2021年02月

2021年02月28日

City Lights

先日亡くなったLawrence Ferlinghettiは、ケルアックやギンズバーグなどと同世代のビート詩人として知られていますが、知名度という点ではさほどではなかったためか、日本版Wikipediaには項目がありません。

店主もその名を、むしろ出版社City Lightsの創設者として耳にしたのが最初でした。

小店が開業した頃、つまり80年代前半は、同書店の本をよく目にした記憶があります。店主自身のアンテナがそちらに向いていたこともあったでしょう。それ以上に60〜70年代というカウンターカルチャー盛時を経て、持ち主が整理を始めた時期だったかもしれません。

cityシンプルな並製本で比較的定価の安い本が多く、前衛的な文学、演劇を取り上げたものが記憶に残っています。

英語版Wikipediaによれば、American poet, painter, social activistと紹介されていますから、今で言うなら左翼的なテイストがあり、廉価な出版も一つのポリシーであったと思われます。

ところで、本が読者の手を経て、再び古書として出回るのに、一定のサイクルがあるのではないかと考えることがあります。

一番短いのは出たばかりの本を、読んだか読まないかですぐ処分されるケース。これは意外に多い。

次に短いものとしては社会人となってほどなく、学生時代に読んだ本を処分するケース。少し長いものでは研究者が定年を迎えて整理されるケース。さらに長くなると古い建物を取り壊すさいに、すでに持ち主のいなくなった本が処分されるケース。

市場でよく見かけるからといって、いつまでも手に入ると思っていると、二度と巡り合えないということも珍しくありません。City Lightsの本は、いま小店には1冊しか残っていませんでした。

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2021年02月27日

大書店の終幕

栄枯盛衰は世の習い。出版書店業界の場合、もはや落日に向かってとどまるところを知らないのでしょうか。

そんなことを感じさせるような嘆きのメールが、40年来の知り合いであるフランス人から送られてきました。

数日前、ル・モンド紙に発表された、Gibert Jeuneが「経営に長年苦しんだ挙げ句、永遠に暖簾を下ろした」という記事を読んで、大変に動揺したのだそうです。

近年経営が思わしくなかったことは知られていて、もう一軒のGibertであるJoseph Gibertに吸収統合されるような形になっていたらしいのですが、今回は完全に店を閉めるようです。

その記事がpdfで添付されているのですが、全17ページにわたっていることに驚きました。タイトルだけ追うと、ちょっとした社史のようです。それほどに大きな事件であるのでしょう。

ちなみに、新刊と古書を共に扱うこの書店の名は、店主でも存じておりました。それは市場やお客様から入手するフランス書に、しばしばOccasionの文字が目立つ、特徴あるラベルが貼られているのを見てきたからです。

RIMG4765そう思って周りの棚を見回したら、1冊だけ見つかったのはJoseph Gibertのラベルでした。もしかしたら混同していたかもしれません。

それにしても店主が自力で読めないことなど承知のはずの、その記事を添付してきたところに、彼の悲しみの深さが現れています。「暗い話しでお邪魔して申し訳ございません。絶対に絶望に暮れない下さいね」とメールは結ばれていました。

この記事、何とかして読むべきでしょうか、読まないほうがいいのでしょうか。

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2021年02月26日

「精神生理学研究所」

気がつけば今日が月末。「2月は逃げる」とはよく言ったものです。

明治古典会は月末の特選市。1月には自粛したフリを、今月は復活。そのせいではないでしょうが、久しぶりに賑やかな出品で会場が埋まりました。

近代文学系の一口ものもありましたが、今日目立ったのは美術関係。現代美術の画集、図録などの一口に加え、美術雑誌編集者の旧蔵書という一口など、まさに明古らしい品が集まりました。

店主も今日はフリの初めから終わりまで席に着いていることができ、おかげで色々と勉強させてもらいました。

RIMG4761『月に吠える』の初版本、ただし削除版で表紙欠、タイトルページも半分ほど切り取りという本が、それでも結構な落札値となり、競り落としたのは版画などを中心に扱う同業。

