2016年08月

2016年08月31日

残念のお裾分け

店主の残念を、お裾分けさせていただきます。

今日届いた洋書会の落札品。道化、サーカス、見世物、大道芸といった、魅力的なテーマの本が150冊ほど。しかしその多くが、Acceptable, Fair あるいは Poor という状態です。

Good と称することが出来る本は、ほんの僅か。Fine に至っては、ほぼ皆無といえるでしょう。

ちなみにAmazon のコンディション表記でいうと Fine は「非常に良い」 、Good は「良い」 、Acceptable が「可」 に、それぞれ対応しているようです。

しかし経験的に言って、Good は「並の状態」程度と考えた方がよさそうで、日本の Amazon の「良い」も、説明を見ると、並の状態であればそう呼んでよいことになっているようです。

lulu話を戻しますと、魅力的な本の残念な保存状態の一例が、この本。良く売れた本のようですから、元々そう高い値はつけられません。

初版が出たのは1901年で、本書は1929年の版。本文が緑、挿絵が赤という、二色刷りも人気を呼んだのでしょう。

lulu2小さな画像では、見開きのページに何やら縁取りの模様があるように見えるかもしれませんが、拡大すれば明らかなように、これは水シミです。

表紙のほうに水シミが見られないのは、パラフィン紙が掛けられていたから。当初は大切にされたのでしょう。

シミだけではなく、ヤケもかなりのものです。フランス世紀末の香り漂う洒落た本も、この状態となっては「読めればよいという方」に、お求めいただくしかありません。

330 images de Jacquelux という、ふんだんな挿絵を見ているだけでも楽しめるのですが。

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2016年08月30日

Performing Artsふたたび

初心に帰れ――ということなのでしょうか。

danses先日、お客様から本を送ってよいかというお電話があり、着払いでお送りくださいとお答えした、その本が段ボール2箱、今朝届きました。

開けてみると演劇関係のフランス書。「学生時代(とりわけ2000〜2002頃)は大変お世話になりました」という、手書きのメモが添えられて。

申し訳ないことに、一緒にクリップ留めしてあった名刺を拝見しても、そのお名前からは、お顔が思い浮かびません。また残念なことに、箱詰めされていた本も、特に値のつくものではありませんでした。

すぐにお電話を入れて、その旨をお伝えすると、「活かしていただければ」というお返事。研究者ではなく、実際に演劇に携わっておられる方のようです。近く「アメリカ滞在となる」と、これもメモにありました。

午後からは洋書会。古書会館に着くと、会場の平台は8割方埋まっていて、まずまずの出品量。その中に、先週に引き続き、演劇雑芸関係の一口があることに気がつきました。

平台1列にまとめて陳列され、分量も先週と同じくらい。仕分けられていた点数も7、8点。行きがかり上、そのすべてに一通り札を入れました。

落札できなかったのは2点だけ。しかし今回は、逃した2点に特に未練はありません。それより、またしても100冊以上の演劇書を仕入れてしまったわけです。

買った以上は売らなければなりません。売るための努力をしなければなりません。ここに至って、初心が思い返されたのでした。

しかし30年ほど前のあの頃でさえ、売るのが難しかった演劇書が、今の時代に果たして買い手を見つけられるだろうか、という懸念もまた強くあるのです。

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2016年08月29日

総会成立

昨日は、組合の第71回定時総会でした。

日曜日ということもあって、出席者が少ないのではないかというのが心配でした。心配した通り少なかったのですが、定数割れという最悪の事態は、避けることが出来ました。

東京組合員数は現時点で605名。委任状の数だけは、300通ほど集まっておりましたので、理論上は本人出席が61名以上あれば、総会は成立することになります。

当日、発表されたところによると、本人出席は76名。委任状が320余通。楽々成立、といいたいところですが、役員改選のある年としては、記録的な少なさです。

改選となる各支部新旧役員の出席率が、極めて低かったことも一因でしょう。少なくとも新任の正副支部長は、揃って出席するのが慣例でしたが。

理事も改選されて、店主は晴れて自由の身となりましたが、その理事でも新任1名が「所用」で欠席。これも前代未聞のことだと思います。

理事の場合は、組合員に対し「万障お繰り合わせの上」出席をお願いする立場です。その当事者が「お繰り合わせ」出来なかったというのは、残念なことでした。

いずれにせよ今となっては、店主がとやかく言う立場ではありません。今後の活動の中で信頼を得ていただければと願います。

RIMG1334総会後、いつものように『新世界飯店』の出張料理で懇親会。これまでの7階会議室から、今年は8階の交流談話室に会場を変更。広さと人数がちょうど適合し、良い雰囲気の懇親会となりました。

