2018年03月

2018年03月31日

家賃に思う

昨日のうちに店の家賃を振り込むつもりが、うっかりしていて、気がついたら午後3時を回っておりました。

土日が月末という場合に、つい払い忘れてしまったのは初めてのことではありません。今回は金曜日のうちに振り込もうと、朝のうちはしっかり自覚していたのです。

今はスマホで振込をしていますから、いつでもできます。店を出るときは、市場に着いたら、と思い、着いて仕事を始めたら、それきり失念してしまったのでした。

仕事の最中に気がついて、一緒に作業している仲間に話すと、一人が「自分も払ったか払わなかったか自信がない」と言い出しました。小店の場合は「払えば通帳が、ほぼ空になるからすぐ分かる」と答えますと、別の一人が「まさか」と笑いました。

単なる冗談にしか、聞こえなかったのでしょう。しかしこの35年間、ほとんど家賃を払うために仕事をしてきたようなものだというのは、笑えない事実です。

強い使命感があったわけでもありません。煎じ詰めれば好きだから、やってこられたということなのでしょう。

KIMG0515何が好きなのか。店を開けて、お客様が来られ、口には出されなくとも来て良かったという顔でお帰りになる。その姿を見ることが好きだ、などというのでは、ちょっときれいごとに過ぎるでしょうか。

岩波のPR誌『図書』4月号の巻頭言で「アマゾン」と「日本の古本屋」の名が並んで上げられていました。ありがたいことですが、前者はともかく「日本の古本屋」は、店にお越しいただける方を大切にしたいサイトです。

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2018年03月30日

明古3月特選市

RIMG2698今日の明治古典会は、出品点数約1400点――と申し上げても世間の方には、それが多いのか少ないのか、見当もつかないと思います。

普段の明古は、概ね900点前後が平均的な出品数。1000点を超えると、多いなと感じます。つまり通常の5割増し。

月末の特選市だとはいえ、これほどの点数は久々のことです。しかも一般洋装本が中心となる4階には、1点が数十冊〜数百冊という大口が並び、出品量としても今年一番だったかもしれません。

季節的に宅買いが増える時期であることに加え、なんといってもこの数回にわたって続いた、先輩会員の閉店整理が、大詰めを迎えたことがその大きな理由でした。

今日、最も店主の目を惹いたのは『大日本史料』約50本という大山。1本というのは本をまとめて縛ったときの数え方ですが、それを平均10冊と見積もれば全部で500冊。これも先輩の旧蔵品です。

小さな店ならそれだけで壁一面が埋まってしまう量ですから、それが収まっていたというだけでも、店の大きさが分かろうというもの。

正確な冊数を数えたわけではありませんが、500冊までは刊行されていないはずですので、ほぼ既刊分が揃っていたのではないでしょうか。

しかしその落札価格は、近刊の定価にすれば数冊分に過ぎないものでした。何よりその量が、多くの業者に敬遠されたのです。

一方で、菓子折り程の小さな木箱に入った数種の幕末史料――某藩某家のものとされる、横文字入り文書――は、本日の最高落札価格品となり、1点で本日の総出来高の5%。それも先輩の旧蔵品。

そんなこんなで、なかなかの活況を呈した特選市でした。

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2018年03月29日

金庫を開ける費用

たまたま居合わせて、知ることになったお話。

何年も前に持ち主が亡くなられて、残された古いダイヤル式の家庭用金庫が2つ。

番号はもちろん不明。鍵のありかを知る人もいません。それを開ける必要が出てきました。重要書類が見つからず、それが中に入っている可能性が考えられたからです。

鍵開け業者を呼んで見てもらったところ、番号が分からないだけなら開けようもあるが、鍵がないとなると壊して開けるしかないとのこと。

この先使うつもりもありませんから、壊すのに問題はありません。問題はその費用。告げられた金額は、1台につき4万円とか。業者さんのために付け加えておきますと、引き取って処分する費用も含まれているようです。

