2016年11月

2016年11月30日

見えない石の話

個人的な話です。とお断りするまでもありませんか、いつだって個人的な話ですから。

2週間ばかり前のこと。明け方、痛みで目が覚めました。だんだん頭がはっきりしてくると、痛むのは腰から左わき腹にかけてのあたりだと分かってきました。

そして次第に、それが初めてではない、以前にも経験した痛みであると、思い出しました。

もう20年ほども経ちますが、初めてこの痛みに襲われたとき、おどろいて医者に行ったところ、尿路結石だと診断されたのです。

総合病院の泌尿器科を紹介されて半年あまり通院。ところが一向に石が動かず、担当医の判断で入院、手術に至ったという経験を持っております。

その時の痛みと、まったく同じだと確信いたしました。20年を経て、再び石が存在を主張したのだろうと。そう結論すると、このところ感じていたさまざまな自覚症状も、すべて符合するようです。

症状が一旦収まったので店に来て、開店の準備を済ませたころに、また痛みが襲ってきたため、近くのかかりつけのお医者さんに行き、痛みどめを出していただきました。

結局その日は、痛み止めを飲み、午前中を店の奥で横になって休むと、午後からは普通に過ごすことが出来ました。

数日後、意を決して専門医に診てもらうことにしました。下北沢にあるクリニックです。問診の後、エコー検査とレントゲン撮影。固唾をのんで聞いたその結果は、何とも意外なものでした。目につくような石は見つからなかったのです。

RIMG1542拍子抜けしたと同時に、新たな疑問が湧いてきます。それでは、あの痛みは何だったのでしょう。2日前に血液検査と、尿検査の結果も出て、癌などの心配はないと分かったことが、今回の収穫でした。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年11月29日

今日の古書会館

一回お休みをはさんで、二週間ぶりの洋書会。4階会場には、ほぼ全ての平台に隙間なく本が並んでおり、洋書会としては、かなり多めの出品量です。

しかし幸か不幸か、店主に入札しようという気を起こさせるものは、一点もなし。全体の3割が英文学関係、6割が経済学関係、あとはモロモロ。

ほとんどが100〜200冊単位にまとめられていたことも、敬遠させた理由です。仮に気になる本を山の中に1冊、2冊見つけたとしても、そのために数百冊を背負い込む物理的余裕が、もっか小店にはありません。

幸か不幸かという、その「幸」の部分は、どうしても手に入れたいと思う本が、そうした大山の中に混じっていなかったこと。「不幸」もまた同じ。物理的余裕を無視してまで入札したくなるような本が、見つからなかったことです。

つまるところ、手の出ない大量の洋書を、眺めていただけの一日となりました。こういう日もあります。

KIMG0572そんなわけで、今日の洋書会については、お話しできるようなことはありません。代わりに会館の話題をひとつ。3階で開催されている東京古典会で、NHKの番組収録がありました。

事前に市会からの案内メールでアナウンスされていましたので、午後1時過ぎに古書会館に着いた時、それらしき人たちが待機しているのを見ても、驚きませんでした。古書組合は、これまで何度もTV番組の取材を受けていますから。

それでも、用があって4階から階段を降りて3階を過ぎた時です。ちょうど収録を始めようと階段を昇ってくるスタッフと狭いところですれ違うことになり、脇へ除けて道を譲りました。

機材を持った数人が通り過ぎ、これで終わりかと思いきや、次から次と昇ってくる人が、いつ途切れるともしれません。呆れるほどの人数。はたして何という番組の収録だったのでしょう。

延々と階段途中に立ち尽くしたのは店主の他にもう一人、旧知の同業。全員が行き過ぎたあと、二人して思わず顔を見合わせたのでした。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年11月28日

