2016年02月

2016年02月29日

偶然の神保町

『古書月報』の座談会に、オブザーバーとして参加してもらえないかと声がかかり、お昼前に古書会館に出かけました。

東京組合に7つある支部、それぞれの「大先輩」からお話を聞こうという企画で、最終回が神田支部。店主が出る幕ではないのですが、人選段階から相談を受けていた手前、お断りもできません。聞き役に徹するつもりで出席しました。

「大先輩」としてご出席いただいたのは3名の方々。神保町の代表としては、余りにも少なすぎると思われるかもしれませんが、そもそも全体を語ることなど、限られた時間では不可能です。

実際に、お一人づつから簡単な略歴をうかがうだけで、あっという間に時間が経ちました。それぞれ、あまりにも興味深いので、つい質問などを挟んでしまうからです。

結局、対談というより、お三方へのインタビューという形になってしまったような気がします。まあ面白かったことは確かですが。

RIMG0773それより不思議だったのは、店を出るとき、手近にあった文庫を一冊持って出たのですが、行きがけの電車で読み始めると、神保町のことが書かれています。

川本三郎『東京つれづれ草』(ちくま文庫、2000年)の第1章「心地よく秘密めいた町」。その最初の項「古書街いまむかし」がそれで、文末に「図書」93年7月と、初出が記されていました。

その文中に著者の好きな神保町のエピソードとして、戦時中、召集されたある古書店員が、神保町の古書店の名をそらんじている上官と出会った話を紹介しています。藤井正『私の古本人生』(日本古書通信社、1993年)からの引用として。

座談会出席者にそのことをお話すると、現在制作中の神保町を巡る記録映画に、まさにそのエピソードが取り入れられている、という情報が返ってきました。完成は、予定が大幅に遅れて秋になるそうですが、ちょっと楽しみな気がします。

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2016年02月28日

『やぶさか対談』

あるお客様から買い受けた中に、東海林さだおさんの著書が何冊かまとまっていました。

ファンも多いでしょうが、本もたくさん出ています。手元の本は、いずれも15年以上前の刊行で、ヤケやスレも目につくため、均一で売るのも難しいだろうと、その処置に悩んでおりました。

yabusakaその中に一冊、『やぶさか対談』(講談社、2000年)と名付けられた対談集があることに気がつき、帯を見ると「ノーベル賞からラーメン王まで、巨大な才能、ユニークな個性をこの二人がもみほぐす!」とあります。

続いて「ゲスト」として7人の名が挙がっていましたが、その冒頭に「大江健三郎」とあるのを見て、早速その箇所(第4回目)を開き、読み始めました。

大江さんと言えば、その風貌や、社会的な発言などから、なんとなくネクラなタイプという印象を持たれがちです。かく申す店主も、何かの機会に、初めてそのお喋りを耳にした時、むしろ剽軽ともいえる明るさに驚いたものでした。

確かに氏の小説において、ユーモアは大きな要素ではありますが、面白い話を書く人が、お喋りも面白いとは限りません。TVかラジオかすら覚えていませんし、対談であったか、インタビューであったかも記憶していませんが、その時のユーモア溢れる受け答えぶりは、強く印象に残りました。

ですから、きっと面白いに違いないと、飛びつくように読み始めたのですが、期待に違わぬ面白さ。思わず声をあげて笑いそうになり、店内にお客様がいないかと、確かめる始末でした。

どこがどう面白いかという解説ほどつまらないものもありませんから、ご興味のある方は、ともかくご一読ください。

ただ、「あの大江さん」が喋っていると想像するから、その面白さが際立つことも確か。それでも、帯の惹句を引かせてもらえば、もみほぐされたのは「この二人」の方だったと思います。

ちなみに「小説現代」1999年7月号が初出とか。

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2016年02月27日

システム改悪

今月の初めから、郵便局のコンピュータシステムに大幅な変更があって、ほぼ一月経とうとする今も、現場の人たちは、新しい操作の習熟に苦労しているようです。

聞くところによると、事前に何の説明もなし。いつから変わりますという通達があっただけで、ほぼその日から、ぶっつけ本番で端末に向かうことになったのだとか。

巨大な組織ですから、伝達の仕組みがあっても、それがうまく機能しなかったと言うことは考えられます。にしても、マニュアルが配られると言うようなことがなかったのは、確かなようです。

RIMG0777とはいえ、操作マニュアルが必要であるようなシステムは、いまどき時代遅れ――それは間違いありません。直感的に操作ができるようなシステムこそが、必要とされています。

