2016年11月

2016年11月10日

監督責任

夕方、携帯らしい番号の電話がかかってきました。

取ると「そちらは本屋さんですよね」「はい」「新刊屋さんですか」「古本屋です」「ちょっと見ていただきたいんですが、そちらで立ち読みしているか、さっきまでしていた人はいますか?」

「おりません」「真ん中に梯子のような模様があるバッグを背負った男の子ですが」「お幾つくらいですか?」「中2ですが、ちょっと子供っぽく見えるかもしれません」

行方を探しておられるのかと思いましたが、それにしては口調が詰問調です。「そちらの店を知らないんですが、広いんですか?店の中は混雑しているのですか?」「広くありません、お客様がいればすぐ分かります」

「そのあたりで本屋さんは他にありますか?」「ありません」「お宅は立ち読みなどを許しておられますか?」「長くなれば注意します」矢継ぎ早の質問攻めです。

「マンガは置いてますか」「置いておりません」「子どもが立ち読みしそうな本とかは?」なかなか引き下がりません。

そのうち事の次第が分かりました。お子さんの携帯GPSが20分ほど動かないので、立ち読みにちがいないと思い、本人に電話をしたら慌てて切ったそうです。そこで停滞地点界隈の本屋である小店に、電話をかけてこられたという次第。

RIMG1522ここまで聞いて不愉快が募り、つい失礼な電話だと申し上げると、親の監督責任であり、立ち読みを許さない教育方針なので、お店にご迷惑をかけないようにと思って電話しているのだとのご返答。

ともかく小店ではお見かけしていないと、いささか強い語調で電話を切りました。切ったあと、ふと気づいたことがあり、掛かってきた番号に掛け直しました。後味の悪い切り方だったこともありましたので。

「隣がコンビニですが、そちらに聞いてみたら…」言い終える暇もなく、「ああ、うちの子は近隣のコンビニはすべて出入り禁止で、お店に協力をお願いしています。いまビデオチェックをしてもらっているところです」

今度は友好的に電話を切りましたが、気分は晴れませんでした。

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2016年11月09日

木枯らし1号

RIMG1520今朝の天気予報で、今日は木枯らし1号が吹きそうだと言っておりました。

木枯らしどころか、とんだ爆風が海の向こうから吹いてきたようです。瓢箪から駒、まさかのトランプです。

アメリカ国民に対する失望を禁じ得ませんが、アメリカ国民の絶望の方がはるかに深かったということなのかもしれません。良識などというものに、もはや何の価値もないのだと考える人が多かったわけでしょう。

よその国のことだと笑って済まされないのが、厄介なところです。何しろ核のボタンを握る人。この上は、当選によって嘘のようにまともな人に豹変することを願うしかありません。

風が吹けば桶屋が儲かる、という話もありますが、この風はどこにどんな影響をもたらすのでしょうか。しばらくは混乱が続きそうです。

さて世界情勢は置いて、今日、一人のお得意様から妙な質問を受けました。「韓国の1930年頃の学者さんについて調べられる事典のようなものはありませんか」というものです。

詳しくお尋ねすると、ある個人についてお知りになりたいのだと分かりました。それで、ネットでその名を検索してみました。

するとWikipediaの項目などはありませんでしたが、一件、その個人について書かれた研究論文のpdfファイルが見つかりました。某大学の紀要に載ったもののようです。

A4で30ページに及ぶその論文をダウンロードし、その場でプリントアウトしてお渡しすると、大層喜んでくださいました。店主より一回り以上年長で、パソコンには触れたこともないという方です。

5千円の本を一冊お買い上げいただきましたので、こちらは実費も頂戴しませんでしたが、古本屋としては、いささか複雑な心境。今後の商売情勢に、さらなる不安を覚えるのでした。

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2016年11月08日

本来の交換会

KIMG0540午前中から洋書会に。今日は当番ではありませんが、少しばかり出品があり、その仕分をするために出かけました。

洋書まつりに出品した残りが、どうにも場所ふさぎなので、処分するのが目的でした。ですから売上高は二の次、ともかく売れてくれれば有り難いというところ。

一冊ずつ見ていけば、充分売れそうな本で、売れておかしくない値をつけていたはずですのに、いざ売れ残ってしまうと、それを他店に買い上げてもらうのは、なかなか大変です。

お互いプロ同士ですから、それがウブ口か、そうでないかはひと目で見分けがつきます。やみくもにまとめて量を多くしても、かえって敬遠されるばかり。普段の仕分けより、よほど苦心を必要としました。

