざる戦い」ではないことも知りました。
驚いたのは、こうした激戦の記録が、多くは顕彰の色合いを持って語られていることです。戦死者を被害者ととらえることは、死者を貶めることになるというような、良く語られる心情によるものでしょうか。
店主が一番印象に残ったのは、ある米兵が頭を抱えてうずくまる写真と共に語られたエピソードです。
壮絶な白兵戦が日常化した中で、遭遇した日本兵を射殺したあと、その兵が持っていた一枚の写真が目に入ると、そこに兵士が母と幼い妹と一緒に写っていたと言います。
それを見た途端の、その米兵の懊悩と激しい悔恨。それを語った手記が残されているそうです。
戦死者を顕彰すれば、事足りるものではありません。死地に向かわせたものが何か、それを明らかにすることこそが、最大の慰霊となるはずです。
それにしても「玉砕戦」から「持久戦」へと戦略を転換した「大本営」というものの、不気味さを思いました。今の世に、「大本営」が現れませんように。
2014年08月13日
本日新入荷
先週末あたりから、喉に違和感があって、朝起きたときなど特に気になりましたが、やがて咳が出るようになり、昨夕ついに、くしゃみと鼻水が出るに及んで、何とかの引く夏風邪だと思い当たりました。
今日の午後、本を引き取りに伺いますと、昨日お約束したばかりです。どうなることかと危ぶみましたが、幸い症状こそしっかり出ていても、体調はそれほど悪くありません。
車に台車を積み込み、研究棟某号館に向かい、某研究室から本棚二本分、約500冊の日本書と洋書を、無事に引き取ってまいりました。
大学の研究室から本を引き取る際、良い点が一つあります。個人のお宅に比べ、本の搬送がずっと楽だということです。
大抵の場合、研究室の中まで台車を入れることができ、縛った本を積めば、そのままバリアフリーで表まで運び出せます。新しい建物の場合は、まず間違いなくそう。
今回も、台車に積んでエレベータを降りること三度。縛り始めてから車に積み終えるまで、約1時間で済みました。
と書きながら、その昔、たしか9号館でしたか、階段を何十往復かして4階から運び降ろしたことを思い出しました。開業して間のない、店主もまだ30代の頃の話です。今ならどうするでしょう。
また別の話ですが、東京経済大学に、今村仁司さんの遺された本を引き取りに行った事があります。下見に伺って、建物から外に出るまでの通路に二箇所、数段の階段があることに気がつきました。
この時はカーゴ台車に6台ほどあったでしょうか。途中で積み替えるか、なにか、手筈を考えなければならず、とても店主一人と運送屋さんとでは、無理だと考えて同業に助っ人を頼みました。
そんな例外はあっても、やはり一般の宅買いより楽であることに違いはありません。もちろん、肝心なのは引き取る本の内容ですが、今日に関して言えば、店売り向きの、なかなかありがたい仕入れでした。
近日中に店に並ぶはずです。
今日の午後、本を引き取りに伺いますと、昨日お約束したばかりです。どうなることかと危ぶみましたが、幸い症状こそしっかり出ていても、体調はそれほど悪くありません。
車に台車を積み込み、研究棟某号館に向かい、某研究室から本棚二本分、約500冊の日本書と洋書を、無事に引き取ってまいりました。
大学の研究室から本を引き取る際、良い点が一つあります。個人のお宅に比べ、本の搬送がずっと楽だということです。
大抵の場合、研究室の中まで台車を入れることができ、縛った本を積めば、そのままバリアフリーで表まで運び出せます。新しい建物の場合は、まず間違いなくそう。
今回も、台車に積んでエレベータを降りること三度。縛り始めてから車に積み終えるまで、約1時間で済みました。
と書きながら、その昔、たしか9号館でしたか、階段を何十往復かして4階から運び降ろしたことを思い出しました。開業して間のない、店主もまだ30代の頃の話です。今ならどうするでしょう。
