2016年06月

2016年06月30日

読みたい本

時間があれば読んでみたいと思う本が、結構たくさんあります。それを全部しまい込んでいたのでは、商売になりませんから、値段をつけて店の棚に入れたり、「日本の古本屋」に出しておいたりします。

ある意味では、店にある本は多かれ少なかれ、そうだと言えないこともありません。ただいろいろと条件を要しますが。語学力があれば、とか、専門の知識があれば、とか。

だからこそ古本屋の棚には、独特の表情が生まれるのです。

今はそこまで話を広げず、本当に後で読みたいと思っていた本のこと。それが店頭で売れてしまったときは、否も応もありません。同じ嗜好を持つ方がおられたことを、慰めとするだけ。

ネットで注文が入ったときには、クレジットなら決済が、振込なら入金が確認できるまでの間、急いで目を走らせます。

もちろん、読むのをあきらめて、そのまま発送することもあります。その方が多いかもしれません。注文が入ってから読むのは、なんだかお客様に申し訳ない気もしますから。

しかし今日の本は、興味深い内容で、いつか読んでみようと思っておりました。さして高い値をつけておいたわけではありませんが、あまり注文も入らないだろうと、高をくくっておりました。

油断大敵、本日未明にネット注文。今朝店に来てすぐに在庫確認のお返事を出し、慌てて斜め読みを始めたところ、ほどなくクレジットの決済通知が入りました。

荷造りを午前中に済ませる必要がありますから、後ろ髪を引かれる思いで本を閉じ、発送の準備をいたしました。それでなくとも、午前中はなにかと片づけなければならない仕事があります。そもそも本など読んでいる暇はないのです。

RIMG1168そんな名残惜しかった一冊は、『黒潮のはてに子らありて : 青が島教師十年の記録』(高津勉 著、鏡浦書房、昭36)。昭和25年から10年間にわたって、青ヶ島で教師を務めた方の記録。

次に手に入ったら、今度こそゆっくり読んでみようと思います。

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2016年06月29日

部族国家

RIMG1176昨日で終わったNHKカルチャーラジオ歴史再発見「アフリカは今〜カオスと希望と」は、久々に聴きごたえのあるシリーズでした。

全13回の内、12回までは、毎回これでもかというような悲惨な話が続き、殆んど打ちのめされるような気分になっておりましたが、最終回に至って、ようやくかすかな希望が語られます。あたかもパンドラの箱を覗くようにして。

それにしても、かつてアフリカは、貧しくとも希望と可能性に満ちた大陸として、注目されていた時代があったはずです。

悲劇の源は、西欧列強によってなされた恣意的な国境線策定にあるというのが、講師・松本仁一さんの卓説ですが、それに追い打ちをかけた、つまりパンドラの箱を開けたのが80年代の深刻な飢餓と、89年冷戦構造の終結だといいます。

とくに冷戦終結により、米ソともアフリカ支援の意欲を失い、それにより国家が破たんする。そこに追い打ちをかけるように、中国の新たな収奪システムが入り込む。といった分析は、目からうろこでした。

小店の開業当時、大学院生として良くご利用いただいたお客様に、アフリカ研究を専門とする方がおられました。飢餓はすでに始まっていましたが、まだ可能性に望みをかけられた時代です。

その後長くお目にかかりませんが、現在はどのようにアフリカをご覧になっているのでしょうか、お話を伺ってみたくなりました。

そもそもは複数部族国家に、形ばかりの民主制を持ち込んだことが、権力の固定化とそれに伴う腐敗を招く原因であったと松本さんから教わりました。

こうしてみると日本の場合も、政党というより、部族の集まりなのかもしれません。

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2016年06月28日

七夕大入札会目録出来

「出来」を「しゅったい」と読むことは、近ごろになってようやく世間的な認知を得たようです。

印刷、出版業界ならばともかく、書店業界となると書店員さんでも、例のコミック、ドラマで知った方が少なくなかったらしい。

古本業界に至っては、若い人たちばかりか、ある程度年配の同業まで「知らなかった」と驚いている人がいました。誰でも知っている文字だけに、そこに特殊な読みが隠されていることを見逃してきたわけです。

