2017年05月

2017年05月28日

他誌から学ぶ

サンヤツと称される、新聞紙第一面下段の書籍広告欄。今朝の朝日新聞はヤツワリではなく、ムツワリとなっていましたが、その中の一本に目が留まりました。

月刊住職」という極太明朝体の文字。「寺院仏教界の実務報道誌43年」とありますから、昨日今日の雑誌ではありません。もっとも「仏教界」の歴史を考えれば、ごく新参というべきでしょうか。

そのタイトルもインパクトがありますが、記事の見出しを読んでいくと、じつに業界誌っぽくて面白い。今まで気が付かなかったのが不思議なほどです。

RIMG1960いわく「亡き人にせめて幽霊でも会いたい」「耳を疑う痛ましき住職事件」「住職の本音『坊主丸もうけ』は本当か」「写経会がお寺と老若を結ぶ成功例5例」などなど。

こんな調子で毎月、A5判200頁以上の誌面を作っていくのは、なかなか大変なのではないかと余計な心配をしてしまいます。

東京古書組合には90年以上続く組合機関誌「古書月報」がありますが、同じA5判でも隔月でせいぜい40頁前後。それでも担当する機関誌部員(理事=組合員)たちは、毎号、企画に頭をひねっています。

ちょいと本誌を参考にしてもらうと良いかもしれません。さらに見出しを拾いますと「宗門答申10年後20年後の寺院像僧侶像」。これはありがち、似たような記事は月報でも見た気がします。

僧侶が磨くセカンドスキル」「新連載・新米住職ワーキングプア」。こちらは使えそう。それぞれ僧侶、住職を古書店主と置き換えてみたらどうでしょう。あまりにも身につまされ過ぎるでしょうか。

しかし考えてみたら、月報に投稿される記事の多くは、言うならばワーキングプア話。いまさらではありました。

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2017年05月27日

損して学ぶ

RIMG1954後々までも語り草となるであろう出品で沸いた昨日の市場でしたが、光あれば影あり。同じ市に店主の出品したアララギ叢書を含む約30冊。先日宅買いでお引き取りしてきたものですが、最低取引価格で生け捕られてしまいました。

店主自身がお客様にお支払いした金額より少なく、これだけでも実損。さらに送料も掛けておりますので、ちょっとガックリです。

止め値も入れず、買い札も入れなかったのですから、文句は言えません。自分で値をつけて売れば、何冊か売れて元値くらいは回収できたでしょうが、その手間を考えると、それで得になるかどうか。

それにしても少なからぬ専門業者が見ているはずなのに、落札者以外には誰も札を入れなかったことからも、歌集や歌人随筆類の人気のなさが伺えます。

実際、フリにも近代文学の初版本コレクションなどが出ておりましたが、かなりのビッグネームでさえ、悲しくなるほどの値であっさり競り落とされていました。それと比較すれば店主の歌集の口など、札が入っただけでも儲けものだったかもしれません。

そんな、文学書低迷の状況だけに一層、司馬遼太郎の高値は、居合わせた同業に衝撃をもって受け止められました。漱石も、一葉も、さらには賢治さえも、超えてしまったのではないかと。

果たして一握りのコレクターが求める、旬のものとして終わるのか、文学史に名を留める作家たちに伍して今後とも評価されていくのか。

タイムトラベルでもして、その答えを確かめてきたい気がします。

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2017年05月26日

逆転サヨナラ

月末の特選市だというのに、普段より出品点数も量も少なめで、よくいえば落ち着いた、どちらかというと淋しい感じもする今日の明治古典会でした。

置き入札はたんたんと進み、午後4時にならないうちに終了。続いて月末特選市恒例のフリが、始まります。

このフリという呼び名は、いわゆる口ぜり――買い手が声を出して競り上げていく、入札以前から行われてきた方法を、そう呼び習わしてきたものです。

同じくフリと言いながら、明古では、振り手が値を競り上げて行き、買い手はパドルを掲げて意思表示するという、オークション方式を採用していますから、不慣れな人にも参加しやすい反面、テンポや活気に欠けるという指摘もされてきました。

