2020年01月

2020年01月11日

ちうぐらいなり

昨日は明治古典会恒例の新年会。開宴予定は午後7時。

お伝えしたように、市場の出品点数が少なかったこともあり、ふだんよりずいぶん早く終わってしまいましたが、スタートを繰り上げるわけにはいかない事情がありました。

と言いますのは、午後6時から月例の役員合同会議があって、店主を含め数名が、この会議に出席しなければならなかったからです。

その6時までにも、かなり時間はありましたが、幸か不幸か店主には、片付けておくべき仕事がいくつかありましたから、会議の始まるまで、古書会館で作業を続けました。どこか店に入って、軽く一杯やりながら時間を過ごした連中もいたようです。

合同会議のほうは年明け早々のこととて、とくに問題もなく終了。会場の「銀座アスターお茶の水賓館」までゆっくり歩いて、開宴の5分前には到着できました。

同じ明治古典会の新年会で、かれこれ20年ほど前にここを利用した記憶があります。その時のメンバーが何人くらいいるかと会場を見回すと、ざっと3分の1といったところでしょうか。10人に満たない数でした。

といっても当時の記憶はほとんどありません。確か集合写真を撮ったような気はしますが。

料理については、あの頃どんな印象を持ったのか覚えておりませんが、今回は少なくともそれほど感動はしませんでした。紹興酒をいただいたのですが、これも店主の好みとは違いました。

IMG_20191229_075208余興のビンゴゲームで、割合早くにビンゴ。懸賞として貰ったのは3百万円が当たるというスクラッチくじ5枚。さっそく削ってみたところ1枚だけ2百円が当たりました。

まさに めでたさも ちうぐらいなり おらが春

konoinfo at 18:30|PermalinkComments(0)

2020年01月10日

高価な名刺

今日は明治古典会の初市。やはり出品量が少なく、聞くところによれば今週は、どの本部市会も似たり寄ったりで、量的にはさびしいものだったようです。

点数としては年末よりもさらに少なく、3階ワンフロアだけでの開催でしたが、さすがに最終台には面白いものが並んでいて、新年らしい華やかさも感じられました。

古筆や、古写経、浮世絵などは高額品ではあっても、かくべつ明治古典会らしいとはいえませんが、山頭火や、宮沢賢治の関係資料は、明古ならでは。

とりわけ宮沢賢治資料というのは、童話作品の初版本(だったと思います)数冊と、何枚かの写真が広げられていたのですが、賢治の場合、初版本として高価なのは存命中の2作のみで、あとはよほど状態のよいものでない限り、最終台に乗るほどではないと思っていました。

RIMG4057写真はどうかといえば、複製でなければ充分に価値はあるでしょう。しかし見た限り、賢治の写っているものは、生写真のように見えませんでした。複製でも古いものなら、ある程度値になるかもしれない――というのは、今回知りましたが。

それらの賢治関連資料の中で、一番値打ちがあるのではないかと店主が感じたのは、賢治の名刺です。仕事の肩書き付の名刺。

詩人、童話作家としてしか知らない賢治の、生活者としての一面が、リアリティをもって浮かび上がってくるような、小さいけれど説得力のある資料でした。

ところが落札価格は、店主の想像をはるかに超えた金額。名刺一枚にしては、あまりに高すぎます。ほかのもろもろの中に、店主の気づかなかった貴重な資料でも含まれていたのでしょうか。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)

2020年01月09日

隠れていた遺産

家人が年末に家の片付けをしていて、一年ほど前に届いていた、母親あての郵便物を見つけました。

家人の母、すなわち店主の義母は7年前に他界しております。未だにDMなどが舞い込むことはありますが、これは近くの信用金庫からの封書。開けてみると、出資配当金の通知書でした。