しかし選択の余地はありません。探すべきところを探さずにおいたら、悔いを残すことになります。それでお願いしたところ、専用の工具で、ものの10分とかからず扉が切り取られました。

RIMG2692そして出てきたものは――何もありませんでした。中は空っぽだったのです。仮に目指す書類はなくとも、なにかしらご本人が大切にしていたものが入っているだろうと考えていたご遺族は、すっかり肩透かし。

業者さんもいささか間の悪い思いをされたのではないかと案じるのですが、プロですから、その辺りは慣れているのでしょう。さっさと引き上げられました。

ちなみに、今どき家庭用金庫は、ネットなら1万円台から買うことができます。

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2018年03月28日

Globule

メールの件名にGlobule、差出人は外国人名。

初めは迷惑メールかと思いました。しかし、そうでもないような気がしてきて、恐る恐る開いてみると、こんな文面がありました。

Dear Kono/ is this on sale? 続けて小店ホームページの商品画面へのURL、そして――
I cannot read japanese and from the website i'm not sure of what i'm reading with the translator/ can i pay with paypal?

globule不思議なメールの件名は、本のタイトルだったのです。18cm、176pの小さな本。ちょっと面白そうなので、ネットにあげておいたのでした。

日本語が読めない、とおっしゃっているのですが、この本はれっきとした日本書。細野晴臣 ; 後藤繁雄編集・構成で出版元は株式会社テイチク、昭和59年刊。しかしイタリアから、わざわざメールをいただいたということは、内容をご存知のうえでのお求めなのでしょう。

残念ながら現在PayPalは利用していません。そこで「クレジットカードをお持ちなら『日本の古本屋』から注文していただけないか」と、英文でメールを出してみました。挑戦してくれるかどうか、心もとなかったのですが。

しかしよほど手に入れたい本だったらしく、翌日には注文メールが届きました。EMS送料を計算して確認メールを送ると、クレジット決済も無事クリア。昨日のことです。

その熱意にお応えして、店を閉めた後の帰り道、玉川局へ寄って発送を済ませました。

それにしても、おそらくはGoogleか何かで書名を検索されたのでしょうが、「日本の古本屋」の方はヒットしなかったのでしょうか。

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2018年03月27日

チャレンジ空しく

RIMG2693洋書会の3月当番は今日が最終回。

朝の10時までに会館へ行くというのは、なかなか辛いものがあります。午前8時半まで、淡島通りから店の前までの道は、車の通行ができません。学童の通学路となっているからです。

つまり正味40分ほどの間に、店を開けて、メールをチェックして必要な返信を出し、注文品の書類を作り、荷造りをして、といったことを済ませなければなりません。

少しややこしい注文があると、すぐ10分や15分は余計にかかり、出発が9時半を回ってしまうこともしばしば。今朝もまたそのパターンとなり、10分ほど遅れての会館到着となりました。

しかし幸いなことに(もちろん会にとっては不幸なことに)、今日は出品が少な目。当番仲間に、とくに迷惑をかけるようなことにはなりませんでした。

仕分けもなく、お昼まで手持無沙汰。ガソリンスタンドの跡地を、更地にするのにどれくらいの費用が掛かるかというような、取り留めのないお喋りで午前が過ぎました。

というわけで、さして多くなかった本日の出品の中に、ちょっと気になる口が1点。プレイヤード版12冊を含む、啓蒙哲学関係のフランス書40冊ほどの口です。

かなり気張って入札したのですが、まず無理だろうとは観念しておりました。というのも、出品者が自ら仕分けして、その中で良さそうなものばかり集めたと思われる口だったからです。

結果は案の定、荷主さんが断トツで落札。店主は役目で札改めをいたしましたから、他の入札者の札も見たのですが、数枚入っていた中では店主が一番。つまり二番札だったというわけです。

