2020年02月

2020年02月19日

保管期間経過

return2郵便配達員さんが「戻ってきちゃったみたいですよ」と、こんな荷物を持って来られました。

宛名を見ても、すぐには思い出せません。「日本の古本屋」管理システム「ZIZAI」を開き、受注記録を調べて、ようやく思い出しました。去年の9月にお送りしたものです。

中国の某大学宛。校費請求するつもりかメッセージ欄に「Invoiceと領収書を開けて(ママ)ください、領収書の受取人は××大学です」とありました。

送り先住所も大学の建物まで指定されていましたから、まさかこんな事態になるとは夢にも思っていませんでした。

それにしても困りました。ひとまず次のようなメッセージを送っています。

昨年9月に発送いたしました『増修互註礼部韻略』が、本日、返送されてまいりました。
再発送をご希望であれば、あらためて送料を頂戴することになります。
その場合は、送料金額分のクレジット決済メールを送信いたします。
また、もしご不要なら、送料とクレジット決済手数料を差し引いた金額を、何らかの方法でご返金いたします。
ただし返金に要する手数料は差し引かせていただきますので、良い方法をご提案ください。


どんな回答が来るでしょう。もし返金の申し出が来たら、預かり金とする方法を提案してみようかと考えています。今後、どこかに注文した際に、小店が預かり分を支払うという方法です。

意味が通じるかどうか、いささか疑問ではありますが。

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2020年02月18日

『方丈記私記』

今日は、ほぼ引用です。岩波『図書』2月号の「何を今さら『方丈記』、されど今こそ『方丈記私記』(下)」から。書いておられるのは鹿子裕文さんという編集者。不勉強な店主は、初めて目にするお名前ですが。

(『方丈記私記』を読んで)血の巡りのよくなった頭が、まるでフラッシュバックのように、醜悪極まりない映像の再生を始める。それは一部の人間が「美しい国」と呼んでいる昨今の日本の姿だ。何をやっても罪に問われない連中がいて、子供だましのうそをついて逃げ延びられる連中がいる。利権にありついた者たちは、こぞって私腹を肥やし、親分の機嫌を害さない限り安泰だ。思いあがった人間たちが、ニヤニヤニヤニヤ笑うその顔、顔、顔。弱者にのみ強いられる自己責任と、いつのころからか目にするようになった上級国民などというバカげた日本語。あれもこれもそれも、自分たちの都合でなんでも書き換えることができる、そんな「美しい国」の姿が、『方丈記私記』で描かれる平安末期、そして戦中の日本の姿と、クロスフェードしながらシンクロしていく。

日頃、TVニュースを見たり、新聞を読んだりする限りにおいて、店主もほとんどこれと同じような思いを抱くものです。ただ、こんなに小気味よくすっきりとは表現できません。hojoそこで、長々と引用させていただいた次第。

ちょうど最近、お客様から買い入れて、まだ積んだままの本の中に『方丈記私記』(堀田善衛・筑摩書房)があります。読んでみようかという気が湧いてきました。

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2020年02月17日

狭くて広い世界

今朝も中央市会に。本番の入札日。午前10時半頃、会場はすでに多くの業者で賑わっていました。

4階から順に、大量に陳列された多種多様な本を見て行くと、自分がいかに僅かな領域で棲息しているのか、つくづく思い知らされます。

本の壁を伝い歩きしながら、手に持つ入札用紙とペンは、なんの働きもしようとしません。まるでユーカリの葉しか食べない、コアラにでもなったような気分。

しかし食指が動かないというのとは違います。店主などは、この業界では雑食性の部類に入るはず。それでも会場にある圧倒的多数は、小店の扱わない、もしくは、扱えないような本で占められていました。

考えてみれば、出品された約5千点の多くには、せいぜい5枚、すなわち5店以下の札しか入らないでしょう。10枚を超えれば、かなりの人気商品です。

入札する側からすると、100点以上の商品に札を入れる人は、まれだと思われます。それでさえ全体の2%に過ぎません。大概の書店にとって、入札の対象となるものは1%以下でしょう。