生前、お付き合いで払い込んだもので、出資金額は1万円に過ぎません。その程度のものですから、亡くなった時にも、見過ごされてしまったわけです。

おそらく銀行口座の残高をゼロにしただけで、解約せずにおいたため、今日まで気づかずに来たのでしょう。

念のため家人が信金まで出向いて問い合わせると、確かに出資は残っており、解約請求すれば戻ってくるお金だと分かりました。

そこで請求手続きを取ることにしたのですが、それからが大変です。まず第一に本人と母親の戸籍謄本、除籍謄本などが必要。印鑑証明も必要。

RIMG4063それぞれ本籍は現在の住所ではなく遠隔地ですので、取り寄せなければなりません。さらに家人は印鑑証明カードを紛失しており、あらためて印鑑登録をしなければならないそうです。

その登録には身分証明書が必要なのですが、免許証を持たないうえに、マイナンバーカードだって持っていない家人は、証明書類をそろえるのが面倒。

最終的に出資金を手にするまでに、果たしていくらの費用と手間が掛かるかを考えると、いっそ放置したほうが合理的かもしれませんが、「ここまで来たら意地でも」と、やり遂げる構えの家人であります。

何億円という割引債とは、大違いの遺産騒動です。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)

2020年01月08日

蒐集というスポーツ

もう一度『本を愛しすぎた男』について。

ノンフィクションだと分かってみると、現在の米国古書業界の様子も、いろいろ伺い知ることができて、なかなかためになる本ではあります。

取り上げられている初版本や限定本などに、価格がついているのも興味深い。原著の刊行は2009年だそうですから、今もあまり変わりないでしょう。

オークションカタログを取り寄せて、日ごろからチェックを怠らない同業から見れば、今さらというような事でしょうが、不勉強な店主には、およその相場が分かるだけでも参考になりました。

それはそれとして、気になった箇所がありました。

私は古書店主が「本の蒐集はスポーツだ」と言うのを何度か耳にしたことがある。

おそらく原文でもsport(s)となっていたでしょう。ただこれをスポーツと訳す(?)と、本来のニュアンスが伝わらないような気がするのです。

たまたま在庫に、Sportsをタイトルに持つ本があります。
Short sketches of the Wild sports and Natural History of the Highlands (1846)ほか一冊を合本した、つまり狩猟の本。

sportsこれに限らず古い本でSportsとあるのは、多くがHuntingを扱ったもので、古本屋がSportsという場合はそのニュアンスが強いと思います。Huntingでは当たり前すぎるので、そうした言い方をするのでしょう。

ではどう訳せばよいかと聞かれても、良い案があるわけではないのですが。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)

2020年01月07日

洋書会の初市

昨夜TVのスイッチを入れると、寅さん映画「寅次郎夕焼け小焼け」をやっておりました。

ちょうどこれから、神保町の古本屋に絵を持ち込もう、というところ。思わず見入っておりますと、古書店街が映し出され、やがて大屋書房さん(映画では店名が変えられているのはご承知のとおり)の店に寅さんが入っていく。

何度か観て、話の展開も承知しておりますが、お店の様子や街並みが懐かしく、つられてしばらくは、そのまま観つづけました。

洋書会当番の今朝、午前10時に古書会館に着くと、最初に顔を合わせたのがその大屋さん。

面白い符合でしたので、新年のご挨拶もそこそこに、TVを観た話をいたしましたが、考えてみればその偶然が店主にとって面白かっただけで、聞かされた側は、当惑されただけかもしれません。

RIMG4059さて洋書会の初市は、かなりスリリングな始まりでした。

店主が会場に着いた時点で、洋書の出品はゼロ。当番仲間の一人が、文庫本と読み物系カーゴ2台という口を仕分けしていましたが、それだけ。

お決まりのモーニングコーヒーを仲間と飲みながら、いったいどうしたものかと思案の末、店主も自分のロッカーを探ることにいたしました。

枯れ木も山の賑わいと申します。何もないよりは、何かしらあった方がいい。それくらいの思いで、売れそうもない本も含めてカーゴ半台ほどの分量を、16点に仕分けして出品いたしました。