かく申す店主は、出来の読みこそ知っておりましたものの、そんなコミック、ドラマがあったことは、まるで存じませんでした。今も知らないのですが。

tanabataさて今年の目録は、昨年に続いて最低入札価格10万円。小店などには、なかなか敷居の高いものになっています。

曜日のめぐりあわせで、大市会の日程が昨年より1週間、後ろにずれました。そのため、お客様から「目録はまだか」という催促を受けた書店も何軒かあるそうです。

業者は業者で、少しでも早くお客様に届けたいと待ち受けていますから、「出来は何時か」という問い合わせを、目録担当者は何度も受けたようです。

この大入札会目録は、その名の通り、入札会において書店が札を入れることによって落札者が決定します。先着順の販売目録ではありません。

それにも拘らず、人より早く見たい、他店より早く送りたいという心理が生まれるのは、不思議なところです。しかし、そうした熱心な方々がおられればこそ、この入札会が長きにわたって続けてこられたのでしょう。

小店には「まだか」と問うお客様はおられません。しかしお送りして喜んでいただけるお客様が、数少ないながらおられます。

1日2日、届くのが遅れてもお叱りを受けることはないでしょうから、明日にでもお送りしようと思っております。

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2016年06月27日

ダウンロード本

acorn昨日たまプラーザから引き取ってきた本の中に、ほとんど新本のようにまっさらな本が1冊混じっておりました。

出版社を見ると、自費出版本で知られる新風舎。ISBNがついていますから、例によってまずAm*z*nで調べてみると、「現在在庫切れです」の表示。「日本の古本屋」にも登録はありません。

面白そうなタイトルなので、まずは「日本の古本屋」に出品しようと、その適正価格を検討してみることにしました。

一般には、この「在庫切れ」というのが、販売店のことなのか、出版元のことなのかで事情はかなり違ってきます。ちなみにこの版元は、2008年に倒産し、現在は存在しません。

しかしおそらく、この書籍の場合は自費出版(あるいは「共同出版」)で出されたもので、在庫が残っているとすれば出版元ではなく、著者のところであろうと思われます。もとより確かめるすべはありませんが。

となると、あとは内容次第。ざっと目を通したところ、興味深い題材を丹念にお調べになっていますが、参考資料を見る限り一次資料に乏しい感は否めません。

とはいえ、一人の伝記をまとめることは大変な作業である上に、これが「どんぐりころころ」の作詞者に光を当てた最初の著作であるようですから、A5判276pの本に仕上げたご努力は、充分評価できると思います。

著者の学生時代からの親友が作詞者・青木存義のお孫さんであったことが、この伝記を書くきっかけとなったといいます。退職を機に取り組まれた、良きアマチュアの力作――というのが、店主の感想です。

本自体はあまり出回っていないようですので、もしかしたら定価以上でも買い手がつくかもしれないと、一瞬、算盤を弾きました。

しかし念のため、Googleでこの書名を検索したところ、無料ダウンロードのページが見つかったのです。確かに、アマチュアである著者からすれば、より多くの方に読んでいただくことが、何よりの望みでしょう。

冷静になって、本来の販売価格を小店の売価とすることにいたしました。

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2016年06月26日

私の宝物

RIMG1170たまプラーザに二度目の宅買い。前回積み残してきた本を引き取りに伺ったのです。

ペーパーバックが100冊ばかりと、新潮日本古典集成が不揃いで60冊ほど。その他大判の辞書類など、ともかく片付けて欲しいというご希望にしたがい、まとめて引き取ってまいりました。

マンションの5階から台車で2往復。プロとしては音を上げるほどの量ではないのですが、問題はバリアフリーでないこと。途中に段差があって、そこで一旦積み下ろしをしなければなりません。

しかも、今回に関して言えば、片道40分以上かけて引き取りに伺って、引き合う内容でないことは、事前に分かっております。

それでも前回の行きがかり上、いつ来てもらえますかとお電話を受けて、知らぬ顔で済ますこともできず、今朝、車を走らせて行ってきたのです。

作業時間が約30分。帰路も約40分。それだけで都合約2時間。店に持ち帰ってから、今度はその荷を片付けなければなりません。とりあえず売り物になるもの、ならないものに分け、半分ほどを処分することにしました。