しかしそうだとすると、一月近く経って、依然として現場の作業スピードが落ちたままというのは、どこに問題があるのでしょうか。

小店では毎日、目黒局の方が集荷に来てくださいますが、モバイル端末も使いにくそうにされています。

さらに集荷時間以後に配送品が生じた場合、玉川局に持ち込むことも多いのですが、こちらの窓口では、さらに仕事の能率が落ちているようです。

操作手順の問題だけではなく、画面のレスポンスも大幅に悪くなっているという声も聞きました。本当のところは分かりませんが、店主の経験している限りでは、明らかに待ち時間が長くなっています。

そもそも何のためのシステム変更であったのかは、日本郵便のサイトをちょっと見た限り、説明がありません。これだけ利用者にもストレスをかけているのですから、もう少し情報が開示されていてもよさそうな気がします。

しかしシステム改修が、思いどおり改修とはならず、改悪になってしまう場合もある、というのは、決して他人事とは思えない話ではあります。

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2016年02月26日

逃がした魚

RIMG0774今日は、ちょっと真面目に入札をしようと、いつもより少し早めに店を出ました。

古書会館に着いたのが、ちょうど正午。昨日覗いて予測はついていましたが、やはりなかなかの出品量。早速、4階から順を追って、じっくり見て回りました。

およそ1時間かけて、3階の最終台まで、約1200点という出品物を見たわけですから、じっくりと言っても、目についたものだけを重点的に見た、と言う方が正しいでしょう。

この時はまだ、あとでもう一度見て回るつもりでしたから、そこまでで目についた3点にだけ、とりあえず札を入れておきました。

それからいつものように仲間と昼食。その昼食をとっているうちに、2時に来客との面談があることを思い出し、食事を終えると組合応接室へ直行することになりました。

面談は、古書組合が会館を建てるときに利用した、東京都の高度化事業資金を担当する部署の方々と。

年に一度、その高度化事業が円滑に進んでいるかを診断にこられ、適切な助言、指導をいただくということになっているのですが、これがまあ無利息の資金を融資していただくための条件ではありました。

およそ1時間、業界のしくみやら、組合事業の現状やらをご説明申し上げたのですが、自ら「勉強不足で」と、おっしゃるとおり、古本、古本屋、ましてや交換会ということについては、ほとんどご存じありませんでした。

それが世間一般の認識レベルではあるのでしょうが、毎回同じような説明をする側としては、いったいこれで何の診断をいただくのかと、割り切れない思いにも捉われます。

面談終了が3時でしたので、そのまま続けて、これは予定に入っておりました新規加入希望者の面接。

それが済んで、ようやく市場に顔を出せたのは3時30分を回った頃。ちょうど、欲しかった本の開札が済んだところで、3万円台の落札価格に、110円足りなかったことが判明しました。

もう一度見る時間があれば、「改め札」くらい入れたかもしれないのに――というのは、もちろん引かれ者の小唄に過ぎません。

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2016年02月25日

メロンパン

神保町駅から歩くと、もうすぐ駿河台下交差点というあたりに、ごく最近できたお店があって、今日も人だかりがしていました。

「東京メロンパン」という、実に分かりやすい名前で、その名の通りメロンパンほか、何種類かのパンを焼いて売っているようです。

例によって、その前が何の店だったか、なかなか思い出せないのですが、間口一間ほど、奥行きも三間ほどしかなさそうな小さな店のなかで、若い男女3人が接客や商品補充に、忙しく動き回っている様子が見えました。

近くには「ベーグルベーグル」という、こちらも分かりやすい名前の店もあり、この業界もなかなか競争が熾烈なようです。

そのメロンパンの甘い香りが漂う歩道を、店主は「日本の古本屋」事業部定例会議のため、古書会館に急ぎました。午後2時には充分間に合いそうでしたが。

昨日まで中央市会の大市期間で、今日の一新会から通常市が再開。しかし会館に着くと、建物の隅や壁の前、あちらこちらに大市の買上げ品が、残置となって積み上げられており、あたかも大雪の名残のようでした。

会議は例によって、午後6時になっても終わる気配がありません。さらに30分ほど付き合って、重要な話はほぼ終わりましたので、一足先に退出。

7階から階段を降りて、まず6階の事務局の様子を覗き、5階のロッカーに書類などを片づけ、4階まで来ると明治古典会の幹事、経営員が、明日の市会の前日仕分けをしておりました。明日の出品は、なかなか多そうです。