料理の方も昨年より「減りが良かった」との、新世界さんのお話。少なめに用意したというわけではないので、確かに皆さん、よく召し上がられたのでしょう。

出席者に、いささかでも喜んでいただけたとしたら、報われる思いです。

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2016年08月28日

妙な連想

半袖では肌寒いような朝、久々のバス通勤です。

日曜日とあって車内は空いていて、ゆっくり座ることができ、先日から読み始めた文庫本をバッグから取り出しました。三木成夫『内臓とこころ』(河出文庫2013年)。

店主は、三木の遅れてきた読者であることを、白状しなければなりません。かねて面白いとは聞いておりましたが、今日に至るまで、著作を手にする機会がなかったのです。

手にしなかったというのは正確ではありません。以前『生命形態学序説 : 根原形象とメタモルフォーゼ』(うぶすな書院1992年)という専門書を、入荷したことがあります。

学生さんが教科書として使われたもののようでした。傷んで、書入れなどもあったと記憶しています。おそらく10年ほど前になるその時点で、すでに評判は聞いておりましたので、前書きくらいには目を通したはずです。

しかし結局、専門性が高すぎて、店主の読書対象とはなりませんでした。

今度は文庫本になっているだけあって、一般読者向けの内容です。読み始めてすぐ、これは確かに面白そうだと感じました。目からうろこというか、意表をつかれるというか、言われてみればその通りという話の連続。

人間を生物レベル、いや細胞レベル、もっと言えば分子レベルにまで「解剖」し、宇宙との感応を説いてみせるのです。

ところで本題とはまるで関係なく、店主が妙な連想を得た個所があります。それは生物の二大本能について語った部分。

そのひとつは自分のからだを外敵から守りながら、養ってゆく「個体維持」の本能。もうひとつは自分をぎせいにして子どもを育ててゆく「種族保存」の本能――要するに食と性の本能です。
RIMG1341
個体維持を個店維持、種族保存を業界保存と読み替えたとすると、自分は食よりも、性に熱心な人間ということになるのだろうか――そんなことを思ったりしたのでした。

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2016年08月27日

DVD、お前もか

RIMG1336神社の中でも一大チェーンと言ってよい「氷川神社」。そのなかで駒場地区を縄張りに持つのは、「大橋氷川神社」という、その名の通り大橋2丁目にある神社。最近では「上目黒氷川神社」と呼ぶそうです。

その例祭が今日と明日。お昼頃、修理に出して直ってきたところというお神輿が、ささやかな行列で店の前を過ぎて行きました。

昨夜と一昨夜の盆踊りは、お天気に恵まれましたが、お神輿に関してはあいにくのお天気。土曜日というのに人の出も少なくて、お祭りとは縁遠い雰囲気の小店界隈です。

曇って時折雨という薄暗いお天気も、気温が高くないこともあって、夏らしさがありません。こんなお天気がまだ2日3日は続きそうな予報が出ていて、8月はこのまま終わるのでしょうか。

今朝は、家人のために映画DVDレンタルのネット会員となるべく、申し込みをいたしました。

何しろ、毎週のようにレンタルショップから1週間5枚千円という借り出しをして、近ごろではその5枚を選ぶのに苦労するようになり、さらには、借りたは良いが期間内に見切れずに返すというようなことをしています。

1枚ずつ借りるより割安なのは分かりますが、それこそショップの思う壺。お金と時間の無駄遣いを強いられているのではないかと、娘も推奨するネット借り出しに切り替えを図ったのです。

早速、ホームページから作品を検索して、申し込みを始めた家人の感想は、「見たことのない作品が沢山ある」。

少しくらい広くても、やはり収納できる本数に限りがあるためか、お店では置いていないようなものも、ネットなら見つけることが出来るようです。

当然と言えば当然ですが、これでまた店に足を運ぶ客が一人減ることになるかと思うと、店舗経営者としては背信行為のようにも思えてきて、いささか後ろめたい気がしないでもありません。