まあ正当な札であったと、自らを慰めたのでした。

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2018年03月26日

合わせて194歳

私事ですが、昨夜は焼津に一泊いたしました。

父の兄、すなわち伯父が昨年末に98歳の誕生日を迎え、白寿の祝いをするからと、お招きを受けたのです。

企画したのは伯父の二男三女。五家族が集まるので、それだけで十分にぎやかだろうと思うのですが、店主などよりよほどわが父への気遣いがある甥姪たちが、一緒に長寿を祝ってやろうと、父にも声をかけてくれました。

そこで父は、自分の子らも引き連れて出席しようと、店主に都合を聞いてきました。目出たいことではありますし、父の意向でもありますから、末の娘と二人して出掛けることにしたのです。

RIMG2688名古屋からは、妹二人が父に付き添って出席。富士を望む眺めが売り物のホテルで、一族総勢23名による祝宴が開かれました。

伯父は小さな寺の住職をしていて、挨拶も音吐朗々、矍鑠たるもの。わが父も満96歳ながら、日常の起居振舞に特に不自由はありません。出された料理をほぼ完食、お酒も勧められるままに。と言っても周りが遠慮して、むやみに勧めはしませんでしたが。

しかし、その二人が話を交わすとなると一苦労。お互い、かなり耳が遠くなっているからです。それぞれが、言いたいことだけを言い合っているようでしたが、ご当人たちもそれを理解しているらしく、なにやら禅問答めいた趣さえありました。

白寿翁、店主に向かい白寿の次は何かとお尋ね。百寿・紀寿というのがあると答えますと、では次は次男の暮らす北海道でやろうとの仰せ。その理由は、飛行機の方が移動が楽だろうからと。

終始笑顔の二老翁でしたが、心のうちにあるものはうかがい知れません。

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2018年03月25日

真正時代遅れ

昨日の記事で、首を傾げた方もおいでかもしれません。『植村正久と其の時代』が、さも高価な本であるかのように取れる書き方たったからです。

植村が何者であるかをご存知の方は、それほど多くないかもしれません。道具屋のTさんも、内村鑑三の名はご存知だったので、彼の本は一回目の荷物に入っていたですが。

KIMG0484それはさておき、その植村の本、かつては十分高価な本であったのです。なかなか揃いで出てくることはなく、専門店などは10万円を超える価格を付けていたという記憶があります。

もっともこれは、かなり古い記憶。そのあとで復刻版が出され、随分と値が下がりましたが、それでも数万円はしていた――そこまでが店主の知識でした。

Tさんが運んでくれた第二便に、きれいな復刻版が揃っているのを確認し、あらためてネットで検索して驚きました。もはや無残としか言いようのない値崩れ状態。

以前取り上げた『校本萬葉集』などと良い勝負。例の「娘一人に婿八人」状態が、ここでも生じていたのです。

自分のことを「時代遅れ」と自嘲することはしばしばですが、どこか謙遜しているつもりもありました。しかし、これはもう正真正銘のout of date。

本でいうなら、絶版品切れ、再版の見通しもない、というところでしょうか。

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2018年03月24日

残り物が福

付き合いのある古道具屋のTさんから、先日、連絡を貰いました。片付けに入ったお宅に、本があるというのです。

よほど大量なら、出向いて引き取ることにもなりますが、話の様子ではさほどでもない。そこで写真を何枚か撮って、送ってもらうことにしました。それを見て指示してくれれば、積んで店に持ち込むとのこと。

Tさんの話によると、本の旧蔵者は基督教の牧師さん。「聖書がたくさんあります」というのが、第一報でした。

確かに、送られてきた写真の中で一番目を引いたのが『植村正久と其の時代』。揃っているかどうかは、写真では確認できません。あとは一般的な読み物が多そうでした。

そこで、キリスト教関係を中心に、無理のない量を積んできてくださいと頼みました。

持ち込まれてみると、ほとんどが中型、小型の聖書や讃美歌集、その他も説教などの集会で使う類の本。イタミもあったり名前が書かれていたり。

で、肝心の植村正久はありません。キリストのキの字も、聖書の聖の字もないので、置いてきたようでした。そのことを話すと、もう一度そのお宅に伺うので、その時に持ってくると言います。

