2020年07月

2020年07月21日

趣味の不一致

家人はアクション映画のファンで、病が高じてnetflixを契約し、夜ごと見ふけっているのですが、最近ある作品の一場面を、店主に見せてくれました。

女性が古い革装の本を男性に手渡すと、男性はパッと開いて一瞥し「ドン・キホーテの初版か。高いんじゃない?」といったようなことを言うシーンです。

一瞬、あり得ない状況だと思って家人にはそう告げたのですが、そもそもがあり得ない設定の話、つまり一種のファンタジーなのだと知らされ、興ざめいたしました。

古い版本が初版であるかどうかを一目で見極めるのも、ほとんど不可能なことですが、そんな人物が、その稀少性を知らないはずはありません。

RIMG4375ちなみにネットで調べてみたところ、1989年に150万ドルで取引された記録があるようです。いずれにせよそうした点について、まともに突っ込んでも仕方ない映画であることだけは分かりました。

少なくとも原作者や脚本家は、ドン・キホーテの初版が、いかに稀少なものであるかは十分承知の上で、それを小道具にしたのでしょう。

ただ古本屋の感覚からすると、一度も見たことがない本はもちろん、初見ではない場合でも、それが本当に初版かどうかを判定するのは、それほど簡単ではありません。

その点まで含めて一種のギャグとして見せているのだとしたら、なかなかのものだとは思います。

肝心の作品については、家人は結構面白かったと申しておりますが、店主は一つも見る気が起きません。趣味の合わない夫婦です。

※あえて映画タイトルを挙げませんでした。ご興味のある方は、以上の情報をもとにお調べください。

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2020年07月20日

詳細な説明

IMG_20200717_190935いただいたご注文に、こんなメッセージがついてきました。

代金を振り込む前に、書籍の詳細な状態を知りたいので、教えてください。 よろしくお願いいたします。

ちなみにご注文は2冊でしたが、小店が解説欄に注記していた情報は、それぞれ次の通りです。まず1冊は「初版第1刷 カバー帯」という書誌情報のみで、状態注記はなし。共通コンディションは「美」としています。

もう1冊は「初版第1刷 カバー帯ややスレ 小口に僅かなスレ・キズ」としてコンディション「並」。

前者は店主が入力したもので、後者はバイトのΧ君の入力。彼は少しのヨゴレにも敏感で、店主なら無視するような僅かなヤケも記載します。このスレ・キズも店主の目からは全く問題なく、コンディション「良」で通るところ。

よく「未読」という言葉を目にしますが、両書ともそんな状態です。ただ、これは店主の個人的な好き嫌いですが、「未読」はもとより、「新本同然」とか「美本」とかいう表現は、できれば用いたくありません。

そこで今回の1冊のように、特に欠点がなく、新本同然の場合には、ただコンディションを「美」とするだけで済ませてきました。

ですから、あらためて「書籍の詳細な状態」のお尋ねを受けても、説明の言葉がありません。「特に問題のない良い状態です」とだけ、お答えしたのですが、それで果たしてご納得いただけるでしょうか。

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2020年07月19日

しぶとくあれ

このところ売り上げが、ひどく低調です。いつものことではないかと言われればそれまでですし、実際、いつも7月の今ごろから、10月にかけては学校が休みになるので、ふだんより売れないのは毎年のことですが。

ただ今年は4月から学校が閉まっているため、今さら夏休みでもないだろうと思っていたのです。しかしやはり律義に、店売りは夏休みモードに入ったようです。一段ギアが上がったというか、下がったというか。

コロナ騒ぎですっかり忘れかけておりましたが、古本屋にとっての苦境は、すでにコロナ以前から始まっていたものです。コロナさえ治まればというのは、楽観的観測に過ぎるでしょう。

