2021年01月

2021年01月31日

記憶の彼方

片付けものをしていたら、古い写真が一束出てまいりました。古いといっても、せいぜい20年くらい前のもの。ですから大方は古本屋仲間で写っているものです。

整理して取ってあったわけではありませんから、時間も場所もごちゃまぜ。同じ時の写真さえ、あちらこちらに分かれています。

それでも写っている顔ぶれを見れば、いつどこで撮ったものか、おおよそ思い出せます。というのも、まずは旅行か組合行事の際に撮ったものばかりだからです。

行事というのは大市会であったり、全古書連の会議およびその懇親会であったり。

RIMG4713「いつどこで」が思い出せるとは申しましたが、正直なところ「いつ」については、写真に表示されていない限り、かなり不確かです。調べれば分かることではありますが。

そんな中に、見覚えのない顔が並んでいる写真が数枚ありました。はて?と手を止めてしばらく眺めているうちに、思い出しました。15年ほども前に、日帰りで小学校の同級会に参加した時の写真です。

40数年ぶりのこと。会場は駅ビルにある中華料理店。案内された部屋の扉を開けると、10名前後の見知らぬ中年の男女が席についていいて、一瞬、違う集まりかと焦りましたが、すぐ「ひさしぶり!変わらないね」と声がかかり、やがて何人かの顔が、小学校時代の面影を見せ始めました。

そうして2時間余りの会食の間に、ようやく全員の顔と名前が結びついたのです。

しかしそれから15年、今またその写真を目にすると、どれが誰やら、ほとんど名前が出てきません。

当時それぞれに現役を終えつつあった仲間たちは、皆疾うにリタイヤしていることでしょう。とくに連絡もないので、おそらく無事でいるだろうと思うばかりです。

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2021年01月30日

可及的速やか

「日本の古本屋」からご注文いただいたメール中に、「お世話になります。可及的速やかな発送をお願いします」というメッセージがありました。

RIMG4716言い回しから分かるとおり、ご当人は十分丁寧に表現されているおつもりのようです。その意味も、せいぜいナルハヤ(a.s.a.p.)という程度で、とくに他意があるとは思いません。

しかし店主の頭が固いためか、この「可及的速やか」という言葉に、どうも違和感を覚えてしまうのでした。

こちら側から申し上げる分には、誠意の表明になるでしょう。けれども相手の行為に対して、この言葉を用いる場合には、強い要求を意味します。

「可及的」はついていないものの、「すみやかに送ってください」という返信メールをいただいたこともあります。小店の確認メールに「お手続きが確認でき次第、すみやかに発送いたします」という文言がありますので、そのまま返されたのかも知れません。

これも相手に向かって言うと「ぐずぐずしないでさっさと送れ」と聞こえてしまいます。

昨日、別のお客様から「発送の連絡を受けて、もう1週間近く経つが、まだ本が届かない」というお電話をいただきました。

大慌てで調べたところ、当方の勘違いで、発送していないのに発送通知を出していたことが分かりました。ご注文品は棚に残ったままでしたので、ひたすらお詫びして、すぐお送りいたしました。

こういう時に「可及的速やかに送れ」と要求されるのは、ごく正しい語法だと思います。さいわいにも寛大なお客様で、そうしたお叱りめいたお言葉を頂戴することはありませんでしたが。

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2021年01月29日

リフレッシュ工事

RIMG47121月の市場も今日でおしまい。最終週ですから明治古典会も月例特選市。

本来ならフリ市を併用して盛り上げを図りたいところですが、緊急事態宣言を受けて組合からの要請もあり、今月は見合わせ。淡々とした特選市となりました。

出品点数もこのところの流れで、決して多くない。それでも通常市に比べると、高額落札品が目立ち、それなりの出来高にはなった様子です。

もっとも店主が市場にいた時間は短く、途中用で抜けて戻ると、もう最終台の発声が始まっておりました。

その間、何をしていたかと申しますと、築20年となる南部会館の大規模修繕について、設計にかかわった建築家の先生を交え、打ち合わせをしていたのです。

屋上防水と外壁塗り替えが、今回の主な工事。何社かの業者に見積もりを依頼してあり、それが揃ったということで先生から連絡があり、今日の会合となりました。

先生曰く、建物は虫歯治療と同じで、早めの手当てが結局は一番安くつくのだとか。理屈では、かねて承知していることですが、実際に上がってきた見積金額を見ると、やはりタメ息ものです。