とすると店主のような感慨は、案外多くの業者に共通のものかもしれません。

KIMG1310世間から見れば、ささやかな業界でしかないのに、足を踏み入れてみると広大無辺の領域を持っている。そのことを確かめさせてくれるのが、このような大市会の意義でもある気がします。

出来高という結果は、まだ見えませんが、今年も充分熱気あるイベントになったという感想を持ちました。

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2020年02月16日

100年前のマスク

中央市会大市の下見日。午前中に古書会館へ出かけ、文字通り下見をしてきました。

古い革装の洋書が大量に出ていてビックリ。値段の記入された伝票が挟まったままの本も多く、分野も幅広くて統一感がないという点から、個人の旧蔵書とは思われません。

どこかの書店在庫のように見えるのですが、もしそうだとしたら、まるで店主の知らない洋古書店であるわけです。もっとも店主の知見などは知れたものですから、驚くには値しませんが。

そういえばしばらく前に、そんな話が洋書会にも持ち込まれたことがあったような。それがこれか、とも思うのですが、どんな価格で取引されるのか、興味あるところです。

mask話は変わりますが、ちょっと切なくなるようなタイトルの本(『大正も遠く』)を手にして、何気なく広げたところ、こんな挿絵のあるページが現れました。

「烏天狗のマスク」と題された600字程度の短文です。大正8、9年にスペイン風邪が東京で大流行。それをきっかけにマスクが大流行したというお話。

81155まさに流行である。ガーゼを折りたたんだ簡易平凡なものであきたらず、針金細工で黒繻子をはり、先端がとがっていて鼻と口を覆うようになっており、内側に消毒剤をしめしたガーゼを当てたもので、薬店で売り出した。

このマスクが「風俗的流行の観を呈し」、しかし高価だったので子供たちは親の手製や、自分で作ったものをかけ「お互いにマスクの形をくらべ合い、自慢し合い、かっこいいのを見ればうらやみ、新しいのをさらにつくる……」

その当時は大変だったのでしょうが。

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2020年02月15日

人柄の問題

KIMG1307留学生として日本に来られて以来、何十年と贔屓にしていただいているO先生(と呼ばれるのを嫌がりますから、以下はOさん)が、しばらくぶりに店に来られました。

ふだん週に一度や二度はご来店になりますので、ちょっと間が空くと、久しぶりの気がしてしまうのですが、実際はそれほど長く来られなかったわけではありません。お見かけしなかったのは、せいぜい2週間程度でしょうか。

店に入ってこられて店主と目が合うなり、「帰っていたわけではありませんよ」と、急いで弁解するようにおっしゃいました。つづけて「申し訳ありません、ご迷惑をおかけして」。

実はOさんは上海のご出身。毎年のように国に帰っておられるのですが、今年は新型コロナウィルス騒ぎがあって、帰ろうにも帰られなかったようです。

この先も当分は帰れそうもない、と諦めておられるご様子。そればかりか何度も「申し訳ない」と、さも肩身が狭そうに繰り返されるのです。

「誰の責任でもないでしょう」と店主が申し上げると「天災ならば確かにそうです。でも人災という側面もありますから」。どこまでも、国の起こした不始末を詫びるような物言い。

それでも久々のご来店に、「ここへ来ると本当に癒されます」とおっしゃって、一旦お会計を済ませたあとも、立ち去りがたそうに本をご覧になり、結局そのあと2度、3度と帳場に来られ「長居しました、今度こそ」と、お帰りになりました。

何やら日本人みたいだと、初めは思った店主ですが、今どきの日本人が、果たしてそんな感性を持っているでしょうか。国民性などというものではなく、やはり人柄の問題なのでしょう。