また別の話ですが、東京経済大学に、今村仁司さんの遺された本を引き取りに行った事があります。下見に伺って、建物から外に出るまでの通路に二箇所、数段の階段があることに気がつきました。
この時はカーゴ台車に6台ほどあったでしょうか。途中で積み替えるか、なにか、手筈を考えなければならず、とても店主一人と運送屋さんとでは、無理だと考えて同業に助っ人を頼みました。
そんな例外はあっても、やはり一般の宅買いより楽であることに違いはありません。もちろん、肝心なのは引き取る本の内容ですが、今日に関して言えば、店売り向きの、なかなかありがたい仕入れでした。
近日中に店に並ぶはずです。
2014年08月12日
クレジット導入
この夏初めて、うるさいほどの蝉時雨を聴きました。
駒場キャンパス内の某研究棟へ向かうのに、「坂下門」という名が一応ついている狭い通用門から、小さなせせらぎに沿った通称「けもの道」を歩いた時のことです。
一歩門を入ったとたん、頭の上からまさに降り注ぐように、複数種の蝉の声が大音量で、入り乱れて聞こえてきました。雨もよいの昼下がりでした。
店の辺りでは、時おり、はぐれ蝉が一匹、二匹、鳴き声を立てているくらいですから、壮大な合唱を聴くのは、実際に久々のことだったと思います。
目的の建物へ着くまでの間、ほとんど人に会うこともなく、夏休みのキャンパスの人気なさが、一層、蝉の声を際立たせて、何か懐かしいような、夏の光景でした。
研究棟へ向かったのは、買取の下見。本棚二本ほど、と聞いても、それだけでは分量がつかめません。小店の車で間に合うのか、手立てを考えなければならないのか。それを確かめに研究室へお邪魔したのでした。
幸い、ちょうど車一杯分の見当。明日改めてお伺いして、お引き取りする予定です。
さて本日、ついに小店にもクレジット端末が設置されました。
契約、設置すべて無料という、飛び込みの営業マンの話に乗ってから、ふた月ほども経った気がします。一向に届かないので、話が流れたのかと思っておりましたが、ようやくのこと。
これで、月に何人かの「クレジットカードは使えますか?」というお尋ねに、胸を張ってイエスと答えることができます。
ただ、手数料が割高なのが難。と言っても、これはお客様には無関係のこと。今後は、欲しい本を見つけたけれど持ち合わせが…という時などに、ぜひご利用ください。
駒場キャンパス内の某研究棟へ向かうのに、「坂下門」という名が一応ついている狭い通用門から、小さなせせらぎに沿った通称「けもの道」を歩いた時のことです。
一歩門を入ったとたん、頭の上からまさに降り注ぐように、複数種の蝉の声が大音量で、入り乱れて聞こえてきました。雨もよいの昼下がりでした。
店の辺りでは、時おり、はぐれ蝉が一匹、二匹、鳴き声を立てているくらいですから、壮大な合唱を聴くのは、実際に久々のことだったと思います。
目的の建物へ着くまでの間、ほとんど人に会うこともなく、夏休みのキャンパスの人気なさが、一層、蝉の声を際立たせて、何か懐かしいような、夏の光景でした。
研究棟へ向かったのは、買取の下見。本棚二本ほど、と聞いても、それだけでは分量がつかめません。小店の車で間に合うのか、手立てを考えなければならないのか。それを確かめに研究室へお邪魔したのでした。
幸い、ちょうど車一杯分の見当。明日改めてお伺いして、お引き取りする予定です。
さて本日、ついに小店にもクレジット端末が設置されました。
契約、設置すべて無料という、飛び込みの営業マンの話に乗ってから、ふた月ほども経った気がします。一向に届かないので、話が流れたのかと思っておりましたが、ようやくのこと。
これで、月に何人かの「クレジットカードは使えますか?」というお尋ねに、胸を張ってイエスと答えることができます。
ただ、手数料が割高なのが難。と言っても、これはお客様には無関係のこと。今後は、欲しい本を見つけたけれど持ち合わせが…という時などに、ぜひご利用ください。