しかしテンポはともかく、活気は品物次第、ということが今日、あらためて証明されたといえます。

フリのために用意された品も、いつもより少なめでしたから、30分ほどで最後の一点となりました。そしてそこからの数分間で、今日一日の印象が、まるで覆される結果となったのです。

RIMG1952その品物は「司馬遼太郎草稿・色紙一括」とされた原稿用紙数十枚と色紙。のっけから驚くような値で始まったのですが、やがて二人の業者の一騎打ちの様相となり、双方パドルを下ろす気配もないまま、信じがたい価格に競り上がります。

このまま永遠に続くのではと不安に思われるほどでした。スタート価格の15倍近くに達し、遂に一方が折れて決着を見た時には、思わず会場が拍手で包まれました。誰もが驚嘆とともに、一抹の安堵を感じたのだと思います。

普通市としてはこれまでの最高落札価格となったこの一点のおかげで、本日の出来高もまた、一気に上昇。まさに逆転満塁サヨナラホームランとなったのでした。

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2017年05月25日

時代の証人としての本

先日の宅買い。じつは道具屋さんから電話があったとき、次々あげられる全集名はただ聞き流していたのですが、「茂吉」という名が出たことで、腰を上げる気になったのでした。

確かに茂吉の本は何冊かありました。「アララギ叢書」も何冊かありましたが、もしやと思った『赤光』はやはり見当たりませんでした。仮にあったとしても、ほかの本の年代から見て、初版ではありえなかったでしょう。

本棚を見つめながら、先日TVで見た、デニムハンターを思い出しておりました。あちらは Oh My God! とお宝にめぐり合ったわけですが。

momoiさて僅かばかりの文学書、歌集類をお引き取りしてきた中に、ちょっとかわいらしい表紙の一冊がありました。もとより高価なものでないことは明らかですが、その表紙に惹かれて持ち帰ったのです。

題名は『繪入西洋名作童話選』訳者は桃井鶴夫、版元は英研社、発行は昭和22年。気になることが二つあります。一つは元本は何か、もう一つは訳者はどんな人か。

最初の点は、その気になって調べれば分かりそうな気がします。後の方は、小田光雄さんにでもお尋ねすれば、ご存知かもしれません。知ってどうなるかというと、それで本の値打ちが決まります。

気が付いたことを一つ。国会図書館の蔵書は昭和22年1月刊。それに対して手元にあるのは同年6月刊。

版次の表記はありませんから、どれほど売れたのかは分かりません。ただ1月刊の価格は15円だそうですが、6月刊の奥付には定価28円とあります。時代相が浮かび上がってくるようです。

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2017年05月24日

ジャンク風メール

ネットからご注文をいただくと、まず在庫の検品をし、送料を調べてから「ご注文確認」メールを送信します。

送信後、クレジット決済の場合なら3日、それ以外の場合は4日ほどお待ちして、お手続きがない時、前者には「お問合せ」、後者には「ご注文確認(再)」メールをお送りしています。

RIMG1956タイトルや文面は違っても、要するにこちらのメールが届いているかどうかの確認が、最大の目的です。

ほとんどの場合は、先方のご都合、あるいは見落としなどによるもので、すぐお手続きをしていただいたり、お返事をくださったりで解決します。

まれに「スパム扱いされていた」というご連絡もいただきますが、そういう時のためにこそ再送信しているのですから、大切なルーチンだと思っております。

今日も1通、再確認のメールをお出ししました。するとやがて「こちらのメール届いていないでしょうか」というご返信。1週間後に振り込む旨の、お知らせだったそうです。

いそいでメールサーバーを検索しましたが、見当たりません。バックアップ用に使っているGmailを検索してみたところ、見つかりました。「件名なし」として迷惑メール扱いになっていたのです。さらに間の悪いことに、送信者名がアルファベット文字のみ。