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2016年08月26日

町会の盆踊り

昨日と今日の二晩、駒場は町内会の盆踊り大会でした。店から少し行った先の小さな駐車場と、その前の道路が会場です。

そのため、店の前は午後6時半から9時半まで通行止め。といってもふだんより、いくらか人通りが多いというだけ。浴衣を着たお子さん連れをチラホラ目にするので、確かに開催しているのだと分かるくらい。

昨夜は通行止めを避けて、逆方向に抜けさせてもらって帰りましたが、今夜は明古仲間との食事を済ませてから店に戻りましたので、すでに規制も解けています。

その食事を一緒にした一人、赤羽の本屋さんが、「うちの町会は今週末が盆踊り」と言ったところ、それを聞いた吉祥寺の本屋さんに「遅えな。盆踊りは盆前にするもので、盆過ぎにするのは田舎だけだよ」と決めつけられました。

おかげで店主としては、駒場も今夜が盆踊りであると、言いだすきっかけを失っております。

別に、田舎扱いされることを嫌ったわけではありません。それをいうなら赤羽も吉祥寺も、もちろん駒場だって、ついこの間まで田舎だったわけですから。

RIMG1313もとより言った本人にしても、酒席の軽口に過ぎず、ことさら田舎を蔑む意図はなかったはずだということは、ご本人のために申し上げておきます。

さて今日の明治古典会は、月末でフリ市開催の日。最後に競りにかけられたのは、中国近代美術家の印譜。中国人業者が二人で競り合って、今日一番の高値となりました。

ちなみに東京古書組合に入るために、国籍の条件はありません。古物商の許可証を持っていること。東京に営業所を持っていること。ただし日本語を理解できること。

というわけで、なかなか元気の良い同業たちであります。

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2016年08月25日

手掛かりなし

お休みをいただいた祟りか、以来、驚くほど店がヒマです。もっとも、1日は台風で、これはいたしかたありません。それ以外の日も、「大気の状態が不安定」な日々が続いたので、その影響なのでしょうか。

あるいは自動ドアの故障が、お客様を遠ざけているのでしょうか。

RIMG1305などと愚痴を言っていても始まらないので、せっせと洋書会で仕入れた演劇書の値段付けに励みました。

小店にとっては、長年集めてきた専門分野の本です。初めて見る本もあれば、懐かしい本、何冊も持っている本もあります。

本の状態が良くないのが玉に瑕ですが、1冊ずつ開いてデータを取っていると、ずっとしまい込んだままになっている在庫も、この機会にもう一度見直そうかという気持ちがわいてきました。

今回仕入れたのは、今年の春先から、何度かに分けて市場に出品されている口で、演劇関係の中でもサーカス、大道芸、ショウといった分野の本が多いのが特徴といえます。

繰り返しになりますが、状態が今一つのため、強い札を入れず、買い逃したものもたくさんありました。その中で比較的集まってきたのがCommedia dell'Arte関係です。

小店の在庫と合わせると、それなりにまとまった数量になるのではないでしょうか。

それにしても不思議なのは、ここまでの蔵書を持っておられた方についての情報が、まったく得られないことです。普通は、これだけの本を見ていくうちに、旧蔵者を知る手掛かりが、どこかに見つかるものです。

記名の習慣はなさそうです。はがき手紙類はおろか、領収書、請求書なども挟まれていません。もちろん出品者にお尋ねすれば、教えていただけるかもしれませんが、そこまでして知りたいわけではありません。

ただ、どんな方が持っておられたのか、気になることは確かです。

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2016年08月24日

原稿が気になる

石原慎太郎『天才』(幻冬舎)を読みました。

2週間ほど前のこと、中年男性が店に入って来られ、「置いて行きます」とおっしゃって、その1冊を店主に差し出すと、そのままお帰りになったのでした。

そんなわけですから、すぐ値をつけて店に出すのも憚られ、手近に置いているうちにふと手が伸びて、開いて見たのです。

驚くほどゆったりした行組で、やや間の抜けた感じのレイアウトではありますが、中高年や、読書に慣れていない人にとって、読み易いことは確か。それが狙いでもあるのでしょう。

集中して読めば、短時間で読み終えることが出来そうです。店主の場合は、店番の時、拾い読みのようにして読みましたので、何日もかかりましたが、延べ時間にすれば、2時間はかからなかった気がします。