そうお断りしたうえで、今朝の新聞で共感した劇団四季、吉田智誉樹社長の言葉を以下に。

「コロナ禍で演劇そのものが否定されたわけではない。ギリシャ悲劇の時代から戦乱や悪疫があっても生き抜いた、しぶとい芸術です。個別の集団が生き残れるかという問題はあるかもしれないけれど、演劇の形が大きく変貌したり、社会から受け入れられなくなったりと言うことはないでしょう」(朝日新聞2020.7.19)

RIMG4377演劇を古本屋に、芸術を商売に置き換えて見ても、十分通用すると思いました。とりわけ「しぶとい」という部分が。ギリシャ悲劇の時代からあったかは別として。

ただ「大きく変貌」はともかく、社会から受け入れられるためには変化は避けられません。変わり続けてなお、古本屋という形が残るのかどうか。吉田社長ほど自信が持てないことも事実です。

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2020年07月18日

50周年記念誌

お昼前頃、南部支部北沢班の班長さんが、支部役員会を終えたその足で『東京古書組合南部支部創立50周年記念誌』を届けてくださいました。

nanbu50thちなみに小店は支部員となった当初、目黒警察署管内である恵比寿班に属していたのですが、地理的な便利さを考慮していただき、1989年から北沢班に編入されています。

それが何年であったかを、店主が覚えているはずもありません。早速『記念誌』が役に立ったのです。54頁にわたる年表「南部支部50年の歩みとその時代1969▶2019」に、その年の総会を経た8月1日「南部支部の班編成が新しくなる」と記されていました。

B5判120頁に及ぶ『記念誌』を作り上げるのが、いかに大変な事であるかは、店主自身が関わった20周年記念号(つまり30年前)の、おぼろげな記憶からも想像がつきます。もちろん、あれよりはるかに立派な、手間のかかったものであることは言うまでもありません。

創立50周年の記念式典が昨年11月24日。それから8か月近い日数を要したことになるのですが、新型コロナの影響は3月中旬頃には始まっていましたから、むしろ良く今年の支部総会に間に合わせることができたと思います。

4時間にわたったという座談会「功労者かく語りき」も、読みごたえがありました。しかしいつもながら、半ば以上は文字起こしと構成の力。これも経験上、断言できます。

その上でもう一度言わせてもらうなら、この『記念誌』の白眉は、やはり年表「歩みとその時代」でしょう。

淡々とした事実の列記を追っていくうち、店主の脳裏には自分自身の南部支部との関りが、物語のように甦ってきました。一方で、近年はほとんど関わってこなかったに等しいことへの、反省とともに。

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2020年07月17日

続きに期待

このところ、車で出勤するのに、毎朝40分以上かかるようになりました。休業要請期間中はともかく、それ以前でも平均は25分。それほど車が増えたのでしょうか。

心当たりが一つあります。それは家を出る時間が、以前より15分ほど遅くなっていることです。ちょうどラッシュアワーにぶつかるのかもしれません。
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それでも交通量が、かなり戻っていることは確かで、新型コロナ感染者数の増加と合わせ、気がかりなところです。

今日は明治古典会。市場の方は、まだ回復しているとは言えません。

先日の東京資料会は、出品数2千点超。午後8時までかかって片づけたとのこと。中央市会、資料会といった嵩もの主体の市会が、まず賑わいを取り戻している印象です。

この流れが古典会、明古という、一点ものを主力とする市まで波及してくるかどうか。今日もそれほど多い量、点数ではありませんでした。午後4時前に発声が終了。

とはいえ面白いものが何点か最終台に載っていて、案外大勢の同業が、落札価格を聞こうと、最後まで残っておられたようです。

店主の気になったのはシュルレアリスム関係の出品。ひとつはマン・レイ写真集(1934年パリ刊)、もう一つは雑誌ミノトール11冊(13巻)揃い。

写真集には第2版という差し込み標題がありますが、これがほぼ初版とされています。十分に稀少な本。

ミノトールの方は某仏文学者の蔵票署名入りと謳われていましたが、蔵票はともかく署名については、どうもご本人のものとは見えませんでした。それでも国内で揃いを見かけるのは稀なこと。