デスクトップメールには連日大量のジャンクメールが入ってきます。件名なしのアルファベット送信者という組み合わせは、たとえ通常の受信フォルダーに入ってきても、削除してしまう可能性が高い。

お詫びとあわせ、そのあたりのことを、お客様にお伝え申し上げたのでした。

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2017年05月23日

膨大な在庫

昨日、急な召集が掛かり、本日の洋書会に午前中から出かけることになりました。

仕分けを要する出品がカーゴ10台あるということです。都合がついたら来てほしい、というメール。連絡手段が進歩して、便利になったのか不都合になったのか。

4階に上がっていたカーゴ10台のうち8台までが、最近逝去された同業の在庫品。この方が相当な量の在庫を持っておられることは、生前から業者間では周知の事実でした。

聞くところによると、S県某市に400坪の土地があり、本が満載の大型貨物コンテナが20台並んでいるそうです。洋書だけでも4台あるといいますから、今回はまだほんの序の口にすぎません。

店主も昔は市場の経営員をしていたことがあり、当時の記憶では、その方の札が入っていない封筒に出会うのが珍しかったほど、万遍なく入札されていました。

本当に欲しいと思われた本以外は、ほとんど最低価格の入札でしたが、市場が終わると落札品が山のようになっていたものです。

1人2人手伝いを使われて、買い上げ品を仕分け直しては、せっせと出品もされていましたが、それくらいで片付く仕入れの量ではありません。そんな状況が40年以上続いて、膨大な在庫となったわけです。

RIMG194880歳を超えても、毎日のように市場に顔を出しておられましたから、訃報に接した時は驚きでした。その飄々とした話しぶりが、今も脳裏に鮮やかです。

これからは順次、その在庫品が洋書会を賑わしてくれることになりそうです。

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2017年05月22日

目録編集作業

明治古典会七夕大入札会の目録編集で古書会館へ。

月曜日ということもあって、朝のうちこまごまとした所用が重なり、会館に到着したのは午前10時の集合時刻に10分ほど遅れました。

土曜日にジャンルで振り分けた目録原稿を、今日はそのジャンルごとに担当者が点検し、表記の統一や、修正を行うことから始めます。

それが済むと順番付け。各ジャンルには独自の分類基準があり、それに従って目録に並べる順を決めていくのです。

たとえば店主の担当する地図分野なら、まず日本で作られた世界図が冒頭に来ます。続いて同じく日本図。それから各地の図が北から順に続きます。

RIMG1950この地域順については、やかましい決まりもあるのですが、最近はその後先で悩むほどの点数が出ないため、概ね北から西へで解決しています。

そのあとが、地域では納まらない特殊な地図。次が外邦図。そして最後が世界の古地図。とはいえ、これはあくまで目安にすぎません。集まる数も、傾向も年ごとに違い、ある項目がまるで存在しないことだってあります。

それを言うなら、そもそも地図という分野自体が、いつ他ジャンルに吸収されても不思議ではありません。数の少なさから、今年もいち早く割り付けまでの作業が終わり、水曜日の仕事がなくなりました。

