2019年10月

2019年10月31日

今は昔の話

RIMG4002洋書会の50年を調べ始めて、人の記憶というものが、いかに頼りないかということを、つくづくと思い知らされています。

出来事そのものについては、比較的覚えているのですが、それが何時のことだったかとなると途端にあいまいになって、なかなか正確なところが思い出せません。

たとえば店主は遥かな昔、洋書会の仲間3人と、アメリカ西海岸に出かけたことがありました。現地の古書店を回って、大市会に出品する商品を、共同で仕入れてこようという企てです。

会から仕入れ資金を借りて、確か3泊4日という短い日程で、シアトル、サンフランシスコ、ロスアンジェルスと、あわせて10軒以上の店をめぐったはずです。

本当は市場に出して儲かるような大物を探すべきなのですが、そうおいそれとは見つからず、勢い自分の店で売れそうな本に手が出ます。結果として、金額に比して量(冊数)の多い仕入れとなってしまいました。

それでもしばらくして届いた大量の本を仕分けして、市場に出したところ、自分で売るつもりで仕入れたものさえ買い戻せないほど良い札が入り、運送費を加えた仕入れ値を大きく超える出来高となって、旅費はもとより、いくばくかの配当金も出たのでした。

さてこれがいつのことだったか。『東京洋書会誌』の年表に、1989年の出来事として載っています。間違いではないかと、思わず記述を疑いました。店主は開業してまだ7年目、洋書会に入ってからだと5年になるかどうか。ほんの駆け出しです。

しかし、インターネットがようやく商用化され始めたその頃だからこそ、あんな仕入れができて、またそれが市場で値になったのです。そう思うと、確かにそんな時分だったのでしょう。

古本屋の世界も変わったと、よく嘆いたりしますが、30年も経てば、変わらない方が不思議。単に取り残されてきたに過ぎないのかもしれません。

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2019年10月30日

国語の問題

文化庁が「国語に関する世論調査」の結果を29日に発表したと、今朝の朝日新聞。

合わせて読書についても調査したとかで、雑誌や漫画を除いて「1カ月に何冊くらい本を読むか」(電子書籍も含む)との設問に47.3%が「読まない」と答えた——とありました。

ところで「読書」というのは、あの『新明解国語辞典』(三省堂書店)によると

どくしょ【読書】[研究調査のためや興味本位ではなく]教養のために書物を読むこと。〔寝ころがって読んだり、雑誌・週刊誌を読むことは、本来の読書に含まれない〕

のだそうです。店主が自らその辞書を引いたのではなく、たまたまお客様がお持ちになった『辞書になった男 ケンボー先生と山田先生』(佐々木健一、文藝春秋2014年)をパラパラ眺めていて見つけました。

この定義に従えば、読書人口は遥かに少ないことになるでしょう。店主自身にしたって、肩腰の老化により、寝転がって読むのはかえって辛いため、いたしませんが、本を開く動機は、まずほとんどが興味本位ですから。

RIMG4020難癖をつけているのではありません。「新解さん」への敬意は十分に持っております。自らの読書の貧しさを、反省しているのです。

さて国語の問題で一言。昨日取り上げた、吉本さんの被災を紹介した新聞記事。見出しに「『途方に暮れる』店長」とありました。古本屋の主に「店長」は、やめてもらいたいと思いますね。

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2019年10月29日

災害の10月

洋書会。火曜日が5回ある、長い当番月が終わりました。

RIMG4019といっても1日(資料会大市のため)と22日(即位の礼)の2回が休会であったのに加え、8日は理事会でお手伝いできませんでしたから、当番らしい仕事をしたのは15日と今日だけ。

その今日も、もし台風19号で箱根に被害がなければ、学生時代の仲間と古稀旅行に出かけているはずでした。しかも今朝、市場に着いてみると、6人いる当番仲間のうち、2人までが所用で欠席。
 
旅行が中止になって良かったかもしれません。もちろん、台風が良かったなどと言っているのではありませんが。

台風といえば、昨夕の朝日新聞に大きな写真入りで、栃木の吉本書店さんが取り上げられていました。

同店の被災は、まさに心痛む出来事です。しかし、それ以上に痛ましく感じたのは、手伝いに駆け付けた同業たちのなかに、西堀さんと唯書館さんの名があったこと。

西堀さんは2015年の関東・東北豪雨で家屋が水没、ヘリで救助されたという体験をお持ちの方。唯書館さんは2011年東日本大震災による津波で、お連れ合いを亡くされています。今回の被災を聞いて、さぞ穏やかならざるお気持ちだったことでしょう。

しかしお二人ともその後、しっかり再興の道を歩まれているようです。吉本さんもまた、必ず再起していただけるものと信じます。

洋書会に話を戻せば、今日は地方から、日本関係数百冊の出品がありました。

おもにドイツ語、多少フランス語、僅かに英語、どれも比較的新しい本ばかり。8点に仕分けしたところ、予想以上の札が入り、してやったりの感。ただし自分では一つも買うことができませんでした。