なるほど、こんな状態であれば、かえって心おきなく田中恭吉の版画を切り取って、商品とすることができるかもしれません。

1950年代から活躍した「具体美術協会」の機関誌も、びっくりするような価格に競り上がりました。

そして『精神生理学研究所』とタイトルされた本。店主は手に取ってみることもしなかったので、何の変哲もない外装しか目にしていないのですが、この1冊がやはり驚くほどの落札額。

後からこの本が、50〜60年代の重要な美術運動の記念碑であることを知りました。

こういう点はフリの長所でもあります。入札なら、一瞬の発声を聞き逃せば、そんな本があったことさえ気づかずに終わったことでしょう。

もっとも知ったからと言って、それを手に入れる機会が巡ってくることは、まず期待できないのではありますが。

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2021年02月25日

Who died today

初めての方だと思うのですが、親しげに店に入って来られると、ゆっくりした英語で「ベン・ジョンソンの戯曲はありますか?」とお尋ねになりました。昨日のことです。

年配の外国人男性。でも身のこなしなどから、店主よりは年下のような気がします。

それで話が通じると思っておられる様子から、あるいは小店が多少とも演劇関係書を集めてきたことをご存じの方だろうか、とも考えました。しかし残念ながら、ご期待に沿えず、答えはノーでした。

基本的なところを常備しているほどの専門書店、というのは店主のあこがれではありましたが、早々と断念しております。品ぞろえの困難さ、店の広さ、立地という制約。とても演劇関連書だけでは商売になりません。

そうして少しずつ、あちらこちらに触手を伸ばしているうちに、現在の和洋学術芸術書という路線が定まってきたわけです。それだって中途半端なものであることは、十分自覚しておりますが。

さてその外国人男性、しばらく店内をご覧になって「やはりなさそうですね」と、お帰りになろうとして、いきなりWho died todayとおっしゃいました。

とっさには意味が分からなかったのですが、そのあと続けられた言葉から、まさにその日Lawrence Ferlinghettiが亡くなったということを、店主に伝えているのだと分かりました。ビート詩人であり、出版人として書店も経営していた人で、店主もその名くらいは存じています。

RIMG4756「101年を生きた」と言葉を残して去られたあと、自分の耳を確かめるためネットで検索してみたところ、確かにそのニュースが見つかりました。

それにしても、本当に初めての方だったのでしょうか。

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2021年02月24日

適正価格

お昼時、家人が店番をしているときに、お客様から本のお尋ねを受けたそうです。

それが聞くからに、いかにもピジネス書といったタイトルだったので、「そいういう本は、ウチでは入ったとしても表の均一に並べてしまいますから、そこになければ在庫はありません」などと返事をしたのだとか。

RIMG4755すると「Am*zonには出ているのだが怖ろしく高い。『日本の古本屋』には探求書のリクエストを送っているのだが、一向に入荷連絡がない」と、ボヤいてお帰りになったということです。

昼食を済ませた店主が帳場に行くと、お客様から伺ったタイトルで検索したAm*zonのページが開いたままになっていました。そして、以上の説明。

画面に出ていた本は、35年前に出版されたもので、ある企業の創成譚といったところでしょうか。1点の中古品があるだけで、価格は17,500円。たしかに「怖ろしく高い」と思います。

「こういう出品者がいるんだよね」と家人とうなずき合って、あらためて出品者を見ると、店名のあとに「全古書連加盟店」の文字があることに気がつきました。

小店と同じ、プロの古本屋の出品だったのです。思わず考えこまされました。

お客様から頼まれて本を探すとき、よくAm*zonを調べるのですが、しばしば突飛な価格に驚かされます。「売れれば儲けもの」という、素人さんの付け値だとばかり思っていましたが、必ずしもそうでないこともあるわけです。

