2020年12月

2020年12月21日

左耳で聴く

寝るときに耳元にスマホを置いて「らじるらじる」を聴くことが多いのですが、しばらく前からイヤホンをつけて聴いております。小さな音で聴いていると、聞こえづらいこともありますので。

片耳だけのやつです。ある日、何の気なしにいつもと違う耳に嵌めてみたところ、同じ話者なのに、まるで別人の声のように聞こえるのに驚きました。

店主の耳垢は湿り気があるタイプで、何年か前に、耳の塞がりを感じて耳鼻科で診てもらったことがあります。行ったのは神保町の医院で、良く知っている同業が電話を入れて予約を取ってくれたのでした。

医院へ行くと、耳掃除をしてくれて、また塞がったら来るようにと言われました。

一年ほど前、やはり耳が詰まる感じがして、同じ場所の医院に行ったのですが、経営が変わり、女医さんになっていました。その時は耳掃除をしてもらったあと、聴力検査も受けました。

狭い部屋に入ってヘッドホンをつけ、右、左と交互に電子音を聞かされ、聞こえたところで合図をするというものだったと記憶しています。

終わって診断の際、右側の聴力が左に比べて30%劣っているという事実を告げられました。だからどうということもなく、治療も投薬もありませんでした。

目の方は、老化による視力低下が進むのを日々感じておりますが、耳の方はそれに比べると衰えを実感する機会があまりないようです。

RIMG4626人の話が多少聞きづらい時でも、元来あまり聞き返すことをしない人間で、適当に相槌を打ってしまうタイプですから、そのうち大きな失敗をやらかすかもしれません。

よく自覚して、なるべく左側の耳で聴くようにしようと思います。

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2020年12月20日

年末年始休業予定

しばらく前から、店内に年末年始の休業日程を貼りだしております。例年通りではありますが、あらためてお知らせ申し上げます。

年内は12月31日まで営業。ただし、夕方4時頃には閉めさせていただくつもりです。

新年は4日(月)から通常営業すると、家人が張り切っております。店主はお昼過ぎに店に着く予定。

以上は、今年も名古屋で年を越すことが前提です。

RIMG4631現時点では、年に一度の里帰りを中止するつもりはありません。この年になって里帰りもないですが、老父と二人の妹が健在でおります。

不要不急の四文字がチラつくものの、年々、一期一会という言葉の重みも増しています。この年末を外すと次は来年末、さもなくば何かことが起きた時。

というわけで、コロナ禍をめぐる状況が今よりよほど悪化しなければ、正月には名古屋で墓参り。ここまでは確定。初詣は早朝の人出を見て決めます。

決めかねているのは友人宅の新年会。こちらだって一期一会。最近は顔を出していなかった、かつてのメンバーが一人、今年亡くなっています。ガースーさんの忘年会より人数も少ないことですし、できれば会いたい。

ただ無理押しするつもりはありません。友人たち次第。

帰省するなら2週間は会食を控えよという、その筋のお達しもありますが、忘年会はすべて取り止め、明古の会食だって今月は見合わせてきました。それでもまだ予断を許さないので、新幹線の切符が予約できないでいます。

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2020年12月19日

一発大逆転

昨日の明治古典会は3、4階2フロアを使用していましたが、そのためかえって出品量が少なく感じられました。実際に点数も多くはなかったようですが。

RIMG4627店主はまたしても入札なし。ただし委託されたものを何点か出品いたしましたので、まるで参加しなかったというわけではありません。その出品は、先日ブログでも取り上げました自筆ものを含む口です。

幕末から維新にかけてのビッグネームによる自筆扁額2面のほか、絵画、版画、色紙など全部で9点。

問題の扁額については、期待できないことをお客様にご説明したうえで、了解を得て市場に出しました。一度はお返ししようと考えたのですが、残しておいても仕方ないというご意向に従ったのです。

