2018年07月

2018年07月31日

30年前の値段

店の通路に未整理の山がいくつもあるため、中にはご興味を示されるお客様もおられます。

たいていは機先を制して「申し訳ありません、整理中ですので」などと声をおかけするのですが、時に間に合わず、手に取られて「これはいくらですか」などと尋ねられることがあります。

お答えできる時もあればできない時もあり、お買い上げいただけることもあれば、そのままお帰りになることもある。しごく当然のことですが。

昨日はそんな未整理の山から、外国の方が帳場に一冊お持ちになり、英語で「これは何の本ですか」というお尋ねを受けました。

見ると紙の悪い新書サイズの本でタイトルに『風俗習慣と/神ながらの実修』(筧克彦)と書かれています。

はて何と説明したものか。日本思想ならJapanese thoughtか、しかし思想というほどのものだろうか。などと迷いながら、要領を得ない答えをしていると「Shinto?」と一言。まあそのようなものだと答えてお茶を濁しました。

するとどうも、お求めいただけるらしい。値段もついていないのに。いや、正確に言うと、古い即売展の帯紙が挟まれていて、そこに1000円と縦書きに表記されています。

戦前の本ですがよく売れた本らしく、さほど珍しいものではありません。帯紙はどう見ても30年以上前のもののようですが、今の売値もせいぜいそんなもの。

縦書きの値札をご覧になっていたかどうかは分かりませんが、その価格でお買い上げいただきました。「30年前と同じ値段です」そう説明を加えて。

RIMG3042ビックリされたようですが、店主もいささか驚きました。お尋ねしたところ「平仮名なら読める」程度だというのです。きっと「神」も、お読みになれる文字だったのでしょう。

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2018年07月30日

処理速度向上

昨日、店主が支部総会から戻ってくると、店の中に大きな段ボール箱が8個、積み上げられておりました。

先日来、運んできていただいている、同じお宅からのご整理品。ありがたいことですが、いささか処理能力を超え始めている感もあります。

先週お持ちいただいた本も、その多くがまだ通路に積まれたまま。資源ゴミ行きが即断できる本については、すぐに処分しているのですが、判断に迷うものが多いのです。

こう申しては何ですが、もう少し本の状態が良ければ、まとめて市場に出してしまうのが一番面倒がありません。自店で売るのに比べて、儲けは薄くなりますが、何よりそれで片付きます。

しかしこのお客様の蔵書は、埃や汚れだけでなく、書入れ線引き、耳折本が多く含まれています。市場では、かなり叩かれることになるでしょう。

結局、傷んだ本や線引きの激しい本を除外して、残った本を自店で売る、という方法を選ばざるを得ません。

RIMG3044さらに問題があります。黒っぽい本が多いので足が遅い。棚にも並べきれず、次第に通路に積みあがることになります。古本屋然としてくると申しますか。

それでもこの暑い中、毎回ご自分たちで運んできてくださるのですから、贅沢は申せません。そもそも「こちらで選別しますから、ともかくお持ちください」と申し上げているのは店主なのです。