この口には続きがあると、荷主さんが匂わせておられましたので、これからが楽しみです。

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2020年07月16日

コロナのアンケート

『全古書連ニュース』は、隔月に刊行される全国古書籍商組合連合会の機関紙です。

この連合会というのは、全国各地にある古書組合の親睦団体なのですが、年に二度の会合(総会、理事会)と、機関紙発行以外に事業らしいものはありません。

RIMG4345かつては「年に一度、大市会を開く」ということも重要な事業として規約に定められていましたが、10年ほど前に規約が改定され、現在は総会主催組合の判断に任されています。

機関紙については、東京組合機関誌部が全古書連機関紙部と名を替え、『古書月報』と交互に編集発行しています。

前置きが長くなりましたが、今日取り上げたかったのは、その第477号(7月号)に「新型コロナ感染症」の影響を尋ねたアンケートが掲載されていることについて。

WEB上にアンケートフォームを設置したうえで、約百店を選んでメールで依頼。49店から回答が寄せられたということです。

機関紙(誌)部が、どんな基準で店を選んだのかは定かではありません。店主など、初めて耳にするお店の名も、少なからずありました。しかし集まった回答を読んでいくと、なによりもこの業界の、業態の多様さが浮き彫りにされてくるようでした。

ところで年に二度の会合のうち、今年は4月中旬に予定されていた、東京組合主催の総会が中止されております。直前まで迷っていたのが、今思うとおかしいくらいです。

もう一回の会合、秋季理事会は通常10月に開催。例年なら総会の席で、開催地や開催時期を決めるのですが、もちろんまだ決まっておりません。

そもそも開けるかどうかすら、あやしくなりつつある昨今です。

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2020年07月15日

大口は重なる

昨日は洋書会が終わった後のお話をいたしました。しかし市会自体も、十分お知らせに値する状況だったのです。

出品量がカーゴにして約20台。今年に入って一番の多さだったのではないでしょうか。

そこで当番班ではない店主も、役員班の一員ということで駆り出され、朝から古書会館に出かけました。

RIMG4363近年の洋書会では、通常市で陳列用の平台すべてに本が乗ることは、なかなかありません。はなはだしい時は、空いている台の方が多いほど。

ところが昨日は平台すべてが埋まったどころではなく、本口を台の上に積み上げて、何列もの壁ができました。他の会では普通の光景ですが、洋書会では珍しいことです。

その理由は、大口が2件重なったから。1件は店舗を改装する同業が、思い切った在庫整理をすることになり、その第一弾としてカーゴ11台の出品。

もう1件は、関西の買い取り専門業者が、コロナ自粛を経て、溜まりに溜まった「約20トン」(ご当人の弁)を運び込まれたからです。

もちろんそれは日本書も含めた量で、洋書はそのうちの3〜4トンだったのではないかと思われます。

残る15トン以上の日本書は、今日の東京資料会に出品されているはず。そして洋書会がそうであったように、大口の出品は重なることが多い。

おそらく大変な量の出品になったことでしょう。金曜日にでも、様子を聞いてみようと思います。

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2020年07月14日

薄暮の食事会

東京洋書会は古書組合より古く、明治の末頃に始まったとされ、およそ110年の歴史を持ちます。

当初は「洋書後楽会」と呼ばれていましたが、その由来は「市場の後が楽しみ」だから、という説が専らです。

終わった後ばかりでなく、年に一度か二度は、積み立てたお金で旅行に出かけるのも、長く続いた楽しみでした。

しかし近年は、金銭面以上に時間的な余裕がなくなったこともあり、旅行の代わりに年に2回、年末と年度末の、会員揃っての食事会を恒例行事としてきました。

ところがこの年度末は、コロナのためにその食事会を余儀なく自粛。そこで年度も変わった今日、洋書会の定時総会を開いた後、誘い合って、およそ半数ほどのメンバーで食事会をいたしました。