内容については、後半のロッキード裁判のくだりが、先日NHKTVでこれに関する番組を見ていたおかげで、語り手の違いによってまさに「薮の中」化し、面白く感じました。

ただ事件の構図について、問題の核心はP3Cの方にあったはずだと見る点では、田中総理の口を借りた石原氏も、NHKも同じだと思われます。

これに関しては、もう一つはっきりしないNHKの語り口より、田中/石原氏の断定のほうが、腑に落ちました。

ところで気になったのは、この本の原稿を、石原氏は手書きしたのかどうかということです。

RIMG1308氏の悪筆は横綱級で、最近も市場で見かけたのですが、ただ線がうねっているようにしか見えない原稿の文字に沿って、編集者が読み下したと思われる文字が添えられておりました。

確かにあの文字なら、ワープロより早く書けるのかもしれません。

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2016年08月23日

演劇書の仕入れ

RIMG1306想像した通り、昨日の中央市会は、普段と変わらぬ賑わいであったようです。

昨日、市会から届いた案内メールの文面に「今日は台風であの人が来ないのできっと買えますよ。きっと。」とありました。

誘いの言葉というよりは、「あなたが来なければ、誰かに安く買われてしまいますよ」という、脅し文句に他なりません。

出品量が多いこともメールにうたわれておりました。そんなわけで、今日、洋書会に出かけると、4階の会場には、いつも以上に大量の「残置品」。

これは、ともかくも入札には来たものの、引取りは困難だった業者が多かったためだと思われます。本来、市場の荷物はその日のうちに片付けるのが決まりですが、状況を考えればやむを得ないでしょう。

そんなわけで今日の洋書会は、残置品のカーゴが、壁面にずらりと並んだ中で開かれておりました。

それほど大量ではありませんが、狭苦しい分、沢山あるように見えます。一口ものも3件ほどあったようです。そのうちの2つまでが小店に関わりのあるものでした。一つは音楽関係の口。もう一つは演劇芸能関係の口。

音楽書の方は山が大きすぎて怯んでしまい、まともな札が入れられませんでした。自分で仕分けていれば、もう少し買いやすく分けることもできたと思うと、残念な気もします。もちろん、それで買えたとは限りませんが。

演劇関係は、これまで何度か出ている口の続きです。サーカスや大道芸などの本も多く含まれています。

全体の量としても多くなかったので、数点に仕分けられたうちの、2点を落札することが出来ました。

ただ、もう1点、本の状態がいま一つ良くなかったため、やや弱い札を入れて取り逃がし、そうなってみると、それが一番欲しかったように思えてくるのが、古本屋の浅ましさでしょうか。

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2016年08月22日

アテ外れ

大きくアテが外れました。台風のことではありません。

台風は、おおよそのところ予想した範囲内。怖れたほどには、ひどい雨風にはなりませんでしたが、それでもお客様を遠ざけるには十分。その点では、想定通りだったというべきでしょう。

RIMG1322店内に空間が出来る程度の、最低限の棚だけ表に出して、ともかく営業していることをアピールしておりましたものの、降りが多少収まっている時でも、表にほとんど人通りはありませんでしたが、これも予期していたこと。

何のアテが外れたかと申しますと、こういう一日になることは分かっておりましたので、この機会にせめて店内の一角でも片付けようという目論見です。

少しはまとまった仕事が出来るのではないかと、朝、強まる雨の中を店に向かいながら、算段しておりました。

それが、いつの間にか一日が過ぎ、気がついて見れば、まるでこれといった仕事ができないまま、店を閉める時間が迫ります。

売上は、辛うじて今日もゼロではありませんでしたが、こうなったら、いっそゼロの方が潔いと思うくらいの数字。別にお一方、文庫本7冊を紙袋に入れてお持ち込みがありました。

お客様と言えば、結局このお2人だけで、他には留学生らしい方が、しばらく店内をご覧になっていかれたくらい。つまり店番に取られる時間も、ごく短かったわけです。

まったく今日一日、何をして過ごしたのか、ふり返って見ても説明がつきません。ただぼんやりしていた、としか言いようがない。世間では、荒天の中でも、普段通りに仕事をしなければならない方が大勢おられるというのに。

そういえば、今日の中央市会はどんな具合だったのでしょう。案外大勢が、市場に詰めかけたのでは、という気もします。

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