処理速度を上げるよう、努力するしかありません。

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2018年07月29日

追悼記念日

RIMG3062強い日差しと汗ばむ暑さ。これこそが南部支部総会日和です。

これまで何度、同じような日差しを浴びながら、五反田駅から南部地区会館までの道を歩いたことでしょう。そしてその都度、何層にも重なる過去の光景が頭をよぎるのです。

ですから支部総会は、店主にとって過去を振り返る日、いわばMemorial Dayのようなもの。

ちなみにこの英語は、戦没将兵追悼記念日という訳語が当てられています。戦場に倒れたかどうかは別として、商売を全うされた先人を追悼する日というわけです。

実際に、姿が思い浮かぶ多くの同業は、すでに故人となっています。総会にまじめに出席するような本屋さんは、たいてい店主よりずっと年上の人たちでしたから。

そんな思いの店主にとって、今日の総会で一番驚かされたのは、すべての議事が終わった後の、新支部長挨拶。

用意の原稿をおもむろに読み始めたのですが、その内容は自身の組合加入から今日に至る回想で、何人かの鬼籍に入った先人の名をあげ、感謝を捧げるものでした。

あげられたのは店主にとっても親しい名。しかしなにより、店主一人のつもりだった追悼記念日が共有されてしまったような、ちょっと意表を突かれた思いだったのです。

追悼の念があふれ、読み上げに詰まるところもありましたが、それだけに思いは良く伝わったことでしょう。少なくとも店主には伝わりましたよ。

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2018年07月28日

日記の出どころ

台風の様子を伺いながら店に出てきて、いつものように店開き。お昼過ぎてから、少しずつ雨風が強まってきましたが、閉めてしまうほどではない。

そこで、濡れそうな棚だけ店内にしまったりしながらも、結局のところ、時間どおり営業する結果となりました。

RIMG3082しかし気象予報の警告が効いたのか、お出かけの人はぐっと少なく、辛うじて売り上げゼロではなかった、という程度にとどまりました。

ネット注文品の発送が、滞りなくできただけでも、よしとしなければなりません。

さて昨日の明古で見かけた山本露葉の日記。露葉といってもご存知の方は少ないかもしれませんが、明治期の文人で山本夏彦の父にあたります。知っている人には、言わずもがなのことながら。

店主だって名を知るだけで、作品を読んだことなど、もとよりありません。それでも知られざる作家の知られざる日記には、大いに興味をそそられる面もあり、昨日の一言となった次第です。

しかし古本屋としてもっと興味深いのは、その出どころ。この日記と同時に、山本夏彦の自筆草稿やら、スクラップブックなどが昨日の市場には出品されていて、つまり夏彦旧蔵であったことが伺えます。

ところで夏彦旧蔵書といえば、しばらく前に、親しい同業のUさんが引き取ってきたはずでした。積み残してきたとは思われませんので、別の場所に保管されていて、別の業者が入手することになったと考えられます。

廃棄されなくて良かったとは思いますが、Uさんの心境には複雑なものもあることでしょう。

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2018年07月27日

お買い得の人たち

「湯川秀樹草稿7枚」という出品物が、今日の明治古典会に出ました。

一般に草稿といえば、見かけるのはほぼ文人のもので、毛色の変わったところでせいぜい美術家、音楽家といった芸術家の随筆草稿くらい。

学者さんの自筆草稿類は、見かけないというわけではないのですが、あまり値が付くものがないため印象に残りません。その点が、外国のautographというジャンルに比して、幅の狭い感じもいたします。

そこへ湯川さんです。果たしてどれほどの値で落札されるのか、興味をもって見ておりました。

結果は、作家でいえば、まあまあ人気のあるクラス、といった価格。もちろん一人の作家でも、主要作品の草稿であるか、頼まれて書いたような雑記かによって、大きな違いがあることは言うまでもありませんが。

今日も多くの草稿類が出品されていましたが、そのなかでも目を惹く価格ではありました。

たとえば「内田百亮筆草稿5枚」は、これより安く、同じ物理学者の先輩たる「寺田寅彦随筆草稿10枚」が、すこし枚数が多かったとはいえ、これより高い値で落札されていました。

湯川さんといえば、日本人として初めてノーベル賞を受賞した人物です。文学の世界でいえば、川端、大江というより漱石、鴎外に匹敵するかもしれません。

そう考えると、今日の草稿の落札価格は、まだまだ安かった。落札者は良い買い物をした、と言えるでしょう。これから先、それほど出て来るとも思えませんし。

RIMG3063ちなみにもう一つ、お買い得と店主が感じたのは、積み上げて20cmほどもあった「山本露葉日記」。こちらは、その値打ちが判明するまでには、かなり時間を要しそうですが。