場所は神田錦町のグッドモーニングカフェ「オフィス街の一角に現れた緑いっぱいのオープンエアーシート」という謳い文句の、そのテラス席で一夕を過ごしたのです。

KIMG1362屋外ですから換気は万全。テーブルもゆったりしていて席の間隔も広め。午後までぐずついていた空も夕方には落ち着いて、風も涼しく、この時期としては奇跡的な心地よさでした。

唯一の難点は、緑が多いこともあって蚊の襲来を受けることですが、蚊取り器が設置され、虫除けスプレーも用意してくれたおかげで、少なくとも店主は、ほとんど刺されずに済みました。

明治古典会でも何度か利用している店ですが、今回もフライドポテトは大好評でした。

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2020年07月13日

残念な本

南部で落札した13本口のなかで、手元に残した本が約20冊ほどあったのですが、それ以外に、活かせるかと思ったらだめだったという本が1冊ありました。

函の背に「改訂増補・漁網集覧」とあって、面白そうだと思ったのです。ところが手に取って函を返すと、本体の背が虫に食われて、見事になくなっておりました。

RIMG4371念のため取り出して中を開いて見ると、文字通り漁業用の網について、その種類・構造から使い方まで、図版入りで詳しく説かれた本でした。

奥付を見ると大正7年が初版。昭和2年に改訂5版が出され、本書は昭和15年の第11版。需要の高い実用書であったことが分かります。

戦後にも重版されたようですが、昭和35年に新版が出た時点で、本書の使命は終わったのかもしれません。新版は本編と図譜との二冊本としてA5判(旧版はB6判)で出版され『日本の古本屋』では1万円以上で販売されています。

旧版でも4千円以上の値はついていますが、果たして需要があるでしょうか。そもそも新版にしても、既に実用書としては役立たない可能性があります。

昨日、古い同業の在庫品らしいと申しましたが、こうした本を取っておくというあたりが、いかにも古本屋の感覚だと思われます。

それにしても、取っておいた間に虫に食われてしまったのでしょうか?あるいは虫に食われた本でも、捨てきれないで取っておいたのでしょうか?

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2020年07月12日

急いで引取り

久しぶりに「落丁繰り」をいたしました。5枚ずつ頁を繰ってノンブルを追っていく作業です。かつては古本屋に勤めると、ほぼ最初に教えられる仕事でした。

昔の本に落丁乱丁が多かったのかというと、それほどではなかったのですが、たとえ稀だとしても、気づかずに売った場合、店の信用に関わるという考えがあったからです。

もちろん今もあります。仕入れた本は全て落丁を調べる、という店も少なくありません。

もうひとつ、落丁本に関しては、落札後一定期間内なら返品できるというルールがあります。それで例えば揃い物とか、高額な本とかは、急いで調べたりするのです。

店主の場合は昨日落札した13本口でした。その中で欲しかったのは数冊だと申しましたが、それに落丁があると、場合によっては残り全部を返品しなければなりません。そのために少しでも早く調べたかったのです。

今朝、車で南部会館まで落札品を引き取りに行ったのですが、手早い人なら、その場で数冊の落丁を繰って、それから持ち帰ることでしょう。

RIMG4369しかし店主は、ひとまず持ち帰ることにしました。店にすべて降ろしてから目当ての本に落丁がないか調べ、確認できましたので、残りの本を処分する作業に移りました。

どうやら同業の古い在庫品だったらしく、全集の端本が何組もあったり、ひどく状態の悪い本も混じっていて、手元に残せたのは1本分程度。12本は廃棄。しかし思いがけず活かせる本も見つかって、納得の買い物でした。

ただ早く引き取りに行き過ぎたためか、落札品が所狭しと積み上げられていて、店主の山はその奥の方。引っ張り出すのに少し苦労いたしました。

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