そんなことだけで、午後もあらかた潰れてしまい、結局他の仕事にはほとんど手を付けられず。改めて生産性の低さにうなだれてしまいます。

「お金はいいですよ」とおっしゃっていただいたのですが、お客様には、前回と合わせて二回分の仕入れ代金をお支払いいたしましたところ、「こんなに!」と驚かれました。

棚から本を降ろし縛っているあいだ、「私にとっては宝物でしたが」としみじみおっしゃっていた、そのお気持ちと、決して多いとはいえない金額に喜ばれるお気持と。

そこに至るまでの決断を想像すると、今日一日をこの仕事に費やしてしまったことも、まあ良しとしようと思うのでした。

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2016年06月25日

値段相応

RIMG1134昨日は英国のEU離脱が、古書会館の中にいても大きな話題となった一日でしたが、明治古典会にとっては年度末となる、最終市の日でもありました。

そこで市会が終わってから、間近に迫った七夕大入札会に向けて臨時の総会を開き、その後で会員、経営員揃って約30名で会食をいたしました。

会場は山の上ホテルの「新北京」。バブルの頃ならいざ知らず、今どきそんなところで食事が出来るような余裕があるのだろうか――と心配したのは、店主ばかりではありません。

普段、仲間と行く激安中華料理店なら全員4〜5人分の勘定が、そこでは1人分にも足りないはず、というのが過去に利用した記憶に照らしての印象だったからです。

しかし幹事に訊いてみると、割合にリーズナブルな予算のコースがあったとのこと。確かに、聞かされた値段は驚くようなものではありません。それだけに今度は、別の心配が生まれました。

以前、それこそバブルの時代、銀座の高級中華料理店で明古の会食をしたことがあります。当時最低でもコース3万円からというような店で、半額くらいの予算で頼めたということでした。

期待半分、不安半分で出かけてみて、結果は失望の声がほとんど。生きたエビを、目の前で蒸して食べる料理が印象に残っただけ。品数も少なく、味も期待外れだったのです。

その二の舞になるのではないかという懸念は、ある程度、現実のものになりました。

当時と違うのは今回、店主などには品数、分量の点では十分以上だったこと。一方で、この店では、昔はもう少し旨いものを食べさせてもらった筈だがという思いが残りました。

食材や献立などで低価格に対応しているのでしょう。店内のテーブルなどの配置も、以前よりゆとりがなくなった気がします。それが今の時代に合わせての路線選択であるなら、我々の口出しすることではありません。

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2016年06月24日

気になる一口

最初に目に入ったのはStrindbergの全集でした。スウェーデン語版です。

パッと見たところ50冊以上。わが国では限られた作品しか翻訳されていないこの作家に、これほどの著作があったということに、まず驚きを覚えました。あとで調べてみると、全70冊とか。

次に、そんな本を架蔵していたのは、一体どんな方だったのだろうという関心が湧いてきました。

目を転じると、同じ口らしい洋書の山が、あちこちに積み上げられています。さらに、同じ封筒記号で、日本書も何点か出品されているようです。

もっとも、今日は明治古典会。洋書ばかりなら、洋書会に出品されていた可能性が大です。店主が気がつかなかっただけで、おそらくは日本書の方が量的に多かったのでしょう。

日本書については、映画、演劇関係も多かったのですが、それ以外にもさまざまな分野の本が混じり、どんなご専門であったのか、今一つ分かりません。

RIMG1147それに比べると洋書は、ストリンドベリ関係を初めとしてスェーデン語で書かれた本、とりわけ映画関係の本が大部分を占めていました。

10本、15本と大きな山に積み上げられた中には、何冊か気になる本もありました。本と一緒に冊子や書類なども束ねられていましたから、解いて見れば、旧蔵者を特定できる資料が見つかったかもしれません。

しかし、その山を崩してまで確かめようという気にはなれませんでした。それが分かったからといって、北欧語の映画書がそう簡単に売れるとも思えないからです。

保存状態が今一つだったこともあり、結局、入札をあきらめましたが、取り組んでみれば面白い蔵書だったかも知れません。安く落札した若い本屋さんに、その楽しみを譲ったのだと思うことにいたします。

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2016年06月23日

懐かしさを買う

RIMG1150古い芝居のパンフレットが出てまいりました。

この手のものは時々、宅買いの際に一緒にお引き取りしてくることがあり、まだほかに、どこかにしまい込んだままになっているものが結構あるはずです。

これに目を止めたのは、上演演目(ハムレット)のためでも、上演劇団(文学座)のためでもありません。

確かに表紙をめくると、芥川比呂志の大きな横顔が現れて、懐かしさは感じますが、それ以上に興味をひかれたのは上演会場の「東横ホール」という文字でした。

RIMG1165この劇場の閉館は1985年といいますから、小店が開業した時にはまだ存在していたわけです。もちろん以前から、その名は良く知っていましたが、店主はついに入館の機会がありませんでした。