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2018年07月26日

おじいさんの本

先日来、車でお持ち込みいただいているお客様の本を整理しているうちに、一冊の献呈署名本が見つかりました。

署名があるからといって、格別値打ちが出るような著者の本ではありません。しかしその献呈先として書かれているのが、なかなか興味深いお名前でした。

店主でもその名を知っているほどの建築家(1895-1984)。多くの著作も残しておられ、店主などはそれで記憶していたのです。

ふと気づけば整理中の本の旧蔵者(やはり故人ですが)の姓は、この建築家と同じです。年齢的に見ると、その息子さんなのかもしれません。

俄然、蔵書を見る目が変わってきました。注意して本を開いていくうち、さらに一冊、献呈署名が見つかりました。谷川徹三さんの著書で、見返しに相手のフルネームと、ご自身は「徹」の一文字。

RIMG3063結局、他には建築家の蔵書らしい本はありませんでしたが、三度お持ちいただいた際に、それとなくお尋ねすると、店主の推測が正しかったことを、はっきり教えてくださいました。

ただしその建築家の蔵書は、主なところはすでに在籍した大学が引き取り、家も替わったため、残っている可能性は低そうです。

それでも、まだ未整理の段ボールが数十箱あるとのこと。何が入っているのか分からないので、そのまま出すこともできないとおっしゃいます。

地下に入っていて出しにくい、というのが一気に整理できない理由らしいのですが、とりあえず本であればむやみに捨てないように、とだけお願いいたしました。

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2018年07月25日

高すぎる転送費用

ブックトラックがようやく到着しました。

楽天から注文を入れたのは16日のこと。そのすぐあとに自動確認メールが返ってきて以来、続く2日間は音沙汰なし。19日になって、ようやく「ご注文の発送予定日が、確定しました」と報せがありました。

その予定日というのは翌20日。21日には着くだろうと待っていましたが来ない。22日も来ない。日曜日だからだろうと思いました。ところが23日の月曜日になっても来ない。

その夜、家に不在配達票が入っているのに気づきました。なんと、店ではなく自宅に配達されていたのです。確かに楽天に登録しているのは自宅住所ですが、配達先は店に指定したつもり。

しかしメールなどを確かめると、送付先も自宅住所になっていました。不思議ですが、今さらどうにもなりません。運送会社に連絡を入れ、転送を依頼しました。

booktruck「費用が掛かります」と言うので「構いません」と答え「いくらくらいになりますか」と質問。ややあって返ってきた数字は「5724円です」。

いくらなんでも高すぎる気はしましたが、自分の車で運ぶことは不可能です。お願いすることにしました。

そして今日届いたのですが、伝票を見ると運賃1300円とあり、別の欄に4000円とあります。配達員さんに代金をお支払いしたあと、念のため運送会社に、それが何を意味するのか電話して尋ねました。

その結果、店主が支払うのは世田谷から目黒までの運賃である1300円だけで良かった、ということが確かめられ、あとから配達員さんが差額を返金に来てくださいました。

これに懲りて、楽天の登録住所を、自宅から店に変更しております。

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2018年07月24日

熱い読書

「とんでもない考えだ」「とんでもない!!」「1891年モスクワ出版ということをなぜ言わないのか!」

rubinこれはルービンシタイン著『音楽とその大家』(馬場二郎訳、大阪開成館、大正12年)の冒頭、「訳し終へて」と題された前文の、余白部分に書き込まれた文言です。

良い状態なら、そこそこ高い値がつけられそうな本ですが、本来ついている函がありません。綴じにゆるみが出ているうえに、耳折もあります。その上、この書き込み。商品にすることは、まず諦めたほうがよいのかもしれません。

しかし読みづらい文字ですが、判読できる部分だけを拾い読みしても、かなり面白い。文字以外に、チェックやらクエスチョンマークやらも各所に見られ、この読者の「一人ツッコミ」のさまが、本文以上に興味を引きます。

robin3例えば「ヒドイ奴」と書き込まれたのは、巻頭の「ルービンシタイン小伝」中にある「彼はまたヴァーグネル、リスト、ベルリオーヅ等に対して猛烈な反感を抱きました」という部分に反応してでしょう。

