2020年12月

2020年12月31日

大晦日の車中より

大橋のバス停を降りて、「坂道を登りながら」思い出そうとしました。いつ以来のことかと。

車を家に置いて店に出るのは、夜に食事会などあって、店主もお酒をいただく時くらいですから、もうずいぶん長いこと経ちます。

もしかすると今年の新年会以来かもしれません。毎年1月の第3週あたりの金曜日。会場はレストラン七條と、ほぼ決まっておりました。

コロナ騒ぎがなければ、あるいはこれまでに収束していれば、来年も同じように昔の理事会仲間が集まって、楽しく語り合うことができるはずでした。

思えば去年の新年会で、その後、今のような事態になると予想できたものは、誰一人いなかったはずです。

そんなことを考えながら店までの道を歩いたのは、今日、仕事を終えたらそのまま名古屋へ帰るからでした。

RIMG4673いろいろと迷いはしましたが、結局、年に一度、まだ健在の老父の顔を見、20年前に世を去った母の墓参りをする恒例を、墨守することにしたのです。

ただしもう一つの恒例、古い友人たちとの新年会は、お互いに話し合った結果、取りやめることにいたしました。

したがってこの正月は、名古屋まで移動するとはいえ、そのあとはほとんど家にこもったまま。ひたすら寝正月とするつもりです。

移動に伴う感染リスクがないとは申しません。しかし雪の影響もあって遅延している新幹線の、同じ車両に乗り合わせているのは店主と末娘のほかには、遠く離れて5名か6名。不心得者はそれほど少ないということです。

今年も一年ありがとうございました。皆様もどうぞ静かな年越しを。

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2020年12月30日

気ばかり焦る年の瀬

いつもの年に比べて、年末にゆとりがあるはずの曜日の並びでした。
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先週金曜日の明治古典会で市場は終わり。組合の仕事も特になく、忘年会もありません。今週は、まるまる店の仕事に専念できると思っておりましたした。

それなのに何かしら気ぜわしく、バタバタしているうちに押し詰まって今日はもう30日。いったいこの五日間、何をしてたのやら。

たしかに日々細かな買い入れがあって、その片付けに手を取られはしました。しかし、店内の乱雑は、さらに程度を増しています。それほど売れているわけではないのに、棚はガタガタ。

いえ一件、毎年今ごろ決まってご来店くださる先生が、今年もまとめ買いをしてくださいました。一昨日のことでしたが、年明けに送ればよいとのことで、お買い上げ品はまだ積んだまま、手つかずです。

昨日は、こちらも今ごろになるとお声がかかる宅買いがありました。ダンボールで7箱。いかにも本好きの方がお読みになる本で、高く売れるものは少ないのですが、店に並べて置けば、いつの間にか売れていくという、ありがたい仕入れです。

そして昨日はもう一件、大きめのダンボールで5箱、宅配便が届きました。

事前にメールをいただいていた、この方もお得意様。過去にも何度か、良い本をお送りくださっています。本が新本のようにきれいなのが特長。奮発して査定し、了承をいただいて送金を済ませました。

こうした事情で、現在、ネットに出品予定の本がたくさんたまってきましたが、本年の営業は明日まで。年が改まってから、一気に上げようと考えております。

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2020年12月29日

指先の能力

よく、お札を数えるときに、親指をぺろりと舐めてから始める方がおられます。

コロナ禍の近頃では、さすがにそうした光景も見ることが少なくなりましたが、以前はお勘定の際に目の前でやられたこともあります。

そんなことをされるのは、大抵はお年寄りなのですが、自分が「お年寄り」になった今では、その気持ちがよくわかります。

きっと指の先がカサカサつるつるになっておられるのでしょう。かくいう店主も、しばらく前から手湿疹とやらでカサカサどころか、荒れてガサガサ。

RIMG4672ですからお札を数えるときには、いわゆるタテカン(縦勘)ではなく、もっぱらヨコカン(横勘)とよばれる方法でやっております。なにも数十枚を数える場合に限らず、数枚の時でもそうしています。