他分野担当から羨ましがられながら、先に帰ることが出来るのも、今回限りかも知れません。

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2017年05月21日

職業的義務感

RIMG1946知り合いの道具屋さんから紹介を受け、宅買いに行ってまいりました。

「なにしろたくさん本がある」と電話をもらったのです。そこで挙げられた書名は戦前の全集類ばかりで、いずれも今では値の付かないもの。

しかし今どきそんな本が「たくさん」残っているようなお宅なら、何か面白いものが見つかるかもしれません。

助平根性と言っては身もふたもない、職業的義務感に駆られてと申し上げておきます。朝から夏のような陽射しが照りつける中を、車で出かけました。

それほど古い建物ではありませんでした。本棚は廊下の片側に天井までの造り付け。観音開きの扉が付いたものが全部で4本ほど。

一つずつ開けて見ていくと、なるほど改造の横光利一全集とか中公の大トルストイ全集とか、ただし不揃いのよう。極め付きは改造の現代日本文学全集、並製函欠。

しかしこうした文学関係は半分ほどで、残りは古い医学関係書が棚を埋めておりました。

隅々まで目を光らせた挙げ句、アララギ叢書など約30冊を選び出して、お譲りいただくことに。

昔なら、市場に出しても2万や3万にはなったはずです。現在では、買い手がつくかどうかも危ぶまれるところ。といって自分で売るのも難しい本ですから、まずは市場に出してみようと思っております。

店主より、職業的義務感の強い業者がいると信じて。

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2017年05月20日

登録在庫の話

現在、小店が「日本の古本屋」に登録しているのは約7500点。自店ホームページに上げているのは約1万点。もっとも前者はほぼ後者に含まれていますから、ネット上にある販売データは全部で約1万点ということになります。

そのうち、店の棚に並んでいるものは約3千点に過ぎません。3冊のうち2冊は、店の裏、もしくは別の場所に保管しております。

ネットで見た商品を店で確認したいと思われる場合、是非とも事前にご一報頂きたいと申し上げる所以です。

店の裏に保管してある本であれば、店番が一人しかいない場合(それがほとんどです)、お客様に店番をお願いして取り出しに行かねばなりません。

RIMG1942それもすぐ見つかるならともかく、記録した保管場所にないことも(しばしば)あります。そうなると落ち着いて探せないので、まず見つかりません。お互いにとって不幸なことです。

もちろん少しお待ちいただいて、見つけ出せることも多いのですが、先日も、そうして探し出した本をお客様にお渡しすると、しばしご覧の上、ご返却となりました。

確かめてから買いたいと思われている場合にこそ、事前にお知らせいただきたいと思うのは、勝手な言い分でしょうか。むろん口には出さず、黙って受取りましたが。

ちなみに店舗部分の棚の長さを計算してみると、約32m。仮に本1冊の厚さを平均3僂箸垢譴弌¬1万冊が並んでいる勘定です。裏にもほぼ同数の在庫。つまり未登録が半数。古書店として、決して多い在庫数ではありません。

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2017年05月19日

雑誌が主役の日

明古が終わって、いつもの仲間と食事に出かけ、うなぎ屋「かねいち」に入ると、店に置かれているTVが大宅壮一文庫のニュースをやっておりました。

経営難から閉館の危機が迫り、クラウドファンディングに活路を見いだそうとしているという話です。

音声はほとんど聞き取れませんでしたが、テロップを追うだけでも、およその内容はつかめました。

大宅文庫といえば雑誌。今日の明古も雑誌が主役でした。もっとも同じ雑誌と言っても、大宅文庫よりは文学館などが収蔵していそうな雑誌。

今朝の宣伝メールによれば「戦前文学・演芸関係雑誌の一口!カーゴ6台!」。

在庫整理を続けておられる明古先輩会員の出品です。それでなければ、これほど大量に、しかも多種多様なものが一度に出てくることはないでしょう。

良く知られた雑誌から、始めて目にする雑誌まで、タイトルごとにまとめられ、会場の一角を埋め尽くすように並べられておりました。

RIMG1940店主が興味を惹かれたのは「テアトロ」創刊号から戦後しばらくまでの数百冊ですが、買ったとしても売り捌く自信がありません。空しく指をくわえて眺めるだけに終わりました。

最終台に乗っていたのは「春泥」数十冊。この雑誌については市のあと、ネットで検索してみて、藤田加奈子さんという方の「日用帳」というブログに行き当たり、いろいろと教わりました。

それは10年前に書かれたブログで、「地下室の古書展」で「春泥」を見つけたことから書き起こされています。なつかしい。もしかしたらこの時の「地下展」には、店主も参加していたかもしれません。

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