2009年09月07日

漱石の『明暗』

気温はきっと盛夏に較べれば低いのでしょうが、何か体にこたえるような暑さ。これが残暑というやつですね。

けだるさも加わって仕事の手も止まりがちな昼下がり、今風に言えばアラサー男性、入ってくるなり「夏目漱石。どこですか?」。

もちろん初めてのお客様。どころか、きっと古本屋に入るのも初めてなのでしょう。その眼は「さあどこだ」と返答を促すように店主を見据え、店内を見回そうという気配は微塵も有りません。

「漱石の何をお探しですか」と尋ねると、まるで質問を受けることなど予期していなかったかのようにためらった後、『明暗』だと答えられました。

そこでやおら立ち上がり、文庫の棚へ向かい、岩波の緑帯、新潮など近代文学を集めたところ、それぞれの漱石を調べました。あいにく見つからず「残念ながら有りませんね」と申し上げると「そうですか」、現れた時と同じ素早さで、出て行かれました。

決して珍しいパターンでは有りませんが、今日は何だかいつもより疲れが残りました。折りしもよちよち歩きの子が親御さんと一緒に通りかかり、「本屋さんだー」と声を上げます。

本が置いてあるから本屋、そこまでのことは二つ三つの子にも分かります。その先の違いを、本屋にもいろいろあるのだということを、どれほどの人々に理解して頂いているのでしょうか。

konoinfo at 17:34│Comments(0)TrackBack(0)

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