カーゴ半台の量を5点に分け、そのうち3点は買い手が付きました。分量としては8割方が売れましたから、まずまずの結果と言わねばなりません。

残り物というと聞こえが悪いのですが、それを別の場所に持って行けば、新たな目にさらされます。そこで買い手が見つかる可能性は十分ある。店にとっても、せっせと商品を入れ替えることは、集客力を高めるうえで大切な筈です。

ですから交換会取引の半ば以上は、ある意味で売れ残り品の交換だと言って良いでしょう。

お客様から仕入れたそのままが市場に持ち込まれたものをウブ口と言い、それがまとまった量の場合は一口ものと呼びますが、洋書会は、他の交換会に比べウブ口、一口ものが出品される割合が高い。

しかしそれは、洋書を扱う店が少ないからにほかなりません。そしてそのことが、在庫処分を難しくさせているわけです。

そう考えると、今日の結果はまずまずどころか、大成功というべきかもしれません。

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2016年11月07日

想定外の仕入れ

「段ボール9箱、明日お送りしても良いですか」というメールを昨日いただきました。

KIMG0542一年半ばかり前、お仲間連れで小店に立ち寄られ、その折、「いずれ整理するときにはお願いします」というお言葉をいただいていた、元東大教授のK先生です。

ご住所を見ると、南烏山。段ボール9箱を宅配便で送れば、1万円ほどにはなるでしょう。また届く日によっては、店に収めるのが難しい場合もあります。今日なら店主に予定もありませんから、引き取りに伺うのが一番手っ取り早い。

そう考えて昨日のうちにその旨をメールし、お伺いを立てました。夜には、了承したという返信が届きました。

そこで今日、午前中に引き取りに伺うことになりました。店を出たのがほぼ10時、着いたのが10時半。まずは予定通りです。

ただ一つ怖れていたのは荷物を運ぶ動線の状況でしたが、さいわい集合住宅6階の一室まで、問題なく手押台車を転がしていくことができました。

二往復して9箱を積み込み、すぐさま店に戻ります。ここで一つ想定外。国道20号線の上北沢あたりで事故があったため、そこを通り抜けるまでに40分近くを費やしてしまいました。帰路はほぼ一時間です。

店に着いて箱を降ろすと、もうお昼でしたが、ともあれ箱の中身を確かめるため、まず全てを開梱して店内に積み上げました。

ここで二つ目の想定外。しかし良い方へ。ご専門からして、ほとんどがフランス語の書籍だと思っておりました。むしろ日本書の方が多い。それも比較的新しく、状態も良いものがほとんど。

そもそも洋書ばかりなら送料に満たない可能性があり、だからこそお引き取りに伺うことにしたのでした。そんな心配は無用だったことになりますが、査定額をお伝えする際、気の引ける思いをせずに済んだのが何よりでした。

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2016年11月06日

『マザリナード集成』

おだやかな日曜日、先日に続いて「文化」をしてまいりました。秋の展覧会めぐり第二弾、というわけです。

東京大学駒場博物館で開催中の「東京大学コレクション マザリナード集成 : 十七世紀のフランスとフロンドの乱とメディア」。

今日出かけるまでに、お客様お2人から相反する感想を聞かされておりました。一方は「面白い!本が好きな人はぜひ行くべきです」、もう一方は「期待外れでした」。

KIMG0547店を出たのは10時半を少し回ったくらい。歩いて5分、正門付近は出入りする人影もありましたが、建物のあたりに来ると相変わらず静寂そのもの。会場内は、例によって独り占め状態です。

解説のパンフレットでも置いてあるかと入り口のテーブルを見ましたが、あったのは小店に置いてあるのと同じチラシだけ。

それで、一回りして帰るまでに、思った以上の時間を費やすことになりました。

展示されているのは東京大学が所蔵する『マザリナード集成』全44巻と、若干の参考資料。ただ、全巻が展示されていたのか、一部だったのか、今となると定かではありません。

いずれにせよ、本自体を手に取って見られるわけではなく、開かれた頁を見るだけで、その大部分は文字が並ぶばかりのタイトル頁です。

これだけを眺めてワクワクできる方は、さほど多くはないでしょう。どうしてもパネルやプレートの解説を頼るしかありません。店主が時間を食ったのもそのため。

以前の別の展示会では、パネルと同じ内容をパンフレットに作って用意してありました。

ただ今回はその解説パネルに、誤字脱字が多いという指摘が付箋で貼られていたところを見ると、準備時間に余裕がなかったのかもしれません。

店主としては「面白い」に同感、ただし解説パンフレットを「期待」したいところです。

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2016年11月05日

限定250部

外国の古書肆のカタログなどで、private press とか illustrated books とかの項目があると、まず良い値段の本が並んでいるものと相場が決まっています。