RIMG0783そこまで降りたついでに、1階まで階段で降りて、すっかり暗くなった表に出て、また駿河台下交差点から神保町へ向かったわけですが、その時間にも、メロンパンの店の前にはお客様。

この勢いが、いつまで続くのか、しばらくは通るたびに気になりそうです。

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2016年02月24日

本屋好き

午後のお茶の時間、家人と店番を交替しようと帳場に出ると、お会計中のお客様から「ブログ読んでますよ」と、いきなり告げられて、ドギマギしてしまいました。

移転する前の店に来られたことがあるそうです。それ以来ということですから、13年以上のご無沙汰。「『古本屋ツアー』を読んで、来てみようと思った」というお話でした。

小山力也さんの人気ブログ『古本屋ツアー・イン・ジャパン』が、原書房から本になって出たのは2013年のことでしたが、この第一冊目に、小店は載っていなかったと思います。

もちろんブログの方では、ずっと前に取り上げていただいたことがあり、ある同業がそれを教えてくれましたので、すぐに読みました。いつの間に来られて、これほどしっかりご覧になっていかれたのだろうと、感心したことを覚えています。

実際以上に良く書いていただいて、多少面映ゆい感じもしたのですが、その当時すでにそのブログは本好き、というより本屋好きの間では、つとに知られた存在であったのでした。

そのことを同業に教わるまで知らなかった店主などは、いかにそのあたりの情報に疎いかということですが、そんな小店が、「全国古書店めぐり : 珍奇で愉快な一五〇のお店」の中に入っていなくとも、ですから当然のことと思っておりました。

RIMG0779その後、『古本屋ツアー・イン・首都圏沿線』『古本屋ツアー・イン・ジャパン それから』の2冊が相次いで出版されたと聞いていますので、そのどちらかに小店の記事も、目出度く収録されたのでしょう。

とりあえず、お店が続いていて良かった、というのがお客様の話を伺って感じたことでした。ますます貴重となりつつある本好き、いや本屋好きの方に無駄足を踏ませなかっただけでも。

ただし、綿密に描写されていた、あの当時の店の棚は、当然のことながら、かなり様変わりしています。それが良い方にか、悪い方にか、そこが気になるところです。

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2016年02月23日

お得意様

小店の場合が平均的であるのか、あるいはどちらかに偏っているのか、まったく比較する材料がないので無責任なお話ですが、「日本の古本屋」からのご注文には、リピーターが多いと、店主は感じております。

昨日からのご注文者にも、よくお見かけするお名前がお二方ほどありました。そのうちのお一方は、特別なケースです。

もう10年来のお得意さまで、これまで相当数のご注文をいただいています。ただし、その半数以上が、キャンセルになっているのです。

RIMG0782ご注文を受けて、しばらくすると、キャンセルメールが届きます。しかし中には注文確認のメールであることもあり、かつては後払いを基本にしていましたから、その場合はそのままお送りしました。

それらについては、きちんとお支払いいただきましたが、やがてある日、父親と名乗られる方から、今後は注文を受けないで欲しいと、お電話がありました。お支払が溜まってしまって、お困りになったようです。どうやらキャンセルメールも、お父上が出しておられたらしい。

その後ながらく、ご注文が途絶えておりましたが、その間に小店も、先払い方式を基本とするようになりました。そしてある日、またご注文をいただいたのです。

先払いですから、普通に確認メールを出して、ご入金をお待ちしておりました。すると、入金がありました。そのようにして、再びお取引が始まったのです。

小店としては、ご入金があってから本をお送りするのですから、何の損害も被ることはありませんが、それでも最近また、キャンセルされるケースが増えてきています。

先日も続けて2冊のご注文があり、お取り置きしていたところキャンセルメールが届きました。そして昨夜、1冊のご注文。今朝お返事を出したところ、入れ違いのようにさらに1冊のご注文。

さてこの2冊は、果たしてご入金があるのか、それともキャンセルとなるのか。お知らせだけは、律儀にくださる方なのです。

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2016年02月22日

部室整理

「部室を空けることになって、本の整理を検討しているのですが、そちらへ持ち込むというのを選択肢に加えさせていただいてよろしいでしょうか?」

――という申し入れがあったそうです。昨日の話ですが。

他に選択肢があるなら、ぜひそちらをお奨めしますと、店主なら答えていたところですが、そのサークルが児童文学に関する会であると聞いて、とても優しい気分になった家人は、イエスと答えたらしい。