他にも出品があって、なんとか最悪の事態は免れることができましたが、少し油断が過ぎたかも知れません。次から年明け早々の市に対しては、あらかじめ対策を講じておく必要がありそうです。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)

2020年01月06日

推理してみる

昨日ご紹介した『本を愛しすぎた男』に、気になる箇所がありました。

最後に彼女は、自分の好きなタイプの本——手沢本を見せてくれた。そのうちの何冊かはレズビアン作家の恋人への献呈本だった。

彼女というのは、著者が知り合ったあるコレクター。この「手沢本」には「しゅたくぼん」とルビが振られ、訳注までつけられています。

訳注は、次のように極めてまともなもの。

学者や文学者などの旧蔵者が繰り返し読み、手のつやがついた本。あるいは書き込みのある本。

RIMG4061しかしここで語られているのは、作家の献辞入り署名本ではあっても、書き込みなどをした本というわけではなさそうです。一体原文では、どんな語句が使われていたのでしょう。

そもそも「手沢本」に対応する英語はあるのでしょうか。研究社和英大辞典(第4版)には立項されていて、a book from the library of / an association copy などと訳されていますが、原文に用いられていたとは思えません。

この際、原書を取り寄せて確かめようかとAbeBooksで検索してみると、最安値は108円、ただし送料を入れると2200円ほどになるようです。

しかも It may be marked, have identifying markings on it, or show other signs of previous use.つまり旧蔵者が何かしら書き入れた本でした。

これを「手沢本」と呼べるかどうかは、誰の手かによるわけです。

konoinfo at 19:30|PermalinkComments(0)

2020年01月05日

勘違い読書

bibliophile正月に、名古屋へ持っていって読んだ本が、もう一冊あります。

『本を愛しすぎた男』(原書房 2013年)というのがそのタイトルですが、もちろん自分で買ったのではなく、お客様のお持ち込み品です。店主は、こういう本が出ていたことさえ存じませんでした。

その証拠に、読み進めている間ずっと、探偵もの=フィクションだとばかり思い込んでいたのです。

時折、自分も名を知っている店や、行ったことがある店さえ登場したりするのも、面白い味付けくらいに思って読んでおりました。

しかしフィクションにしては、話の展開が地味です。古書や古書店に関する話題ばかりが続き、店主にとってはそれが面白かったのですが、「探偵小説」としては、カードや小切手の不正使用くらいで、読者はついてくるのだろうかと、心配したほど。

鈍い店主が、本をひっくり返して帯の惹句に目をやったのは、ほぼ3分の2も読んでからでしょうか。「ノンフィクション!」の文字に、ようやく気づいたのです。

小説の道具立てとしては地味すぎる気がした、カードの不正使用による本の詐取も、実際の話だと分かると、俄かに身につまされてきます。一方で、電話で番号を告げるだけで決済できる(今は違うでしょうが)アメリカの認証方式に、驚かされもしました。

「日本の古本屋」でも、カード不正が問題になったことがありました。いや決して過去の話ではありません。これからも、注視していく必要があるでしょう。

楽しむつもりが、思わぬ勉強となった読書でした。

konoinfo at 18:30|PermalinkComments(0)

2020年01月04日

キリをつける

また新たな一年が始まりました。

昼前に店に着き、休みの間にいただいたご注文(ありがたいことです)の、返信やら荷造りやらをして、慌ただしく一日が過ぎました。

お客様もポツリポツリとお越しいただいて、まずまずのスタートです。

心配した中国からのご注文も、年明け早々に決済されておりましたので、今日早速EMSで発送いたしました。

午後、三が日の休業中、局に留め置いてもらっていた郵便物が配達されました。早速年賀状のチェックです。出していないところから、いただいていないか、一枚ずつ目を通しました。

