2009年04月27日

provenanceということ

古書の愉しみの一つは、前の持ち主について思いをめぐらせることに有ると書いたことがあります。

今日手にした一冊は、そんな古書の面白さをそのまま本にした本。回りくどい言い方ですが、『ヘンリー・スウィート 音声学提要』(木原研三編・三省堂・1998年)と訳題がつけられた一冊です。

帯の解説文によれば、要するに著者Henry Sweet自身の手沢本で、市河三喜博士がSweetの死後、その蔵書売立てで入手。その後、岩崎民平・佐々木達という二人の学者の手を経て編者に伝わったという来歴のもの。

余白に沢山の書き込みがあり、そのまま影印されていますが、著者および著者が意見を求めたノルウェーの言語学者によるもの、と見られています。

稀覯本とされたこの原著、最近リプリントが出たようです。しかし元版はネットで探しても見つかりません。それ以上に、この翻刻原本は、その履歴によって、もはや新たな異なる本になっていると言えるでしょう。

ちなみに店主の手元にあるこの翻刻版は、編者の旧蔵書で、記名があり、編者が一冊を献本した大英博物館からの礼状が挟まれておりました。

sweet

konoinfo at 17:23│Comments(0)TrackBack(0)

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