駒場祭異変

KIMG0575昨日まで三日間、駒場祭でした。

それが小店ばかりか、駒場の商店には全く何のおこぼれもない三日間であることは、店主の知る限りにおいて過去30年以上、変わらぬ事実です。

そう確信しておりましたところ、25日の朝、お隣のコンビニを覗くと、レジに長い列が出来ておりました。家人の話では「駒場祭セット」なるものを販売していたとか。

紙あるいはプラスチックのコップだとか皿だとか、割り箸だとか、そんなものでもまとめて売られていたのでしょうか。

少し時間が経ってから、ウェットティシューを買いに行ったら品切れになっておりました。これも駒場祭特需だったかもしれません。

しかし、始まってしまえば学生さんは降りて来ず、コンビニも普段よりずっと人の少ない3日間であったことでしょう。

小店にはもちろん「駒場祭セット」のような特需は期待できません。それでも初めてご来店になったらしいお客様が、この3日間はいつもより多かった気がいたします。

売上も特に落ち込みはありませんでした。もっとも、これ以上落ち込みようがないレベルの日々ではありますが。

そんななか、ひとつ例年と違う点がありました。それは、段ボールを求める学生さんたちが、一人も来なかったことです。

毎年必ず、何人かの学生さんが探しに来られるため、しばらく前から、空いた段ボール箱を捨てずに取ってありました。

段ボールなどを使わないようになったのか、あるいは最近の学部生さんには、小店の存在が認知されていないのか。次の資源回収日に、処分するつもりです。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年11月27日

福島いじめ

昨日の出版記念会で、もっぱら二人だけで話したという先輩は、福島の人です。南相馬市小高地区で農業を営んでいました。

原発事故のすぐあと、避難指示に従って取るものもとりあえず家を離れ、以後、5年間にわたって他所の土地で暮らすことを余儀なくされました。

今年の夏、避難指示が解除され、戻ろうと思えば戻れる状況になったのですが、生活のインフラが整っておらず、防犯面にも不安があるとのことで、二の足を踏んでいる家族も多いようです。

しかしインフラ整備と帰還者の増加はニワトリと卵。どちらが先と言っていたのでは、永久に町は甦りません。先輩も、戻る覚悟を固めていました。

ただ、戻るのは先輩ご夫婦と、90歳を超えるご母堂の3人だけ。事故前まで一緒に暮らしていたご長男の家族は、今年の春、茨城県に建てた新しい家で暮らすことになるそうです。

農地は地区でまとめて整備し、利用する意思のある人に使ってもらおうという計画だと聞きました。高齢化の問題に加え、食物の栽培は現実としてあきらめざるを得ないからと。

どれほど安全だと言っても、消費者は避難指示地域だったところの作物を選ぼうとしない。その断定に反論することは、店主には出来ませんでした。

それが研究者の道をあきらめて農家を継ぎ、半世紀近くを農民として過ごした先輩の、直面する状況です。全ては原発事故のもたらしたものです。

KIMG0565地震がなければ、津波がなければと悔やむことは詮無いことかもしれません。しかし原発がなければ、というのは悔やむ意味のあることだと思います。

「福島いじめ」があるという新聞記事を読みました。明らかな犯罪まで「いじめ」と呼ぶのは問題であるにしても、昨日の先輩の話を思い起こし、深く心を痛めました。

konoinfo at 18:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年11月26日

出版記念会

portrait大学時代の先輩の著書『自画像の思想史』。その出版記念会が横浜で催され、それに出かけてまいりました。

元町駅から歩いて数分、小さなビルの地下にある「ブラッスリー アルティザン」というのがその会場。正午から始まる会に、その15分前に到着すると、すでに大勢の来場者で賑わっておりました。

店主の知った顔は主役である当の木下さんのほかには、同じ大学のやはり先輩が一人だけ。正確に言えば、先日小店にご来店になった四方田さんもお見えでしたが、結局、始まってから終わりまで、話したのはその先輩とだけです。

それでも久しぶりの先輩と話すことは山ほどあり、少しも退屈しませんでした。

スピーチは、最初が本に取り上げられた中で唯一の現存画家という方、次いで乾杯が四方田さん、しばらく間をおいて木下さん、出版社の方、という4名。

あとは自由に立食歓談。70名ほどの出席者だと後で聞きましたが、会場も広すぎず狭すぎず、良い雰囲気でした。

食にこだわりを持つ木下さんのことです、料理にも期待はありました。品数が多くて、並んでいた半分ほどしか取れませんでしたが、どれもまずまず。一杯だけいただいた赤ワインが、とくに美味しく思いました。

KIMG0579会場に入る際、木下さんが用意したらしい、手書きのネームラベルを胸に貼ってもらっていました。帰る時、それを剥がし、改めて眼鏡をかけて見ると「大学時代の同輩」とあります。

ほかの出席者の胸元に遠慮なく目を近づけて、しっかり読ませてもらえば良かったと、お別れの挨拶とともに木下さんに告げると、「そのつもりで作ったんだけどな」と、少し残念そうな声が返ってきたのでした。

konoinfo at 18:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年11月25日

景気回復か?