その際、他に数点を併せてお預かりしました。それらのものは、店主の眼から見ても、札が入ればありがたいという程度のもので、そのことも正直にお伝えしております。

結局、9点のうち8点は、予想通り厳しい札しか入らないか、まったく札が入らずじまいでした。

しかし残りの1点に、思わぬドラマが待ち受けておりました。摸作かも知れないと疑っていた絵画が、どうやら真作らしいという見立てが出てきたのです。

もちろん真作なら値になるというわけではありません。たまたま値のつく画家の作品だったわけです。

結果として、扁額が本物だった場合程度の落札価格になりました。お客様に一部始終をご報告すると「よかった…」とひとこと。

店主も、どうにかタダ働きにならずに済みました。

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2020年12月18日

ロンギとプラーツ

先日、大船(ご住所は鎌倉市)まで宅買いに出かける気になったのは、ひとつにはお住まいがUR賃貸住宅だと伺ったからでした。

昔の公団住宅には、辛い思い出があります。4階、5階でエレベータなし、階段も狭い。そこを何十回と昇り降りして、本を運び出したことが何度かありました。

しかし最近の公社、公営住宅はバリアフリー化が進み、エレベータ完備はもちろん、台車の運搬も楽です。本の運び出しに苦労はなかろうと考えたのです。

もちろんそれ以上に決め手となったのは、ご蔵書の一端をお知らせいただいたことにありました。

洋書の処分に困っておられるという最初のお言葉には、あまり気持ちを動かされませんでしたが、続いて「イタリア語の本が多いです。ロンギとかプラーツとか」。

それを伺って、これは引き受けるしかないなと思ったのです。小店の守備範囲、というより、まずド真ん中のストライクといった感じ。

ただし過度の期待は抱かず、最近品薄気味になってきた美術史・美術思想系の棚に、補充ができれば良いといった程度の考えでお邪魔しました。

praz結果は想像以上の質と量。ほかの分野の本も含めてですが。

一旦市場に出して、自分の専門分野以外は同業に買ってもらいました。しかし大半は手元に。良い本がたくさん入ったのですが、今度はお定まりの悩みに直面することに。

Mario Prazのイタリア語著作だけでも30冊ばかり。Roberto Longhiは大部の全集。フランス語ではJurgis Baltrušaitisの7冊などが目立ちます。

ひとまずネットに上げるのは良いとして、どこにどうやって保管しておいたものでしょう。

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2020年12月17日

古本商売の難しさ

今朝、対照的な注文が2件入っておりました。

一方は登録し、出品したばかりの学術系文庫数点の一括注文。もう一方は、思い出せないほど昔に仕入れた薄い冊子(自店DBへの登録は2006年でした)。

どちらも有りがたいことに違いはありませんが、嬉しさは遥かに違います。

文庫の方は入荷自体がラッキーで、出しさえすれば売れることが分かっていたものです。反応の速さには驚かされましたが。

良く売れている本を、他より安く値付けすれば、間違いなく売れる。誰にでもわかる理屈です。しかし市場で競り合って買っていたのでは、ほとんど儲けが出ませんから、古本屋の商売としては成り立ちません。今回も、お客様からお譲りいただけたことが全てです。

そんな売れ筋をいつも入荷できるほど、世の中甘くはありませんし、第一、それではあまりにも人頼みの商売です。そこで、なんとかして自力で商品を開発したいと考えるわけです。

といっても、すでに世の中にあるものを売るのが古物商ですから、独自性というのはその「もの」への(再)価値付けでしかありません。

ネット社会となって、そうした独自な価値付けが、どんどん難しくなっています。珍しいと思っていたものが、webを検索するといくらも見つかる時代だからです。

9841そうしたなか、国会図書館サーチでも見つからない小冊子をずっと抱えてきて、ようやくご注文をいただけた嬉しさが、売れ筋文庫の場合と異なることは、ご理解いただけると思います。