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2020年02月14日

『彷書月刊』

ご自身の蔵書の整理を始められ、キャリーバッグに詰めるなどして、もう十数回はお持ち込みいただいているS先生から、いつもと毛色の違うものが送られてきました。

あの懐かしの『彷書月刊』バックナンバーです。

hosho毎回運んでこられる嵩や重量からすれば、自ら持ち込まれることも出来たでしょうが、その労力に見合う買取価格が付くかどうか、不安に思われたのかもしれません。

1985年10月の創刊号からちょうど10年分、冊数にして120冊。欠号なく揃っております。今となると、それなりに資料価値もあって、捨てたものではありません。

本、古本の情報誌として、今でも欲しがる方はおられるでしょう。なまじの研究誌、学会誌よりは、需要があるような気がします。なにより、身内意識もありますから、あまり安売りしたくない。

同様の思いからでしょうか「日本の古本屋」にも、それなりの値で出品されているようです。とはいっても仕入れとなると、また別の判断基準があります。

本に惚れ込んではいけない——というのも古本屋心得のひとつ。結局は、市場の相場を思い返して、適切な評価を心掛けるしかありません。

良く保存されたバックナンバーを見ていて、創刊からしばらくの号に、薄く折れ筋が残っているのに気づきました。即売展目録のように、定型50グラム以下で郵送するための工夫が図られた証です。

創刊号に載った由良先生の原稿は、前半部分をカットさせてもらったと、あとがきにあったのも、このためだったでしょうか。印刷事情も、発送事情も異なる、往時の苦労があらためてしのばれます。

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2020年02月13日

ノスタルジア

『オールド・ファッション』を読み切ってしまいました。何日もかけて、午後のお茶の時間に。

店で売るにはヨゴレ過ぎているのでツブすしかないのですが、もったいないので、その前に読んでおこうという、いじましい根性からです。

副題に「普通の会話」とつけられているのは、最後のほうになって現れる江藤氏の、ある対談を経験した際の感想「これはどうも人間同士が対座して、普通の会話をしているというようなこととは、ちょっと違うんじゃないか」から採られたものでしょう。

IMG_20191229_075454普通の会話らしく話題は多岐にわたり、世相批判もあれば、文学論もある。必ずしも共感できない部分も多いのですが、その理由も読んでいくうちに明らかになりました。

蓮實さんはわたくしよりいくらかお若いけれども、ほとんど年代が違わない。似たような育ち方をしているなという、懐かしさを感じるのです。

という江藤氏の「永遠のノスタルジア」に、蓮實さんも応えます。

あれはことによるとね、昭和十年代周辺だけに日本のブルジョワの家庭に起こった特殊な輝きじゃないかという気がするんです。

要するに育ちが違うのですね。

数日前の夜、〈らじる・らじる〉の聴き逃し放送で「桃源郷が伝える理想的な生活」という芳賀徹さんのお話を聴きました。ちなみに芳賀さんは、お二人の会話の話題にも登場します。

軽妙洒脱な語り口で面白く聴けたのですが、その最後の方で「ノスタルジアこそが桃源郷」というようなことをおっしゃっていました。そういうことなのでしょう。

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2020年02月12日

専門店の可能性

mikazuki洋書会仲間の三日月書店さんから、目録が送られてきました。2年半ぶりの第2号だとか。

独立開業して8年という若い同業ですが、最初の目録を出すにあたって、思い切った分野を専門と定め、私たちを驚かせたものでした。

その専門というのは、イスラム関係、およびアラブ、ペルシャなど中近東の歴史や文化を中心とするもので、アフリカやアジアも守備範囲としています。

イスラムは、歴史、宗教は言うまでもなく、文化面においても、世界に大きな比重を占めていることは確かです。わが洋古書業界としては、ほぼ手つかずのジャンルで、そこに着眼したということでしょうか。