明治古典会は11月の特選市。つまり今日が今月の最終回というわけです。今年も残すところは12月のクリスマス特選市のみということになりました。

特選市ですから恒例のフリ市があり、市会終了後は会員、経営員揃っての会食がありました。

その会食の場での話題は、今日の市場のことよりも、先日終ったばかりの東京古典会大市会のことに終始した感があります。

目録段階から前評判は高かったのですが、その結果は予想を上回る好成績でした。特に、何千万円という高額で落札される商品が何点もあらわれ、それが出来高を押し上げたと見られます。

数年前、億の単位が付く中国物の落札が耳目を集めましたが、今年の場合はそこまで突出したものはなかったようです。それにも拘らず良い数字となったのは、中国マネーに代わる新たな購買力が生まれてきたとみてよいのでしょうか。

ただいずれにせよ古書業界にとっては、千万円台でさえ超高額品です。東京組合全体を通じて、年に何点の取引があるかというレベル。

KIMG0556そうした商品の売れ行きだけから、業界全体の景気を推し量ることはできません。つまり今回の大市の好成績が、もしこうした高額品によってもたらされたのだとすれば、決して景気回復の兆候とは即断できない訳です。

そのあたりの分析を、ぜひ関係者によって進めていただきたいものです。

たとえば札が十分に競り上がっていたかどうか、それが需要動向を見る大きな手掛かりになるのですが、現在の入札システムでは、事後にその点を検証するすべはありません。

もっぱら現場で札を目にした人達の感覚が、頼りとなります。そのあたりを、フィードバックしてもらいたいものだと思うのです。

konoinfo at 22:39|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年11月24日

いつも他国

昨日の夜、睡眠薬代わりのTVをつけ、30分で切れるようにセットして布団をかぶり、静かに眠ろうとしたところ、どうやら見る番組を間違えてしまったようです。

途中から見ることになったBS世界のドキュメンタリー「オーストラリア 難民“絶望”収容所」は、眠気を誘うような番組とは真反対で、つい終わりまで見てしまいました。

「広がる“不寛容な社会”」というシリーズの一作です。内容については番組のホームページを見ていただく方が早いでしょう。

考え込まされる問題でした。難民の絶望も想像に余りありますが、それ以上にこの世界自体に絶望したくなるような話です。政府関係者に取材を申し込み、ことごとく断られたらしいことがエンドロールに記されていました。この番組のスタンスが想像できようというものです。

こうした鋭い批評性をもつドキュメンタリーを放送できるNHKBSは、捨てたものでありません。遠慮ない政府批判を伴う番組だって、これまでにも何作となく見てきました。

しかしそれは、いつも他国の政府です。NHK自らが、我が国の問題について、そのようなドキュメンタリーを制作し、放送したという例を、なかなか思い出せません。

何しろ中立が求められています。対立する意見がある問題については、公平に取り上げなければなりません。しかし対立は、中立地点が見えないからこそ起きるわけです。そして、およそ問題と名の付くもので、対立する意見のないものはありません。

近ごろ公共施設で、様々なイベントの利用が制限されているという話を聞きます。ここでも公正中立というお題目が唱えられます。同じ理屈で公共放送から、切れ味鋭いドキュメンタリーが姿を消しているのでしょうか。

KIMG0550それならせめて、民間で制作されたすぐれたドキュメンタリーを、海外物と同じように取り上げてもらうことはできないものだろうかと、無理を知りつつ願うのでした。

konoinfo at 20:20|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年11月23日

「献呈署名」

単に「署名本」といえば、signed by the authorの意味であることは古書の世界では常識ですが、「記名と署名の区別もつかない本屋がいる」と、以前お客様から苦言をちょうだいしたことがあります。

ある時、ご注文いただいた小店の本の状態説明に「署名あり」と書かれておりました。現品を確かめてみますと、著者とは無関係の名が書かれております。店のものが登録の際に、うっかり書き違えたようです。

その旨を返信いたしましたところ、了承したというお返事と共に、かつて署名本のつもりで頼んだある書店から記名本が送り付けられ、返品を申し入れたら逆切れされたとのご経験を、お伝えくださったのでした。

ちかごろでは「サイン入り」と表示する書店もあるようですが、どうも店主にはしっくりきません。

贈った相手の名も書かれている場合には、「献呈署名」と書くことになっております。宛名があるものを、嫌われる方もおられるからです。記名と異ならないというわけでしょう。