しかもこれは、今後必要となるさまざまな修繕のはじまりにすぎません。南部会館だけに限っても、早晩エレベーターの取り換えが求められるでしょう。

西部・北部地区会館も老朽化が進んでいます。そして肝心の本部会館。こちらに着手すると費用は桁違い。

コロナ禍で弱った体力を、今後どう回復できるかが、そうした修繕を進ていくうえでの鍵となります。特効薬はありません、日々の事業活動を続けるのみです。

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2021年01月28日

ルート便について

東京古書組合には、一種の共同配送システムともいうべき「ルート便」があります。

昔から付き合いの深い運送業者さんに、社有トラックの1台を組合専用に確保していただき、月額を決めて借り切って、落札品や出品の配送をお願いしているものです。

申し込んだ店は、あらかじめ6つのルートのどこかに割り振られ、決まった曜日、ほぼ決まった時間にやってくるトラックを待つことになります。

スポットで運送を依頼するより安めの料金であることが最大の魅力ですが、それ以上に、配送日時が定まっていることの利点も小さくありません。

運送屋さんにとっても、確定収入が見込めることがメリット。良いことずくめのシステム——のはずでした。

しかし近年、利用者の利用頻度や利用量(料金に関係します)が次第に減ってきて、利用料収入と契約支払金額との差が、無視できないほど大きくなってしまいました。

当初から多少の赤字は組合員に対する助成として折り込み済みでしたが、交換会出来高の低下で、組合収支そのものが悪化し、とくに今期はコロナ禍の影響も加わり、組合創立以来の赤字決算の恐れすらあります。

そうした中で事業の見直しが図られているのですが、端的に言って利用料の値上げしか解決策はないわけです。問題は、どれだけ値上げするかという点。あまり上げて、スポット料金と変わらなくなっては意味がありません。

ここにきて、一定の固定会費のようなものを取る案が浮上してきました。そのうえで毎回の利用料は現在より下げようというものです。店主は、この案を支持します。もちろん金額にもよりますが。
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固定会費を維持会費と読み替えれば、維持できるだけの会費が集まらないようなら、ルート便自体を廃止するしかなかろうと思うのです。

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2021年01月27日

新しい波

このところ、市場で仕入れる機会がめっきり減っております。明治古典会はともかく、東京洋書会については、以前なら毎週、何かしらは落札していたものです。

ところが近ごろは洋書会でも落札ゼロのことがあり、明古に至っては、この何週間かまるで落札できておりません。

札が弱いと言えばそれまでですが、落ちなくて悔しいと思うものに、なかなか出会わないことも確かです。

ふだん店で売るような本は、市場で入札しなくともお客様からの仕入れで間に合っており、ありがたいことに市場では落札できないような良質の仕入れも少なくありません。

こう申しますと、まるで自給自足できているかのようですが、決して足りているわけではありません。火の車とまでは申しませんが、少しの蓄えも持てないまま今日に至っております。

そうこうしているうち、老人が食い物にうるさくなるように、落札意欲が減退してきたようです。

KIMG1560それを思い知らされたのは前々回の洋書会で、フランス古典演劇関係の一口を目にした時でした。ただその時は、いわゆる研究書が中心で、いまやほとんど売り先がないことも事実。

しかし昨日はその一口から、革装の古い本を選り分けたものが出品されていました。

今回ばかりは店主も時間をかけ、1冊1冊手に取るなどして注意深く吟味したのですが、出した結論は、入札せず。無理するだけの魅力を感じなかったのです。

結果的に落札価格は店主の予想範囲。あまりに安ければ後悔したかもしれません。しかしまあ、ほどほどのところ。最近、洋書に興味を持ち始めた新参の同業たちの手に、落札されていきました。

会にとっても、洋古書にとっても良い兆しです。

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2021年01月26日

今なら炎上?

