2020年11月

2020年11月30日

学生さんの姿

RIMG4577今ではずいぶん昔の話のようにも思えますが、4月上旬に緊急事態宣言が出され、古書店にも休業要請が出されたコロナウィルス感染症第1波。

その2か月にも及ぼうかという休業期間がいよいよ解除されるという前日、小店にTVニュースの取材が入りました。

結構長い時間インタビューを受け、一通り話が終わってから、今度は作業している姿を撮らせてほしいというので、ちょうど倉庫へしまうつもりだった数学書を、運んだり縛ったりしてみせると、オンエアされた部分にそこが使われていました。

放送は見逃したのですが、誰かが録ってくれていて、あとで見ることができたのです。予想した通りかなり短く編集されておりましたが、たまたま見てくれた同業、知人らからは、「結構長く映っていたよ」と知らされたことはすでにお話ししたかもしれません。

その時、倉庫に運び込んだ数学書を、今日、再び運び出してまいりました。

休業要請解除の6月時点では依然として学校は封鎖されていて、対面授業が再開するめどは立たず、いつになったら学生が駒場に戻ってくるかもわかりませんでした。

数学書などを店に並べたところで、売れる気がしなかったため、一旦、しまい込んでおくことにしたのです。

10月に入ってから、少しずつ学生さんの姿を見るようになりました。そろそろ並べ時かと思いつつ、今度はなかなか時間が取れなくなり、ようやく今日、都合をつけて倉庫に行ってきたのです。

数学書といっても多くが学習書、教科書のレベルで、まさに学生さん向き。表の棚を入れ替えて並べてみようと考えているのですが、そうこうしているうちに第3波とやらが押し寄せております。

学生さんたち、また姿を消してしまうのでしょうか。

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2020年11月29日

さらに気が重く

ある古書画が良いものかどうかを判定するには、例えば軸なら、しばらく掛けたままにして毎日眺める。するとダメなものは飽きてくる――というような文章をどこかで読んだ覚えがあります。

これを逆説的に言えば、常に目に付くところに長年飾り続けてきたものは、少なくともそのご当人にとっては、決して悪いものではないことになります。

先日お預かりしてきた2面の扁額は、その持ち主が生前、少なからぬ来客を迎えるための応接室に、ずっと掲げておられたものでした。

その一方が、どうも真筆とは思われないと、昨日このブログに書きました。しかしそれは、持ち主を貶めることにはならないはずです。あるいは早くに気づいておられたかもしれませんし、真贋など、どちらでもよかったかもしれないからです。
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本物と思ってお持ちになっていたのなら、それはそれで結構なことでしょう。ともかく何十年か、2つの額はそこに飾られてありました。

しかしお預かりした店主としては、どうやら真筆ではないらしいと、ご家族に告げなくてはならないのは、気が重いことです。あれからもう一方の額も調べてみたところ、こちらも疑わしくなってきました。

そもそも2面の額のしつらえがほぼ同じという点から、入手の時期や、その経路も同じと考えられます。一方が偽物で他方が真物という可能性は低いと言わねばなりません。

まずは、これまでに店主が持った率直な感想を、お客様にお伝えするしかなさそうです。

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2020年11月28日

贋物の疑い

一昨日お客様の所からお預かりしてきた扁額2面を、明治古典会のクリスマス特選市の目録に出すために、写真を撮ることにしました。

苦労して撮ったのですが、表面がアクリル板のため、こちら側が写り込んでしまいます。写り込みがなるべく目立たないものを使うことにしようと、画像を見ているうちに妙なことに気がつきました。

2面は異なる人物の揮毫ですが、一方の書に添えられた署名の字面が変なのです。

そう気づいてあらためて全体を見直してみると、何やら文字に精彩がありません。書道音痴の店主が言うのもなんですが、どうにもバランスが悪い。

とても偉人の自筆とは思えなくなってきました。

そうなると、もう一方も心配になります。じつはそちらの方こそ、より贋物が多いとされるもので、それだけに真筆と判定されれば高値が期待できるものです。

しかしこちらは、店主が眺めたくらいでは良し悪しが分かりません。ということは、市場に出して入札者の判断に委ねることも許されるだろうと考えます。

RIMG4575店主でさえダメと感じる1面については、とても目録に出す気にはなれません。それでもお客様からお預かりしたものですから、単に「扁額」と表記して出品しようと思います。

ただし、これを飾られていた方が、店主より書に疎いとも思われませんから、店主の勝手な思い込みである可能性もなくはありません。

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2020年11月27日

ネット入札の可能性

再び緊急事態宣言が出されるようなことになった場合…

そんな想定をしておくことが、あながち取り越し苦労とばかりは言えないような、昨今の感染者増加です。

感染拡大の局面になった時、どうするかという方策もないままGoTo事業に前のめりとなった、我が政府のうろたえぶりを見ていていても、他人事とは思えません。古書組合に備えはあるのか。