ほかにも「バカゲテイル」「クダラナイ」「コレハ正シイトハ言えない」「ココマチガイアリ」「何カオカシイ」「コレハ面白イ」「しかしコレガダメ」

ともかく全編にわたって、傍線が引かれ、行頭にも線が引かれ、マルが打たれ、バツが記され、この読者が書物と対決しているさまが、ひしひしと伝わってきます。

しかしこの方は音楽評論家ではありません。あくまで素人のご趣味。他にも同様のツッコミが入った本が何冊もありますが、これを面白がって買っていただけるお客様は、果たして、おられるでしょうか。

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2018年07月23日

町の古本屋さん

豊川堂さん。その屋号は、出身地である東三河の川の名にちなむと、ご本人から伺ったことがあります。だからトヨカワドウと、そのまま読みます。

すこし呼びにくくても、ご本名の岩田さんとお呼びするより、しっくりきました。ざっくばらんな、知らなければ江戸っ子かと思うようなしゃべり方をされ、シャイなところも江戸っ子風でした。

RIMG3031昨日、代々幡斎場で通夜があった同業先輩です。享年85。店主が26年前、初めて理事になった時の、同じ理事仲間でした。

格別な思い出というものはないのですが、時おり市場でお会いした際の、何気ないやりとりが心に残っています。

20歳近く年下の店主に対しても、いつも「河野さん」と、さん付けで読んでくださいました。しかし決してよそよそしいわけではなく、その証拠に代名詞は「あんた」。

市場に来られるのは、2ヵ月に1度の即売展の時だけ。その出品物が、すべて風呂敷包みで持ち込まれていることを知り、驚いたことがあります。1冊ずつ帯紙をつけ、それが見えるように並べる、古典的な陳列方式は、最後まで守られたはずです。

お店は下高井戸商店街にある、典型的な「町の古本屋」さん。日々、良く売れるのは、読み物類など白っぽい本。時おり黒っぽい本の仕入れがあると、それらが即売展のネタとなる――。

店売りにも、仕入れにも恵まれたこうした店は、減少の一途。今からでは望めないスタイルです。

お通夜の席には、同業よりはるかに多く、商店街の方々が見受けられました。長く土地に根付いて商売をされてきたことが伺われる葬儀でした。

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2018年07月22日

暑さに負けない方々

RIMG3044朝からひときわ暑さを感じる日でした。スマホアプリの「らくらくウェザーニュース」によれば、目黒区の午後2時頃の気温は38.3℃。

今日は夕方から、同業先輩のお通夜に行かなければなりません。訃報が入ったのはちょうど1週間前。様々な事情から、今日まで延ばされたようです。

不謹慎ながら、その訃報を受け取った時まず思ったのは、1週間もすれば、少しは暑さが治まっているかもしれないという期待でした。

連日の暑さでいくらか身体が慣れてきたような気もしておりましたが、今日になってまた、一段とヒートアップ。夏物の喪服など持ち合わせがありません。故人を悼む気持ちに変わりはありませんが、恨みたくなるような天気です。

そんな日でも、朝一番にジョギング・スタイルで、土曜日のご常連がお出でになりました。ネットで見つけて、取り置きを頼まれた本を、引き取りに来られたのです。

朝と言っても午前10時頃ですから、すでに十分気温は高い。東京オリンピックのマラソンなら、ほとんどがゴールし終わっているはずの時間です。このあとまた走って行かれるわけで、「どうぞお気をつけて」と申し上げるしかありませんでした。

そしてもうお一方。きのうお持ち込みくださった本の続きを、今日また持っていくと、お電話がありました。今はそれを待っているところです。

世の中には、さほど暑さを苦になさらない方も、おられるということでしょうか。

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