ほかのどこを探してもなくて、それがどうしても必要だとなれば、傍目に突飛な価格でも、求めざるをえないことはあるでしょう。

そうして売れたとすれば、それは結果的に適正価格だったということになるのでしょうか。

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2021年02月23日

ラベルを手書き

さて昨日ご注文いただいた沖縄へお送りする本。荷造りしてみると、3辺合計65cm。まぎれもなく80サイズとなりました。ちなみに重量は650g。

ところで小店は宅配便の場合、佐川急便をもっぱら利用しています。割引料金の適用を受けられるからで、その割引料金に若干の上乗せをして、お客様にご請求します。

パッケージ代にもならない程度の上乗せですから、実費と申し上げてもウソにはならないと思います。

RIMG4738以前、郵便局が値引き合戦をしていたころは、ゆうパックでも、かなり割り引いた料金が適用されていました。しかし特約制度の見直しで条件が厳しくなって、僅かな値引きのためにさえ、月間利用数に結構なノルマが課されるようになりました。

そんな僅かな値引きでは、佐川に太刀打ちできません。結局、特約申請をあきらめたのです。したがって正規料金。代引きの際などは、ゆうパックしか対応できませんから、かなり割高感があります。

というわけで、ふだんはほとんど佐川さんにお願いしているのですが、こと沖縄となると、ぐっと料金が高くなるため、ゆうパックの方がむしろ安価となります。

それでやむなく(などと言うと日本郵便さんから𠮟られそうですが)ゆうパックで出すことにいたしました。

ながらく利用していませんでしたので、ラベルを切らしてしまっております。確かサイトからラベル印刷ができるはずと、実際に挑戦してみたのですが、結局のところ手書きラベルを調達して、それで出すことにいたしました。

なぜそうなってしまったかは、またいずれ。

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2021年02月22日

3倍の送料

沖縄の方から即決(単品スピード)注文。まてよ、この本は規格外の大きさで、ゆうパケットはもちろんレターパックでも送れないはず―—心配になって確かめてみました。

すると商品代が2000円、送料1600円の合計3600円を、確かにご決済いただいています。厚さは1cmに満たない薄い本ですが、縦横とも30cm。梱包すると80サイズとなるため、割高な料金になってしまうのです。

洋書ですから、外国から取り寄せたと思えば、同じようなものかもしれません。小店と変わりない価格のものがあったとしてですが。

送料については、最近もっと驚いたことがありました。

いつもご用命いただくお客様のご指定で、Abe booksから本を2冊取り寄せることになり、注文を入れました。「読めれば良い」ということで一番安価な、ただし状態は良くなさそうな本の代金合計は約2千円。それに対して送料が同じく2千円強。
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かなり重量のありそうな本ですから、まあそんなものかと思っておりましたら、販売書店から連絡があり、さらに約4千円の追加送料が必要だと言います。

「了解かキャンセルか」と迫られました。2千円の本に6千円の送料というわけです。お客様に連絡をすると、それで構わないとのこと。「了解」と返事をすると、それからは早いものでした。

なにしろ配送会社はDHL。出荷から、到着まで、3日ほどしかかかりませんでしたし、その間、何度メールが送られてきたかわかりません。

昔なら船便でゆっくり送ってもらうところです。少なくとも速い便と安い便の、2択くらいはできたでしょう。しかし今回、他の選択肢は示されていませんでした。

これもコロナの影響でしょうか。

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2021年02月21日

散歩のついでに

今日は4月の陽気になると天気予報が告げていたとおり、朝から暖かで、入り口のドアを開けたまま、しかも暖房も入れずに店番をいたしました。

そんな気候のせいか、散歩にでも出かけるようすの人が目立ちます。

午前10時を少し回ったくらいでしたでしょうか、若い男女が連れ立ってご来店。どちらもコートこそ羽織っておられましたが、バッグも手荷物もお持ちになっていません。全くの手ぶら。

店内に入られてから、かなりの時間が過ぎました。静かにあちこちの棚をご覧になっておられたのですが、いよいよお帰りかと思われた時、男性が1冊の本を手にされて、あちらのページ、こちらのページと、幾度となく眺めはじめました。