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2019年10月28日

Good Old Days

RIMG4017『古書組合百年史』の、洋書会部分を任されたということは、すでにお伝えしたとおりです。

資料が乏しく難渋しており、ほとんど唯一の拠り所である『東京洋書会誌』を何度も読み返しております。

そのなかから、店主が担当した「座談会 洋書会昔語り」の一部を、ご紹介いたします。

司会 皆さんは洋書の輸入や、買い付けに出かけることもよくされましたね。
田村 佐藤さんとご一緒したこともありますが、一人でも行きました。あるとき、偶然パリで河盛好蔵さんとお会いして、一人で行くつもりだった古書店にお連れしたことがあります。その店で先生、『悪の華』の初版を手にされていたのに、買わずに戻してしまわれたんですね。そこで私が買ってきたのですが、じきに良い値段で売れて旅費が出たという覚えがあります。それは初刷りではなかったんですがね。
栗田 『悪の華』は私も30年位前にベルギーで90万円くらいで買ってきて130万円ほどで売ったことがあります。
田村 「トルケン」(F.L. Tulkens)という店があって、うちは世界一高い店だと言ってますね。
栗田 その店です。私が買ってきたのは。
司会 世界一高い店で買って、それが売れるというのは、すごいですね。(笑)


まだバブルが始まる前のお話です。売ることより、買うことの方が難しかった時代。高い渡航費を払っても、良い本さえ手に入れば、さほど苦労なく売れた時代——と言っては言い過ぎかもしれませんが。

このエピソード、百年史洋書会編のどこかに入れ込みたいものです。

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2019年10月27日

迷惑メール

そちらに洋書てありますか?あればあるだけ写真が欲しいです!よろしくお願いします!

受信トレイの中に、件名がブランクの1行がありました。差出人の名はアルファベットと数字。迷惑メールかと思ったのですが、携帯会社のドメイン名です。

そっと覗いてみたところ、冒頭の文章が。挨拶文もなければ、ご当人の名前も書かれていません。あとにも先にもこれっきり。末尾に「iPadから送信」とだけありました。

もちろん返信はしておりません。答えるべき言葉を思いつかないからです。

これ以前に、やはり不思議なメールがあって、こちらは件名には何か書かれていた気がしますが、覗いて見るとこれも用件のみ。

1冊あたりの送料はいくらですか?

どこのどなたとも書かれていません。家人は、何のことか詳しく尋ねてみようなどと言い出しますので、ウィルスメールかも知れないと脅して、押しとどめました。

RIMG4013後者は何を知りたいのか、まったく意味が不明です。それに比べれば前者は、言っている意味は分かります。しかしどういう了見から、そんな要求が出せるのか理解に苦しみます。

どちらも気味の悪いメールであることに変わりはなく、いったい何が目的だろうと思い悩まされる点からだけでも、立派な迷惑メールだといわねばなりません。

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2019年10月26日

来年のカレンダー

来年の「みすずカレンダー」が店に届きました。

今回のタイトルは「木版画 東京八景」で、「新東京百景」からのセレクション。東京都現代美術館が2017年に所蔵品の展覧会を行った際の案内文によれば——

昭和初期、創作版画ブームの中、関東大震災による被害から復興し始めた首都東京の風景をノスタルジアと愛情あふれる視線で描いた版画家たち8人による版画集が刊行されました。1929(昭和4)年から刊行されはじめた「新東京百景」です。

RIMG4022その名のとおり100枚ある版画の中から、8点を選んで印刷したもののようで、何がその選択基準になっているかは分かりませんが、むつかしいことを言わず、お楽しみいただければと思います。

例年どおり、店頭で3千円以上お買い上げの方に、もれなくプレゼント。

しかし近頃は、それでは一向に捌けない可能性もありますから、役立てていただけそうな方には、こちらで勝手に判断して、差し上げたりもしております。ご希望の方はご来店の際、ひと言、声をおかけください。

ちなみにこの「新東京百景」、1978年に平凡社から版画集として出版されています。普及版と愛蔵版があり、いずれも「日本の古本屋」で入手可能。ご興味のある方は、どうぞ。

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2019年10月25日

仕切り直し

朝から気の滅入るような降りでした。

神田の「青空古本まつり」では、オープニングセレモニーも中止となり、店主が古書会館に向かった正午前後も、降りしきる雨が、ずらりと並ぶ露天棚に掛けられたブルーシートを叩いておりました。

KIMG1181それでも東京に限っていえば、覚悟していたより雨の時間が短く、夕方にはほとんど小止み。明日からしばらくは降水確率も低めという予報なので、あらためて仕切り直しというところでしょう。 

台風15号、19号の被災地では、相次ぐ大雨に、新たな被害が起きているところもあるようです。小店のような僅かな水難でさえ、当初は途方に暮れたほどですから、被災地のご苦労、ご心労は察するに余りあります。

それに比べれば、出ばなをくじかれたに過ぎない「古本まつり」は、長期戦ですから、明日からの会期で充分、取返しが可能だと思います。出店者の皆さんに、心よりエールを送るものです。