KIMG1599そういえば昨年暮と今年正月のボロ市は、コロナ禍によって中止になりました。この町に知り合いの同業がいますが「イタイですよ」と嘆いておりました。

今日、洋書会の帰りの電車で、まだ読み残していた『百鬼園先生よもやま話』を読んでいると、そのボロ市について驚くような記述があるのに目が留まりました。

話し手(林髞氏)の知り合いで、世田谷に住むある奥さんが、ボロ市を見に出かけて家を留守にしたところ、その間に泥棒に入られ、着物を20点ばかり取られたという話を披露し、「世田谷署に届けたところが、面白いんだ」と以下のように続けます。

「ボロ市を見にいった留守に取られました」「あなた、ボロ市とはどういうものか知ってますか」「いろんな品物を売ってるし、中には靴の片ッ方なんかもあって、便利なものだと思いました」「そんなことじゃない。ボロ市というのは、全国の泥棒が集まる日ですよ。全国の泥棒が集まる日に留守をしたらバカじゃありませんか。ほかの日に留守をしなさい」

念のため書いておきますが、店主が読んでいる文庫本の発行が1987年。ただし元の座談会「私は日銀と取引がある」は雑誌『随筆』昭和27年3月号に掲載されたもの。

その当時にしたって、このとおりの会話がなされたとは考えられません。文字になったあと、よくどこからも咎められなかったものです。今なら「炎上」必至。地元の同業が聞いたら怒り心頭かも。

この話には続きがあります。盗まれた着物は、被害届を出して二日後に神田の古着市に出てきたそうです。その古着屋の主人は贋の配給通帳を信用して買ったので、買い戻してもらいたいと「四苦八苦したという話」だとか。

古物営業法第二十条 (盗品及び遺失物の回復)では、一年以内なら「被害者又は遺失主は、古物商に対し、これを無償で回復することを求めることができる」とあります。これに泣かされた業者は多かったことでしょう。

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2021年01月25日

人海ニ投ゼズ

そんなに本ばかり集めて、死んだら蔵書はどうするのか、と間々、好奇の友に問われる。愚かしい、遺言は書いてあるさ、とわたしは笑って答える。本のために産を破り、生活をも顧みなかったこのわたしだ。当然、黙ってついて来てくれた糟糠の妻のものさ。わたしの信用する古書店も、もう指定してあるよ。即刻売却させ、蔵書は「以テ人海ニ投ズベシ」という古儒の理想に、わたしもささやかながら従おうとすることだろう。

先日も取り上げた由良君美先生の『みみずく古本市』、その最後に収められているのが「本の紙魚・本の虫」という一篇で、引用したのは締めくくりの部分。

本が出たのは1984年5月のことでしたが、この文章の初出は岩波の『図書』1983年11月号。

何が言いたいのかというと、この時点でここにある「わたしの信用する古書店」に、開業半年ほどの小店が含まれていることはあり得ないということです。

振り返れば先生とのおつきあいは、僅か7年余という短い間でした。先生が亡くなられてしばらくのち、奥様からご連絡をいただいてお宅へ伺いました。ご蔵書の整理について相談いただいたのです。

先生の遺されたノートに「日本書は河野書店に、洋書はA店、B店に」という指示があったので、ひとまず小店に連絡したということでした。

RIMG4711少しがっかりしたのは正直なところです。しかし今から思えば駆け出しの本屋に、たとえ日本書だろうが任せよと言っていただいたのは、破格の抜擢に違いありません。

しかし現実は「即刻売却」とはなりませんでした。最後のゼミ生たちに蔵書目録を作ってもらったようですが、それ以後、奥様はどことも連絡を取ろうとされないまま、いつしか音信も途絶えたのです。