RIMG0750大学のサークルの部室に、どのような本が残っていて、なおかつそれを処分するとなると、どんなものが出てくるかは、少し考えれば分かることではあります。

ですから「検討」の末、小店への持ち込みが決定したことと、少し量があるということを聞いた時、では台車をお貸ししますからお使いくださいと家人が提案したのは、決して万一にもお宝があるかもという山っ気からではありません。

あまりにも世慣れない学生さんたちに、ついほだされてのことだと思います。

台車をお貸しして、結構時間が経ってから、何人かでそれを押して店に来られました。冊数で言うなら150冊ほどあったでしょうか。

しかし大方は想像した通りの状態でした。どこかの図書館印が残るリサイクル本、B**kOffの100円シールが付いたままの本、駒場祭の古本セールの10円50円という値札が残る本。

家人が何とか20冊ばかりを選り出して、それで部活のおやつ代の足しにでもしてもらうことにいたしました。

残りの本は、昨日のうち店主が縛り上げ、しかるべく処分。小店の方で費やした時間は、全部足しても1時間足らずですが、サークルの皆さんは、昨日の日曜日、ほぼ一日を潰しての作業だったと思われます。

おやつ代カンパで、ご満足いただけるでしょうか。

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2016年02月21日

中央市会下見

晴れて暖かくなる、という天気予報を信じて店を開けました。表の方まで、思い切り雑貨や文庫本を拡げて。

注文品に返信を出したり、細々とした仕事も一段落。さて中央市会大市の下見に出かけようと、コートを羽織って表に出ると、地面が濡れています。

店内の家人に声をかけ、濡れ掛かっている文庫や雑貨を、大慌てで軒下に押し込みました。

スマホの天気予報を見ても、お日様マークばかりで、どこにも雨の記号は出ておりません。しかも、一つも暖かくない。裏切られたような気分で、コートの前をしっかり合わせ、神保町へ向かいました。

古書会館は、昨年に引き続き5000点を超える出品とかで、地下から4階まで、どの階にも本がびっしり。階段部分はさらに5階に向かう壁面まで、本が積み上げられています。

いわゆる一点物は少なく、その大部分が数冊から数十冊単位での出品。数百冊という単位のものも少なくありません。

RIMG0722昨年のように今年も、量だけは、バブルの頃を彷彿とさせる集まりようですが、出来高は往時の半分にも届かない、という結果に終わるのでしょうか。

ただ、ちょっと面白い一口ものも目に留まりましたので、幾らかは上向きの成績を期待したいところです。

いつもながら驚くのは、本の量よりも、それに負けず劣らず大勢の同業が詰めかけ、しかも熱心に札を入れていることです。少なくとも、値段次第では仕入れようという意欲を持っている業者が、それだけおられるということでしょう。

駆け足で見学だけしてきた店主は、店に戻ってからも市場の様子が頭にちらついて、仕事に身が入りませんでしたが、そこに古い友人の突然の訪問を受けました。

暫く話し込んで、元気を置いて行ってくれたのでした。

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2016年02月20日

出かける定め

昨日まで迷っておりまして、今朝宅買いに伺うか、伺わないかということを。

実際、昨日の夜にはM先生の携帯の留守電に、「明日は延期していただけるとありがたいのですが」というメッセージを残しておきました。

RIMG0759今朝になって、確認のお電話を入れてみましたところ、まったく留守電は聞いておられなかったようで、そうなると当方も何か踏ん切りがついたような気になり、予定通り、出かけることにいたしました。

迷っておりましたのは、このところ体調がよくなかったからで、思えば前回宅買いに伺ったその日から、今日までおよそ2週間、風邪やら鼻血騒動やらで、何度も医者に行き、薬を出してもらったりしたのでした。

さて、出かけたのは日吉です。去年の暮れから数えて今回が5回目。いつもお天気には恵まれていましたが、今日はお昼前、現地に着くと雨。予報より早めに降り出しました。

それでも車に積む時には小止みになっていて、特に不都合はありませんでした。このお天気も、心配の一つだったのですが。

それより驚いたのは、思いもかけぬ遭遇があったことです。

数日前、昨年駒場を退任されたI先生が、わざわざご来店になり、今度はその奥様の研究室の片づけを手伝ってほしいとのご用命をいただいたのでしたが、今日、そのご夫妻と、所もあろうにM先生の研究室前で、バッタリお会いしたのです。

奥様のお勤め先が日吉であることは承知しておりましたし、店主このところ日吉通いですと、お伝えもしてありましたが、まさかそこでお目にかかることになろうとは。

フロアまで同じとは、なんという偶然でしょう。つまり今日は、初めから出かけるべく、運命づけられていたのでしょうか。

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12月31日から1月3日まで
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