しかしながら、手に入ってから16年。売価は2千円。商売になっているとは申せません。

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2020年12月16日

学問の徒

小さな死亡記事で、佐々木力さんが亡くなられていたことを知りました。昨日の朝刊です。

自らをトロツキストと称して、憚るところありませんでした。そのことからも分かるように信念の人であり、傍目には狷介な性格と映ることもあったようです。

店主より少し年上の、同じく団塊の世代ですから、面識をえた頃は、まだ30代後半。溌剌として将来性豊かな感じの方でした。その印象にたがわず、着実に業績を上げて行かれましたが、小店が移転してしばらくすると、店にお姿を現されなくなりました。

やがて何やら事件を起こされたらしいという噂が伝わってきて、さらに数年たち、次にご来店いただいたのは、退職に際し、研究室の本を処分したいというご相談でした。

享年から逆算すると、駒場を去られたのは10年前のことになります。春休み中の風の強い一日、研究室から蔵書をお引き取りしたことを思い出します。

当時の車で2往復して店に運び込み、査定して金額を申し上げましたところ、ご不満そうでしたが結局は了解していただきました。

窓際に棚があって雨でも吹き込んだのでしょうか、ほとんどの本の天が灰色にクスミ、雨粒のようなシミがあったことが評価額を下げました。さらに線引き。

RIMG4619これには後々まで驚かされることになります。実に多くの本に几帳面な線引きが見つかりました。鉛筆、時には赤鉛筆で、いちいち定規を当てて引かれています。それもポイントを押さえるように限られた部分にです。

処分いただいた量については、もっと多かった先生もおられますが、実際に読まれた痕跡を、これだけ多く残された方を他に存じません。

線引きを発見するたび、その勉学一筋なさまに、畏敬の念をあらたにしたものです。

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2020年12月15日

さらに腰が

洋書会で久しぶりに午後6時近くまで仕事をして、ようやく一区切りついたところで会館を出て、痛む腰をさすりながら神保町駅まで辿りつき、階段を降り始めた時のこと。

スマホのありかを確かめるためダウンジャケットの胸ポケットを探ろうとして、何か妙だと感じました。ポケットがないのです。それで初めて、同僚のダウンを着てきてしまったことに気がついたのでした。

RIMG4623慌ててLINEでそのことを伝え、急ぎ足で会館に戻ると、まだ片付け仕事をしていた同僚が、笑って待っていてくれました。

それからの帰り道、腰の痛みがさらに倍加されたことは言うまでもありません。

今日の仕事というのは、来週の歳末特選市に、先輩会員が出品する一口物の仕分けです。

中世英文学研究の大家の旧蔵書だとかで、これまでにも何度か出品されており、全体ではカーゴ20台くらいになるのではないでしょうか。今回はそのうちの日本書数台の仕分けでした。

洋書会は他会のように経営員を持ちませんから、会員全員が市会運営の、あらゆる作業を行います。

現に今朝は、店主の出品物の仕分けを、当番会員や役員仲間が手伝ってくれました。そのため店主自身も、午前10時半には会館に出向き、仕分け作業を始めております。

つまり朝から夕方まで、一日肉体労働をいたしました。それで帰るころには、腰から背中までが悲鳴を上げていたというわけです。

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2020年12月14日

大切な本

souvenir初めから売り物にするつもりはありませんでしたが、だからと言って保管に気を使わなかったのは問題です。むしろ、より一層大切に保存しておくべきものでした。

自宅の本棚を片付けていて見つけたのは、吉増剛造さんから頂戴した1冊のご著書。

見返しに、あの独特の字体で、店主の名と短いメッセージが書き込まれております。

souvenir2日付を見て驚きました。1988年1月というと、開業から5年と経っておりません。そんな早い時期にご縁があったのかと。

じつは始まりはあまりよく覚えていませんが、ふらりとご来店になったのだと思います。本を買うためにではなく、処分するために。

数度お宅に買い取りに伺いました。そのうち、引っ越すことになったのでまとめて処分したいとのお話があり、組み立て式の大きな木の棚まで含めて引き取らせていただきました。