半分くらいの本を残してきたというので、それなら、まとめて持ってくるようお願いしたところ、昨日、店に届けてくれました。

KIMG0481 (2)植村も揃っていて、ほかの本も前回よりずっと売り易いものばかり。ツブシは思ったほどありません。これならTさんに、いくらかでもお支払いできるというものです。

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2018年03月23日

不合理ゆえに古本屋

今日も明古は大量出品。閉店整理その第3弾――のカーゴ15台に加えて、他にも大口の出品が数件あったため、普段は使わない壁面にも本が積み上げられました。

なるべく札を入れないようにしようと自制しながら会場を回ったのですが、大きな山に2冊3冊でも欲しい本が見つかると、つい立ち止まって悩んでしまいます。

そして残りの本をざっと見て、最低限評価対象になる本だけを値踏みして、祈るような気持ちで札を入れます。落ちてきませんようにと。

この心理は、ちょっと複雑で、説明しがたいところです。

RIMG2678もちろん目を止めた数冊の本については、欲しいことは欲しい。しかし、そのほかの本は出来れば背負い込みたくない。なぜならすでに持っているか、売るのに苦労しそうな本だから。

そこで、荷主さんに成り代わったような気分で止め札(これ以下では売りたくないという金額)代わりの札を入れるのですが、そういう口に限って落ちてきてしまうのです。

その意味するところは、店主が欲しいと思った本以外は、ほとんど評価がつかなかったということ。そして、その手の本こそ店にたくさん在庫していますから、つまりは小店の在庫の価値がさらに下落したということ。

かてて加えて現在は、かつてないほど店内に未整理本が溢れ、もうこれ以上、収納する余裕がありません。一番合理的なのは、落札したその場で、評価しなかった本についてはさっさと処分してしまうことですが、それが出来てしまう人を、古本屋とは呼びたくない気がします。

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2018年03月22日

クレーマー

TKI 会議は本日も5時間を超え、午後7時を回ってようやく解散。会館から出ようとするとすでに玄関は締まり、荷捌き場のシャッターも降ろされていて、脇の通用口から出ざるを得ませんでした。

ややこしい話しが一つ二つあって、そのために時間が伸びたのではありますが、それだって毎度のこと。しかし今日は、その話ではありません。

お昼過ぎ、これから会議のために出かけようという時、M先生がご来店になりました。もと駒場におられ、退職後は別の学校で教えておられます。研究室を引き払われる際も、今の職に就かれてからも、度々蔵書をご整理いただいている、ありがたいお得意様。

KIMG0461何かのついでがあってお立ち寄りいただいたのだとは思いますが、挨拶もそこそこに切り出されたのは、先生からお譲りいただいた中にあった、大学の科研費印が押された1冊の本について。学校に抗議の電話が入った、というのです。

「なるべくそういう本は出さないように気を付けているつもりですが」と先生は恐縮されます。お話を伺って、店主はすぐに思い当たりました。しかし別段、気にもせずに「日本の古本屋」に出品しております。もちろん「科研費印有」と明記して。

現今、科研費購入図書については、その処分は購入者に任されている、というのが一般的な了解事項です。ですから小店が出品する際にも、なまじ塗りつぶしなどの小細工をせず、そのまま売らせていただいています。

つまり購入者も、印有をご承知の上で購入されていたはず。それを、購入されてから、なにを思って学校に連絡されたのでしょうか。学校側はクレームに怯え、それがM先生のものであることを調べたうえで、何らかの注意をされたというわけでしょうか。

きちんと説明できない学校当局も情けない気がしますが、先生にご迷惑をおかけするのは本意ではありませんから、今後は、同校の科研費印のあるものは、売り物にしないように気を付けようと思います。

konoinfo at 21:46|PermalinkComments(0)
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