間違っても手に唾をつけることだけはやめようと、固く戒めているのです。

しかし紙幣ならばともかく、困るのは本のページをめくる時です。天か地に指の腹を軽くあて、一枚だけ起こしてめくるのが、もっとも本にやさしい方法でしょうが、紙が薄い場合はそれがそう簡単ではありません。

ですから例えばプレイヤード叢書のデータを取るために、刊行年や、末尾ページのノンブルを調べるときなど、誤ってページを痛めないように、非常に気を使います。この本は紙の薄さと言い活字の小ささと言い、若い人向きに作られているのかもしれません。

思えば指先というのは、実に微妙な作業をこなしているものだと感心します。驚くほど小さなものや、薄いものでも、つまむことができるのですから。その能力を半ば失って思うわけですが。

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2020年12月28日

大事なもの

KIMG1488欧米に比べて一桁も、場合によっては二桁も少ない感染者や重症者の数なのに、なぜ日本ではここまで医療崩壊が切迫感を持って語られるのか。

そんな文章を読んだ記憶があります。どこで目にしたのだったかと考え、思い当たる新聞記事を読み返してみたのですが、そこには見つけられませんでした。

それが日本の医療体制の脆弱さを説こうとしたものか、あるいは医療関係者が騒ぎすぎだと言いたかったのかも覚えておりません。ただその文言が記憶の端に残っただけ。あるいは週刊誌の見出しか何かだったでしょうか。

店主がそこで読んだのではと見当をつけたのは、数日前の朝日新聞に掲載された、佐伯啓思さんの「異論のススメ コロナ禍見えたものは」という小論。そこで見かけたような気がしたのです。

その時は途中で読むのをやめていましたので、もう一度頭から読み直してみました。しかし冒頭申しあげたとおり、その記事に、そうした文言はありませんでした。

「保守」を標ぼうされる佐伯さんが折々に発表される意見は、必ずしも店主の賛同できるものばかりではありませんが、常に穏やかな論調で、思わず考え込まされることもしばしばです。

この記事でも「『必要なもの』と『不要なもの』の間に、実は、『大事なもの』がある」として、次のように列挙されています。

信頼できる人間関係、安心できる場所、地域の生活空間、なじみの店、医療や介護の体制、公共交通、大切な書物や音楽、安心できる街路、四季の風景、澄んだ大気、大切な思い出。

そして「『必要』も『不要不急』も、この『大事なもの』によって支えられ、またそれを支えるべきものである」と続けられます。

店主にとっての帰省も「大事なもの」だったのでした。

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2020年12月27日

驚くべき著作量

洋書会特選市でプレイヤード叢書を手に入れたことは、すでにお伝えいたしました。

売れ行きの良い叢書であることが次第に知れわたったためか、市場に出ても簡単には落札できなくなっています。そもそも、そう頻繁に出るものでもありませんが。

今回落札したものは、輸入書店の在庫整理品かもしれません。読まれた形跡のない、きれいな本ばかりでした。

それだけに一抹の不安もあります。つまりに平たく言えば売れ残り品ではないかと。確かに入手した38冊の内には、初めて名を聞くような作家も含まれておりました。もちろん、売れそうなタイトルも半分ほどは目に入ったので入札したわけですが。

定価の高い本です。新刊価格の半値を目安に、近いうちにネットに挙げるつもりですから、どうぞご期待ください。

この時、同時に i meridiani というイタリア語の叢書も落札しております。Wikiなどによれば1969年にモンダドーリ社によって創刊されたシリーズのようです。

プレイヤード版の成功に見習ってか、判型や薄い本文用紙など、似通った作りになっています。世界の作品を集めるなど、網羅的なラインナップも同じよう。

こちらは個人蔵書でしたから約30冊の内容には、かなり偏りがあります。その中で、Pasoliniが10冊もあったのには、とりわけ驚かされました。

RIMG4668そもそも店主などは、パゾリーニといえば映画監督としか存じませんでしたが、その彼が、各巻が千ページを超えるこの叢書で10冊にも及ぶ作品、文章を残していたとは。