しかしその宛先が名のある方である場合、またそれは値打ちになります。ですからそういう時は「〇〇宛献呈署名」となります。差し障りのなさそうな場合に限りますが。

最も「献呈署名」が多いのは研究書の類で、これらは署名に値打ちがあることはほどんどありませんが、この場合も、一種の注意書きとして、洩らさず記載するようにしております。

KIMG0548こんな話をいたしましたのは、不思議な「献呈署名本」に出くわしたからです。今や重鎮となっておられる美術史学者のT先生。その45年も前のご著書です。

見返しに続く前扉にフランス語で献辞が書かれ、宛先としてフランスの美術史家の名前。そしてご自身の署名。

この本が、なぜ小店の手元にあるのか。どこで手に入れたのかさえ、どうしても思い出せないのですが、フランスに渡っていなければならないはずの本が、なぜ日本にあるのでしょう。追及するのも憚られるようです。

konoinfo at 18:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年11月22日

VULGATA

医師から、本を読むことを止められる病気があるようです。それも目の病でではなく、精神の病でです。

もちろん楽しみに本を読んでいる人ではなく、それを仕事にしているような人の場合。つまり研究者などが、そうした病に冒される場合があるらしいのです。

辛いことに違いありません。言うならば、水泳選手が水に入るのを止められるようなもの、ほとんど死活問題です。

今回、この話を聞いたのは、すでに立派な業績を残されている学者さんに関するものでしたが、それで思い出したのは、過去に良く小店をご利用いただいていたある研究生のことです。

しばらくお顔を見なくなって、何年ぶりかでご来店になった時、以前のように大きな手提げカバンを持ってこられ、その中の本をお売りになりたいと言われました。

いつもそうしてまずお売りいただき、それから改めて店内を見て、何かしら買って行かれるのです。

しかしその時は、お売りいただいた後で「しばらく本は買えません、医者から止められているのです」とおっしゃって、そのままお帰りになりました。

「許しが出たらあの本を買わせていただきますから」と、棚の一番上に乗せてある2冊本のVULGATAを指さしたあとで。

そういえばあれ以来、その方をお見かけしません。もう何年経つでしょう。何をご専門にされていたかも存じませんが、英独仏語はもとより、古典語まで読まれる読書家でした。

医師の許しはついに出ないままなのでしょうか。VULGATAは、いくらか色褪せて棚の上に乗ったままです。

KIMG0563他人事ではありません。本屋の死活問題は腰。これを痛めて、医師から「重いものを持ってはいけません」と宣告されたら――そう思うとぞっといたします。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年11月21日

不足してます

ただいま小店では次のようなものが不足しております。

店頭に並べている読み物系文庫本。おなじくペーパーバック(ポケットブック)。そして絵本。

RIMG1396このうち文庫本は慢性的に不足しており、月に一度、五反田の入札市でせっせと入札していることは、すでに何度もこのブログでお伝えしているとおりです。

ペーパーバッグはついこの間まで、かなり大量のストックがあったのですが、2、3件、ディスプレイ需要と思われるまとめ買いがあり、あっという間に底をついてしまいました。

文庫本については、毎週月曜日の中央市会などには常時出品されていますから、そこで入札することも可能です。ただし、欲しいものを適度な分量だけ買うことは難しい。入札方式の欠点と言っていいでしょう。

その点、フリ(競り)市なら、自分の欲しいだけの量を買うことが比較的容易です。もちろん競り勝つことが必要ですが。

以前先輩から聞いた話では、昔の競りでは中座(振り手)が加減して、皆が欲しがるような本は、出来るだけ特定の業者に偏らないように振り分けていたといいます。

ただこのフリ市にも欠点があり、自分の欲しい本が振られるまで、そしてそれがある程度手に入るまで、座を離れることが出来ません。一長一短あって、現在の入札方式が主流となっているわけです。

ともあれ、もっかこれらが不足中。もちろん、ほかのものは十分にあるなどと申しているわけではありません。ただこの3点は、小店でも比較的求められることの多い商品ですので、なるべく小まめに補充しておきたいのです。

しかし、仕入れがままならないのが古本屋。あるものを工夫して売って行くしかないとは思います。とはいえ、明日にでもどなたか、売りに来られないものでしょうか。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
Profile