中にはどこへ行った、何をしたと、一年の活動報告のような賀状も見られます。つい我が身と引き比べ、自分は去年一体何をしたのだったかと、いささか情けない気分にさせられたりもするのでした。

もちろんそんな元気の良い年賀状ばかりではなく、短いコメントに考え込まされるものもあります。

RIMG4060とりわけハッとさせられたのは、大学時代の先輩の一人が「昨年 病の身となり 年始の賀状によるご挨拶は本年限りで失礼させて頂きたく存じます」と書いて来られたこと。

思えばその先輩が卒業されて以来ですから、それこそ50年以上、お目にかかっておりません。賀状一枚とはいえ、よく今までお付き合いくださったものです。

ご体調のことはよく分かりませんが、こうしたキリのつけ方もあるのだと、感じ入りました。

konoinfo at 18:30|PermalinkComments(0)

2020年01月03日

新年会一部、二部

昨夜は友人宅で新年会。いくら毎年のこととは言え、予告なしに訪れるのでは、さすがに気が引けますので、出かける直前に「伺っていいですか?」と、メール。

すぐさま「お待ちしてます」という返事があり、すでに身支度はできておりましたので、それではとばかり、娘と一緒に友人宅へ。
 
歩いて5分とかからず到着。いつもどおり、友人夫妻と、先に着いていたもう一人の旧友が、迎えてくれました。

KIMG1283ところが京都からの、あと一人は、2時間ばかり到着が遅れそうだといいます。5人でボチボチと始めることにしました。

特製おせちとともに京都の友人が着いたのは、午後8時前。そこから仕切り直して「第一部」がお開きとなったのは、午前零時近くでした。

「第二部」は明けて今日のこと。昨年までは新春映画鑑賞会でありましたが、今年は、皆で観ようという気になる適当な映画が見つかりません。

窮余の作として浮かんだのが、美術鑑賞という選択肢でした。振り返ってみると2012年には、ジャクソン・ポロック展をこのメンバーで観に行っております。

その時と同じ愛知県美術館で、今回はコートールド美術館展。出かけてみると思いのほかの混雑でしたが、充分ゆっくりと観てまわることができました。

ということで、お休みも今日まで。明日の朝には家人が店を開け、昼前には店主も店に出る予定です。

konoinfo at 18:30|PermalinkComments(0)

2020年01月02日

年越し読書

正月二日は、熱田神宮参詣の日です。確たる信心があるわけでもなく、といってご利益などを期待するでもなく、これこそ単なるルーティン以外の何ものでもありません。

しかしルーティンというものは、それをしないと何とも納まりが付かないものです。いつもの時間に目を覚ましましたので、空いているうちにお参りしてこようと、よく寝入っている娘を起こし、顔だけ洗って一緒に出かけました。

KIMG1280午前7時半、確かに驚くほど早い時間とはいえませんが、すでに参拝客が大勢いて、拝殿前こそ空いていたものの、1箇所しか開いていないお札所の前は黒山の人だかり。

いつもの破魔矢をゲットするのに数分を要したのですが、これがなければ往復10分とかからない初詣であったことでしょう。

戻って朝食にお雑煮。娘はそれから二度寝をはじめ、こちらは旅のお供に持ってきた草森紳一『随筆 本が崩れる』(中公文庫)の残りを昼過ぎまでに読み終えました。

面白かったけれど、新年に相応しい読書だったとは言えそうもありません。

唯一の救いは解説(平山周吉)の末尾に、草森さんの蔵書が縁あって、故郷に帰り、帯広大谷短大に寄贈され、優雅でゆったりとした老後を送っている。と書かれていたこと。

市場に出たという話も聞きませんでしたし、仮に出た場合の悲惨な結果が目に浮かぶようでしたから、故人のために安堵の胸を撫でおろした次第です。

konoinfo at 18:30|PermalinkComments(0)
12月31日から1月3日まで
休業いたします
Profile

河野書店

Archives