もっとも、先駆者がいなかったわけではありません。数年前に組合をやめられた駱駝舎さんは、長く中東関係書籍の輸入販売をしておられました。

しかし組合員として過ごされたのは十数年のことで、業者同士の交流は楽しんでおられましたが、市場では、さほど欲しいものに出会わなかったようです。

長い経験のあと組合に入られた駱駝舎さんとは違い、三日月さんは一からのスタート。フレッシュな目で見れば、集めるべき本に出あえる可能性は、ずっと高いでしょう。

現に、今回の目録にある書物も、ほとんどは市場で手に入れられたもののはず。数年前から学習を始めたという、アラビア語の本も掲載されていますが、おそらくこれらだって洋書会などの市場で。

この先は目録が、必要とされる人の手に届くことを願うばかり。そうしてぜひ、専門店として伸びて行ってもらいたいと思います。

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2020年02月11日

見るだけでも

おそろしくヒマな一日でした。いや、というのは正確ではありませんね。おそろしく売上げ低調な一日でした、と言いなおしましょう。

お客様が来られないわけではなく、ポツリポツリと文庫本や、表の均一本が売れました。数だけならもっと少ない日もあるのですが、500円以上お買い上げのお客様が1人もおられないというのは、珍しいことです。

土曜日、日曜日はそれなりに。昨日の月曜日も、店内の本が何冊か売れて、思いのほか売り上げがありました。今日は祝日なので、土、日並みのご来客も期待したのですが、すっかり当てが外れました。

一方で、お休みらしく、お持ち込みが3件。といっても、1件は文庫数冊で、あとの2件はいずれも十数冊ずつ。

同じ十数冊でも、一方は比較的最近の本ばかり。もう一方は、すでに二度ほどお持ちいただいた函入り純文学系小説の続き。これが最後とおっしゃって。

本として見た時、どちらが「良い本」かといえば、文句なく後者の小説本だとは思います。しかし売れるのは、明らかに前者の今どき本。昔の小説は、まず売れる見込みがありません。悲しい現実です。

もうお一方、買取りに来てくれないかというお客様も来られました。単行本と専門書だとおっしゃいます。文庫は処分してしまったとか。

IMG_20191227_084508ご遠慮申しあげたかったのですが「見るだけ見て、要るものだけでも」とのご要請を受け、後日、伺うことにしました。職業的倫理感に目覚めた、というところでしょうか。

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2020年02月10日

棚を見ない人々

金曜日の夜、仲間と食事をしながら、いつものように四方山話をしていると、ある同僚がしてくれた面白い話。

奥さんが店番をしていた時、帳場に何か差し出す人がいたそうです。見ると目の前に置かれているのは、小さな鍵。不審に思って顔を上げ、「何ですか?」と尋ねると「合鍵だよ、合鍵」。

何を間違ったか、合鍵を作ってもらえる店だと思ったらしい。「合鍵なら、駅のほうに一軒ありますよ」と教えると「あそこは高いんだよね」、そう言いながら納得いかない様子で帰っていかれたとか。

「もう一つあったんだけど」と続けて、別の時「ピーラーはありませんか」というお客様がいたとのこと。ジャガイモなどの皮むき器ですね。

「周りを見りゃ本が並んでるんだけどなあ」と、腑に落ちないのはご当人ですが、駅に近い商店街にある古本屋さんですから、手当たり次第に聞いて回る人が入ってくるのかもしれません。

小店だって、そこまで面白いお尋ねはありませんが、葉書、便箋の類はよく聞かれます。ある時は「時計、ないでしょうねえ?」というお尋ねもありました。

IMG_20200204_075745これは試験を受けにきて時計を忘れたのに気づいた人が、切羽詰まって藁をもすがる思いで尋ねられたのでしょうから、笑うわけにはいきません。

それより家人などと、いつも不思議だと話しているのは「英語の本ありますか?」と言って店に入ってこられるガイジンさんが案外多いこと。

店に入るまでに表には洋書の均一棚がありますし、店内に入れば正面も右側も、洋書の棚です。英語だけではありませんが、そもそも気づいていない。

見れども見えず。人の目というのは不思議です。

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