しかもスキャンダラスな死を遂げたのは53歳の時。いろいろと過剰な人だったようです。

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2020年12月26日

リモート勧誘

RIMG4614「今、ちょっと手が離せないんで、また今度にしてください」そう言って電話を切ってから、思わずおかしくなってしまいました。

といのは、うそ偽りなし、本当に手の離せない状態にあったからです。

発送する本にグラシン掛けをしようとして、机にグラシン紙を敷き、その上に本から外したカバーをひろげ、まず天を折り込んで、次に地の方を折ろうとしたときに、電話が鳴ったのでした。

右手はグラシン紙とカバーを押さえたまま、左手で受話器を取ると、割合に落ち着いた男性の声で「済みません、営業の電話なんですが。○○生命と申します」

そこで冒頭の返事となったわけですが、先方は「あ、そうですか。ではまた改めまして」そう言ってすぐに電話を切りました。

かつては「今忙しいので」と返事をして「いつならいいですか」と粘られたり、「営業電話はお断りします」と切ったあと、また掛けてきて絡まれたこともありました。

近ごろ、この手の迷惑電話が減った気がします。掛かってくる回数は変わりなくとも、今回のように淡白なケースが増え、粘られることが少ない。掛ける側も受ける側も、次第に洗練されてきたのかもしれません。

先日、目黒区のなにやらと名乗ったあと「コロナのためお電話で失礼します」と話し始めた女性がいました。

そのなにやらがよく聞き取れなかったので、何ごとかとしばらく聞いていますと、時おり本などを持って訪れる宗教団体の勧誘のようです。「店先ですので」と丁重にお断りして受話器を置きました。

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2020年12月25日

明古クリスマス特選市

大変な一年が、今日の明治古典会で幕を閉じました。

市の賑わいというものをすっかり忘れておりましたが、今日はそれを思い出させてくれるような市会となりました。

毎年、7月の大市と12月のクリスマス特選市が、明治古典会にとってのビッグイベントです。大市はコロナ禍の影響をもろに受けて、公開下見展観方式がとれなくなり、なにやら中途半端な形となってしまいました。
 
それからしてみると今日のクリスマス特選市は、昨年と比べても遜色ない市会になったと思います。懸念もありましたが、思い切ってフリも実施しました。

結果からすると、このフリが、盛り上がりをもたらしてくれたようです。

入札会が終了したのが午後5時過ぎ。それから会場の一部を作り替え、130点に及ぶフリが開始されました。

洋装本の世界では、1点10万円を超えるものは、かなり高額品の部類でしょう。しかし今日、競りにかけられたものは次々に10万円超え。

これが版画や錦絵、和本といった分野になると、もう一桁違って、100万円を超える落札も少なくありませんでした。

午後6時半を回って全点をフリ終えた時、期せずして拍手が起きたのですが、店主には参加者それぞれがこの一年を振り返り、互いをねぎらい合う拍手に聞こえました。

RIMG4632そのあとは例年なら打ち上げ飲み会で、さらに盛り上がるところですが、今夜は自粛。若い連中はいざ知らず、店主らロートル組は、いち早く会場を後にしたのでした。

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2020年12月24日

それはないよ

もう一度緊急事態宣言を出さないことには、この第3波を抑え込むことはできない―—という意見も聞かれます。

確かに12月に入ってから、日増しに多くなっていく渋谷の人出を見ていると、そんな危機感に駆られる気持ちもわからないではありません。

しかし一方、我が駒場、とりわけ河野書店へ来られる方の少なさは、あの自粛期間を彷彿とさせます。

とくに今週に入ってからの小店の売り上げは、これを緊急事態と言わずして、ほかにどう表現できるでしょう。

昨夜、いよいよ店売りの前途を危ぶみながら家に帰りつくと、家人から「都丸書店閉店」のTwitter情報を知らされました。店に貼り紙が出され、その写真とともに拡散しているとのこと。

RIMG4625嘆き悲しむ声が多数寄せられているようです。ネット上には、それほど古本店ファンは多いのに、なぜ小店を訪れる人は少ないのか。そんなことを思ったわけではありません。