驚くような量ではありませんでした。もちろん大切なものは別にして、引っ越し先にお持ちになったはずです。だとしても蔵書家タイプとは違います。それまでにも、折々ご処分されていたのでしょう。

ともあれ短いお付き合いで転居されてしまい、それ以後は一度だけ、古書会館裏の喫茶店で偶然お目にかかったことがありますが、簡単なご挨拶をしたきりでした。

久しぶりに手にした本は小口に茶色いシミ斑が生じ、商品ならランクを下げて値付けせざるをえないところ。

売り物でないからこそ、もっと大切にとっておくべきだったと反省しております。

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2020年12月13日

いい街の規準

cafe昨日お客様がお持ち込みくださった文庫本と単行本、あわせて30冊ほどの中にあった1冊。

『京都カフェ散歩』(祥伝社文庫、平成21)。著者の川口葉子さんは、帯の説明によれば「Webサイト『東京カフェマニア』で人気」の方だとか。

タイトルにつられて開くと、何軒かは知った店がありましたので、つい拾い読みしてしまいました。

店主が知っているということは、少なくとも半世紀以上は続いている店だということです。その中の1軒である六曜社のマスター奥野修さんと、オオヤコーヒー焙煎所(こちらは知りませんでした)を営まれるオオヤミノルさんの対談を面白く読みました。

その締めくくりのオオヤさんの言葉。

昔、友だちと国内を旅したとき、いい街の規準は風呂屋と古本屋、レコード屋と喫茶店だと言ってたんです。それから定食屋でもいいから安くご飯が食べられて、お酒飲みたい人は飲めてみたいなワンセット。そういうのは街にありつづけな、おもしろくないですね。

話変わって今日は日曜日。家人は朝刊を開くと、まず「朝日歌壇/俳壇」欄に目を通します。今朝は、いきなり中の一首を詠みあげました。

古書店は外食チェーンの店になり定点が消えた駅の西口(小室安弘)

古書店ネタは採用率が高いのではないか、というのは家人の説。それはそれとして、外食チェーン店が入るような規模なら、それほど小さな店ではなかったのでは、というのが店主の感想。

しかし定食屋もチェーン展開する時代です。消えたもの、できたもの、さまざまに想像させられました。

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2020年12月12日

乗り換えの不便

しばらくぶりに五反田に出かけました。今年最後の南部地区入札会です。

コロナ休会もありましたが、この一年間に何回出かけたでしょう。行っても入札すらせずに帰ったこともありますから、じつに貢献度の低い一年間でありました。

今日はどうやら4、5点入札したうちの、少なくとも1点は落札できたようで、そうなると明日、引き取りに出かけなければなりません。その手間を考えて、入札を厳選してしまうため、なかなか落ちないわけです。

五反田への足がさらに遠のきそうな理由がもうひとつ出来ました。渋谷駅の乗り換えの面倒さです。

RIMG4625井の頭線から五反田方面行きのJRに乗り換えるのに、以前から長い通路を歩いて一度階段を上り、それでようやく改札に辿り着くという不便さはありましたが、その通路がさらに迂回させられているのです。

先日、宅買いで出かけるまで、その新しい通路は未経験でした。今日が2回目。駅の改良工事に伴う仮通路なのでしょうが、一体いつまでかかることやら。

それでも「行き」の不便さは、せいぜい何割か増したという程度。しかし五反田から帰ってくるときは、以前なら出札口から井の頭線渋谷駅までは平面ほぼ一直線でしたのに、その出口が塞がれてしまったため、行きと同じ経路を通らなければなりません。

今日の五反田からの帰り、以前と同じ出札口を目指し、Uターンを余儀なくされました。一度は経験済みのはずなのに、何故だろうかと考えて、先日は湘南新宿ラインで戻ったため、迷いなく階段を上ったのだと気がつきました。

リニア新幹線に乗りたいとは少しも思いませんが、渋谷駅が便利になる日は待ち遠しく思います。

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12月31日から1月3日まで
休業いたします
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河野書店

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