それより面白く思ったのは、裏の見開きに載せられた「東横のれん街」の広告です。さすがに名代の店ばかりで、今でも時々利用する店の名も見られます。

ただ、中には撤退した店もあることでしょう。店自体たたんでしまったところだってあるかもしれません。いや、良く調べもせずにこんなことを申しては何ですが。

ところで映画パンフレットというのは、独自のマーケットを持つコレクターズアイテムですが、劇場パンフレットはどうなっているのでしょう。

ネットを検索してみると、扱っている店も点数も多いようですが、その価格根拠については、想像もつきません。あるいはオークション取引の方が盛んなのでしょうか。

はっきりしているのは、あまり古いものは、さしたる値にはならないということです。懐かしいと思う人が、限られてくるからです。

もしかしたら、懐かしいものにお金を払うのは、ある年代までのことなのかもしれません。

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2016年06月22日

本屋です

お昼時、男女5人組が店の前に立ち寄られました。店主がお見かけするのは2度目ですが、家人の話ではここしばらく、土日以外は連日のように、ご来店いただいているそうです。

お1人はリーダーらしい中年の男性で、後は皆さん2〜30代の女性3名と男性1名。どこかの事務所のお仲間が、一緒にお昼でも食べて、その戻り道といった雰囲気。

先生と学生というには、少し年恰好が違います。それよりなにより、この皆さん、徹底してご興味は店の前のジャンクおもちゃと、店内の飾り品。

RIMG1148いつも賑やかに声を上げながら品定めしたり、店に飾ってある地球儀などの値段を、家人に一つ一つお尋ねになったそうです。

そうしてこれまでに、乗り物おもちゃの類をいくつか、お買い上げいただきましたが、毎回、誰一人として本に目を向ける方はおられませんでした。

前回、店主が店番をしている時に来られた際、店内を見回されたリーダーが、出がけにポツリと「面白いものがなくなったな」と、独り言のように漏らされたのが聞こえました。

本のことを言われたのでないのは明らかですので、黙って聞き流しておりましたが、愉快な気分でなかったのはもちろんです。

そして今日。リーダーは店の中に入って来るなり、「何か入りましたか」とお尋ねになりました。そこで、「うちは本屋ですから」とお答えしたのです。

よほど驚かれたのか、意外だったのか、表の仲間のところに戻ると、店主の言葉を3度も4度も繰り返して伝えているのが聞こえてきました。

その言葉に促されるように5人組は、いつもよりずっと短い滞在時間で帰って行かれました。

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2016年06月21日

ささやかな収穫

洋書会、出品があるため午前11時に会館着。すでに他店の仕分けはあらかた終わっていて、店主が着くと待ちかねたように、当番会員たちが仕分けの手伝いをしてくれました。

おかげでこちらは手持無沙汰となり、他の出品物を見ているうち、ドイツ書の大山の中に、抜き出したい本が見つかりました。

図書館ラベルや、蔵書印が押されているため、数百冊がまとめて1点とされていたのですが、たまたま目に入ったリルケ書簡集6冊は、函の状態も良く、取り出してみるとどこにも蔵印などは見当たりません。

この大山に埋もれさせておくのは気の毒です。悪くすると、その量に恐れをなして、札が入らない可能性もあります。

そう思ってさらに目を凝らすと、他にも何冊か生かせる本があります。近くにいた当番に了解をとり、それらを別口にして、新たに封筒をつけさせてもらいました。

RIMG1133こういう行為が許されるのは、そうすることで明らかに荷主さんの利益となる、つまり売上高が上がると確信できるときだけです。むやみと自分が欲しい本だけを、選り分けるわけではありません。

大山に数冊、珍しい本が紛れ込んでいて、それを欲しさに残りの本も高く買う、という場合もないとは言えませんから、そのあたりは慎重に判断する必要があります。

今回の場合、その大山の価格が、店主が数冊抜いたことによって下がるとは思えませんでした。

いずれにせよリルケ書簡集を含む1点は、店主が落札いたしました。そして、仲間が仕分けてくれた小店の出品物は、思っていたより良い値段で売れました。

鬱陶しい梅雨の日でしたが、こと市場に関する限り、店主にとって良い一日であったというわけです。決して大きな商いではありませんでしたが。

konoinfo at 19:34|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
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