同僚の閉店をTwitterで知らされることに、割り切れなさを感じたのです。

これまでも良く知っている同業の閉店を、ネット情報から知らされたことは何度かあります。しかし都丸さんといえば、本来なら毎週一度は顔を合わせる洋書会の仲間。

コロナ禍以降、奥さんを気遣って市場に来られることが間遠になっていましたが、それにしても水臭い。そんな気分で電話を入れました。

真意を尋ねると、店舗は閉めるが、営業をすべてやめるわけではないというお話。また洋書会にも顔を出すとのことです。ただしコロナが収まったら、という条件付きで。

店舗閉店への、最後の一押しがコロナだったといいます。仲間に相談して反対でもされると、決意が鈍ると考えられたのかもしれません。

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2020年12月23日

ネットの功と罪

これまでに2冊販売しておりますのに、今回、初めて気がつきました。

RIMG4665Jacques DerridaGlasという著作。版面のレイアウトが独特で、何種類かのフォントによる異なるテクストが、重層的に書き込まれています。

もっとも、読めるわけでもない店主は、単に想像するだけなのですが、今回気がついたのはそのことではありません。出だしの一行が小文字で始まっていて、ここが本当に先頭なのかと不安に感じたのです。

RIMG4666というのもそのページの右下隅のノンブルは7。確かに表紙の次のブランクページから数えれば、次が前扉、続いて本扉で、本文が始まっているのは第7頁に違いありません。

不思議な本だという話だけは聞いておりましたから、始まりに見えない始まりである可能性は十分あります。しかしそこが無知の悲しさ。落丁ではないことを確認する手立てがありません。

ネット上に何か手掛かりはないものかと、著者とタイトルで検索をかけてみました。

するとPDFファイルが存在するようです。開いてみると、驚いたことに英訳版が全頁掲載されておりました。

問題の本文冒頭は、こちらも小文字で始まっていて、ノンブルこそ1でしたが、原書の7がそれにあたることは明確です。これでようやく安心して販売できます。

それでまずはメデタシメデタシなのですが、肝心の値付けではガッカリさせられることになりました。以前売った時に比べ、大きく値崩れしているのです。

重刷が新刊で手に入ることもあるでしょうが、このPDFの存在も無関係ではなさそうです。前の3分の1ほどの価格で売ることになりそうです。

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2020年12月22日

洋書会歳末特選市

RIMG4630今年最後の洋書会でもあります。全員集合の声がかかり、朝10時に古書会館到着。

5月の大市会も、まともな形では開催できませんでしたから、この一年を通じて今日が、最も出品量の多い市会となりました。

ただ多いばかりではなく質もなかなか良いもので、特に全体の3割程度が日本書。それも売れ筋の本が多く含まれており、聞きつけてやってきた、日ごろは洋書会に縁のない同業も、熱心に入札してくれました。

店主は座ってできる「札改め」をさせていただいたのですが、2人がかりで追われるような忙しさ。というのも出品点数が多いばかりでなく、封筒に入っている札の枚数が、普段とは段違いに多かったためです。

いちばん大きな口は先日もお伝えした中世英文学者の蔵書で、洋書はもちろん、日本書も文学歴史思想と幅広い分野にわたって、筋の良いものが揃っていて、高値になっていました。

店主も先日仕入れてきた口のうち、残しておいた日本書を出品したのですが、たまたま関西から強力な買い手が来ていて、東京の業者も気が抜けず、ほとんどが上札で落札されるという、ありがたい結果となりました。

誰もが儲けを見込んで入札するわけですから、理屈からいえば、自分で売るのが一番儲かります。しかし店主としても、効率を考えれば決して損な取引ではありません。

一方でプレイヤード叢書を仕入れることができました。売って買って、それで市場の経済は回っていくわけです。

久々に活気が感じられた市でした。しかし恒例の忘年会も今年はありません。「良いお年を」とだけ告げて会館を後にしました。

konoinfo at 19:16|PermalinkComments(0)
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