RIMG4574じつは店主の意見ではなく、同僚理事の指摘です。

そこで各交換会に、そうした事態に立ち至った場合の、対処方針のようなものを尋ねてみることにしました。
 
今日さっそくある理事が、明治古典会の会長に質問したところ、今の時点では特に考えはなく、組合の指導に従うという返事だったとのこと。

そう聞いたのは質問した理事からではなく、答えた会長からで、というのも今日、市場が終わってから、明治古典会は臨時総会を開きました。予定の議題が終わった後に、会長自身から、先の質問を受けたこと、そのような回答をしたことの報告があったのです。

では仮に、外出制限のようなものが出されたとして、どんな対処方法が考えられるのか。

ひとつのヒントは先の緊急事態の際、大阪組合さんが準備した市会のようなものでしょう。大勢が集まって入札するということを避ける。そのために入館時間や人数に制限を設けました。

東京組合にはネット入札のシステムがありますから、それを利用してリモート市会を行うことだって不可能ではありません。

そんな事態が来ないことを祈りますが、何がどこまでできるのか、確認しておくことは必要かもしれません。

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2020年11月26日

お預かりして市場に

午前中に一件、宅買いに行ってまいりました。

と言っては正確ではありません。この夏、一度お伺いしたことのあるお宅から、またご連絡をいただき、今日改めてお邪魔してきたのです。
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じつは前回の買い取りは、あまりはかばかしいものではありませんでした。大したお支払いにならず、お客様も、がっかりされたことと思います。

ただその折、応接間に飾ってあった幕末偉人の扁額に目が留まり「もし、この手のものをご処分されるなら、業者を紹介しますよ」とお話しいたしました。

そのお客様から「どなたかご紹介いただけますか?」というお電話が、先日あったのです。

そこで何人かの同業にあたってみたのですが、店主に遠慮したのか、鑑定に自信が持てないのか、その両方ということも考えられますが、異口同音に、市場に出品するよう勧められました。

確かに書画の真贋を判定するのは、簡単なことではありません。よほど自信のあるものならともかく、リスクを考えれば大抵の場合、低めに評価しがちです。しかし間に紹介者がいるとなると、下手な査定はできません。

それくらいなら交換会の場で、思った通りの札を入れるほうが、ずっと気も楽だということでしょう。

というわけで、お客様に事情を説明し、市場に出品することで了承をいただきました。その扁額を今日、お預かりしてきたという次第です。

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2020年11月25日

代理購入というしくみ

RIMG4576店の奥で3時のお茶に、お贈りいただいたばかりのシトーレンを、粉がこぼれないように気をつけながら食べていると、帳場の方から電話の応対らしい家人の声が聞こえてきました。

電話となるとテンションが上がるのか家人の声は大きくなりますが、その返事の具合からすると、どうやら本のご注文のようです。

しかし何やら込み入った事情があるらしく、しばらくやり取りが続いたあと電話を切って、裏にやってくると移動棚を動かしはじめました。

何を話していたのかと尋ねると、学生さんが科研費で買いたい本を「日本の古本屋」で見つけたとのこと。ただし研究費購入がAmazonからしかできないので、可能ならそちらに出品してもらえないかと、相談を持ち掛けられたのだと言います。

あまりにも妙な話なので、本が見つかったところで家人が折り返し電話をし、すぐに店主が受話器を受け取ると、改めて事情をお尋ねしました。

そしていろいろと説明していただくうち、大学生協に代理購入をして貰うおつもりだという事が分かりました。その生協が発注できるのが、Amazonだけだと思っていたらしいのです。

そこで、生協は河野書店にだって発注してくれるはずだとお伝えし、問い合わせてみるようお勧めしたところ、それからややあって「大丈夫でした」というご連絡をいただきました。

しかしその際、今度は「日本の古本屋」には注文できるが直接「河野書店」には注文できないというようなことを聞いたらしいのです。ご本人の聞き違いでないとしたら、断固究明すべき話ですが、とりあえず今回のところは、不問に付すことにいたしました。

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2020年11月24日

見かけと古書価

今月の東京洋書会は、先々週と今日の2回しかありませんでした。第一週は3日の文化の日と重なり休会、先週17日は東京古典会大市会のため休会。

当番としては、ラッキーだったと言えます。しかし会として考えれば、また商売をする身としても、単純に喜べる話ではありません。いたし方ないことではありますが。

その2度しかない11月の洋書会の、今日は月末特選市。ネット入札併用市で、緋毛氈の上には古革装の立派な本が数多く並びました。地方から送られてきたヨーロッパの法制史関係の一口です。

RIMG4565そのほかに、中世英語英文学の一口が出品されましたが、これは2回に分けて出品されるという、その第1弾。いわば前哨戦として、まずペーパーバック類がまとめて出されました。