ついに人海に投ぜられなかったご蔵書の行方を、想像してみることがあります。

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2021年01月24日

いろいろな備え

ネットやTVのニュースで報じられる、毎日の新規感染者数が、このところの大きな関心事となっております。

増えた減ったと一喜一憂しても意味のないことは承知しておりますが、ひとまずは更なる措置が要請されるような状況かどうかに注目しております。

店舗の休業要請にまで至ることは、まずないと見ておりますが、商業施設や催事の自粛要請については、この先どうなるか、まだ予断を許しません。

感染状況が高止まりしたままであれば、さらに強く在宅勤務などを要請される可能性もあります。そうなれば会館運営にも影響が及ぶことは必至です。

理事会メンバーの間では、いろいろな事態を想定しながら対応策を検討しております。取り越し苦労に終わることを願いつつ。

例えばそのひとつはリモート市会。本の動きを最小限に抑え、ネット上で交換会を開く方法です。

これについては技術的な面よりも、これまでの商習慣と相いれない部分が生じるため、どこまで組合員の了承を得られるかという点に、難しさがあります。

そのため、いわゆるfeasibility studyをしてみようと考えているところです。(思えばこの言葉を初めて聞いたのは20年近く前、「日本の古本屋」揺籃期のことでした)

もうひとつ試しておこうとしていることがあります。それはリモート会議。

KIMG15524月に全古書連総会が京都で開かれる予定です。万が一にも、その時までに緊急事態が解かれていなければ、採らざるをえない方法かもしれないからです。想像したくないことですが。

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2021年01月23日

期待に違う

近ごろの小店は、土曜日が一番のかき入れ時となっているのですが、朝から冷たい雨のお天気で、サッパリご来客がありません。いわゆる開店休業。

awl2鬱々とした気分でいると、最近入荷した文庫の山の中に、『みみずく古本市』(ちくま文庫)があるのを見つけ、手に取って懐かしい文章のいくつかを読み返しました。

本書の元版が青土社から発行されたのは1984年5月。そのほぼ1年前に同じ出版社から『みみずく偏書記』が出されていて、その後書き「あと智恵の弁」の中で小店を紹介してくださっています。

awl1それは同書に「古書の買い方」という文章が採られていて、そこでは「駒場には古書店がない」と書かれていたため、「当時は本当になかったが、現在は河野書店ができた」と、わざわざ入れていただいたものです。

ちなみに「古書の買い方」は1967年の教養学部報に掲載された文章です。それでも「間に合ってよかった」と、まるで誤報を正したかのようにおっしゃっていたことを思い出します。

またこの文章では、由良先生が高校時代、毎日のように入り浸っていた古書店主が「アナーキストの詩人で相当の語学力と思想や文芸の知識を持っていた」と語り「古書屋さんには立派な人が多かった」と回想されています。

そのあとに「駒場には古書店がない」とつづくわけですから、先生が新来の古書店に寄せておられた期待は、少なからぬものがあっただろうと、今にして思います。

そう考えるとその後、亡くなられるまでの間、小店にかけていただいたご厚誼の理由が、多少とも理解できる気がします。もし先生がまだご存命だったとしたら、自らの眼鏡違いに、落胆されていたに違いないでしょうが。

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2021年01月22日

事前に確認すべきこと

朝、開店して間もない午前10時過ぎ、電話がありました。「すいません、今日って店舗で本を買うことができるでしょうか?」

KIMG1551若い女性の声です。一瞬、本をお売りになりたいという意味かもしれないと思い、確かめてみました。「買うというのは、お客様がお買いになるということですか?」「はいそうです」「でしたら、いつも通り営業しておりますのでどうぞ」

「今日はお店開いてますか」という電話は時折かかってきますが、大抵は土日や祝日。平日にいただいた記憶はあまりありません。それでつい聞き返してしまったわけです。

切った後から考えました。今どきのことですから、店舗営業を自粛しているかもしれないと思われたのだろうかと。

事実、同業の中には、予約制に踏み切った店もあると聞きます。また先週に続いて、今週の古書会館地下即売展も、休止となりました。事前に確かめたい気持ちも分かる気がします。

電話から30分と経たず、若い女性がご来店になりました。「こういう本はありますか?」とスマホの画面を店主に見せます。

在庫を検索し、裏の保管棚から本を取り出してきて、ご覧に入れながら「先ほどお電話くださった方ですか?」とお尋ねすると、そうだというお答え。

そこでひと言「せっかくお電話をいただいたのですから、その時に、お探しの本についてもお伝えいただけると有難かったですね」。

こちらの都合だけではありません、売り切れてしまっている可能性だってあるからです。店が閉まっている可能性よりは、ずっと高いと思います。

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