日本では、まとめて限定本というジャンルに入るのですが、かの初版本ブームの時代は限定本ブームでもあって、「限定250部以下ならどんな本でも売る自信があった」と、ある先輩業者から聞いたことがあります。

いまや見る影もなく縮小したわが国の限定本市場ですが、目を世界に転じても事情は大同小異と思われます。本当に良いものは今なお人気がある、という点も含めて。

RIMG1485そんな私家版(日本語だとニュアンスが異なりますが)や挿絵本が、このところしばしば明治古典会に出品され、店主はもっぱら目の保養をさせていただいております。

どうやら、一人のコレクターが業者を通じて整理しているものらしく、1回ごとの量はそれほどではないのですが、これまでの回数、そして、これでお終いとは思えないことを考えると、なかなかのコレクションだと言わねばなりません。

その片鱗をうかがい知ることが出来る一冊が、昨日の市場に出品されていました。

表紙はハガキ程の大きさに折られた羊皮紙。表面に CREDO と金色で刻印され、中身は四つ折りにされた一枚の紙、だったと思います。

Doves Press の創業に先立つCobden-Sandersonの宣言書。250部が刷られたといわれますが、うち12部はヴェラムに印刷されているとか。それを確かめることが、実はできませんでした。

いつもながらの迂闊さで、この出品に気づいたのは落札されたあと。すでにopp袋に入れてテープ留めされており、いかに懇意な同業の落札とはいえ、勝手に開けるわけには参りません。

落札価格からすれば、12部本ということはなさそうです。それでも、たった8ページの小さなパンフレットとしては、驚くような価格。世界中で250部なら、まだ買い手はつくということでしょうか。

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2016年11月04日

黒と紺

KIMG0544視力の衰えは、いやというほど自覚している店主ですが、今日はちょっとショックな事実を知らされました。

先日、ユニクロで求めたコットンパンツ。ネットでNAVYを注文したのですが、届いてみると黒い色にしか見えません。タグを見ると確かにNAVY。

明るいところで見れば違うかもしれないと、初めはさほど気にしませんでした。過去にも、店内では黒く見えたものが、表に持って出ると確かに濃紺であると分かった、という経験もあります。

しかし今回は、穿いて表に出た時に見直しても、一向に青みが感じられません。それで、店主としては、黒いズボンであるということにして着用しておりました。

しかるに今日、店を出るときに何気なく家人に尋ねてみたのです。「このズボン、NAVYだというけど、ほとんど黒だよね?」

すると家人はきっぱり、「どうみてもNAVYです」。

そう言えば以前、洋書会で大量の仕分けをしている時、黒い背が欲しいという同業のために本を選んでいて、「これはどうか」と見せたら、「それは紺ですね」と却下されたこともありました。

お断りしておきますが、まず内容で仕分け、その残りに関してのお話しです。

ともあれ店主には、濃紺と黒の区別がつきにくいようです。これが生まれながらのものか、それとも加齢により、視力だけでなく色覚も衰えてきたのか、そこのところは分かりません。

ただし印刷や、画面で色見本を見る限り、紺は紺に見えます。もっともこうなると、果たして他人様と同じ色に見えているのかどうか、いささか自信がなくなりましたが。

自らの眼力に自信を失った店主は、本日の明古でも、何点かの明治本に弱気な札を入れるのがやっと。もちろん落札は叶いませんでした。

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2016年11月03日

漱石の絵はがき

「文化の日」は、朝から良いお天気。

店を開け終え、表に出て静かな通りを見渡しながら、こういう日にこそ「文化」を感じに出かけようと思い立ちました。

sosekiお目当ては、ご近所で開かれている二つの展覧会。その内、今日は、まず遠いほうの日本近代文学館「漱石−絵はがきの小宇宙」展に出かけることにいたしました。

少し気温は低めでしたが、散歩にはちょうどよかろうと考えたからです。といっても、10分とかからない距離ではありますが。

しばし家人に店番を頼み、僅かな小銭とスマホだけをポケットに入れ、手ぶらで店を出たのが10時半頃。文学館の建物に入ると、祝日にもかかわらず、ごく僅かな入館者です。おかげでゆっくりと、会場を見て回ることが出来ました。