さて今日の明治古典会は、月末特選市でした。恒例のフリ市も行われ、悪天候にもかかわらず、熱心な同業が多数、最後まで競りの様子を見届けていました。

店主は例によって、ただ観戦するばかりですが、目をつけていたものがそれなりの値に競り上がると、思わず一人頷いたり、感心したりするのでした。

今日はわずかながら出品もしました。その結果から得た教訓は「分かりやすいものは(良い)値がつかない」ということ。この「分かりやすい」については、少し説明が必要でしょうが、それはまた機会があればということで。

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2019年10月24日

応急処置

今朝も昨日に続いて、開店準備を済ませるとすぐ、コンテナ倉庫に向かいました。

家人が店主の老体を心配して、助っ人を頼めそうな心当たりに連絡してくれたのですが、昨日の今日では、そう都合よく手の空いた人間も見つかりません。

店主の心配は、体力よりも「置き場」があるかどうかでした。現地についてみると、昨日店主が出した水濡れ本は、ほとんど片づけられています。

すべての廃棄物を回収したわけではなさそうですが、新たに積み上げるくらいの余地はできておりました。

そこで敷地内に車を止め、倉庫のドアを開け、おもむろに作業を開始いたしました。

とりあえずは昨日「埋め戻し」た本を再び表に積み上げていきます。すべて取り出そうかとも考えましたが、余力を考え、今日の作業ができるだけのスペースを空けることにして、そこまでで15分ほど。ようやく昨日し残した部分が現れました。

倉庫の奥半分は、縛ったものも、縛ってないものも、すべてが平積みにされております。いわば本の柱が、隙間なく立っているような状態。その天井近くまで、場合によっては天上一杯まで積まれた本を、上から取り除けていくのが次なる作業です。

躊躇している暇はないので、手前から順に、せっせと山を崩していきます。縛ってある一番下の1本に至ると、ことごとく水を含んで膨らんでおりました。

今日新たに廃棄したのは段ボール2箱と、縛りが20本以上。そこまでで1時間経過。そをしてすべてを埋め戻すのに、さらに1時間。

KIMG1176水濡れ本は処理できたものの、湿った床はそのまま。段ボールを敷いただけで、また本が積みあげられています。この先どう処置をするか、なんの計画も立っておりません。

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2019年10月23日

甘く見ていた

KIMG1172今朝、コンテナ倉庫に行ってきました。ともかくもう一度様子を確認したうえで、片付けの段取りを考えようと思ってです。

倉庫に着いたのが午前10時過ぎ。自室のドアを開けると、真っ先に気づいたのはカビ臭です。先日より格段に強くなっておりました。

まず水濡れの具合を確かめなければなりません。手始めに、要塞のように積み上がった手前の一列を、上から取り除けていきました。

ダンボール箱の場合、下から2段が水を被った模様です。そのうち上段は、ちょっと見にはさほど分かりませんが、触れるとやはり湿っております。最下段は惨状といえるでしょう。箱を除けると下にまだ水が溜まっておりました。

裸で壁際に積んである本も、同様です。上から取り除けていくと、ほぼ一定の高さから湿りはじめ、一番下の部分は濡れそぼっています。最後まで取り出すと、水を食った壁面には白いカビ。これが臭いの原因でした。

段取りなどと悠長なことを言っておられません。できるところまで、水濡れ本を廃棄することにしました。さいわい「仮説置き場」に出せば、片付けてもらえそうです。

しかし何しろ、上に重なった本を除けなければ、濡れた部分を取り出せません。半分までやったところで、時間と体力と、それに「置き場」の空きもなくなりました。

除けた本を倉庫に戻すのに、もう一度体力をふり絞り、どうにかお昼までに店に戻りましたが、明日、再挑戦するしかなさそうです。だけど体が動くかどうか。

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2019年10月22日

週末のお天気

RIMG3996コンテナ倉庫を借りている会社から、一昨日またSMSの5連打が入って「冠水被害物置き場」を仮設したと報せてきました。

当社と致しまして、被害収納物への保証は免責事項ではございますが、可能な範囲でご協力させていただく所存でございます。

ということで20日から、仮設置き場が利用できるようになっているとのこと。

最初読んだときは、引き取りもしてもらえるのかと喜んだのですが、そこまでは書いてありません。しかし、ただの置き場では何の意味もありませんから、やはりどこかが引き取ってくれるのでしょうか。

いずれにせよもう一度、倉庫の中の様子を確かめに行く必要があり、行けば「置き場」の意味も、はっきりするはずです。本当は今日あたりでも行きたかったのですが、一日雨という予報で、やめにしました。

明日か、明後日か、時間を作って見に行きたいと思っております。とはいえ、行って帰るだけで、店からだと1時間以上。それがふだんから、なかなか足が向かない理由でもあります。住まいからは近いのですが、店と反対方向というのが失敗でした。

ともあれ、片付け作業も早いうちにしなければなりませんが、問題はお天気。明日、明後日はともかく、金曜日あたりからまた、雲行きが怪しい。

このお天気、「青空古本まつり」の参加店は、店主以上に気をもんでいることでしょう。

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12月31日から1月3日まで
休業いたします
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河野書店

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