ついには女性に声をかけ、お二人で一緒にご覧になっています。なにやらひそひそ話しながら。

辛抱しきれなくなって「面白いですか?」と声をかけました。すると男性は「買おうかと思ってるんですが」と、なおしばらくご検分。
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結局のところ本を棚に戻し、女性の「買わないの?」という声に、小さな声で何やらお返事されたあと、退出を決断されたようです。

開け放しのドアから出て行かれる時「長い時間済みませんでした」と男性。時計を見るとまもなく午前11時、ほぼ1時間のご滞在でした。

これくらい時間をかけてご覧になるお客様は、他にもおいでですが、そういう方はたいていお一人で来られ、わき目もふらずという感じ。

今日のお二人には、不要不急感が漂っておられました。もちろん、それが悪いというわけではありません。

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2021年02月20日

売れるものは売れる

RIMG4750フランスのPleiade叢書に似た、i meridianiというイタリアの叢書があります。似ているのは判型、紙の薄さ、そして自国だけでなく世界の名著を含むラインナップ。

以前に入手していたこの叢書を、ボツボツという感じで入力し始めました。Pleiadeの在庫が乏しくなったため、替わって棚に並べようという算段です。

1冊ずつ手にして見ていくと、どうも造本が、もうひとつ頼りない気がします。なかに見返しの開きが悪いものがあったりするのです。一昔前の、中央公論社の文学全集などに見受けられたように。

要するに堅牢さ、耐久性などにおいて、いささか劣る感じがするのです。編集が優れているかどうかといった点については、店主の知識の及ぶところではありませんが、価格設定はPleiade版とあまり変わりないようです。果たして売れてくれるでしょうか。

ところでそのPleiade叢書ですが、長らく売れないでいる著作集がありました。Henri Michauxの3巻本です。売れ筋と踏んで、強めに(といっても新刊の現地価格より安く)値付けしたことが、災いしたかと思いました。

棚に残っているのを眺めては気になっておりましたが、ついに先日、ご来店のお客様がお買い上げくださいました。「ずっと狙っていたんです」と嬉しそうにおっしゃって。

お客様がお帰りになってから、売り切れ処理をしようとデータベースを開きました。ところが商品管理番号を入力しても、何の画面も表示されません。どうやら入力されていなかったようです。つまり「日本の古本屋」には出品されていなかったということ。

それで時間がかかったわけが分かりました。しかし、おかげでお客様に喜んでいただけたのですから、何よりだったと言うべきでしょう。

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2021年02月19日

1冊100円?

『大日本史料』といえば、泣く子も黙る、わが国歴史史料の集大成。明治30年代から刊行が始められ、全16編を予定するうちの第12編までが、現在刊行中。

しかもこれまでに完結しているのは、第1編と第4編のみで、それとて補遺が追加されており、まだまだ果てしもなく続くであろう出版事業です。既刊巻数は補遺も含め419冊とのこと(東京大学史料編纂所HP)。

そのほとんど既刊分揃いに近いと思われるものが、先日の中央市会大市会に出品されました。

昔なら大事件です。いつごろのことやら定かではありませんが、かつて某業者は、既刊揃いを1千2百万円で、さる学校図書館に納めたといいます。

確かに当時、市場で1千万円前後の落札があったことを、店主でさえ記憶しています。

それが果たして、今回いくらで落札されたのか。その荷主である業者さんから聞きましたが、まさかの数万円。競争入札ですから、それが最高値であったわけです。

KIMG1723カーゴ19台を出品したこの荷主さんは、研究書、学術書に値が付かないことを見越して、お客様から委託で預かり、一切止め値ナシとしました。いわゆる売りっぱなしというやつです。

だめだとは思っていたものの、さすがにそこまでとはと、荷主さんもいささか唖然とはしたそうですが、確かにデジタル化が進みデータベースまで作られていては、新たにこれを所有しようという機関も個人も、見つけることは難しいだろうと納得したとか。

本の価値と古書の価格とは、全く関係ないことが、これでも分かります。

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