展覧会の感想は、正直に申し上げると、ちょっと当て外れ。ただし、店主の勝手な思い込みが外れただけで、展示物そのものは面白く見せていただきました。

外れたアテは、漱石自身の絵はがきの少なさです。よくチラシを読めば、漱石宛ての絵はがきが主であり、自筆の絵はがきも「あわせて」展示すると書かれています。

数えてみたわけではありませんが、自筆絵はがきは全部で6点ほど。そのかわり何点かの自筆書簡や、良く知られた漱石資料をいくつか見ることが出来ました。

古本屋根性か、展示物の所蔵者名がつい気になります。寺田寅彦に宛てた漱石の絵はがきが「高知県図書館蔵」というのは納得でしたが、橋口貢宛ての3通は、ある会社名。オーナーの収集品でしょうか。

そうして小一時間も見て回ったのですが、何より閉口したのは会場の暗さもあって、肝心の展示物が良く見えなかったこと。特にガラス越しの壁に掛かったものは眼鏡をしても外しても、うまく焦点が合わず、何とも情けない気分でありました。

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2016年11月02日

吹き来る風が私に云ふ

koten東京古典会から大市目録が届きました。題して『古典籍展観大入札会目録』。

小店のように古典籍とは無縁の、吹けば飛ぶような店にも、毎年きまって送っていただけるのは、実にありがたいことではありますが、勿体ないような気もいたします。

それで、折角ですので毎回じっくり眼だけは通すようにしているのですが、不勉強者の悲しさ。どれほどの価値があるものやら、ほとんどは見当がつきません。

はっきり分かるのは、少なくとも出品者もしくは主催者が、10万円以上の値打ちがあると踏んだものばかりだということです。

もちろん、店主の目から見ても10万円どころではない、小店の在庫総額よりはるかに高額であろうと思われる商品も、数多く見受けられます。

この目録では、本文に続く写真版の冒頭24頁がカラー印刷になっていて、全体で約2千点のうちの、ざっと40点ばかりがそこに掲載されており、特に高価と目されるものが集められています。

そのなかでも、丸1頁を使って掲載されていたのは2点。1頁目の「関戸本古今集切」(伝藤原行成筆)と、末尾第24頁に置かれた写楽の版画「四代目松本幸四郎の山谷の肴屋五郎兵衛」。

古典会のホームページに出品抄が出ていて、およそ100点余りを見ることができ、もちろん上記2点もその中に含まれています。ご興味がおありの方は、どうぞ。

ただし画像が小さく、さほど鮮明でもありません。よく確かめたければ、目録を購入するか、当日会場でご覧ください(こちらは無料)ということでしょうか。

さてそうして、古書の世界の極北を堪能し終えると、あらためて我が身を顧みることになるのも毎年同じ。中也の一節が浮かぶのも、そんな時です。

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2016年11月01日

大型本の悩み

当番が明けて、今日の洋書会はお昼から。

会場に着くと出品はやや少な目で、今月の当番会員たちはすでに昼食も済ませ、食後の歓談に花を咲かせている最中でした。

量が少ない分、入札する側としては一点一点、じっくり見ることになります。量に左右されるようでは修行が足りない、と言えばそれまでですが。

店主には、今日は何かしら落札したい事情がありました。明日のルート便に、発送用の梱包資材を一緒に積みたかったのです。

そのために会場を一回り、二回りしたのですが、札を入れようかという気になれたのは2点だけ。そのいずれもが、大判の重たい本が数十冊ずつという口です。

その数十冊の山の中に、それぞれ数冊ずつ、興味を惹かれる本が入っております。開札時間ぎりぎりまでためらいました。

確かにそれら何冊かは手に入れたい本ですが、そのために、その何十倍もの大型本を背負い込むのは、場所塞ぎでもあるし、腰にも良くありません。

誰も考えることは同じですから、結果として、思いのほか安い値で落札出来たりします。つまりそれは、次回、欲しい本を抜いて出品しても、まず札が入らないだろうということを意味します。

だからといって、そうした本をさっさと処分できるような思い切りが、なかなか持てません。つい抱え込み、何とか売れないものかと頭を悩ませる。そんな本が、すでに店には溢れています。

KIMG0541悩んだ挙句、目当ての本の評価額で入札し、1点を落札、1点は他店に。惜しくないと言えばうそになりますが、2点とも落ちてきたら、いよいよ店と腰が大変なところでした。

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