それでも結構な量ですから、ほかの出品と併せ、今日の市会はまずまず賑やかのものとなったわけです。

ただし出来高は、法制史関係の本に思ったほどの札が入らず、期待を下回るものであったと言わねばなりません。

18世紀の総革装の重々しい法律書は、店主の目から見てもいかにも高そうなので、つい勝手に皮算用をしてしまったのですが、冷静に需要を考えれば、飾り用にしかならないものが多いということでしょう。

お断りしておけば、皮算用をしたのは店主自身であり、出品された荷主さんの方は初めから冷静だったようです。

こういう本を買い取りに伺う機会がそれほどあるとは思いませんが、見かけに目を眩まされないための、よい勉強になりました。


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2020年11月23日

不思議な質問

何度かご来店いただいている若い外国人男性から「英語の本は置いてますか?」と尋ねられました。

初めて来られた外国の方から、同じ質問を受けることは時おりあり、常々家人と、不思議だと首を傾げております。

たとえば自分たちが外国で書店に入ることがあるとして、「日本語の本はありますか?」と尋ねるとしたら、どういう場合でしょう。

棚を見回して、すぐ日本書が目に入ればそういう質問はしないはずです。小店の場合、店内でまず目につくのは、日本書よりも洋書だと思うのですが。

それでも初来店なら、なにやら本が並んでいることは認識しても、背文字までは目に入らないこともあり得ます。ですから、まず棚を指さして「ご覧のとおりです」とお答えすることが通例です。

しかし今回の場合は、冒頭でも申し上げたとおり、見覚えのある方。返事にためらいました。そもそも、ご質問も日本語です。

そこでひとまず「沢山ありますよ」とお答えして「どんな本をお探しですか?」と問い返してみました。すると「ドストエフスキーはありますか?」とのお尋ね。

RIMG4567なるほど、ドストエフスキーの英訳本をお探しで、そのきっかけとして最初のご質問があったと考えれば納得もできます。

残念ながら在庫はありませんでしたが、別のペーパーバックをお買い上げくださって、お帰りになりました。

これからは、この質問を、単なるご挨拶として受け取ることにしようと思います。

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2020年11月22日

謎とその答え

フランスの古い演劇雑誌が30冊ばかり。ヤケが強く、紙ももろくなっていて、表紙が取れたものも多い。

なぜこんなものが今まで塩漬けにされていたのかと、1冊ずつ手にとって見て行くと、やがて扉の隅にペン書きの文字が目に入りました。

RIMG4570仏文系古書を扱う人にはお馴染みの字体で、Kazuo Watanabeと書かれています。それが捨てきれない理由だったのでした。

本を処分するというだけでも古本屋にとっては辛いことですのに、かの渡辺大先生の旧蔵本となれば、御神札のごとく捨て難い。

かと言って売り物にできるほど本の状態がよくありませんから、悩んだ末、塩漬けにしたものでしょう。

しかし見て行くと、その書入れに1930年代の日付のあるものと、1973年のものとがあります。

しばらく何故だろうかと考えこまされましたが、やがてその謎が解けました。1973年の方に a monsieur Honjo と書かれた1冊を見つけたのです。

店主は20年以上前、その Honjo さんの旧蔵書を、ご遺族からお譲りいただいたことがありました。この雑誌は、その時に手に入れたものだったというわけです。

ちなみに Honjo さんあての著名人の書簡などが市場に現れることがありますが、店主が買い取らせていただいた中には、残念ながら、そうしたものはございませんでした。

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2020年11月21日

宅買いは体力

RIMG4568宅買いに出かけることが、以前に比べて減ってきています。

昔から、特に買い入れに熱心だったとは言えません。開業当初こそ、チラシを作って折り込み広告も試みたりしましたが、あまりの無反応に一度だけで止めております。

もともと多いとは言えない出張買取(宅買い)が、近年一層少なくなったのには、宅配便の利用が増えてきたという事情もあるでしょう。

そんな小店でも、37年営業してきた間には、ずいぶんと遠方まで宅買いに出かけた経験があります。

自ら車を運転して出かけたのでは、牛久市(茨城県)あたりが一番遠かった気がしますが、電車で出かけたのが南相馬市、それに北九州市。

南相馬は農家を継いだ大学の先輩の家で、大震災の数年前のことでした。店主と違い学生時代から読書家で、哲学の原書なども取り寄せていた人です。数十箱荷造りし、運送業者に頼んで古書会館に送ってもらいました。

北九州は店主の住まいのご近所さんの実家。沢山の和本があるという話から、交通費くらいは出るだろうと踏んで、単身出かけました。

和本ばかりではありませんでしたが予想以上の量で、運送会社からダンボール箱を取り寄せ、60箱ほどに詰めて運送の手配を済ませると、最終の新幹線も間に合わない時間となり、博多駅前のサウナに一泊しました。

この時の本はそのまま市場に出品。今に至るも、これが売上げの最高記録です。20年ばかりも前。我ながら体力があったのですね。

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